皆さんは「デスルーラ」というテクニックをご存じだろうか。
RPGのダンジョンなどで、進むことも退くこともできない、いわゆる「詰み」状態になったときに、わざと死ぬことで窮地を脱出するテクニックである。あまり正攻法ではないが、ペナルティや進行状況が巻き戻るのを覚悟で、「デスルーラ」を使ったことがある人は多いのではないだろうか。
では、進むことも退くこともできないうえに、さらに死んでも脱出できない状況に陥ったら、どうだろうか。
文字通り、打つ手なしの絶望。ゲーマーなら想像するだけで背筋が凍る、真の「詰み状態」だ。
『勇者パーティはぜんめつしました。』は、ダンジョンの中でまさしく「詰み状態」に陥った勇者パーティの物語である。
ただし主人公は、勇者ではなく、一介の兵士。プレイヤーの使命は、危険なダンジョンから、勇者たちを救い出すことだ。
今回は、そんな一風変わった本作の体験版をプレイする機会をもらったので、その様子をお届けしよう。
ポップな見た目にダークな内容
ポップでかわいらしい絵柄とキャラが目に嬉しいが、内容はハードでダークに仕上がっている。最後までかなりどんよりした空気でプレイすることになった。
ストーリーはいきなり勇者パーティ救助隊が壊滅状態に陥ったところから始まる。
性別の違うふたりから主人公を選ぶのだが、その直後に選ばなかった方は、目の前でモンスターに惨殺される。主人公は救助隊の最後の生き残りになってしまう。初っ端から絶望すぎる。
個性豊かに、ろくでもないことになっている勇者たち。ここからひとり選ぶの……?
ひとり残された主人公は、ようやく勇者パーティの元へたどり着く。しかし彼ら4人は、文字通り“ぜんめつ”の詰み状態に陥っていた。しかも、全員ようすがおかしい。
4人はもうパーティとしては機能不全。主人公は彼らの中からひとりだけを選んで、共にダンジョン脱出を目指すことになる。
そう、連れて行けるのはひとりだけ。プレイヤーは誰を連れていくかを最初に選択することになる。
せっかくなので、勇者パーティのイカれたメンバーを紹介しよう。
魔法使いは、比較的まともに話すことのできる人物。最初のナビ役的なことをしてくれる。
しかしぜんめつの折に魔力を失ってしまい、ただの人になっている。そのせいか厭世的な雰囲気が漂い、またそれとは無関係にノンデリで口が悪い。ただ見た目はかわいい。
勇者は、頼れる万能戦士。しかしどういうわけか「はい」と「いいえ」しか話せなくなっている。なんで?
一応話は通じているようだが、コケやら虫やらを食べさせようとしたり、いきなりツボを割り始めたりと奇行が目立つ。勇者の行動としては身に覚えがあるような気もするが、正気の沙汰ではない。ただ見た目はかわいい。
戦士は、タフで豪快な強者……だったのだが、体を球体関節の少女人形に変えられてしまっている。
強靭な肉体は見る影もなく、表情も死んでいるが、本人は脱出後のアイドルデビューを考えるなどいたってポジティブだ。一方で、そのあまりに場違いなノーテンキさには、ついていけないところもある。ただ見た目はかわいい。
僧侶は、信仰の徒だ。しかし得体の知れない信仰に目覚めてしまっており、目も完全にイッている。
布教活動にも熱心で、話しているだけで正気度が削られていく。この絶望的状況を喜んでいる節もあり、ダントツの異常者だ。ただビジュだけは爆発している。

この4人からパートナーをひとり選ぶのである。4人とも見た目にかなりの癖(へき)を感じるが、誰を選んだところで、戦闘能力か、コミュニケーションか、あるいはその両方に不安が残る。
というかよく見ると異常すぎて主人公が勝手に僧侶を選択肢から弾いてくれている。既に僧侶の異常性は骨身に染みているので、もはやありがたい仕様である。
結局、一番まともに状況を説明してくれた魔法使いに決定。やはりここは、正気のコミュニケーションを重視したい。あとカワイイ。
本人は嫌がったが、残念ながらこちらは消去法で選んでいるので、無理やりにでもついてきてもらうことにした。
ダンジョン脱出はパートナーと力を合わせて……合わせてる?
システムはローグライトでデッキ構築型なRPGである。戦闘やイベントを繰り返して、武器などの消耗品を集めてやりくりしつつ、ダンジョン脱出を目指す。
途中で死亡するとアイテムを失ってその階層をやり直しになるが、経験値と稼いだ呪い(名前が不吉すぎるが、通貨的なもの)を次に生かすことができる。

安定した進行のカギは、ルート取りと武器集めを計画的にすることだ。マップでは、限られた攻撃・回復リソースの中で、経験値をとるか安全をとるかを見極め、敵の武器を奪い取るコマンドを確実に決めていくのが肝要となる。
特に、強力な敵に出会ったときに、チャンスを逃さず強力な武器をしっかり奪い取ることは、その後の戦況を大きく左右する。

これらを学びながらダンジョンを進む。しかし、戦闘を繰り返していて気が付くのが……

魔法使いは本当に置物だということである。

魔力が無いので魔法の杖も使えず、さりとて耐久力も無く、後衛からひよわな物理攻撃を繰り出す魔法使い。
戦闘ではほとんど役に立ってくれず、中ボス戦で無残に敗北してしまった。死亡すると集めた呪いを清算して、やり直しとなる。
するとなにやらイベントが……
ゲゲッ!お前は!

謎のイベントで僧侶がパートナーとなってやり直しとなった。こいつ、なんなんだ!
僧侶キャラクターの魅力にメロメロに。完全に狂ってるのに!
不安すぎるリベンジがスタート。
しかしこの僧侶、まったく正気を失ってしまっているが、戦闘能力にはいささかの翳りもない。

戦闘では攻撃に回復となんでもこなし、魔法使いとは比べ物にならないくらいの活躍を見せてくれた。なんて頼りになるんだ。
それどころか僧侶は、ネガティブなことばかり言う魔法使いと違い、会話イベントでも気配りや優しさに満ちている。まさにダンジョンに癒しをもたらしてくれる存在だ。もちろん狂ってはいるのだが……
いやメロすぎる!
まずいよ!好きになっちゃうよ!
ダメだって!コイツやばい奴なのに!!
こうしてメロすぎ僧侶に導かれて無事最初のボスを撃破し、体験版は終了した。主人公が徐々に正気を失っていたような気もするが、気のせいだと思いたい。
続きが気になるストーリー
本作では、進行するたびに会話パートが挟まり、選んだ(選ばされた)パートナーの人となりが見えてくる。
同時に、勇者パーティを“ぜんめつ”させた者たちや、この世界に何が起きているのかも明らかになっていく。例えば最初のボスは、勇者パーティの誰かと、なにやら因縁があったようだ。
驚いたのは、その文章パターンの量。
別のパートナーでもやり直してみたところ、同じボス相手のイベントでも、まったく違う真実が語られた。
プレイヤーの選択で分岐する、このテキストのボリューム感は、かなり好感触だ。キャラクターとのさらなる関係進展や、謎多きストーリーの続きは、製品版にも期待したい。
もちろん、話の大部分は読んでると暗い気持ちになってくる。なにせ、みんなどこかしらおかしいのだ。こうも絶望的だと、神に祈りたくもなるというものである。
だからダメだって!!
なお、本作はSteam Nextフェスにも参加中。
期間限定で体験版が配信されているので、興味のある方はストアページからダウンロードして遊んでみてほしい。















