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日常系“人が死なない”ミステリゲーム『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』が可愛くて、楽しくて、かなりイイ。退屈な日常を色づかせる謎に、シニカルな女子高生が挑む

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「ミステリ」というジャンルについて、どのようなイメージを持っていますか?

「絶海の孤島」や「奇妙な形の洋館」、「わらべ唄に見立てた連続殺人」なんかを想起する方も少なくないでしょうが、そういったいわゆる“本格”と呼ばれるような作品だけでなく、日常のなかに潜む小さな謎を解き明かしていく、“人の死なない”作品も数多く内包しているのが、このミステリというジャンルです。

今回ご紹介するゲーム『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』もまた、そんな“人の死なない”ミステリの一作。

柔らかな青を基調とし、“楚々”とでも言うべき可愛らしさが特徴的なアートワークで目を惹く本作は、5月22日から24日にかけて、京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催中の日本最大級のインディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」にてプレイアブル出展されています。

寄宿学校を舞台に、シニカルな学生が日常の謎を解いていく……実に楽し気な設定に誘われ、本作を試遊してみたのですが、学生たちのテンション高めなやりとりや、小さな違和感から謎を紐解く糸口を見つけていく展開など、まさに筆者の期待するものがバッチリ体験できる、非常に心地よい作品となっていました。

というわけで、今回は韓国からやってきた日常系ミステリゲーム『502号室』の魅力をプレイレポートの形でお伝えしていこうと思います。

シニカル女子高生による日常系“人が死なない”ミステリゲーム『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』_001

取材・文/うきゅう
編集/kawasaki

「ルームメイトが消えた!」退屈な日常を揺るがす謎にシニカル女子高生が挑む

本作は、韓国の高校を舞台として、学内に起きる日常的な謎を解き明かしていくミステリゲームとなっています。

Steamストアページによると、本作の主人公「シン・ヘウン」は“冷めた現実主義者”であり、かつては「自分の人生に特別なことが起きるんじゃないか」という期待を持っていたものの、その期待を失い、明日も明後日も、似たような日々が続くのだろうという諦観に包まれてしまっているとか。

そんなシニカルなヘウンが、学校のなかで囁かれる不思議な噂や出来事を鼻で笑い、「世界の退屈さ(オカルトやファンタジーではないこと)」を証明すべく、あえて謎を解いていく……というのが、本作のユニークなストーリーラインとなっています。

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(画像は『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』Steamストアページより)

いやー、いいですね。かつてなにかを期待し、今は現実を知ったつもりになっている頭でっかちの少女。
なにがあったのかは現時点では不明ですが、自分が特別でないことに拗ねてしまっているのでしょうか。それでいて、やることが「謎を解いて世界の退屈さを証明する」というのが実に可愛らしい。

この時点でキャラへの好感度がめちゃくちゃ高くなりますし、物語の先で彼女の諦観が打ち崩されるのかどうか、気になって仕方ありません。実に秀逸なキャラクター設計と言えるでしょう。

すでに筆者の心を掴んでしまったヘウンですが、彼女に負けず劣らず、本作で描かれる謎は可愛く、ささやかなものであるようです。

体験版においてヘウンが遭遇する謎は、入学初日の寮で発生した「ルームメイトの消失」。字面を見ると物騒ですが、実際にはただ「部屋に先に入ったはずのルームメイトがいなかった」という実に日常的な謎です。

開発者の方にお聞きしたところ、本作は「人の死なないミステリ」であるとのことで、トレイラー映像においても「可愛らしい謎を解き明かせ!」と表記されている通り、本作の謎は全体的にこういった緩いもので構成されていそうです。

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(画像はRoom502_Trailer_JP│YouTubeより)

ですが、事件の規模が大きかろうが小さかろうが、人が死のうが死ぬまいが、「謎を提示し、解き明かす」ことさえしっかり描かれていれば何の問題もなく楽しめてしまうのが、ミステリジャンルのよいところです。

そして、本作はその「解き明かす」流れが実に視覚的に、また小気味よく構築されているのです。

仮説→推理→結論が視覚化された秀逸なシステム。謎解きの“気持ちいいところ”を分かりやすく楽しむ

本作の「謎を解き明かす」流れは、以下のように視覚化されます。

シニカル女子高生による日常系“人が死なない”ミステリゲーム『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』_004

一番外周にならぶ小さな丸は、“手がかり”と呼ばれるものです。現場に残されていた証拠や、目撃者の証言などがここに該当します。

それらの証拠を組み合わせ、なんらかの「仮説」を組み立てていくのが、本作の基本的なゲームプレイになります。画像の例で言えば、「ダヒ(いなくなったルームメイト)のテーブルに置かれていたはがき」という証拠から得られた、

①「ダヒの代わりに私が目に焼き付けた」という文言
②ビッグベン(イギリス・ロンドンのランドマーク的な時計台)の写真

以上ふたつの手がかりをもとに、「ダヒはロンドンに行ったことがないのではないか?」という“仮説”が立てられます。

仮説は、そのままではただの空想ですが、時に仮説が矛盾を浮き彫りにすることもありますし、あるいは仮説を立証するような証拠が見つかることもあります。そうなると仮説は単なる空想の枠を超え、「論理的な推量」であるところの“推理”として発展していきます。

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ここでは、「ロンドンへ行った形跡のあるトランク」と「持ち主はロンドンへ行ったことがない」というふたつの情報が組み合わされ、「ルームメイトは誰かとトランクを交換したのではないか?」という推理が生まれました。

これ! これなんですよ、謎解きの気持ちいい部分っていうのは!

仮説という名の思い付きに証拠でもって裏付けを取り、新たな情報へと昇華させる。横たわる事実へ思考の火花を飛ばし、暗がりに潜む真実を照らし出す。

証拠と思考。物質と精神。まるで異なる二種類の情報を組み合わせて真相を解き明かしていくというのが、謎解きの一番楽しい要素なんです。(個人的な感想です)

本作はそこをバッチリ体験させてくれます。また、その流れをうまく視覚化することにも成功しているんですね。

ここまでのゲーム画面を見ていただければ、画面左で円周を形作っている手がかりや仮説たちが、推理の進展とともに段々と内周へと近づいていっているのが分かると思います。これは、推理がどれほど「真実に近づいているか」を示しています。

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真実に近づいている……言い換えれば「謎解きの進捗具合」をいかにプレイヤーへ伝えるのか? というのはあらゆる謎解きゲームが取り組み続ける難問でもあります。

謎解きはその性質上、答えのわからない状態でプレイが進行しますから、進捗を的確に伝えなければ、プレイヤーはたやすく「今なにがわかっていて、なにがわからないのか」、「次になにをするべきなのか」を見失ってしまうのです。

本作の場合は、「芯を喰う」という言葉がそのまま当てはまるような視覚化を通じて、プレイヤーへと見事に進捗を提示して見せているので、「もうすぐ答えが出るぞ」という安心感とともに謎へ臨むことができます。これは、非常に効果的な手法ではないでしょうか。

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さあ、今回の謎も大詰めです。いよいよ中央の大きな空洞が埋まり、起きた事件の“結論”が導き出される時が来ました。はたして、今回の事件──ルームメイトはなぜ、どうやって、どこへ、消えたのか? ──の結論がいかなるものとなるのか?

その答えはぜひ、ご自身の目で確かめていただければと思います。

そんな「謎解きの気持ちいい所」をガッツリ味わうことのできる『502号室 : 寄宿学校青春ミステリー』も遊べてしまうBitSummit PUNCHは5月22日から5月24日まで、京都市勧業館・みやこめっせにて開催中です。

また開発者の方いわく、本作は2026年の11月頃に体験版をネット上で公開する予定とのことですので、今回イベントに足を運べないという方も、ぜひ続報を楽しみにお待ちください。

編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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