2月27日の発売が迫る『バイオハザード レクイエム』。先日実施された最新デモ版の体験会では、主人公のひとりで、『バイオハザード2』以降のシリーズ作にも多々登場しているレオン・S・ケネディのパートを楽しむことができた。
その内容は、血みどろの激しい戦闘が展開される緊迫感溢れるもの。もうひとりの主人公、グレース・アッシュクロフトのパートがゾンビに怯えながら脱出の道筋を探す、という静かなホラーを描いていたのとは対照的で、それが独特なカタルシスを生み出す仕上がりになっていた。
実はもともと、本作はレオンありきで考えられたものだったのだが、レオンでは「ホラー」ができない、という理由から生まれたのがグレースという「ビビリ」なキャラクターだったのだという。ビビリのグレースと、歴戦の戦士であるレオンという対照的なふたりのキャラクターは、ゲーム性にも大きく影響しているのだ。
そして、その結果として生まれたのが、異なる2人のキャラクターそれぞれで全く異なる体験を生み出す本作独自のプレイフィールだ。これは、今までのシリーズの流れをひとつにまとめるような作りでもある。
今回電ファミでは、本作のディレクターである中西晃史氏にゲームメディア合同でインタビューの機会をいただいた。ゲームデザインがどのように生まれたのか、久しぶりの登場となるレオンは、最新作でどのように変化しているのか、興味深い情報を伺うことができたインタビューの模様をお届けする。

「新作はレオンで」と決めていた。でも今のレオンで「ホラー」をやるのには無理があった
──今回のデモでは初めてレオンのパートを体験できましたが、サバイバルホラー色の強かったグレースパートに比べてアクション性が強く、その違いに驚きました。どうしてこのような構成になったのでしょうか?
中西晃史氏(以下、中西氏):
もともと本作は、レオンとラクーンシティを使って「『バイオハザード』らしいもの」を作ろう、というテーマから始まったタイトルでした。ですが、いざ開発を進めてみると、レオンを使ってホラーパートを作るのはちょっと無理があるなということに気づいたんです。
今作のレオンは『バイオハザード4』や『バイオハザード6』の出来事を経た、いわばエージェントとして熟達した後のレオンです。そんな彼を主人公として「怖がらせる」ためのゲーム体験を作ろうとすると、「これはレオンじゃないだろう……」という違和感が大きかったんですね。
──その「怖がらせる体験」のためにグレースという新しい主人公が登場することになったのでしょうか?
中西氏:
そうですね。『バイオハザード7』でも、イーサン・ウィンターズという一般人のキャラクターを主人公にしていましたが、きちんと「怖い」体験を作るためには、そこまで戦闘経験がなく、プレイヤーが等身大で共感できるキャラクターである必要があったんです。
同じことをレオンでやろうとすると、だいぶ違う体験になってしまいますからね。
──確かに今のレオンがゾンビに“ビビってる”姿を想像するのは、シリーズファンとしては難しいですね。
中西氏:
そうした背景もあって、レオンにはレオンのキャラクターに求められる体験を用意することになり、激しい戦闘アクションをメインとしたいまの形になりました。「怖がらせる」ための体験は、グレースというキャラクターを生かして作っていくことになったわけです。
例えば、レオンのパートにはいわゆるジャンプスケアのシーンなども入れていません。もちろん、雰囲気の不気味さなどホラー的な要素はあるのですが、レオンの場合は「恐怖」ではなく、脅威に対する「不安と緊張感」を表現することに注力しています。
──体験の根幹から違いを意識されていたんですね。企画としてはどのようにスタートされたのでしょうか?
中西氏:
先ほども少しお話しましたが、ゲーム体験を含めて「『バイオハザード』らしいもの」を作ることをテーマにスタートしています。
僕がディレクターを担当した『バイオハザード7』の時はそんなことは一切気にせず、「とにかく怖かったらなんでもエエねん」という思想で作っていたのですが、今回はそこをしっかり軸に持っていましたね。
──レオンを登場させようと決めたのも、そうした理由からだったのでしょうか?
中西氏:
『バイオハザード7』の主人公だったイーサンの物語は、前作の『バイオハザード ヴィレッジ』をもって完結しました。それで「次の『バイオハザード』は何をやるの?」となった時、「そろそろ『バイオハザード』のメインストリームの流れを描こう」という話になったんです。
それならレオンを登場させたいし、レオンを出すならラクーンシティを題材にするのが良さそうだ……という具合に話を発展させながら、今回の『バイオハザード レクイエム』の制作が始まりました。
2026年のレオンは、殺伐とした怒りや、世の中を諦めたような厭世観に飲まれつつある
──リメイクを除けば、最後にレオンが登場した作品は『バイオハザード6』ですよね。かなり時間も経っているはずで、今作では多少渋みが足されている様子ですが、一方でそこまで昔と変わっていないような印象も受けました。あまり変化させないことを意図していたのでしょうか?
中西氏:
今作では2026年のレオンを描いているので、前回登場した時からは、だいぶ時間が経っていますね。ただショーケースなどでは華麗なシーンばかり集めてお見せしていたので、余計に若々しく見えてしまっていたかもしれません(笑)。
アクション部分については、今でもまあまあ動けるのだと思いますね。もうずっと現役でエージェントを続けているわけですし、なんなら戦闘技術については熟練の域に達している。
──実際にプレイして動かしてみると、動きにキレがあって、まだ若々しいアクションをしているなと感じましたね。
中西氏:
アクションでもガンプレイでも、そうした表現にはかなりこだわって作っていますね。もともと銃表現については、チームのあちこちにそういうのが好きな人がいるので、放っておくといくらでもこだわってしまう、ということでもあるのですが(笑)
それから今作では、これまでのシリーズ作ではあまり取り込んでこなかった、細かな体術のアクションも扱っていますね。中でも「斧」をフィーチャーしているのは、今回のレオンの象徴のひとつです。
──なぜ「斧」がフィーチャーされたのでしょうか?
中西氏:
今作でレオンを再登場させるにあたって、「歳を重ねたレオンがどんな大人になり、何を考えているのか」という点を深く掘り下げてきた結果です。長く戦い続けてきたいまのレオンには、どこか世の中に疲れたような雰囲気があったり、殺伐とした怒りが滲み出してしまっていたりします。
そうしたものの象徴が、「斧」を使った今作のレオンの戦い方です。今作のレオンは斧を振りかざして血みどろになって戦いますから、プレイされると「レオン、どうしちゃったの?」と思われたかも知れないのですが、そこは狙ってやっている部分です。
──ある種の自暴自棄というか、抑えきれないものが激しい戦闘スタイルとして表れていると。
中西氏:
レオンも長く戦いを続けてきましたが、決して思い通りにうまくいっているわけではありません。30年間戦い続けても、世の中は良くなってはいないし、いつも誰かしらが戦いのなかで犠牲になっている。
夜中にふと、「自分がやってきたことはなんだったんだろう」と思った瞬間もあったと思うんです。だから今作ではそういった部分を表現しつつ、レオンの原点となったラクーンシティへと戻り、そこで見たもの、感じたものを通してレオンが自身の30年間を振り返る、という瞬間を描きたいと考えています。
グレースでたくさん苦労し、怖い思いをするからこそ、レオンの頼もしさが際立つ
──本作はグレースパートの「怖さ」とレオンパートの「アクション」が交互に出てくるという作りでしたが、こうしたゲームデザインは早くから固まっていたものなのでしょうか?
中西氏:
全く体験の異なるパートをつくることについて、最初の頃は我々も「これはユーザーさんが戸惑うんじゃないの?」「没入できなくなっちゃうのでは?」と心配していました。
ですが実際にプレイしてみると、ふたつのパートに大きな差があればあるほど、ゲームとしては面白くなると思うようになったんです。そこから各パートを一層特化させる方向で開発を進めていきました。
──今作のゲームデザインは、シリーズ初期にあたる『バイオ1』から『バイオ3』あたりのサバイバルホラーと、『バイオ4』以降のアクションホラーのデザインが統合されているようにも感じました。
中西氏:
基本的にグレースパートは昔ながらの『バイオハザード』ですね。静かなゲームプレイで謎を解き、襲い来る恐怖をそっと乗り越えていくという内容です。
対してレオンパートは、終始ハラハラとした激しい緊張感を感じさせる作りで、敵の脅威を凌ぎつつ処理していくというゲームスタイルです。そのふたつをそれぞれ突き詰めた形にして、今のゲームデザインが作られてきました。
──この構成は、中西さんが過去にディレクターをされていた『バイオハザード リベレーションズ』っぽさも感じたのですが、意識されたりはしたのでしょうか?
中西氏:
狙っていたわけではありませんが、当時のノウハウは活きていますね。そもそも『バイオハザード』という作品は、シチュエーションがコロコロ変わって、ステージごとに違った遊びを提供してくるという、凄く贅沢な作りが魅力だと思っています。それこそUSJのアトラクションみたいな感じですね(笑)。
『バイオハザード リベレーションズ』の構成も、そうした魅力の延長にあるものだと思っているんです。今回の『バイオハザード レクイエム』のふたつのパートもそうですね。

──確かに目まぐるしいところがありますね(笑)。
中西氏:
『バイオハザード リベレーションズ』はジルを操作していたらいきなりシーンが変わって、その後に全然違う場所が舞台のクリスとジェシカのエピソードが始まる、という感じでしたよね。そういうシーン転換で飽きさせないように気持ちを揺さぶる方法は、今作でも使えるなと思って意識しました。
一方で『バイオハザード リベレーションズ』の時は、場面が急激に飛ぶことによって、プレイヤーの気持ちが付いていけず、戸惑ってしまうことも少なからずあったと思います。その点は今作では気を使いました。
──確かに、今作では別のパートでもふたりは同じ場所にいたので、「ここはどこだ!?」という混乱はありませんでしたね。むしろグレースだと厄介すぎて倒せなかったゾンビが、レオンだと簡単に倒せちゃったりできるのが頼もしかったです。
中西氏:
そう思っていただけたのであれば、僕らの思うツボですね(笑)。ふたりを同じロケーションに置くことの狙いはまさにそれで、グレースで苦労した時に「レオンが来てくれた!」みたいに感じてもらうことなんです。
ただ、ホラーというのは繰り返してはダメで、「予想通り」になってしまうと緊張感や不安が薄れてしまいます。ゲーム本編では今回のデモ版のようにグレースからレオンへの流れを繰り返すだけではなく、良い意味で期待を裏切るような構成も用意しています。
──今作のレオンはベテラン戦士としての強さが前面に出ていたと思うのですが、それゆえに難易度の調整には苦労したのではとも感じました。実際のところ、どうだったのでしょうか?
中西氏:
そもそも制作中は難易度がコロコロ変わっていくのですが、レオンの場合は特に変化が大きかったですね。
先ほども少しお話したように、レオンのパートでは「油断すると死んでしまうかも」という緊張感を常に維持することに気を使っています。敵が強すぎるのも厄介ですが、プレイヤー側が強くなりすぎても気持ち良くないんですよね。
中西氏:
ただ、これは過去のインタビューでも話させていただいているのですが、レオンはこの先、追い詰められていくことになります。プレイしていただくとよく分かるのですが、あの熟練の戦士であるレオンでさえ、戦いがしんどくなってくるんですよ。
レオン自身の、30年に渡る歴史の限界に挑むような戦いをさせよう、というのを考えています。
──そのレオンのパートで使える斧は、耐久力が落ちてきたら砥石で研げば再び使えるようになっていたと思います。あの斧研ぎについては回数制限はなく、何度でも使える形になっているのですか?
中西氏:
そうです。一時期は回数制限を設けていたんですが、パリィを多用するとすぐに耐久力が減ってしまい、あまりにも難易度がシビアになりすぎてしまったんですよね。いざという時にパリィができなくなったり。
なので最終的に、銃のリロードのような扱いにしています。戦闘中の隙を見計らって斧を研ぐという感じですね。高難度では耐久度が死活問題になってくるので、パリィを控えるとか、敵を無視するといった行動も必要になってきます。
──武器についてだと、今回のデモ版では、敵のゾンビが落とすチェーンソーなどを拾って使うこともできたのが面白かったですね。使用回数には制限がありそうな感じでしたが。
中西氏:
レオンが敵の武器を使えるのも、今回フィーチャーしたポイントのひとつですね。敵がたくさん出てくると、「どの敵から優先して倒すべきか」と考えるじゃないですか。その時に「アイツを先に倒せば持っている武器を奪える!」みたいに、戦闘の立ち回りを組み立てる要素としても作っています。
ただお察しの通り、武器によっては使い続けられないような縛りがあります。チェーンソーがずっと使えたら、強すぎてゲームバランスを損なってしまいますからね。とはいえチェーンソーが弱かったらガッカリですし(笑)。
──もしもチェーンソーをずっと持って行けるなら、ゲームバランス的にもおかしくなりますよね(笑)。
中西氏:
逆に不安になりますよね。「え、持ってていいの!?」って(笑)。
なので、チェーンソーを持った時はバーッと暴れさせてあげる。だけど途中で使えなくする、という感じに設定しています。ただ他にも使える武器はいろいろあって、それぞれに縛りは違いますね。









