前作より約5年ぶりとなる映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の公開を記念した舞台挨拶が、1月31日に東京・池袋のグランドシネマサンシャイン 池袋で開催された。
本作は、富野由悠季氏が描き下ろした小説を元に、村瀬修功監督によって映像化された作品である。
2021年に公開された第1章の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』では、緻密かつハードな戦闘描写に加えて登場人物たちの繊細な会話劇や心理描写が描かれていたことでも話題になったが、今作ではそれがさらに深度を増した作品に仕上げられている。
今回の舞台挨拶では、主人公のハサウェイ・ノア役の小野賢章さんと、ギギ・アンダルシア役の上田麗奈さん、ケネス・スレッグ役の諏訪部順一さん、レーン・エイム役の斉藤壮馬さんに加えて、村瀬修功監督と笠井圭介プロデューサーが登壇。作品公開後の感想や収録時の裏話などを語るトークショーが行われた。

なお、今回の舞台挨拶は映画の上映後に行われており、ストーリー部分の核心的なネタバレも多数含まれていた。本稿では、上映後だからこそ明かされた貴重なエピソードの数々をレポートする。未鑑賞の方はくれぐれもご注意いただきたい。
※映画のネタバレが含まれた内容です※
2か月前なら土下座しなければいけない状況だった
1月30日の公開後、さっそく日本全国で大きな反響を呼んでいる本作だが、村瀬監督は「2か月前ならば、この場で土下座しなければいけない状況だった」と振り返る。制作の過酷さを物語る発言だが、多くのスタッフの協力を得て無事に完成を迎えられたことに、深い安堵の表情を浮かべていた。
ちなみに、自身は家にこもっていたため、反響についてはまったく分からなかったそうだが、この日の会場でファンに温かく迎えられたことで、ようやく実感が湧いてきた様子で喜びを語っていた。
一方、小野さんは最速上映が始まるといタイミングから、ずっとエゴサーチをしていたことを明かす。そこで多数見かけたのが「ハサウェイは病院に行った方がいい」という率直すぎる感想。これには小野さんも苦笑いしつつ、懸念していたSNSでのネタバレに関しては、思いのほか見当たらず、ファンのさりげない気配りに感謝を口にしていた。
上田さんも同じようにエゴサーチをしていたそうだが、本作を観てギギが好きになったという人と、逆にすごく嫌いになったという両極端な感想に分かれているという。しかし、そういった賛否が分かれるコメントにも、ギギという女の子の魅力が詰まっていると感じたと語った。
諏訪部さんが第1章でケネスを演じたときは、まだ40代だったという。現在は50代になっているが、次作では60代になってしまわないかと緊張していると語り、会場を笑いに包んだ。だが、そうやって制作が長期化するのも、常にクオリティを最優先で考えた結果であり、ぜひ次回作も期待して待ってほしいと、早くも抱負を述べていた。
それとは別に諏訪部さんは、先週ナレーションの収録現場に行ったときに、ミキサーなどスタッフたちから「楽しみにしています。もうムビチケ買ってあるんで観に行きます」といった声を多数かけられたという。
このエピソードを受け、小野さんも自身のプライベートでの出来事を披露。歯医者で先生から同じように声をかけられて嬉しかったものの、当の小野さんは口を開けて治療中だったため、まともに返答できずにもどかしい思いをしたというユーモアあふれる裏話を明かした。
斉藤さんも、ガンダム好きな大学時代からの親友がおり、「いつやるんや!」とずっと言われ続けてきたという。その後、今作の告知が出た後も、その親友からは「ガンダムモドキ、楽しみにしてますよ(笑)」と上から目線で言われたそうだ。親しい仲だからこその容赦ないエールに、斉藤さんも苦笑いを浮かべていた。
笠井プロデューサーによると、今回の劇中には第3部に向けて、伏線となるような小ネタが随所に仕込んであるという。何度も観ておくことで、より次回作が楽しめるような作りになっていると述べていた。
村瀬監督によると本作における画面構成は、劇場公開を意識して仕上げられているという。第1章と比較すると引き気味のカメラワークが多く、ワイドさを活かした絵作りになっているのだ。
この話を受けた笠井プロデューサーは、今作のクライマックスの戦闘シーンはカメラワークが激しいことから、酔ってしまう人がいないか心配だったという。それほどまでにダイナミックな映像に出来上がったと手応えを述べていた。
サウンド面では、前作に続き、音響監督の笠松広司氏がドルビーアトモス環境でベストな体験を得られるように時間をかけてセッティングしているという。諏訪部さんが関係者試写会で観た劇場はドルビーアトモスだったが、音の臨場感が突出しており、より作品に没入できたと感想を述べていた。
アムロとの戦闘シーンはホラーに近かった!?
ここから先は、各登壇者によるネタバレ全開のトークに突入していった。
小野さんは本作で特に衝撃を受けたシーンとして、ハサウェイがアムロと戦うシーンを挙げた。このとき劇中では、ハサウェイがレーン・エイム越しに幻のようなアムロと戦うという、少し不思議なシーンであったため、収録段階ではイメージがしにくかったそうだ。だが、完成した映像を観たときは思わず息が止まったほど興奮したそうだ。
このシーンの収録は、先に録音されているアムロの声に重ねる形で行われたという。また、これまで繊細に積み上げてきた演技の末に、ハサウェイのトラウマが決定的に露見した瞬間でもあった。だが冷静に考えてみると、このときのハサウェイは戦闘中に独り言を言いながら、存在しないはずのキャラクターと戦っているようにも見える。その様子をずっと聞かされていたレーンの視点に立つと、ある意味ホラーに近いシーンだったのではと分析し、会場の笑いを誘っていた。
またこのシーンでは、シャアの印象的なセリフも盛り込まれていたため、そうしたところにもガンダムシリーズの歴史の深さや、物語の繋がりを感じたそうだ。
上田さんが演じたギギは、そのときに誰と話しているかで、演じている自分自身の心模様も変化するようなキャラクターだったことを明かした。ケネスと話しているときのギギはクールだったが、ハサウェイと一言話すだけで、ケネスからは得られなかった熱量のようなものが感じられたそうだ。
その話題を隣で聞いていたケネス役の諏訪部さんは、「(いまの話を聞いて)今日はいい酒が飲めないかもしれない!」と悔しさをにじませるようなジョークを飛ばし、会場を笑いに包んでいた。
その諏訪部さんが印象に残っているシーンとして挙げたのは、ギギと他キャラであるメイス・フラゥワーの2人による舌戦が繰り広げられた場面だ。本作では言葉の応酬の中で物語が展開していくシーンが多く、その辺りが役者としてすごく楽しかったという。なかでも、この2人の対決シーンでは、ケネスが席を外していたところで繰り広げられており、もしその場にいたら「うわー……」と気圧されてしまうところだったのではないかと振り返った。
ちなみにこのシーンでは、ギギがメイスに対して聞き取りにくいセリフを話す場面が出てくる。上田さんによると、このシーンでは数パターンのセリフを収録しており、単に声を潜めるだけでなく、リップ音だけで演技するアプローチなども試していたそうだ。村瀬監督のこだわりが、上田さんのストイックな演技を引き出していたことが伺えるエピソードだ。
レーンを演じた斉藤さんは、このキャラクターに対する個人的な解釈として、第1章でハサウェイと戦ったことで、敵でありながらどこか彼のことを意識している部分があるのではないかと考えているという。劇中のシーンで放たれる「マフティが観光地にいるわけないだろう!」というセリフについても、これはレーンが、ハサウェイのことを無意識のうちに理解していることの現れではないかと語っていた。
また、以前から上田さんのファンでもある斉藤さんは、レーンとギギのやりとりがほとんど無かったのを残念がっていたご様子。今回の上田さんの演技では、ギギがホンコンアパートでお風呂に入りながら「ハサウェイ・ノア」と何度か呟く場面が、とくに素晴らしかったと絶賛していた。
最後に村瀬監督は、「5年も待たせてしまったが、その歳月は、劇中の映像に刻まれているのではないかと思います。非常に情報量が詰まった作品なので、何度も観て楽しんでいただけるとありがたいです」と語り、本イベントを締めくくった。
最後に、今作のエンディング主題歌であるガンズ・アンド・ローゼズの代表曲「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」を使用した、最新映像が本日公開された。こちらの映像は村瀬監督が自ら構成を手掛けており、本編のシーンもふんだんに使われているので、合わせてチェックしてほしい。











