日本人の「味」への探求心はすごい。
「日本人の食への探求心はすごい」とは常々言われているが、筆者としては、その探求心は「食」という範囲に留まらないものがあると思っている。
たとえば、教科書にも載っている梶井基次郎の小説『檸檬』には、「あのびいどろの味ほど幽かな涼しい味があるものか」という一節がある。びいどろ、つまりガラスの味が気になって、ラムネ瓶に入っているビー玉を口に入れてみたことのある人は決して少なくないのではないか?
ガラスの味、陶器の味、プラスチックの味、ティッシュの味……我々は意外と、食べ物ではない色々な「モノ」の味を知っている。そしてそんな日本人が今、一番味を知りたい「モノ」といえばこれだろう。
「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ2)」のゲームカードだ。
初代「Nintendo Switch」のゲームカードは、誤飲を防止するために苦み成分が塗布されており、めちゃくちゃ苦いことが知られている。「Nintendo Switch 2」のゲームカードも同様に誤飲防止のコーティングがされていることが報じられているが、その「味」は果たして進化しているのだろうか?
という訳で、今回は「Nintendo Switch 2」のゲームカードを発売日当日に入手し、実際に舐めてみたレポートをお届けする。初代「Nintendo Switch」のゲームカードとの味の比較検証も行っているので、違いが気になるけど自分で舐めたくないという方は参考にしてほしい。
文・編集/逆道
・本記事はゲームカードを舐める前後に適切に消毒を行い、執筆者の心身の健康に配慮した上で作成しています。
・ゲームカードを舐める際には、端子やイラスト部分に触れないよう細心の注意を払って検証を行っています。
・本記事に使用されている写真は、すべてゲームカードを舐める前に撮影されたものです。
・本記事はゲームカートリッジを舐めることを推奨するものではありません。
・ゲームカードの味についての感想は個人によるものです。
舐める前にまずはゲームカードを比較
とはいえ、苦いものを進んで舐めたいわけでもないので、舐めるまでの時間を引き延ばすためにも、まずは2つのゲームカードを比較してみよう。「とにかく味だけ知りたいんだよ!」という方は、次のセクションまで飛ばしてほしい。

まずはケースから。初代Nintendo Switchのゲームカードのケースは無色・半透明のプラスチックでできていたが、Nintendo Switch 2 ではケースの色が赤色の半透明に。色が付いたことで透過度は下がり、横や上下から覗いても中身は見えにくくなっている。
ケース裏面はこんな感じ。ケース下部、白い背景の注意書き欄が小さくなり、ゲームの情報を見せる欄が広くなっている。プレイモードとプレイ人数、コントローラー対応の表記デザインは初代と変わらないが、細部のレイアウトは異なっているようだ。
また、初代Nintendo Switchの日本向けゲームカードのケースに記載されていた「本品は日本国内だけの販売とし~」の文言もなくなっている。本体が国内版・多言語版に分かれた影響だろうか?
ケースの大きさや厚み、内部の構造に初代からの変化はない。プラスチックの色が変わっただけで、ケースの構造自体に大きな変化はなさそうだ。
ゲームカードそのものについては、こちらもNintendo Switch 2 の方はプラスチック部分のカラーが赤に変化。
大きさや構造に目立った変化はないが、Nintendo Switch 2 のゲームカードの方は、よく見るとカード裏側の右下に小さな切り欠きがあった。これもきっと何か意味があるのだろう……多分。
任天堂公式サイトのQ&Aによると、初代「Nintendo Switch」のゲームカードには「デナトニウムベンゾエイト」という苦み成分が塗られているという。この成分は強い苦みを持ち、非常にまずいが、舐めるなどして摂取しても健康には害はないとのことだ。
「Nintendo Switch 2」については「舐めると嫌な味がする」とは公表されているが、具体的にどのような成分が使用されているかは明らかになっていない。つまり、舐めるまで味は分からないということだ。
舐めるしかないのか……。
実食、もとい実舐
それでは、覚悟を決めてNintendo Switch 2 のゲームカードを舐めてみたいと思う。この『マリオカート ワールド』も、まさか遊ばれる前に舐められるとは思っていなかっただろう。すまぬ。
もちろん、筆者も1ゲーマーとして、ゲームを遊ぶのに支障が出る舐め方をするつもりはない。今回は、端子にもイラスト部分にも触れず、プラスチックだけが広がっている裏面の「このへん」を舐めることにした。
それでは……。
にっっっっっが……
にっが、なんだこの、苦い。ただただ、シンプルに、苦い。
しかし、濃いコーヒーや漢方薬を飲んだ時のような、「苦っ!!!」と叫ぶような感じではない。というのも、このゲームカード、舌に触れた部分だけ強烈に苦いが、そこから味が広がっていくことがないのだ。匂いが無いのが大きいのかもしれない。
苦い食べ物というのは得てして「えぐみ」や「渋み」を伴っていることが多いのだが、Nintendo Switch 2 のゲームカードにはそれがなく、純粋な「苦み」だけがそこにある。無理やり例えるなら、カフェイン単体の味に近いかもしれない。苦み以外が排除された雑味のなさが、自然に存在しない化合物っぽい風味を出している。
さらに触れた部分がどれだけ小さくてもしっかり苦いのがすごい。「苦い味がする」というよりは、カードが触れた部分に「苦い」という信号を与えられている、という感覚に近い。
そして、ゲームカードを離した後もしばらく苦い。「後味」があるという訳ではなく、水を飲んだりすればすぐに消えるのだが、何もしないとずっと苦みが残っている。舐めた直後に息を吸うと苦い気がする。苦みを感じる味蕾が起動しっぱなしになっている。
苦い苦いと思いながらも色々試してみると、舌の先端よりも、舌の腹に触れた時の方が苦い気がした。なるほど、これなら確かに誤飲対策としては十分なのではないだろうか。
個人的な所感としては、苦みを中和してくれる雑味が無い分、ブラックコーヒーなどよりも苦いと感じた。その上、この味はどういう訳か何回舐めても全然慣れない。固体を舐めているから耐えられるものの、この味の液体を飲めと言われたらまず無理だろう。
ちなみに、任天堂公式のQ&Aにならってゲームカードを触った指を舐めてみたら、ほぼ同じレベルで苦かった。ゲームカードを舐めたことによって他の食べ物の味の感じ方が変わるというようなことはないが、ゲームカードを扱った後にお菓子などを食べる場合は、手を洗った方がいいかもしれない。

Nintendo Switchのゲームカードと舐めくらべてみた
続いて、初代「Nintendo Switch」のゲームカードを舐め、味を比較してみようと思う。ここまで来たら1枚舐めても2枚舐めても同じだよ!
Nintendo Switch 2 のゲームカードを舐めた後なので、一度口直しを挟んだうえで挑んでいる。舐めるのは、Nintendo Switch 2 の時と同じ「このへん」だ。
では覚悟を決めて……。
……
にっっっっっが……。同じ味だコレ……。
混じりけのない純粋な苦みといい、舌に触れたところだけ苦くなる不思議な感覚といい、まぎれもなく初代のゲームカードはNintendo Switch 2 と「同じ味」だった。初代Nintendo Switchで培われた誤飲対策のノウハウは、2にもしっかりと受け継がれていたのだ。
強いていうなら、初代のゲームカードの方がNintendo Switch 2 のゲームカードよりも「後味」が強く残るような気はした。とはいえ、経年による変化や生産環境による違いという可能性もあるので、初代と2の違いであると言い切ることはできないだろう。
結論!どっちも苦い!閉廷!

検証の結果、「Nintendo Switch 2 のゲームカードは初代Nintendo Switchのゲームカードと同じ味がする」ということが分かった。とはいえ、味に対する感想は筆者の個人的なものであるため、この結果は参考程度に受け取ってもらえるとありがたい。
ここまでしっかり舐めておいてから言うのも何だが、「Nintendo Switch 2」のディレクターを担当している企画制作部の堂田卓宏氏はゲームカードについて「なめるのはおすすめしません」とコメントしている。単純にまずいのはもちろんだが、ゲームカードを舐めることは故障や事故に繋がるおそれもあるため、その点は留意しておくべきだろう。
なお、電ファミニコゲーマーでは「Nintendo Switch 2」に関する真面目な記事も投稿していく予定のため、そちらもぜひチェックしてほしい。