『ポケットモンスター X・Y』(以下、 X・Y)や『Pokémon LEGENDS Z-A』(以下、Z-A)の舞台となっている「ミアレシティ」。『X・Y』最大の都市として登場したこの街は、『Z-A』でメガシンカのような変貌をとげた。
果たして開発チームは、前作で描かれた大自然とは異なる「建物ばかりの都市空間」を、どのように表現したのであろうか?
国内最大級のゲームカンファレンス「CEDEC2026」のセッション「ミアレシティがメガシンカ!? 『Pokémon LEGENDS Z-A』の描画技術」では株式会社ゲームフリークの前澤圭一氏、スパダフィーナ・アルフレド氏、赤木達也氏の3名により『Z-A』の描画技術について語られた。
本稿ではそのレポートをお届けする。
都市を効率的に描画する
スパダフィーナ氏は、「同じデザインの建物や物がたくさん立ち並び、さらに物陰に隠れて見えない部分も多い」ことがミアレシティの特徴であると語る。
効率的な描画には、同じ形の3Dモデルを一括で大量表示する「InstancedDraw」と画面に映らないオブジェクトの描画を省き最適化する「カリング」が重要だとした。
『Z-A』は、「InstancedDraw」をもっとも活用したタイトルという。
本作では2種類のカリングが用いられ、視野外をカリングするフラスタムカリングの実演と、モデルにより処理方法が異なると紹介された。
遮蔽物をカリングするオクルージョンカリングでは、「DeapthPrePass」や「Hierarchical-Z カリング」という描画最適化技術を採用し、モデルによって異なる処理をしたという。
また、動くキャラクターは、余裕のある描画範囲を設定したとのこと。
『Z-A』では、ライトにもカリングを導入している。効率アップのため無駄な計算を省く仕組みを作ったと、スパダフィーナ氏は語った。
都市の景観を表現するために
時間帯や天候で変わる空は、天球モデルと空シェーダーを使って表現したという。
より自然な雲のための工夫をし、夕焼けの改善のため大気散乱の演算としてMie散乱を導入したとのこと。
フローマップテクスチャで水面を表現し、水面の反射には、負荷の大きさから、多く用いられる反射の計算ソフト、SSR(Screen Space Reflections)ではなく、SSPR(Screen Space Planar Reflections)を採用したという。
SSPRは低負荷だが、水面の高さを固定する必要があり、テクスチャを3つに絞って実装したという。
『Z-A』では遠くの影の表現も求められた。影の演算ソフトCSMは遠くなると負荷が跳ね上がるため、遠景には「ベイク影」を用いた。
4方向の太陽の影を計算した結果をあらかじめ保存(ベイク)し、時間帯ごとに混ぜて影を表現した。夜は光源が太陽から月へ変化するため、夜用のテクスチャを別個作成したとのこと。
また、ミアレシティの半分近くを覆ってしまうプリズムタワーの影は除外したそうだ。
そして、ベイク影によって発生した不自然な点は緩和措置をし、対処の難しい問題は許容したとのこと。
『Z-A』は街灯にもこだわり、灯りによって表現方法を変え、スポットライトが円錐モデルだと気づかせない様々な処理をしたと、スパダフィーナ氏は語った。
キャラクターの描画と「ポケリグ」
今作のキャラはディファードとフォワードを用いて時間帯ごとに表現し、メガシンカのエフェクトは、ポケモンのサイズごとに設定したとスパダフィーナ氏は語った。
続いて「ポケリグ」の取り組みが紹介された。ポケモンの最大の課題は「物量」であり、この解決策が「ポケリグ」だという。
「ポケリグ」には、リグ(骨組み)を知らない人でも使えるシステムや、効率的にデータ再利用が可能なモーションリターゲットがあるという。
ポケリグは段階的に導入され、本作では人物への対応が大きなポイントであり、大量のデータを扱うため、可能な限り共通フローを用いる方針を掲げたとのこと。
人物の作成には服と顔それぞれのリグを統合し、モーションはポケモンのリターゲットの派生で対応したと赤木氏は語った。過去作からのリターゲットも共通フローで対応することでスムーズに処理ができたという。
赤木氏は、全ポケモンのポケリグ化が目標と語った。
Nintendo Switch2への対応
『Z-A』は、Nintendo Switch版とNintendo Switch2版が発売されたが、開発は新ハード発表前から進んでいた。このときの課題として、「情報開示者が限られている」「差別化」の二点を前澤氏は挙げた。
作業は施錠した会議室で進められ、情報は開示者のみのSlackに集約していたが、「こういう事態に備えた管理者の整備が大切だ」と前澤氏は知見を述べた。
毎日進むNintendo Switch版の開発に少数で対応するための、Nintendo Switch版を自動的にNintendo Switch2版に変換する環境が紹介された。
高解像度マスターデータの実装処理を変えることで、2つのバージョンを差別化し、60fpsでも大きな問題は起きなかったため、発生したバグを消す形で開発したと前澤氏は語った。
本講演では、ミアレシティを中心に、ポケモン世界の構築方法が紹介された。
ミアレシティがどのようにメガシンカしたのか気になる方は、『Z-A』をプレイしてみてはいかがだろうか。



















