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ダークソウルおじいちゃんは1472回死んでいた!〜テレビで話題の80歳が実践する、濃厚ゲームライフ〜

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これまでの人生と同等以上に、ゲームの中での体験が記憶に残っている

――加三さんにとって、ゲームをやってきて良かったというのは、どんなことですか?

加三:
 80歳にもなるとね、昔のことを思い出す時があんのよ。どっか旅行に行った時のこととか。そうやって思い出す中に、あれはスゴかったなっていう思い出があんねん。それをよう考えたら、ゲームの中のどっかの街のシーンやねん。ゲームの中の風景が、実際に自分が旅行に行った風景と、同じように記憶に残っとんねや。

ちなみに、クリアしたゲームのセーブデータをずっと残しておくのも、加三スタイル。大量のメモリーカードがありました。
ちなみに、クリアしたゲームのセーブデータをずっと残しておくのも、加三スタイル。大量のメモリーカードがありました。

――加三さんは60歳からゲームを始められたとのことでしたが、それ以前の若い頃には、いろいろと鮮烈な記憶に残る経験をされてきたと思うんです。60歳から始めたゲームの中の記憶も、そういった若い頃の思い出に負けないぐらい、強烈なものなんですか?

加三:
 それだけ印象に残るぐらいの場面ちゅうか、作り方がね、ゲームにはあるねん。『ICO』【※】ってやったことあります? あれの最後に、スタッフのテロップが流れてきますがな。普通はあれが流れてきたら、スイッチを切ってまうんやけど、あのゲームは余韻が残ってて、じーっと最後まで見てたんや。

※『ICO』 2001年にSCE(現・SIE)から発売された、PS2用アクションアドベンチャー。古城に幽閉された少年イコが、言葉の通じない少女ヨルダを外の世界へと連れ出すために、古城から脱出するルートを探していく。のちに『ワンダと巨像』や『人喰いの大鷲トリコ』を制作する上田文人氏が、ゲームデザインを手がけている。 (※画像はPS3ダウンロード版です。プレイステーション® オフィシャルサイトより)
※『ICO』
2001年にSCE(現・SIE)から発売された、PS2用アクションアドベンチャー。古城に幽閉された少年イコが、言葉の通じない少女ヨルダを外の世界へと連れ出すために、古城から脱出するルートを探していく。のちに『ワンダと巨像』や『人喰いの大鷲トリコ』を制作する上田文人氏が、ゲームデザインを手がけている。
(※画像はPS3ダウンロード版です。プレイステーション® オフィシャルサイトより)

 そしたらテロップが終わると……(ラストのネタバレのため省略)。あれは泣けるで、ほんまに。

――『ICO』は僕もクリアしているので、その気持ちはすごくよく分かります。

加三:
 『デモンズソウル』かてね、記憶に残る場面があるねん。ソウルをぎょうさん落とすアイテムを買いに行ったら、これを売る代わりに、「あいつを殺してこい」って言いよるねん。

 こっちはソウルを早う集めたいよってに、殺しに行くわな。そしたら殺す相手が1人で座ってて、向こうから話しかけて来よる。こっちも話をせな、あかんやんか。話をしているうちにだんだん、殺せなくなってきて。

 そしたら向こうが、「なんかほかに用事あって来たんちゃうか」って言うんや。これはアカンなと思うて、その時は帰ってん。でもやっぱりソウルを集めたいから、2回目にその部屋に行って、今度はもう目をつぶって、何も言わずにバッと殺してしもうた。それでもなんというか、こう、悔いが残る。

――今のお話ぶりを聞いていて、あくまでゲームの中の出来事ではあるんだけど、加三さんの中ではそれを、ご自身の体験として受け止めているんだというのが、すごくよくわかりました。


加三:
 ゲームをやってなかったら、今の自分はいてへんと思うよ。でもな、ゲームオタクというわけではないねん。TVに出てから、ゲームの話ばっかり取材されるけど、最初に話したように、ほかにも絵を描いたり写真を撮ったり、いろんなことをやってきてる。

 こっちがやってるのは基本的に、クリエイターちゅうんか、無から有を生むものが好きやねん。それと、人の真似は嫌やね。誰もやってへんことをしたい。そうやっていろんなことをやると、ゲームをやったときでも、自分の幅が広がると思うねん。

――なるほど。

加三:
 ゲームの中に出てくる敵は、ほんまの敵とちゃうと思うねん。そしたらなんやと言うと、そのゲームを作った制作者との戦いや。お化け屋敷と一緒やね。

――それは鋭い指摘だと思います。

加三:
 前から敵が出てきても、制作者はそれが目的とちゃうねん。どっかに別の敵を隠しとる。それでこっちが「敵や!」って寄って行くと、横から急に出てきよる。

 ゲームだけやってたら、それに引っかかるかしらんけど、こっちはゲーム以外の経験もあるから、「待てよ」って気がつく。前から来る敵を一応チラッと見てから、その周辺を見るねん。どっかに敵の隠れられるようなところがあるんちゃうかって。

――まさにその通りですね。

加三:
 やっぱり人間は、ええことも悪いことも経験すると、相手の裏側っちゅうか、そういうのが分かるようになるわな。

 さっき、写真のコンテストで世界一になったって言うたけど、じつはそのあとで、写真はパッと止めてしもてるんや。なぜかというと、どうしても世界一になった時と同じような映像を探してしまうんやな。そんな時は、まったく違うジャンルに手を出すねん。いっぺん物の見方を変えてから、また戻ってくると、前とは違ったものが見えてくる。

――さすがに80年生きてこられた方の言葉は、重みがありますね。

加三:
 人間っていうのはやっぱり、日々精進や。ゲームでもなんでもすべてのことで、死ぬまで精進せなあかんと思うな。

――レベルアップということですね。

加三:
 それはええセリフやね。ゲームにかけてて。

――ではぜひ、ご自身の口からもう一度言ってもらえれば。

加三:いや、それはちょっと恥ずかしいわ(笑)。

――どうもありがとうございました。

「ゲームの話やったら、一日しゃべってても止まらへんよ」とご本人が言うだけあって、加三さんはまるで少年のような口ぶりで、ゲームの細かな話題まで熱心に語ってくれた。80歳という年齢で、ゲームを日々、全力で楽しんでいる様子が、その言葉の端々から伝わってきた。

 加三さんのお話を聞いていて、人間が年齢を重ねるということに対して抱いていたイメージが、まったく違ったものに変化していくのを感じていた。

 まず1つ目は、“人間は何歳になっても新しいことを始められる”ということだ。なにしろ加三さんは60歳からゲームを始めて、今ではゲーマー歴20年のベテランとして、それまでの人生と同等以上に鮮烈な体験を楽しんでいるのだから。

 そしてもう1つ感じたのは、“自分もこんなふうに年齢を重ねていいんだ”ということだ。筆者に限らず多くの人が、自分が成長していくあいだに、ゲームや、アニメや、その他いろんなものから“いつかは卒業しなければいけない”と周囲の人たちから言われたり、あるいは自分で考えたりした経験があるはずだ。

 でも加三さんの言葉を聞いていると、何歳になっても自分の好きなものを全力で楽しんで、その他のいろいろな経験と結びつけることで、自分自身を高めていけると、改めて気づかされる。本当に重要なのは“卒業する”ことではなく、“レベルアップする”ことなのだ。

ちなみに、編集部のお土産のダークソウルTシャツ(胸に“YOU DIED”の文字)をとても喜んでくれて、取材の途中から着てくれました。
ちなみに、編集部のお土産のダークソウルTシャツ(胸に“YOU DIED”の文字)をとても喜んでくれて、取材の途中から着てくれました。

“闘会議2017”公式サイトオープン!

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