ニーア、ペルソナ等の人気ゲーム開発者が激論! 国内ゲーム産業を支える40代クリエイターの苦悩とは【SIE外山圭一郎×アトラス橋野桂×スクエニ藤澤仁×ヨコオタロウ】

ニーア、ペルソナ等の人気ゲーム開発者が激論! 国内ゲーム産業を支える40代クリエイターの苦悩とは【SIE外山圭一郎×アトラス橋野桂×スクエニ藤澤仁×ヨコオタロウ】

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40代のクリエイターの“もやもや感”

――さて……ここまで皆さんの過去と現在を聞いてきたので、最後に「未来」を聞きたいと思うんです。そこで一つ思うのが、やはりこの世代は「迷い」や「悩み」が尽きない世代なのかな……ということです。
 第一世代のように、黎明期のゲーム業界のカオスで突き抜けられたわけでもなく、一方で現役として働いてもいて、という“もやもや感”を皆さんの今日の話から感じます。

藤澤氏:
 まあ、働かなきゃいけないですしね(笑)。

ヨコオ氏:
 「呪い」のように、その気持ちがあります。

外山氏:
 子供の手が離れるまでは頑張るしかないかな……とかね(笑)。

――なんだかリアルな40代男性の飲み会トークみたいになってますが……。

ヨコオ氏:
 もちろん、「こんなものにクリエイティブが縛られていいのか」と思うけど、食わなきゃいけないのも間違いない。だから、迷い続けます。

橋野氏:
 ただ、僕が若い頃に修業していた時代と、今ではもう業界の規模が変わってしまって、そこにいる人間の気質が変わってしまったのはあります。当時の僕たちは、もうメチャクチャな人間たちだらけの中で、必死で勉強したのだけど、今はもう「メチャクチャ」なんてやれる時代じゃない。
 そんな時代にプロデューサーになった自分の気持ちの行き場が、よく分からないところはあるんです。

ヨコオ氏:
 いや……橋野さんが、それを言うのはちょっと。
 この期に及んで、まだ新しいスタジオ立ち上げて、新しいファンタジーRPGを作るとか言ってるわけですよね(笑)。「他のJRPGを殺す気か! 周りを殺して何が楽しいの!」みたいな気持ちですよ。僕にとっては、もうグローリーロードを進んでらっしゃるとしか思えない。

外山氏:
 どこまで行っても貪欲な人間が、この世代に多いですね。まだ足りない、まだ足りない、という。

「スマホゲームは実感が湧かない」(ヨコオ氏)

 ――逆に若手のクリエイターについては、皆さんどう思っていますか? 先ほど良くも悪くも「賢い」という印象をお持ちなのかな……と思いましたが。

藤澤氏:
 個人の人格の問題ではなく、環境に左右されてる部分が大きいと思いますね。
 今のゲーム業界では大きい会社だと、なかなか若手に機会が与えられない。でも、本当は自分で成功したり失敗したりすることで、自分の中にある反骨心のような感情が芽生えてくる。すると、ついこの間まで大人しい性格だと思っていた人間が、いつの間にか成功していたりするんですよ。

ヨコオ氏:
 さっき、橋野さんが「昔のようなアウトローな人間は、ソーシャルゲームの方に行っている」という話をされましたけど、結局、彼らは入りやすい場所を見つけて、やれることをやっちゃった人たちなんでしょう。だって、現代ではその気になれば、アプリも3DCGも家で作れて、ネットで世界中に発信できる。表現したい欲望を抱えた人が、わざわざ巨大な会社の縦社会でやる意義は薄れているのは間違いない。
 急いで世に出たい人には、もうコンシューマーゲームの会社は足かせなんじゃないですか?

 僕が当時ナムコに入った理由だって、会社にSGI【※1】があって3Dのモデリング【※2】とレンダリング【※3】が出来たからですから。家では出来ないことが会社では出来るのが嬉しくて、そこにメリットを感じていたんです。でも、別にそういう時代では、もうないですし。

※1 SGI
ここでは米シリコングラフィックス社(Silicon Graphics International Corp.)によって開発・販売されていた業務用コンピューターのことを指す。同社は画像処理に長けた高スペックな商品を提供しており、特に1990年代には隆盛を極めた。その技術はゲーム業界だけでなく、映画業界にも多大な恩恵をもたらした。

※2 モデリング
コンピュータの画面上で、立体的な物体をかたどること。

※3 レンダリング
数値データをコンピュータ上で演算することにより、画像を生成し画面に表示させること。

外山氏:
 正直なところ、本当にお客さんが「新しいものがほしい」と言ってくれていたら、とっくに僕たちは淘汰されていたんですよ。

 ただ、「スマホゲームで十分でしょ」という人が増えた中で、それでもコンシューマーゲームならではの何かを求める人というのは、基本的には昔からのファンの方が多くて。彼らは若い頃に好んだゲームを、成長してもなお欲しがり続けてくれていて……コンシューマーゲームはある種伝統芸能のような世界になってきた。すると、「じゃあ、僕らが作り続けるのがいいんだろうね」という話になるんです。

――ううむ……なるほど。なんか話が凄い展開になってきました(笑)。逆にスマホゲームなんかは、皆さんはどういう風に興味をお持ちですか?

橋野氏:
 そもそもスマホアプリに若い人が多いのは、開発のしやすさがあるからです。
 でも、日本には漫画というジャンルがある。そこでは何十年も前から、毎週10数ページ描くだけのコストで、色々なメディアの原作になるヒット作が生まれていて、若い人は登場し続けています。アトラスのような技術力で勝負していない会社に20年もいる僕には、ゲームが時代に合わせて高度化しなきゃいけないとは思えません。「それで面白ければ、別にいいじゃん」ですね。

ヨコオ氏:
 スマホゲームについては……正直なところ、KPIの数字を聞いて把握したりは出来ますが、根本的には「課金欲」がないので、よくわかりません。僕がスマホの話をするのは「童貞がセックスの話をする」ようなものです。知識だけあって、実感がない。下ネタで申し訳ないですが……。
 実際、アイマスにハマっている知り合いが、クレカの上限に引っかかって止められて「カード止めんな!」と激高していたんです。「もっと払いたいんだぞ!」と。そのお祭りに熱中していられるのは面白いとは思うんですけど、やはり自分の欲望としては、わからないんです。

橋野氏:
 そこは、経験値稼ぎがリアルマネーになったということですよ。で、ゲームの中のゴールドのキャップが、クレカのキャップになったんです(笑)。その辺りは、若いディレクターの人は、しっかり感覚を持っていると思います。

藤澤氏:
 そう思います。
 この中でスマホゲームを手がけているのは、僕だけだと思います。スマホをやってみようと思ったのは、サラリーマン的な理由もあるのですが、それ以上に若いクリエイターも含めてスマホ市場が賑わっている中で、それを見ないふりして自分の得意技の内側に閉じこもっているのはどうなんだろうかと疑問に思ったからなんですよ。

 それで「基本無料」のゲームをやってみたのですが……やっぱり、お金を払う人の気持ちを理解するのは僕らの世代には難しい。「手探り」で色々とやってみるしかなかった。だけど、若い世代のディレクターは、「お金を払う人は、こういう気持ちですよ」という「ど真ん中」をちゃんと捉えている。もう育ってきた環境からして違うなと思いますね。

ヨコオ氏:
 新しい世代に生まれてきた、そういうグルーヴや感性を僕は捉えられてないんです。そしてきっと、これからもどんどん若い人はそういう作品を出してくるはずだし、僕は出てきてほしいなと楽しみにしています。

 だから、僕はもう「うどん屋」をやりたいですね。こんな自分が老害になって、若い人の邪魔をしたくないんですよ。引退しなければいけない。

橋野氏:
 それ、昔から言ってますよね(笑)。

ヨコオ氏:
 それか、キャバクラの経営をしたい。いや、自分では全然行かないんですけど、キャバクラには何か惹かれるものがある……。

外山氏:
 単に疲れてるだけじゃないですか(笑)?

橋野氏:
 45歳前後のクリエイターの座談会で、「次にうどん屋をやる」という話をするのには、さすがに反発したくなるな(笑)。

一同:
 (笑)

ヨコオ氏:
 仮にやるとしても、何歳まで作るかという話ですよ。60歳までだとしても、あと15年! 1本3年だとして……5本も作るのかよ。しんどい!

藤澤氏:
 まあでも実際、全力でやって準備期間を入れて、せいぜい僕たちに残されているのは、3~4本でしょうね。

若手クリエイターにチャンスはあるか

――ただ、一つ思うのは2Dから3Dへの切り替えの瞬間で旧世代の人はついて来れなかったけど、果たしてこの世代にそんな「隙」があるのだろうか……ということです。
 若い人の立場で言えば、逆に今のコンシューマーで「この世代に一朝一夕に追いつけないよ……」という感じはあるはずだと思うんです。

ヨコオ氏:
 いや、それは出来るはずです。
 それこそJRPGを一本、本当に任せられたら、賢いからきっと作れちゃうはずです。スマホが学生時代からあった世代の「感性」が生み出すRPGなんて、個人的にも見てみたいです。
 実際、僕が今仕事をしていたプラチナさんでは、20代後半~30代前半のメンバーで仕事をしています。彼らのモデリングスキルは凄まじくて、少人数ですごい量の仕上げをしてきます。『ホライゾン』みたいなゲームを僕が作れるかは怪しいけど、彼らに本気で予算をあげたら作れるんじゃないかとさえ思います。

 かつて僕らが3D空間の把握を、上の世代には出来ない形でやったように、彼らも僕らの世代とは断絶した能力を持っていると思います。僕も、PS3くらいまでなら追えたんですけどね。今回の開発で、ついに「ああ、ここに俺は到達できない」――そう思いました。

外山氏:
 でも、一つ良いですか。僕の周辺は、みんな各々の専門分野では、もうとんでもなく能力が高いのですが、僕らが若い頃のように「こういうゲームを作りたい!」という話をする人を見かけないんです。特に昔は沢山いた、シナリオや世界観をやりたがる人が、本当にいない。

ヨコオ氏:
 プラチナさんでも、そういう昔のプランナーみたいに、世界観やストーリーに絡んでくる人はあまりいなかったですね。遠慮しているのかもしれませんが、結果的にサブクエストの細かい台詞まで僕が結構書くことになってしまって(笑)。
 でも、あの会社の得意なアクションのシステムでは、もうぐいぐい絡んでくる人はいっぱいいましたよ。田浦さん【※】なんて、もう「アクションパートは俺が全部やります」って感じでした。僕は彼には、表に出てほしいんです。能力もないのに口ばっかりの人はもう結構だけど、実力のある人は出るべきだと思います。
 そういう人が注目を浴びて、新しい何かを作れる時代になってほしいんですよ。

※田浦さん
田浦貴久。プラチナゲームズ所属のゲームデザイナー。ヨコオ氏と共に、『NieR:Automata』の開発に携わる。

シリーズを継ぐ若手は「好きにすればいい」

ヨコオ氏:
 そこで言うと、僕は橋野さんに伺っておきたいことがあるんです。
 「ペルソナ」を新しい人に任せても、絶対に影響力は残りませんか……「ゼルダ」における宮本さんのように。そのとき、若手はどう橋野さんの幻影と戦っていけば良いのだろう、と思うんです。

橋野氏:
 全然そこは心配していない。いや、心配するのも傲慢です。

 そりゃ10年以上ディレクターをやったので、どんなに才能がある若い人相手でも、僕の10年分の経験との差はありますよ。そこは比較しても仕方ない。でも、そもそも僕も「ペルソナ」は『3』からで、一から作ったわけじゃない。しかも、そのときに先輩たちは、「ペルソナはこういうものだ」なんてことは、何も言ってこなかった。だから、僕も同じようにしようと思っています。

ヨコオ氏:
『ペルソナ3』は、明らかにそれまでの流れを変革したゲームでしたよね。

※ペルソナ3……2006年に発売された、「ペルソナ」シリーズのナンバリング第3作目。橋野氏がディレクターを務める。前作へのリスペクトを残しつつも、独特の不気味さは薄まり、グラフィックやサウンドも含めた雰囲気の一新に成功した。
(画像はAmazonより)

橋野氏:
 そりゃ僕が、どうやって作っていいかわからなかったからですよ。

ヨコオ氏:
 でも、そこに橋野さんのスタイルがあったわけでしょう。たとえ今になって振り返って、そうだっただけであっても、若い人は橋野さんテイストに飲まれちゃうんじゃないかという気はしますけど、どうでしょう?

橋野氏:
 長いシリーズ作品って、数作おきに変化があるじゃないですか。良かれ悪しかれもあると思いますが、そういう試行錯誤があってこそ続いているわけです。

(画像はペルソナ5公式サイトより)

 だから、次の人たちは橋野のやってたことが気に入らなければ、どんどん変えちゃえばいい。もちろん、好きな部分があるなら、それは勝手に続ければいいですし。きっと彼らは、どんどん「ペルソナ」を変えてくれるはずだと信じています。

藤澤氏:
 たくさん過去作があるんだし、「最新作がどうあるべきか、あなたが考えなさい」でいいと思うんですよね。
 機会を与えるってそういうことで、任せたら口を挟まず「あなたが決めなさい」しか言わない。幻影と戦うのも「自分で消化しなさい」で。それでいいんじゃないですかね。

外山氏:
 僕も、そうしてもらった感じでしたね。でも、ヨコオさんこそ「ニーア」シリーズを引き継ぐのは、難しくないですか(笑)?

藤澤氏:
 そっちは、僕も無理だと思います(笑)。

ヨコオ氏:
 いや、そんなことないんじゃ……そうなのかな。
 うーん、でも二作もやったのは良くないですね。まあ、誰も受け継いでくれないと思いますけど……。

外山氏:
 絶対にヨコオさん、引き継がせた「ニーア」についてツイートするでしょ。「プレイしました」って。いやあ、絶対に辛いだろうなあ。やりたくない(笑)。

ヨコオ氏:
 そういうヒールを求められるのは、やぶさかではないですけどね。
 ただ、別にそんなに儲かってるシリーズじゃないですよ。それに、「ニーア」はそもそも著作権法的にも僕のものじゃないです。僕がぶーぶー文句を言ったって、スクエニさんは自由に作れますから。実際には、凄く個人のクリエイターの顔を立てて下さる会社ですけどね。

藤澤氏:
 まあ、個人に権利が帰属してる状況って今あんまないですよね。

外山氏:
 『エルシャダイ』【※】ぐらいじゃないですか?(笑)

※エルシャダイ……2011年に海外資本のイグニッション・エンターテイメントから発売されたアクションゲーム。「そんな装備で大丈夫か?」などのセリフで一躍話題となったが、発売元が家庭用ゲーム機から撤退。それに伴い、IPにまつわる権利が譲渡されるなかで、2013年に『エルシャダイ』はディレクター兼キャラクターデザイナーだった竹安佐和記氏の個人会社crimに譲渡された。竹安氏は以降も『エルシャダイ』の世界を広げた作品の発表や展示などを続けている。
(画像はAmazonより)

一同:
 (笑)

40代クリエイターの今後の展望

――色々とお話を聞かせていただいて、そろそろ時間なのですが、どう締めたものかと……(苦笑)。

藤澤氏:
 ちょうどみなさん新作が出たばかりですし、この流れで……具体的なことは言えないにしても、今の市場の中で何をしていきたいかを話すのが、〆には良いんじゃないでしょうか。

ヨコオ氏:
 じゃあ……僕はクライアントさんが言うものを作ってお金を頂く作業を、これからも引き続きやっていけたらな、と。

外山氏:
 記事に書きづらいことを言わないの(笑)。

藤澤氏:
 ということで僕から話しますと、先ほど話したように僕は今スマホゲームの開発運営をしています。そのことは、やって良かったと思っていますが、スマホもすっかり爛熟期に入っていて新規のお客さんを集めるのは本当に難しい。スマホはほぼ全てが運営タイトルなので、ゲームをやりたいマインドを持つ人は、既にほとんど囲い込まれたあとでした。そのことを、いま日々思い知らされています。

 一方で自分がずっと関わってきたコンシューマーゲームが、ここに来て元気です。『ゼルダ』みたいなゲームも出てきて……正直なところ、次のゲームについて今は少し悩んでいます(笑)。

――やっぱり、悩む世代なんですね(笑)。

藤澤氏:
 だから、今の僕には何かを提案することは出来ません。でもこれが、率直な今の答えです。他の皆さんがどう思っているかを、聞いてみたいですね。

外山氏:
 僕は『GRAVITY DAZE 2』で、「やり切った」んです。この仕事を選んだからには、こういう作品を死んでも生み出さなくちゃ……と思ったのが、実はあの作品でした。
 それが完結したお陰で、「これをやるまでは死ねない」みたいな気分は、現在下がっています。でも、自由といえば自由ですよ。子供も大きくなって、教育費にも終わりが見えてきたし(笑)。でも次のテーマは、何でしょうね。沢山の選択肢があるご時世で、どこに自分がフォーカスすべきかを楽しく見ている時期だと思います。 

――楽しく悩むという感じでしょうか。その中で橋野さんは、一歩決めて前に歩み始めた人ですね。

橋野氏:
 そうですね……ちょっと中二病っぽい話をすると、「ペルソナ」を作ると日本社会の未来とか、生きづらさや悩みや不安を考えがちなんです。でも、そういう時でもアイディア一つで状況が打開できると知れば、そのダイナミズムに人は希望を覚えるんだと思います。そして、僕はそこに参加していたい人間です。
 そこで自分なりにアイディアを詰め込める場所として捻りだしたのが、ファンタジーのプロジェクトです。

――橋野さんは完成した瞬間より、歩いてる最中に喜びを感じる人なんでしょうね。

橋野氏:
 ……いやあ、どうでしょう。とりあえず色々と考えさせられちゃったんで、今晩は悩むと思います(笑)。

 ただ、僕は入社前に『女神転生』というゲームをプレイして、「ああ、幸せだな」と思ったのが原体験なんですよ。だから、ある意味では偽善的で傲慢なのかもしれないですが、ユーザーをプレイする前より幸せにしたいんです。
 でも外山さんは、絶対にそんなこと言わないですね。堀井さんにも、こういう説教臭さはない。良からぬ欲望なんじゃないかと悩んだりはします。

ヨコオ氏:
 僕はユーザーさんが必ずしも幸せにならなくてもいいかな、と思っています。それこそ、最悪のダメな彼女と付き合った人生でも、すべてが最高の彼女と付き合った人生にはない“苦み”が得られるじゃないですか。あるいは、ラーメン屋で食べていて、いきなり下からゴキブリが出てきたら「うわっ!」と驚くだろうけど、そのラーメン屋は一生忘れられなくなる。
 僕は、そういうものにも「人生の意味」はあるはずだと思っています。

藤澤氏:
 橋野さんの仰ることは分かるんです。
 自分なりに言葉を換えると、僕は「未来の出来事をプレイヤーみんなで当てる」という新しいゲーム体験をスマホで提示して、1年間以上頑張ってみました。自分のやりたかったことはかなり達成できたし、事業性も保てています。でも一方で、「こんなアイディア面白いでしょ?」と提案すること自体、なんだか傲慢だなとも考えるようになっていて。

橋野氏:
 傲慢! なるほど……。

藤澤氏:
 お客さんに対して、「これは新しい体験でしょ?」と言うだけでは、幸せに貢献したとは言えないと思うんです。やっぱり、そこで「こういう風にあなたの人生を豊かにしました」と具体的に言えていないと、何かが足りない。それがまだ十分に出来ていないんじゃないかと、日々もやもやと悩んでいます(笑)。

「うどん屋を舐めるな!」

――悩みの混迷は深まるばかりですが、最後にヨコオさん、どうでしょうか。

ヨコオ氏:
 ただただ、居場所のなさを感じています。「俺が作りたいモノを作ってやるんだ!」と山に登ったはいいけど、「ここから先、どこに行けばいいんだろう」という不安がある。そこに下から若手が登ってきて「あれ? あれ?」という、行き先のわからない不安感が……。僕みたいな老人がここにいていいのか、という思いばかりがあります。

橋野氏:
 これ、まとまらないですね(笑)。大丈夫ですか。

――いえいえ。僕としては、ゲームクリエイターとして円熟期に入った45歳の世代が、リアルに何を考えているかを伝えたかったので、これでいいんだと思います。

ヨコオ氏:
 まあ、対談を振り返ってみると、今日は“てんでバラバラ”で楽しかったですよ。正直、全然話はまとまってない座談会だと思いますが、そこもこの世代らしいんじゃないでしょうか。何か一つビジョンが見えるわけでもなく、共感があるわけでもなく、バラバラのままという。

 だって、外山さんなんて、僕とゲームジャンルもマーケットも近いのに、考えていることが全然違う。やっぱり次のことを考えてますよ。似たようで全く違うのは分かりました。もう僕なんて、うどん屋をやるくらいしか……。

藤澤氏:
 ちなみに最後に聞きますけど、なんでうどん屋なんですか?

ヨコオ氏:
 ラーメンは既に多様化していて参入が大変ですけど、うどんはまだジャンルとして伸びしろがある気がします。別に、種類も「讃岐うどん」だけじゃないし……。

外山氏:
 あのね、うどんを舐めすぎだよ!
 うどんって、家で作っても奥深いんですよ。小麦粉をこねて、足で踏む過程で全然変わってきて。

橋野氏:
 えっ、家でうどんを踏んでるんですか?

外山氏:
 やりますよ。そんなしょっちゅうじゃないですけど。まあ、餃子の皮を作るようなもんで、たまにやりませんか?

ヨコオ氏:
 「当たり前ですよね」みたいな顔で言わないでください。俺は一度も踏んだことないですよ(笑)!

――外山さんの方が、うどん屋への道は近いことがわかりましたね。しかし外山さん、何でも経験してますね……何者なんですか(笑)。(了)

 日本のゲーム産業を代表する四人のクリエイターの座談会、いかがだったろうか。
 なんだかすっきりしないモヤモヤが残る読後感……であったとすれば、それは取材中の雰囲気そのものかもしれない。現場は和やかな空気で進みつつも、40代に差しかかった自分が抱えるリアルな悩みを、どのクリエイターも吐露していた。

 さて、座談会ではこの世代のゲームクリエイターが、どんな世代であるかが語られた。
 例えば、彼らはゲーム産業を切り拓いた「アーティスト」である第一世代の破天荒ぶりに憧れながら、一方で大規模開発化の進行で「会社員」たることを余儀なくされた世代である。
 同時に、彼らはバブル時代の日本を多感な時期に体験し、豊穣なカルチャー体験を存分に味わいながらも、社会人としてはシュリンクしていく日本市場や、その裏腹に大きく進行したグローバリゼーションの波、あるいは社会のIT化に伴うスマホゲームの台頭に、思いっきり直面するハメになった世代でもある。

 そして筆者は、そんな彼らが悩んでいる課題が、ゲーム業界のみに留まるものだとは決して思わない。
 むしろ、いち早くグローバル市場のゲームボードに乗せられ、あるいはIT化による市場環境の激変に晒され、クリエイターとしても企業の管理職としても苦悩しながらも、ここに来て自分なりの「回答」を提示し始めている彼らの姿――それはゲーム業界で必ずしも働いているわけではない私たちにも、大いに参考になるはずだと思うのだ。
 それこそ、座談会の中でヨコオ氏が分析したような、日本のゲームが上手く入り込んでいる「中間のゾーン」のような不思議なポジションなどは、日本のものづくりが取るべき方向性の一つとして、示唆するものがあるのではないだろうか。

 そして、最後に。
 もし彼らの名前を知らず、この記事で初めて興味を持った読者の方がいれば、ぜひ彼らの、それも新作ゲームを手に取ってもらえればと思う――そこにはリアルな2017年の日本と切り結んだ、彼らのこの時代に向けたビジョンやメッセージが、「ゲーム」という形式で“表現”されているのだから。

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インタビュアー
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。
元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
著者
ライター・編集者。
Twitter:@jamais_vu

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