マジ半端ねぇ!『Fate』のエクスカリバーの破壊力は『エヴァ』ヤシマ作戦120回分!?

イラスト/近藤ゆたか

 エクスカリバーとは、5~6世紀イギリスのアーサー王が持っていたと伝えられる剣。
 魔法の力を宿していたともいわれ、アーサー王伝説をモチーフにした物語には必ず登場するアイテムだが、なかでもすごいのは『Fate』シリーズのエクスカリバーだろう。

 この作品での使い手は、召喚された英霊セイバー。小柄な少女の姿をしているが、実は彼女こそがアーサー王である。
 セイバーが、鞘からエクスカリバーを抜き、「エクス」と唱えて大上段に振り上げ、「カリバー!」と叫んで振り下ろすと、巨大な眩い光が前方に放たれて、相手を消滅させる。ザコキャラなら何人も同時に!

 エクスカリバーはその真名を「約束された勝利の剣」というが、まさにその名のとおりの決定力だ。筆者もやってみたが【※】、決まったときの爽快感はなかなかで、腹の底から「…やった!」とヨロコビがわき上がってくる。

※編集部注:『Fate/EXTELLA』を柳田先生にプレイしていただきました。

セイバーの必殺技、エクスカリバー。
(画像は『Fate/EXTELLA』公式サイトより)

 こんな剣、本当にあったら便利だろうなあ。
 イヤな上司に、エクス、カリバー!
 しつこいクレーマーに、エクス、カリバー!
 食べ終わったカップラーメンの容器にも、エクス、カリバー!

 明らかに使い道を間違っている気がするので、ここは気持ちを落ち着かせ、きちんと科学的に検証いたしましょう。

どんな敵を倒したのか?

 電ファミの原稿なんだけど、今回は、状況のよくわかるアニメ版『Fate/Zero』の15話を題材に考えたい。

※編集部注:今回、研究の題材となったアニメ版『Fate/Zero』第15話はニコニコ動画でも有料配信中です。

 筆者が知る限り、エクスカリバーが最大の威力を発揮したのは、“海魔”との戦いにおいてであった。
 海魔は“聖なる怪物”ジル・ド・レェ伯爵が召喚した、この世ならざる強大な魔物。ヒトデとタコが合体したような巨大な怪異、多数の触手に囲まれた体の中心部には牙の生えた口がある。

 その大きさは、劇中に描かれた冬木大橋との比較から推測できる。
 冬木大橋は兵庫県神戸市に実在する神戸大橋がモデルになったらしい。ということで、ここでは冬木大橋が神戸大橋と同じ大きさであると仮定して話を進めよう。

冬木大橋のモデルになったとされる神戸大橋。日本初のダブルデッキアーチ型鋼橋だ。
(画像はWikipediaより)

 神戸大橋は平均海面からの高さが49.2mだが、海魔の頭頂の高さはその倍ほどあった。ということは、体高はほぼ100m
 体の横幅は、身長の3分の2ほどだったから、すると66m
 もし、体の密度が通常の生物のように水と同じだとしたら、海魔の体重は37万t東京スカイツリー10本分である。

 一方、公式設定によれば、セイバーは身長154cm体重42kg
 この小さなセイバーが、体高100m、体重37万tの超巨大な魔物を「エクス、カリバー!」と消滅させたわけだ。
 これ、いったいどれほどの威力なのか?

 それは、海魔の体が何でできているのかにもよるが、これに関する情報はまったくない。
 仕方がないので、ここでは、ヒトデは体の70%が水分タコは80%が水分であるところから、海魔の体もほとんどが水であると仮定し、37万tの水を蒸発させるだけのエネルギーを与えれば、海魔は消滅すると考えよう
 20℃1kgの水を蒸発させるには、620キロカロリーの熱エネルギーが必要だ。
 海魔の推定体重37万tとは3億7000万kgだから、これと同じだけの水を蒸発させるエネルギーは、2300億キロカロリー

 爆薬に換算すると、23万t分である。

エヴァとどっちがすごい!?

 え? 爆薬23万tといわれても、よくわからない?
 はい。それは筆者もまったく同じで、数字だけ眺めても全然ピンと来ません。

 ビルの解体では、コンクリート1立方mあたり200gの爆薬が使われる。
 ここから計算すると、23万tの爆薬があれば、一辺1.1kmのコンクリートの立方体が破壊できるはず。
 岩石とコンクリートは、強度に大きな差はないから、ざっくり言えば、そのへんの山なら木っ端微塵にできるということだ。

 ……と言っても、いま一つよくわからないですね。
 では、他のアニメに登場した武器と比べてみたらどうだろうか。

 破壊力のある光線といえば、『新世紀エヴァンゲリオン』のポジトロンスナイパーライフルが印象に残る。これとエクスカリバーは、どっちがすごいのか?

ゲーム『第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇』での「陽電子砲(TVアニメ版におけるポジトロンスナイパーライフル)」。
※本文中で比較対象になっているのはTVアニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』第6話です。
(画像はYoutube 876TVより)

 『エヴァ』でのポジトロンスナイパーライフルが登場したシーンはこうだ。
 第5使徒ラミエルが、ATフィールドであらゆる攻撃を跳ね返し、その下部から伸びた巨大なドリルが、地下のネルフ本部に迫りつつあった。
 作戦責任者の葛城ミサトは、戦略自衛隊から借りてきて、エヴァ用に改造したポジトロンスナイパーライフルを、碇シンジが操縦するエヴァ初号機に撃たせる。
 同ライフルの発射には、全国から集めた1億8000万kWの電力が必要であった

 2300億キロカロリーと、1億8000万kW。これは、どちらがすごいのか。
 単位が違うので、これだけでは比べられない。キロカロリーとは「エネルギー」の単位kWとは、1秒間にどれだけのエネルギーを供給するかという「電力」の単位である。

 比較のためには、電力の供給時間を知りたいが、劇中のシンジは、ミサトが「第5次最終接続!」と言ってから40秒後に発射した。この40秒間、1億8000万kWの電力がチャージされ続けたと仮定するならば、ポジトロンスナイパーライフルが放ったエネルギーも求められる。
 それを計算し、キロカロリーに換算すると……、おおっ、19億キロカロリー
 エクスカリバーのエネルギーは2300億キロカロリーだったから、ぎょぎょっ、エヴァの120倍だ!

 『スーパーロボット画報』によれば、エヴァ初号機全高40m重量700t
 セイバーは、その26分の1の身長と、1万7000分の1の体重で、120倍も強力な光線を放ったことになる。
 さすが、少女の姿はしていても、アーサー王。
 いや、本家アーサー王も裸足で逃げ出しそうな、セイバーのエクスカリバーである。【了】

プロフィール
理系作家。空想科学研究所の主任研究員として、書籍の執筆を続ける一方で、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演など精力的に活動。2007年には『空想科学 図書館通信』の無料配信を始め、現在も継続中。代表作『空想科学読本』シリーズは、現在17巻まで刊行。明治大学理工学部の非常勤講師。
空想科学研究所公式サイト:www.kusokagaku.co.jp
Twitter:@KUSOLAB





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