企画を持ったまま独立──閉鎖空間の『ダンガンロンパ』から、町を描いた『レインコード』へ
高田氏:
その後にTooKyo Gamesという会社を作って、『超探偵事件簿 レインコード』というゲームをスパイク・チュンソフトのタイトルとして作ったんですよね。

小高氏:
『レインコード』は、もう会社を辞める前から企画はしていたんです。スパイク・チュンソフト在籍中に「『ダンガンロンパ』の次のIPを作りたい」と考えて『レインコード』の企画を通して、通った直後に「すみません、外部からやらせてください」という図々しいお願いをしたんです。
高田氏:
企画を持ったまま独立して、もといた会社に「お金ください」だなんて、普通の会社じゃ認めてもらえないですよね。
スパイク・チュンソフトの社長さんも、クリエイターが大好きですよね。兄貴肌の方だから「小高が頑張るんだったら、お金出すよ」という感じなのかな、と僕は勝手に思っていました。
小高氏:
『レインコード』は『ダンガンロンパ』が今までずっと閉鎖空間で物語が進んでいたから、逆にもっと広い町や世界といった「文化」をクリエイトしたいと思いました。だから、制作においては架空の世界と町を作るところからスタートしました。

じつは『レインコード』は、ビジュアルから入ったところが多いんです。今も一緒に仕事をしている「しまどりる」さんというイラストレーターに、「こういう建物が浮かんでいて……」といったお願いをして、作品の世界を一緒に作っていきましたね。
その頃はまだ独立したばかりで事務所がなかったときもあったので、カラオケボックスで打ち合わせして、絵を描いてみたいなことをしていました。
そして、高田さんが『レインコード』で、いちばん最初に作られた曲は──。
高田氏:
『探偵の唄』という曲ですね。
高田氏:
この曲は、最初にステージを歩いている映像を見せてもらって、その歩くテンポに合わせて作ったんです。あと、雨の音が常に流れるということだったので、雨の帯域の周波数が入っても成り立つ曲として作りました。
小高氏:
『レインコード』では「環境音を活かすのか、それともBGMを活かすのか」という議論が、開発の最初のほうにあったんです。でも僕は、BGMを活かしたいと思いました。
曲を流さずに環境音を使う手法は、オープンワールドのゲームなど、最近のハイエンドなゲームだとよくありますよね。
だけど、僕はデザインやキャラクター、セリフではもちろん、音楽も雰囲気の醸成に使って「これがなんとも言えない『レインコード』の世界なんですよ」ということを伝えたかったんです。だから、雨の音よりはBGMで作品の世界を届けたかったという思いがありましたね。
『レインコード』は『ダンガンロンパ』ではできなかった独自の世界を作り上げることができたので、僕としては満足していますし、大好きなゲームです。
あと、『ダンガンロンパ』で出せなかった「おじさんキャラクター」が出せたのが嬉しかったです。だから、ヤコウ【※】にはすごく思い入れがあるんですよね。
※ヤコウ……『超探偵事件簿 レインコード』に登場する、ヤコウ・フーリオ。探偵事務所を率いる中年の男性キャラクター。

難産だったテーマ曲と、町と文化を作り込むという大仕事
小高氏:
『レインコード』もまた、個人的に思い入れのある曲があるんですよね。
高田氏:
『RAIN CODE』というテーマ曲なんですけど、これは難産でしたね。
『ダンガンロンパ』の次ということで「コーラスを入れよう」といった、いろいろと策を練って作ったんです。日本的な「四度和声」のコードを入れたりもしています。
小高氏:
この曲に関しては、当時「テーマ曲どうしよう」ということを、会うたびに僕に質問されてましたよね。
高田氏:
どうすれば探偵感が出るか、イメージが全然わからなかったんです。
小高氏:
『私立探偵 濱マイク』という、永瀬正敏さん主演の映画があるんです。そのテーマ曲のドラムラインが、めちゃめちゃ探偵っぽかったので、高田さんにそのテーマ曲を聞いてもらったんですよね。すると高田さんが「掴めた気がする」と言っていました。
高田氏:
切り口さえ見つかれば一気に出るんですが、そこまでが苦しかったですね。1ヵ月くらい苦しんだ気がします。
小高氏:
探偵ものとかサスペンスもののドラマって、名曲がすごく多いんです。『踊る大捜査線』や『古畑任三郎』『名探偵コナン』もそうですね。聞いただけで作品のイメージが伝わる曲が、たくさんあるんですよ。
『レインコード』をやるからには、同じことをやらないといけないという意識がありましたから、ハードルは高かったですよね。
『レインコード』の場合、探偵ものだけじゃなくて、ファンタジー要素や、先ほど話した『レインコード』独自の世界みたいなところもあったので、上に乗っかってくるものがとても多かったんです。それを音楽で表現するというのは大変なことだったんじゃないかと思います。

高田氏:
そうですね。『レインコード』は、最近僕がやった仕事の中では、いちばん「『レインコード』という世界」を作り込めたと思っています。
小高氏:
シナリオ面では、仕様を考えながらシナリオを作っていたので、「謎迷宮【※】ってどうするんだ」みたいなことを延々と考えていた気がします。
※謎迷宮……『レインコード』で、事件の謎が迷宮として具現化した空間。ここで推理を行う。
それに、「ひとつの独自の文化を作る」ということは、そこに住む人たちの価値観を作るということなんです。雨が降り続く町に住んでいる人の価値観は、どんなものなのか。太陽を求めているのか、雨と共存しようとしているのか。どういう趣味嗜好があるのか、何が楽しみなのか。
その全部に向き合っていたので、考えることが山ほどありました。だから開発においては、そういった「文化を作る」ところにすごく時間がかかりましたね。逆に『ダンガンロンパ』の場合、外の世界をまったく描かないことで、その工程を排除しているんです。
自分の好きなものを作りたい。パブリッシャーとの付き合い方とTooKyo Gamesの在り方
高田氏:
いつも小高さんは、キャラクターとストーリーのどちらから作るんですか。
小高氏:
全部同時ですね。書き始めてみて、全部変えちゃうこともあります。
昨今のゲームプロジェクトって、提出物がマイルストーンで「このくらいにキャラクターを全部固めてください」と区切られているんです。でも、期間内に固まらないことも多いです。
僕はもう、どうせ期間中には固まらないけど、パブリッシャーが提示してきた期限に対して一度「はい」と言ってしまいます。だから、後のほうになって「やっぱり変えます」と言ったほうがいいんです。
「この期間では固まらないです」と正直に言うと、みんなが不安になってしまいますから。
最近も、ずっと書いていたキャラクターの性別を急に変えたことがありました。ずっと「しっくりこないな」と思っていたんです。「これ、何がしっくりこないんだろうな」と思っていたら、性別だったんですね。
高田氏:
グラフィック担当の方は大変ですね(笑)。

小高氏:
『レインコード』をはじめ『ワールズエンドクラブ』や『デスカムトゥルー』などを作り、僕らがTooKyo Gamesを設立してから関わった作品は、もう10本ぐらいになります。ペースはだいぶ速いですよね。同時進行で作っているから、この速いペースになっていると思います。
高田氏:
それもありますし、TooKyo Gamesを立ち上げたときに「開発は持たない」というコンセプトがありましたよね。我々はシナリオやグラフィック、音楽だけを作って、開発はアウトソーシングする、という形で始めたんです。
開発は別個にあるので、並行していろいろなラインを動かすことができるんです。だから、このペースが実現できたんですね。
小高氏:
開発を自社で持ってしまうと、会社の規模が大きくなってしまいますよね。そうすると、仕事を連続して入れていかないと、ランニングコストで会社が潰れてしまうんです。僕がいちばん重要視しているのは「自由」ですから、自分が良しとしない企画を受けたくないという思いがありました。
僕も、インディーのゲームも好きだし、プレイもしています。でも、自分が作るとなると『レインコード』のようにどんどん膨らんでいってしまったり『ダンガンロンパ』のように、謎のミニゲームを作中に入れてしまったりするんです。

インディーでゲームを開発するとなると、それとは逆にどんどん研ぎ澄まさなくちゃいけないんです。そちらのほうがコストも低いし、売れる可能性もあります。だけど、僕が作りたいものとは少し違うんです。
