『ドンキーコング バナンザ』(Nintendo Switch 2)は地形から配置物、果ては敵や味方といったキャラクターのすべてを壊せることが売りの3Dアクションゲームだ。
実際に遊んでみると、行く手をさえぎるものを片っ端から壊したくなる。
なぜそうも“壊したくなる”のか?
それは本作が、破壊を単発で終わらせず次の破壊へとつなげる“連鎖の仕組み”を、ゲームを構成するあらゆる要素に組み込んで作られているからだ。

CEDEC2026のセッション「破壊の連鎖でつながるゲームサイクル」では、『ドンキーコング バナンザ』のディレクターである任天堂株式会社の高橋和也氏と田中航氏の2人が、そんな“破壊の連鎖”をいかにして突き詰めていったかについて語られた。
本稿では、主に田中氏が語ったアクションゲームを構成する「5つの要素」から考えられた連鎖の仕組みに焦点を当ててレポートする。
『ドンキーコング バナンザ』では、ドンキーコングの大きな両腕が生み出す力強いアクションと、ボクセル技術による地形などの目に見えるものに応答性がある特徴を掛け合わせ、「すべてを破壊できる3Dアクションゲーム」というコンセプトが確立された。
その根幹たる“破壊”を突き詰めた結果、「破壊することで報酬が生まれ、そのまま次の破壊につながっていく」という“連鎖”が遊びの核心になることが判明する。
特に連鎖を生む「仕組み」作りが重要と考え、田中氏はアクションゲームを構成する「プレイヤーキャラクター」「カメラ」「配置物」「コレクションアイテム」「変身」という5つの要素すべてに連鎖の仕掛けを組み込んだ。
まずプレイヤーキャラクターことドンキーコングは、コントローラのボタン配置にマッチした直感的なパンチアクションとそれによる破壊を実装。そして、地形からはぎ取った破片を活用した遠近両用の攻撃、2段ジャンプ、スケボーに見立てた高速移動という追加アクションを用意した。
いずれも破片が壊れるとできなくなるため、破片をはぎ取るための破壊につながるサイクルが確立されている。
カメラに関しては、従来型の3Dアクションゲームのカメラでは、地中を掘り進む際に焦点が中央に寄りすぎて視界が狭まる問題を解決するため「地中カメラ」を導入。
カメラを地中にめり込ませて周囲を見えるようにし、遠くにある空洞の存在をぼかし表現を活用して浮かばせ、プレイヤーを次の破壊対象へと自然に導かせる設計にした。また、視認性確保のため、ドンキーコングを覆い隠してしまう地形には透過処理を施す工夫も凝らしている。
この地中カメラから新たな遊びが生まれるという連鎖も起きた。それがフィールドマップ全体が地中に埋まった「投棄場の階層」とのことだ。

配置物に関しては岩や建造物に限らず、「クロコイド」などの敵キャラクターから「ワレルヤの民」(ワレルヤ)といった味方キャラクターたちもボクセル素材で構成。これにより、素材の硬さ・性質による破壊の難易度や、活用法にバリエーションを持たせる工夫を凝らした。
たとえばワレルヤはパンチで破壊しても、破片をはぎ取ろうが必ず再生される特徴がある。その応用から「氷の身体のワレルヤを活用した溶岩地形を乗り越える場面を設ける」といった具合だ。
逆に塩のような再生機構のない地形に対しては、限りある塩を適切に使って難局を乗り越えるリソース管理の遊びを設けた。そんな素材ごとの遊びが破壊のきっかけを次々と作り出すようになっている。
コレクションアイテムについては、ドンキーコングのアクションのひとつ「ハンドスラップ」に地中に埋まったアイテムの存在を可視化するソナーの効果を持たせた。これにより、プレイヤーに気づきと地形の次なる破壊を自発的に誘う役割を担わせている。
残る変身こと「バナンザ変身」は、破壊を通して手に入る「ゴールド」のアイテムで専用ゲージを満タンにすると使えるようになる決まりと、変身後に通常では壊せない対象を破壊可能になる仕組み、制限時間を持たせて連鎖のサイクルを確立させた。
当初、変身中の制約は制限時間に限定していたが、それのみでは破壊が目的を持たず、散漫になってしまう課題があったため、変身中はソナー効果を常時発動するようにし、隠されたコレクションアイテムを可視化することで目的のある破壊へと導く改良が加えられた。
以上5つの要素に連鎖の仕組みを持たせたことにより、『ドンキーコング バナンザ』の色んなものを壊していきたくなる面白さと気持ちよさが生まれていることが語られた。
セッションでは、これら5つの要素と根幹たるコンセプトを前提に、階層ごとのフィールドマップをどのように設計し、遊びを組み立てたのかについて、高橋氏によって語られている。
そこでも肝になったのは“連鎖”の仕組みで、いかにしてプレイヤーに退屈することがないよう、破壊を持続的に楽しんでもらうかといった精緻な工夫の数々を確認できる。
“持続可能な破壊”とも称せるカラクリには、本作に限らず、アクションゲームにおいて、最初から最後までプレイヤーの心をつかみ、離さないようにするのがいかに重要であるかについても学べる。
『ドンキーコング バナンザ』に限らず、アクションゲーム好きにも様々な知見を与えてくれる内容になっているので、興味があればタイムシフト視聴でチェックいただきたい。

























