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『ガンダム』未履修の鶴巻ファンが『ジークアクス』を見たら、それでもめちゃくちゃ楽しかったので感想を聞いてほしい。ついに発表された新作は、まさに「待ち望んだ鶴巻作品」だった

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なぜ「5年後」なのか? あんまり時間を開けすぎると、設定的に木星から‟何か”が来るらしい……。

ところで、ここまで述べてきた考察の前提である「生の実感から阻害された主人公」という設定には、ちょっとした疑問が付随します。

それは「戦争終結からまだ5年しか経っていない」という、時間感覚の不自然さです。

連邦とジオンの戦争によっていくつものコロニーが巻き込まれたというのは、シャアによるガンダム奪取のみならず、悪名高き「コロニー落とし」の描写や、ジオンの強襲揚陸艦がコロニー6に強行侵入した際の「占領時代」という報道からも読み取れます。

キャラクター設定によれば、マチュの年齢は17歳。つまり戦争中は12歳という計算になります。5年前のマチュがどこにいたのかはわかりませんが、コロニー生まれである以上、マチュは戦争の脅威にさらされていたでしょうし、「生命の危機」というかなり最悪な形にはなりますが、生の実感を獲得してそうなものです。

事実、日本において「しらけ世代」「新人類」などの言葉で、若者のある種の無気力さが社会で注目されるようになったのは、西暦1970年代半ばから1980年代。第二次世界大戦の終結後30年が経過してからのことです。

こういった心境を描くなら、マチュは「戦争を知らない子供」であったほうが分かりやすいように思います。

とまあ、劇場で本編を見ていた僕は前述のとおり「どうしてこんな時代設定にしたんだろう?」という疑問を抱いていたのですが、その回答はパンフレットのなかにありました。

パンフレットによれば、鶴巻監督自身も「主人公たちを戦後生まれとする構想」もあったと語り、「そちらの方がテーマ的にも上手くハマりそう」とまで言っています。ですよね! 僕としても非常に納得のいく構想です。

では、なぜ今のような設定になっているのか。

じつは、本作の設定がそうならなかった理由は「木星」にあるそうです。

一年戦争が終わってからしばらくすると、木星からとんでもないものが帰ってくるというのが『ガンダム』の歴史における重要な出来事であるとのこと。『ガンダム』のことを何も知らない僕としては、そう言われてしまっては引き下がるよりほかにありません。

一体何者なんだ、シロッコ……。めちゃくちゃ気になりますし、俄然『ガンダム』シリーズを視聴したくなってきました……。

ニャアンが期待させるもの。

また、本作は勝利したジオンの拠点を舞台とするのではなく、連邦とジオンの戦争の狭間で時に戦場となり、時には非人道的な質量兵器にまでされた「コロニー」を舞台に選んでいます。この点は、あらためて注目しておきたい所です。

というのも、そのコロニーの内側で難民への弾圧が存在していることも描かれていたからです。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』感想・考察・妄想。『ガンダム』に無知な鶴巻ファンが見たら、めちゃくちゃ楽しかった話_013
(画像は【ネタバレ注意】『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)-Beginning-』Promotion Reel – YouTubeより)

ここまでにも何度か触れてきましたが、マチュの感じる不自由さは、衣食住に困ったことのない、満たされた世界で暮らしているがゆえの悩みです。自然という過酷さから、全力で身を守ったからこその不自然さです。

だからといって、その悩みが軽んじられてよいわけではないものの。過酷な自然や、戦争に暴力といった直接的な脅威にさらされている者からすれば、いっそ羨ましいとさえ言えるような平和な悩みです。

そして、本作にはその「直接的な脅威にさらされている者」が登場します。

偽りの制服に身を包み、非合法の運び屋稼業をおこなうニャアン。軍警察から公然と暴力を振るわれ、運び屋の雇い主からも冷たくあしらわれる彼女にとって、コロニーとはいったい何なのでしょうか。

内側でことあるごとに虐げられるとしても、外に追い出されれば死ぬしかないのが宇宙空間です。そんな立場にとって、コロニーとは押し込められた檻であると同時に、その隙間から零れ落ちることのないよう必死に握りしめる最後のセーフティーネットなのかもしれません。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』感想・考察・妄想。『ガンダム』に無知な鶴巻ファンが見たら、めちゃくちゃ楽しかった話_014
▲コロニー6で非合法の運び屋アルバイトに励む難民の少女・ニャアン。コロニーの軍警察にやられたと思しき目元の殴打痕が痛ましい。(画像は【ネタバレ注意】『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)-Beginning-』Promotion Reel – YouTubeより)

戦争によって生じた難民と周辺国の必ずしも良好とはいえない関係性は、現実世界の社会問題とも通底していますし、未だ誰も解決できていません。

そんな未解決領域と向き合い、作品の中で答えを出すのは決して容易なことではないでしょうが、だからこそ本作が「難民という社会問題」へ挑んでいることには大きな意義があると思います。

本作の制作陣が最後までこの問題と格闘し、なにかしらの希望的な答えを出してくれることを願ってやみません。

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編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest
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ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ライター/編集をしています。

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