グレッグミンスターの前で立ち尽くしている。
胸に込み上げたこの感情をどう処理していいのかわからず、ただボーっと街の外から景観を眺めていた。
というのも、『幻想水滸伝 STAR LEAP』(以下『幻水SP』)最序盤の目的地となるグレッグミンスターは、『幻想水滸伝I』の主人公が生まれ育った街なのだ。
30周年を迎えたシリーズ最新作にて、原初の地をふたたび訪れることになるとは……。長らく音信不通だった小学校時代の親友と、ひょんなことからバッタリ再会したような心地だ。
ノスタルジー、エモさ、感無量。それらがごっちゃになって「本当に、“あの”グレッグミンスターなんだよな……!?」と呻きつつ、動けなくなっていたのだった。『幻水』ファンにとって、この街はそうさせるくらい「聖地」だと思っている。
意を決して街に入る。幾度も聴いたオリエンタルなBGMに迎えられ、当時よりグっと情報量が増えた町並みの中を、民が活き活きと動き回っている。最序盤からノスタルジーが刺激されまくる。
たまらねえな、最高かよっ……!!!

順を追うと、『幻想水滸伝I』は1995年にコナミデジタルエンタテインメントからリリースされたプレイステーション用のRPGだ。その名の通り『水滸伝』をモチーフに、108人もの仲間を集められることからも話題を博した。しかし、ナンバリングは2006年の『V』から長らく途絶えていた。
こうした背景あっての完全新作が本作『幻水SP』だ。『V』からは20年も経っている。にも関わらず、ドットを基調とした描き方に始まり、キャラそれぞれの立ち位置、そしてバトルのレイアウトまで、驚くほど『I』『II』との共通項が多すぎて、あまりの懐かしさにむせ返った。
さらに、本作の始まりの舞台は『幻想水滸伝I』の4年前。先々で若き日の懐かしい面々とも出会えるなど、何かにつけて30年前の記憶を撃ち抜いてきたのだった。
本稿では、そんな『幻水SP』を先行プレイした所感をお届けする。
なお、すでに本作をやる気マンマンで初見の驚きを損ないたくないなら、すぐさまプレイすることを強くオススメしたい。
正直、あまりに良すぎたので、読むより先にプレイしてほしいというのが本音です。
※本記事には『幻想水滸伝 STAR LEAP』序盤のネタバレが含まれます。
文/世界のザキヤマ
主人公の周りがまるっと『I』『II』の関係性すぎた
本作が『幻想水滸伝』の中でも、シリーズ初期の『I』『II』を彷彿とさせるには明確な理由がいくつもある。
というのも、主人公やそれを取り巻く関係性に、重なる点があまりに多いのだ。
まず主人公は、棒を武器とする中華風の少年。これだけで「あっ、『幻水』の主人公だ!」とわかる出で立ちをしている。
そんな主人公の父・ホウは、「タイジュの里」の里長。対して『I』の主人公の父は、赤月帝国の将軍テオ・マクドールだった。国と里で規模こそまるで違うが、「父が偉大である」というバックボーンは共通している。

主人公に武術の師匠もいるところも共通している。本作ではシャプールというモノクルを付けたイケメンが師匠だ。ちなみに主人公の家の執事も兼ねている。

幼なじみがいることも『I』『II』と同じ。『I』にはテッドが、『II』にはジョウイとナナミがいた。本作の幼なじみはシーリーンという少女で、口調こそ荒いが根はとびきり優しい。

お世話役もばっちりいる。『I』ではグレミオの立ち位置だったが、本作でその役どころを担うのは使用人のヒスイだ。やや引っ込み思案な性格で、主人公の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれる。なお、主人公への呼称は「若様」だ。

さらなる重要ポイントとして、「主人公の近くにやたらとすごい力を持つ人物がいる」ことも共通している。『I』では主人公の幼なじみであるテッドが「27の真の紋章」【※】のひとつである「生と死を司る紋章(ソウルイーター)」を所持していた。
※27の真の紋章:
『幻想水滸伝』シリーズにおいて世界の根源とされている特別な「紋章」。なお、通常の「紋章」は市井でも一般的に使われている。
そして初見では実家の使用人としか思ってなかったヒスイだが、序盤からとんでもない力を発現させて呆然とした。これが「27の真の紋章」なのか、それとも異なる力なのか……ぜひストーリーを進めて確かめてみてほしい。
偉い父、師匠、幼なじみ、世話役、間近にあるすさまじい力。この時点で『I』『II』を意識するなというほうがムリだ。より踏み込むならば、これは30年前の時点で完成していた『幻水』の「型」なんじゃないかとすら思う。この座組の時点でおもしろさが約束されたようなものだ。
なお、関係値は本当に『I』『II』に寄せていると感じたが、キャラクターそれぞれはまた異なる魅力を放っている。
個人的に新キャラの中では、幼なじみのシーリーンがとくにお気に入りになった。初見時は「こ、こんな可愛い幼なじみがいるなんて許されるのか……? 恋愛関係に発展してしまうのか……?」とワナワナしていたものの、主人公に対してはあくまで親友といった立ち位置で一線を引いており、謎の安心感に包まれた。

……と思いきや、主人公の選択肢に他の女性が絡んでくるとそこはかとなく焦ったりもする。しかしあくまでうろたえるに留まっていて、恋愛感情があるのかないのか、そもそも自覚しているのかどうかがわからずムズムズさせられる。

気分は完全に「同窓会」。オデッサを筆頭に歴代キャラたちとまた会える
主人公まわりの関係性だけでも『I』『II』を彷彿とさせてくるが、本作にはより直接的にノスタルジーを刺激してくる要素がある。
歴代キャラたちが「これでもか!」とばかりに登場するのだ。
まず前提として、本作がスタートする時間軸は「太陽暦453年」。そして『I』の終戦は「太陽暦457年」なので、ちょうど4年前の時期にあたる。『I』の前日譚 と言い換えてもいい。
ここで冒頭のグレッグミンスターに話を戻そう。ここは赤月帝国の首都で、『I』ではこの国と事を構えることになるのだが、時系列的に情勢はまだ落ち着いている。
ただ内部の腐敗は進んでいる模様で、街に入ろうとすると通行料をめぐるトラブルに巻き込まれた。

とはいえお金を支払わないと街に入れない……と弱っていたところ、馬車から颯爽と降りた女性が割り入って助けてくれることに。なんていい人なんだ……!
しかし、彼女の名を見て固まった。
オデッサ……? オデッサ・シルバーバーグじゃないか!!
彼女こそ、のちに腐敗した帝国の打倒を掲げる「解放軍」を率いることになる人物。凜とした雰囲気は『I』のオデッサに通じるものがあるが、この時点での彼女は解放軍とは無縁の令嬢なのだ。
そのうえで彼女がどういった結末を迎えるのか、『I』にふれた人なら知っているわけで……再会できたうれしさと同時に、胸の奥がギュッと締め付けられた。
物語を進めるとオデッサの結婚式を目撃することになる。相手の名はアキレス。オデッサの前任者である解放軍のリーダーだ。この結婚式をきっかけに、オデッサが解放軍リーダーとなる詳細が明かされている。
しかし、結婚式は祝福ではなく「見せしめ」だった。衆人環視のなか、帝国にとって厄介な解放軍のリーダーであるアキレスの処刑が始まろうとする。

しかしそこへ颯爽と助けに入ってくるのは、『I』からおなじみのハンフリー・ミンツ! 胸アツすぎるんですけど……!!

ここからさらに、『I』『II』の重要人物であるフリック、ビクトールも合流するし、プレイヤー目線だと気分は完全に同窓会だ。
とはいえ物語としては悲痛で、命を落としたアキレスの代わりにオデッサが解放軍のリーダーとして立ち上がるシーンが描かれる。
「解放軍のオデッサ・シルバーバーグ」が生まれた瞬間だ。グレッグミンスターでの門で出会った際も心が乱れたが、この時点だとかなりグチャグチャになった。白状すると本当に感極まって涙ぐんでしまい、この画面から先にしばらく進めなかった。
懐かしいメンツはまだまだいる。たとえば、“あの”ビッキーは序盤から登場する。
ビッキーはテレポート能力を持つ魔法少女で、歴代のパーティの移動を全面的に支えてくれた存在だ。より正確に言えば、「テレポートもできるし時間移動もする」ので、時代が異なる『I』〜『V』のナンバリング作品すべてに登場した。
本作ではいきなりテレポート手段を確保できることになるのだが、「まあ、ビッキーだし」と思ってしまうくらいには、いつ登場しても不思議ではない。また会えてうれしいぞ!
ちなみに、ゲオルグ・プライムはチュートリアルの時点から顔出しする。『I』では名前だけ登場、『II』では終盤に力を貸してくれた帝国の元・将軍だ。帝国を離れ放浪していた頃の彼が、なんと主人公の父・ホウと旧知の仲として現れる。

そして変化球として、チャイナドレス3姉妹の乱凛天(らんりんてん)を紹介したい。
「だれだ……?」となるかもしれないが、元は『II』でトラン共和国へ向かう途中「ランラン」「リンリン」「テンテン」の名で出て来たノーマルエネミーだ。
そんな彼女たちがやけに濃いキャラ付けをされたうえで、敵として立ちはだかる。なお、ストーリーで何回か戦うことになるが、真っ当に強い。しかも専用のバトルBGMまで流れるという優遇っぷり。もしや公式に熱烈なファンがいたのか……? と思ってしまうくらいの大出世だが、かわいいからよし!
『I』『II』を踏襲した懐かしの6人パーティバトル。だけど中身は大幅に進化していた
バトルの見た目は、『I』『II』を強く思い起こさせる斜め見下ろし視点の6人パーティだ。実家のような安心感すらある。
しかし、バトルシステムは大幅に刷新されている。さまざまな要素が追加されたことは後述するが、もっとも変わったのは駆け引きの楽しさだと思う。
というのも、『I』『II』のバトルの難度はそこまで高くなかった。なので「同じくらいの難度だろうな」と軽い気持ちで挑んだら、ボスにアッサリ負けてしまう状況もあった。
いっぽうで通常戦闘はオートモードでサクっとこなせるうえ、エンカウントもシンボル式となったことでストレスフリー。
このバランスが絶妙で、ボス戦に重みが出たことで、ストーリーをさらに楽しめるようになったとも感じられる。

バトルの要となるのが、敵・味方ごとに設定された弱点と耐性だ。弱点属性で耐久値を削り切ると、ダウンして一定時間動けなくさせられる。
強敵相手にはこの隙を作れるかどうかが勝負を分け、よほどの戦力差がないかぎりゴリ押しは通用しない。ありていに言うと、かなりヒリつく状況が多い。
また、行動順はパラメータに準じたタイムライン制に。4人以上の味方が続けて並ぶと発生する連携攻撃が非常に強力で、強敵相手にはこれを狙っていくことになる。

そして味方キャラにも属性があるため、不利属性に対しては思った以上にダメージが出せない。結果として、自ずといろいろなキャラを使うことになる。
あくまで個人的にだが、『I』『II』は固定メンツで進めがちだった。いろいろ試したいと思いつつも、「でもまあ、このメンツが扱いやすいしなあ……」となるジレンマもあった。
しかし本作だと弱点を突くことがとにかく重要。これまでバトルで使ったことのないキャラを引っ張り出すことで、あらためて魅力を発見できたりもする。
なお、イベントバトルを除き編成は自由だが、属性有利で固める「おまかせ編成」ができるのもうれしい。

そしてキャラごとに用意された「奥義」も見逃せない。強力かつ演出が豪華なことはもちろんだが、中にはファンがニヤリとするものも用意されていた。
たとえばシーリーンの奥義である「里の幼馴染攻撃」。主人公と背中合わせでぐるぐると回転しながら敵に突っ込むこの技は、『II』で主人公とジョウイが放った協力攻撃とほぼ同じモーションだ。幼なじみ同士という関係性も踏襲していてエモがすぎる。
やり過ぎ感のある奥義も楽しい。本作のビクトールには「熊殺し」の異名で呼ばれており、これ自体は「あのビクトールならそれくらいやってのけるか」と違和感はない。
しかし、それを踏まえたうえで奥義はかなりトンチキ。どこからか現れた熊と取っ組み合いをした後、ジャイアントスイングで熊を敵に叩き付ける。どういうこと!?

各キャラの奥義はこだわって作り込まれていることが一目瞭然なものばかり。これも多くのキャラを使いたい欲求につながるという所感だった。
満を持しての『幻想水滸伝』の完全新作、声を大にして「最高だった」と伝えたい。
メインストーリーはワクワクしっぱなしだったし、新キャラもことごとく魅力的だったし、それぞれの掛け合いも小気味いい。おまけにバトルの手触りもいい。
シリーズ伝統の「本拠地」はさらに賑やかとなり、「みんなで拠点を育てている」という一体感もたまらない。施設にはそれぞれミニゲームが紐付いてその数も膨大だ。本拠地をウロウロしてミニゲームを遊んでいるだけで時間が溶ける。
ちなみに1章が終わってオープニングムービーが流れるまで、筆者は12時間ほどかかった。ボリュームの凄まじさも含め、総じて制作陣の本気がビシビシと伝わってくるクオリティだった。
そんな本作は運営型のタイトルでもある。108星の仲間はストーリーを進めれば加入するが、それとはべつにガチャからも迎え入れることができる。
なお、ガチャには『I』主人公がいきなりラインナップされていた。 ぼっちゃん、こんなところで何やってるんですか!!

こうなると、歴代キャラがいつ実装されるのかも楽しみなところ。シリーズファンには、推しや思い出深いキャラがいるに違いない。
自分語りとなるが、筆者は少年時代、シエラ・ミケーネという女吸血鬼に情緒を狂わされた。

シエラはね……ビジュはもちろんですけどキャラも本当にいいんですよ。800年以上を生きているゆえの「重い」バックグラウンドもよかったし外伝作品『幻想水滸外伝 Vol.1』でのナッシュとの関係性も本当に好きだった。そして少女のルックスに反して口調が古風なんですけど、30年くらい前って「〜じゃ」と話す見た目若い女性キャラが稀少で、このギャップに本当に「癖(へき)」を狂わされました。これにくわえて「27の真の紋章」のひとつ「月の紋章」持ちで「吸血鬼の始祖」という盛りに盛った強キャラ感も最高。実際に強かったので『II』ではスタメンに入れていました。試遊時点でのガチャのラインナップには見当たりませんでしたが実装される日を心待ちにしています。
……こうした希望は人それぞれと思うが、『幻水』でも屈指の人気を誇るルカ・ブライトをはじめ、歴代の顔ぶれを思えば期待はいくらでも膨らむ。魅力的なキャラが本当に多いことも『幻水』シリーズの特徴と言えるだろう。
そんな本作『幻水SP』は、とりわけ『I』『II』が好きだった人こそ「これを待っていたんだよ!!」と思わず口にするはず。
何よりも、RPGとしての手触りがバツグンによかった。シリーズ未見の人は、本作を機にぜひ『幻想水滸伝』の魅力を知ってほしいと強く思う。
©Konami Digital Entertainment






















