1月17日(金)、テレビ放送に先駆け『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) Beginning』(以下、『ジークアクス』)の劇場公開が始まりました。
『エヴァンゲリオン』シリーズの制作で知られるスタジオカラーがあの『ガンダム』シリーズを手掛けるということで、放送前から話題沸騰となっていた本作。
「これが劇場で一足早く見られる機会を逃すわけにはいかない」と多くのアニメファンがスクリーンの前に駆けつけた結果、初週の観客動員数が35万人超、興行収入は約6億円を記録し、週末興行ランキングで1位に輝いたそうです。
かく言う僕も、その一人です。
ただ、少しほかの方と違う点があるとすれば、僕が『ガンダム』のことをほとんど何も知らないということです。
いままで身の回りで幾度となく『ガンダム』が話題になり、新作が発表されれば様々な人がその作品の内容に言及しているのを感じつつも、そのどのタイミングでも『ガンダム』に向き合うことなく今まで生きてきてしまいました。
そんな人間がなぜこのタイミングで『ガンダム』を見ることにしたのか。その理由が、本作『ジークアクス』の座組にあります。
◤メインスタッフ解禁◢
— 機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) (@G_GQuuuuuuX) December 3, 2024
本作は日本テレビ系列にて放送を予定しており、
監督 #鶴巻和哉
シリーズ構成 #榎戸洋司
メカニカルデザイン #山下いくと
をはじめとする豪華スタッフ陣でお届けします!
▼スタッフ一覧https://t.co/PGqpZKyukj#GQuuuuuuX #ジークアクス pic.twitter.com/PLio01Smb3
監督
鶴巻和哉シリーズ構成
榎戸洋司
ここです。
何を隠そう、僕は鶴巻和哉氏が監督を務めたアニメ『フリクリ』が大好きなんです。もちろん『トップをねらえ2!』(以下、トップ2)も、本作の脚本を担当する庵野秀明氏が監督する『トップをねらえ!』(以下、トップ)と合わせてめちゃくちゃ楽しみました。
またシリーズ構成を担当し、庵野氏とともに脚本でもクレジットされている榎戸洋司氏も見逃せません。榎戸氏は『フリクリ』『トップ2!』などのシリーズ構成や脚本を歴任しており、鶴巻監督の作品を語る上では欠かすことのできない人物です。
そんなわけで、『ガンダム』のことを何も知らないけど鶴巻監督のアニメが大好きな人間が『ジークアクス』を見たらどうなるのか!? というのが記事の中核となっております。
結論から申し上げますと、めちゃくちゃ面白かったです。
『ガンダム』を知らない人間が本作をどう楽しんだのか、本作のどういった部分に注目するのか。そういった内容をネタバレ全開で書かせていただいたので、ぜひ最後までお読みください!
※本稿には、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』や同作のパンフレットなどのネタばれが含まれます。あらかじめご注意ください。
『ガンダム』ファンにはたまらないであろう前半のアレコレ。でも、何も知らなくてもめちゃくちゃ楽しめた
『ジークアクス ビギニング』の冒頭シーンを劇場で見た人間は、おそらく100人が100人とも仰天したと思います。少なくとも僕は目玉が飛び出るかと思いました。
赤い髪の少女や青い髪の少年の姿は影も形もなく、ひっそりとコロニーに忍び寄る赤いザク、仮面の男。さすがの僕でもこの人は知ってます。“赤い彗星”シャアですよね。あれ、でも確かこの人ってガンダムと戦うんじゃなかったですか?
なんでガンダムに乗り込んでるの!?
この間、わずか数分。本作『ジークアクス』が初代『ガンダム』のパラレル的なお話であることを、最高速度かつ最大のインパクトで明かされるわけですから、度肝を抜かれない視聴者はいないでしょう。しかも、本作は抜いた度肝をそのままに、そこから数十分に渡って連邦とジオンが繰り広げた「一年戦争」のイフを描き続けます。
意外に思われるかもしれませんが、初代『ガンダム』を見たことのない人間から見ても、このパートはしっかりと楽しめました。
作中のキャラクターたちが余りにも固有名詞や勢力図を当然の言葉として使うので、「自分の知らない架空のお話」というよりも、「自分の知らない時代や場所を舞台にした軍記物」のように受け取ることができた、というのが大きな要因だと思います。
このあたりは、『ガンダム』というIPが1970年代から実に半世紀近くに渡って続く超巨大コンテンツだからこその、ある種の余裕が感じられます。
ただ、僕が「ガンダム初見」でも楽しめたのは「分かる奴に分かればヨシ!」の姿勢というか、クリエイターが自分たちの信じた面白さや魅力を叩きつける作風が好きだから、という理由も挙げられます。ですから、決して一般化できないという可能性もあるでしょう。
少なくとも僕は初代『ガンダム』を知らなくても、「敵の開発した新兵器を鹵獲し、逆に戦況を一変させる若き英雄、シャア」の物語として映画序盤の数十分を楽しく見ることができました。
というか、これ冒頭でサラッと流すんじゃなく、2時間使って独立した映像作品にして欲しい!
知らない間にシャアは大佐になってるし、サイコミュという新兵器やシャアとシャリア・ブルのMAV戦術という軍事的革新が戦争にどのような影響をもたらしたのか、それだけの新戦術があってなお連邦に宇宙要塞ソロモンを鹵獲された理由はなんなのか。見ていて「もっと知りたい!」と思わされる部分がいくつもあったんです。
もちろん原作にして正史たる初代『ガンダム』をご覧の方には想像のつく内容なのかもしれませんが、そうだとしても描く価値はあるはずです。尺をもっとしっかり使った、一本の作品としても見てみたい!
それだけの面白さがあるでしょう、この内容には!!
スマフォの吹っ飛ぶカットがあまりにも『フリクリ』すぎてテンション爆上がり
などと、ワガママを言っても仕方ありません。
シャアは連邦とジオンの相打ちを目論むも、サイコミュの暴走(?)に巻き込まれ、「時が見える」という謎めいた通信だけを残して還らぬ人となりました。
そして時は流れ、宇宙世紀85年。ようやく『ジークアクス』のキービジュアルに出ていた主人公、マチュ(本名、アマテ・ユズリハ)へとカメラが移ります。
この、マチュが列車を降りて改札から外に出ようとするシーン。本作のキーキャラクターであるニャアンとの初遭遇という意味でも重要シーンなのですが、そんなことよりも僕の心を鷲掴みにしたのは、マチュのスマフォが吹っ飛ばされるカットでした。
「あっ、『フリクリ』だ!!」
もうね、見た瞬間に心のなかで叫びましたよ。この集中線、グラデーションで省略された背景、大きなシルエットがダイナミックに画面へエントリーし、そのまま吹っ飛んでいく物を小さく動かしつつじっくりと見せる、省力と演出を兼ねた描写。
間違いなく、鶴巻作品の味。映画開始からすでに数十分が経過していたはずですが、僕が本作を鶴巻監督の映像作品だと実感したのは、この瞬間だったと言えるでしょう。
いっぽうで、本作を映画全体を見渡してみたときに、リファレンスとして過去の鶴巻作品から提示できそうなのは『フリクリ』よりも『トップ2』だと思います。
というか、冒頭の一年戦争編からのマチュ編の流れは、キャラクターデザインの変化なども相まってかなり『トップ』からの『トップ2』という趣がありますよね。
そんな『トップ』は監督を庵野氏が担当していました。また、本作のパンフレットによると、一年戦争編を作るにあたっても庵野氏がかなり重要なポジションを務めたようです。なんだか、ますます『トップ』からの『トップ2』という流れが思い起こされますね。
『トップ2』(および『トップ』)から考えると、本作の構成というのは非常に優しく、また分かりやすくもなっています。『トップ2』をご覧になった方ならおわかりでしょうが、『トップ』の名を冠しながらも随分と『トップ』と雰囲気の違う作品としてはじまり、物語中盤で「やっぱり『トップ』じゃねーか!」とカマしてくる、そんなツイストが非常に重要な要素となっていたのが『トップ2』です。
いっぽう、冒頭数十秒でネタばらしをすることで、視聴者の意識と認識を一気に統一した本作の構成は、よりキャッチ―な作風になったと言えるでしょう。
ちなみに、パンフレットに掲載された鶴巻監督の発言からも、本作の制作にあたって『トップ2』が意識されていたことが読み取れます。本作のメインキャラクターであるマチュとニャアンを名指しして「ノノ&ラルク」のようだと言われているんですね。
そうなると、気になってくるのはふたりの行く末です。
『トップ2』においてノノとラルクが最終的に離れ離れとなってしまったように、鶴巻監督の描くボーイミーツガールやガールミーツガールは最終的にメインのふたりが離別することの多い印象ですが(『フリクリ』のハル子が“ガール”であるかどうかには一考の余地あり)、本作ではどうなるのでしょうか。
それに、忘れてはならない相違点として、今回はメインキャラクターがもうひとりいます。赤いガンダムを操る謎の少年、シュウジ。
なんかやたらと距離感が近く、映画の範囲だと女の子と見るや匂いを嗅ぐちょっと変態チックなキャラに見えなくもないですが、この表現は「野性的」あるいは「動物的」と表現されるべきでしょう。
謎多きニュータイプであるシュウジは、今後マチュやニャアンとどのような関係性を構築していくのか、ゼクノヴァとともに還らぬ人となったシャアと、どのような関係があるのか。等々、気になるポイントは目白押しです。
カラーさんにサンライズさん、
明日から本放送を始めるってワケには、いきませんか?