電ファミで取り上げた記事のうち、直近1週間でもっとも話題となったゲームニュースを、ランキング形式でお届けしよう。TwitterとFacebookでそれぞれ人気だった記事のベスト20をリストアップし、気になる話題については、電ファミニコゲーマー編集長のTAITAIが解説していく。
各記事は電ファミ上にピックアップされてから24時間後の数値を集計調査。記事の“勢い”に着目している。
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Twitter3位( 2400 件)
「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドが発売日に95分でクリアされた」というデマがどのように拡散していったかをご確認ください
画像は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の公式サイトより
ひとつめは、Twitterで大きく話題となった『ゼルダ』新作をめぐる記事の話から。
任天堂の新型ゲーム機Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)の第一弾タイトルとして登場した人気シリーズの最新作、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が注目されるなか、この作品が「95分でクリアできる」というデマが流れた、という記事だ。
ゲーム開始からほどなくすればラスボスにも挑めることが明言されていた作品だったこともあってか、このデマがSNSでかなりの速度で拡散されたのだ。その様子を実際に目にした読者の方も少なくないだろう。しかし蓋を開けてみると、それは海外ゲーマーのプレイ動画をソースに書かいたブログの、単純な勘違いであったことがわかったわけだが、なぜ、こうしたデマ記事がたびたびネットを賑わしてしまうのか? いまさらではあるが、これについて少し解説してみたい。
まずこの記事がここまで急速に拡散された背景には、“アフィリエイト”と呼ばれる“広告からの収入”を軸にした、ブログサイトの収益モデルに由来する問題がある。アフィリエイトは、ブログに設置した広告類を経由して、訪問した客が商品を購入するなどの行動を取ると、サイト主に広告主から報酬が支払われるという仕組み。簡単に言うと、PV(ページビュー)の多さ=収益の多さとなるビジネスモデルである。
これを利用したブログが、いわゆる“アフィブログ”で、ひとりでも多くの人を集め、ひとりでも多くの人に広告を“踏んで”もらうために、そこではあの手この手が仕掛けられている。その最中で件の記事は作られた。今回、騒動を巻き起こした記事や拡散した記事もアフィブログのものだ。
「PVに応じてお金が儲かる」……これは一見すると、とても公平なすばらしい仕組みに見える。しかし、最近では、これがネット上のコンテンツの価値を貶める方向に作用する傾向が強くなってきている。要するに、良い記事も、悪い記事も、“PV”の前では公平に扱われてしまうからだ。
丹念な取材のうえに書かれた記事の1万PVも、悪意に満ちた炎上記事で稼いだ1万PVも、このアフィリエイトの仕組みの前では“同列”になる。そして、悲しいかな、「悪い記事」のほうがPVは簡単に稼ぎやすいという現実がある。一説によれば、ネット上の書き込みにおいては、善意よりも悪意のほうが8倍以上の拡散性があるとも聞く。
悪意とまでは行かないまでも、PV軸でしか価値付けがされない問題はたくさんある。
例えば、電ファミの企画記事は、それこそ一本当たりのアベレージPVは、通常のニュースサイトと比べてもべらぼうに高いくらいだと思う。数十万PVの記事はざらにあるし、ものによっては100万PVを超える記事もあり、広くネットで読まれた&読者の心に残った記事も少なくないと自負している。しかし、その一方では、ネットには100万PVを超える記事などはいくらでもある。例えば、仔猫の写真まとめや、ちょっとエッチな画像まとめなどがそれだ。そういうネタ自体は否定しないし、それはそれであるべきなんだけども、じゃあ、頑張って取材して書いた記事と、ネットから仔猫の画像を集めただけの記事が、同列に扱われてしまうとしたら……やっぱり、頑張って書く人は報われない世界になってしまう。
丁寧に書かれた“良い記事”にインセンティブが働かない世界で、誰が良い記事を書こうと思うだろうか? これはアフィブログだけの問題ではなく、商業メディアでも、広告ビジネスをしている以上、少なからずそういうジレンマはある。本当に良い記事を書ける優れた書き手ほど、ここの葛藤は根深いんじゃないかと思う。
そもそも、商業メディアは企業が運営するものでもあるし、企業である以上は営利を求めなければならない。そうなると、なおさら“簡単にPVを稼げる誘惑”に抗うのは、とても骨のいる作業でもある。現状、そこを真面目にやろうとする動機は、ほとんど矜恃やプライドといった部分でしかないのも事実。一方で、“割り切った”人たちのほうが経済的には評価されてしまうあたり、なんともやるせない気持ちにはなってしまうのは正直なところであろう。
今回、話題になった『ゼルダ』の記事にしたって、ゲームメディアに携わってきた身からするとよくわかるが、とくにネットの、こうした拡散性の高いニュースは、内容が1行だろうが2行だろうがとにかく早く出した者勝ち。だから、アフィブログなんかは、何の検証もなく即座に記事を掲載することのみを考える。一方で、真面目なメディアであればあるほど、公開前に当事者に事実を確認したり、より多くの情報を盛り込もうとしたりするため、どうしてもリリースまでに時間がかかってしまう。結果的に、PV勝負では負けてしまうことになる。
もちろん、そのおかげで信頼されるに値する質の高い記事を出すことができ、それによって信頼されるメディアとしても認知されるわけだけども、その“信頼”がきちんと数値(PVや収益)に結びつかない苦しさは、多くの商業メディアの運営者が頭を悩ませている部分ではないかと思う。
ただ、そうした問題を差し引いても、いわゆるアフィブログの記事に多くの読者が集まり、拡散されているというのは揺るがない事実ではある。そして、ネット上でバズる記事への嗅覚というか、肌感の確かさは、アフィブログの運営者のほうが優れていると感じることも少なくない。だから、そこから目を逸らし続けても、負け惜しみでしかないんだよなあ……と思いつつ、今日も「どうしたものか」と悩む日々は続いているのである。
Facebook4位( 664 件)
LOVEアンケート 〜優柔不断な私の恋〜
メディアの話題に関連して、もうひとつ気になったのが、最近さまざまな面白い企画で名を上げている会社“バーグハンバーグバーグ”がプロデュースした『LOVEアンケート』だ。これは、一見すると、選択肢を選ばせるタイプの典型的な乙女ゲー。さまざまなタイプの男性が現れて、甘酸っぱい胸キュンなやりとりが展開されていく。
ブラウザゲーム(?)でありながら、イラストやセリフの作り込みはなかなかのもの。「ほうほう。これは良くできているな」と思いながら遊んでいると、ヒロインと男性が急接近したときの会話中に、突如としてストーリーとは無関係な企業アンケートがねじ込まれてくるという、何を言ってるかよくわからないと思うが、実際にそういうゲーム(?)だからしかたがない。正直、けっこう面白い。
さて、ちょっとお仕事目線でこの企画を解説してみると、こういう尖った企画ものは、よほどの腕がないと「面白くならない」ことのほうが多い。フォーマットがないからゼロベースで物を考える必要があるし、“これが受けるはずだ”というセンスと目利きの確かさが要求されるからだ。
そもそも、フォーマットがない仕事は、きちんと“正解”を探り当てるのがとても難しい。無数にある選択肢の中で、何と何をくっつければ面白くなるのか? その組み合わせが正解に偶然に行き着くことはほとんどない。この記事にしたって、アンケート企画と乙女ゲームを結びつけたところに、もの凄い“目利き”の良さを感じる。
ネットでバズる企画を連発している同社のフラグシップメディア“オモコロ”も、一見するとただの“ふざけたサイト”に見えるのだが、おふざけの中にプロフェッショナルさを感じられるところが、バーグハンバーグバーグの素晴らしさだと言えるだろう。
SNSが凄まじい勢いで発展し、前述のようなアフィブログがより大きな力を持ってきている昨今。それはつまり、どこかのニュースサイトに整然と掲載されるよりも、いまは、「いかにSNS上でバズるか」で読まれるかどうかが決まるということでもある。これは、ポータルとしてのニュースサイトが力を失っていることの表れでもあるが、一方では、企画力さえあれば、メディアの垣根を跳び越えて広く記事が読まれる土壌ができたとも言い換えられる。つまり現在は、真の意味でライターや編集者のセンスが問われる時代に突入しているということでもあるのだ。
電ファミニコゲーマーでも、そういう時代の変化を踏まえて記事作りに取り組んでいるつもり。オモコロにも負けないよう、我々も頑張って面白い企画を立てていきたいと思う。
というわけで、今週気になったゲームの話題はここまで。また来週!