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『仁王3』TGS試遊のクリア率予想は5%? アルファ体験版からの改善多数のTGS試遊版では探索&高難度ボスに挑めるふたつのモードが遊べちゃう。約6年ぶりのシリーズ最新作、『仁王3』の現状を開発者に聞く

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タイトル発表と同時にアルファ体験版の配信が行われ、ゲーマーの注目を浴びたダーク戦国アクションRPG『仁王3』。”戦国死にゲー”として知られるコーエーテクモゲームスの『仁王』シリーズ最新作である『仁王3』は、東京ゲームショウ2025(以下、TGS)に試遊出展されている。

約6年ぶりの最新作となる今作は、シリーズ初のオープンフィールドを採用。また従来のアクションに近い「サムライスタイル」に加え、素早くトリッキーな動きで敵を翻弄する「ニンジャスタイル」が追加され、ふたつのスタイルを切り替えながら緊張感のあるアクションが楽しめるものになっている。

前作から大きな進化を遂げた『仁王3』の魅力に迫るべく、ゼネラルプロデューサーの安田文彦氏と、プロデューサーを務める柴田剛平氏に本作のあれこれをうかがってきた。

『仁王3』安田文彦氏、柴田剛平氏インタビュー:『仁王』らしさとは、無茶なアクションも許容する「懐の深い自由さ」_001
写真左から柴田剛平氏、安田文彦氏

『仁王3』ではシリーズらしいアクションの自由さ・多様さを継承発展させつつ、これまで“短距離走”的なゲームのテンポが、オープンフィールドに合わせる形で調整されてもいる。もちろん、“戦国死にゲー”らしいプレイフィールも健在。TGS出展試遊版も、かなりの高難度になっているようだ。

聞き手/豊田恵吾
執筆・編集/恵那


ユーザーからのフィードバックを重視する姿勢はシリーズの伝統

──本日はよろしくお願いします。『仁王3』は6月にアルファ体験版が配信されて、フィードバックレポートも公開されていましたが、改めて体験版の反響、手応えについてお聞かせください。

安田文彦氏(以下、安田氏):
シリーズを作っていること自体に驚いてもらえて、歓迎してくれた声が大きかったと感じています。今回、タイトルの制作発表と体験版配信を同時に行わせていただいたので、より反響が大きかった感覚があります。

シリーズから新しくなった部分で言うと、今作ではオープンフィールドになったことと、アクションでは新たな軸としてニンジャスタイルを追加したことが挙げられます。

そのふたつの部分は概ね好評をいただけたようで安心している反面、いろいろな課題も出てきているので、認識を新たにした、という感じですね。

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(画像はSteam:仁王3より)

柴田剛平氏(以下、柴田氏):
新しいチャレンジの部分は不安もあったのですが、ボジティブな反応をいただいたので手応えを感じました。

じつは、スタイルが増えた分、武器の切り替えなど、複雑になりすぎると考えてカットしていた要素があったのですが、逆にその仕様を「ぜひ入れてほしい!」と希望される声が多く、そういったご意見はとても参考になりました。

安田氏:
『仁王』シリーズはこれまでもユーザーフィードバックが反映できるように体験版を配信してきましたが、今回はアルファのタイミングとして見たときに、非常に評判が良かったです。

──『仁王』シリーズは必ず発売前に体験版を配信し、ユーザーからのフィードバックを反映していますよね。これってかなり特殊な例だと思いますし、発売前からユーザーの声に応えるのはかなりの労力がかかることだと思うのですが……。

安田氏:
そうですね。もちろん1作目のときは我々も「死にゲー」タイトルを手がけるのが初めてだったこともあり、ユーザーさんの意見をいただきたいというのが明確にありました。雰囲気やグラフィックで勝負しているタイトルではないので、触っていただいたうえでの意見というのはとても大事なんですよね。

皆さんからいただいたフィードバックが自分たちの考えるおもしろさの確信になることもありますし、内容を見直すきっかけになることも多いです。また、この流れがファンの方たちの熱量を上げ、コミュニティが広がっていったところもあると思っています。

……というのが表の答えでして。

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──裏の答えがあるのですか?(笑)

安田氏:
裏の答えとしては、「自信がない」んです(笑)

一同:
(笑)。

安田氏:
開発者としては、もちろん自信や実感があってゲームを作っているんですけど、開発を続けていると、どうしても主観的になりすぎてしまいます。数年をかけて開発している中で、たとえばプロデューサーが改善点に気づいたとして、それをチームに伝えてもみんな言うことを聞かないんですよ。

でも「プレイヤーの方がこう言ってるよ」となると、受け取り方がぜんぜん違います。開発者にはプレイヤーの声がいちばん響くんですよね。

『仁王』シリーズは何度も体験版を配信しながら改善してきたタイトルで、チームとしてもプレイヤーの皆さんの声があったからこそ、うまく仕上げられてきたと感じています。

柴田氏:
『仁王』もシリーズ3作目になるので、いままでの蓄積も含めて我々も分析はしているのですが、開発時点では私たちは「世界でいちばん『仁王3』をプレイしてる人」ですから、俯瞰で見るのが難しいんですよね。

安田氏:
とはいえ、プレイヤーの方の意見がそのまま答えになるわけではありません。たとえば「難しい」というご意見に「じゃあ簡単にしましょう」と対応しても、おもしろいものになるわけではありませんから。

──どの声に応えるのかという、精査が必要なわけですよね。

柴田氏:
あとは、開発陣からすると体験版とはいえ「世の中に出す」ということの緊張感はすごく刺激になるポイントだと感じています。「恥ずかしくないものを出さなくてはいけない」というのは、開発中の制作者たちにとって緊張感がまったく異なるものなんですよね。

社内のテストプレイと違って、ちょっとした不具合も許されないですし、クオリティが低いものを出してしまったらがっかりされてしまってお客様が離れてしまうかもしれない。

そのときのいちばんおもしろいものを出すという緊張感は、チームにはいい影響を与えていると思います。もちろん、純粋に皆さんに遊んでもらって、いい声も悪い声も含めていろいろな意見を聞けるというのは非常にうれしいです。たいへんですけれど、貴重な機会だと思っています。

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──『仁王』、『仁王2』は安田さんがディレクターを務めていましたが、『仁王3』は別の方がディレクションを担当されています。この点についてはいかがでしょうか?

安田氏:
思い入れがあるシリーズではあるんですけど、『仁王2』までとはちょっと違う距離感で関わっています。あまり細かくは関わらないようにとは思っているのですが、できあがってきたものを見ると、どうしても口をはさみたくなってしまい……(笑)。

今作はディレクターがふたり、テクニカルディレクターひとりの3人体制でまとめているのですが、その3名は初代『仁王』を少人数で作り始めていたときからのメンバーなので、信頼していただければと思います。

──柴田さんも初代の『仁王』から関わっていらっしゃいますよね?

柴田氏:
私は『仁王』、『仁王2』ではプロジェクトマネージャーとして、運営・進行管理を中心に担当していました。『仁王2』のDLCとコンプリートディションからはプロデューサーを務めていますので、ずっと『仁王』シリーズに関わっていますね。

じつは、『仁王3』では新しいチャレンジをする中で、当初は「オープンフィールド」という言葉にとらわれすぎてしまい、失敗もありました。たとえば、アクティビティを強化し過ぎたりとか……。でも、それだとプレイすると「『仁王』ぽくないね」となってしまったんですね。

その反省を活かし、今作からの新要素と、これまでのシリーズで大事にしてきたもののバランスをつねに考えながら制作を行っています

オープンフィールドになったことでゲームのメリハリも変化。ただ『仁王』らしい密度の濃さは本作でも意識

──体験版をプレイして少し感じたのが、オープンフィールドになったことでゲーム全体がスケールアップしているということに加えて、「ゲームテンポのメリハリの付け方が変わった」という感覚でした。

これまでの『仁王』シリーズはミッション制ということで、ミッションごとに全力の短距離走に挑むようなゲーム性だったと思うんです。

『仁王3』も短距離走的な挑み方をする部分がありつつ、探索による寄り道によって、つねに全力で走らなくてもいいというか、どっしり構えて遊べる手応えがありました。このゲーム性のメリハリみたいなところは、開発するうえで意識されていたのでしょうか?

安田氏:
そう思ってスタートしたわけではないんですが、結果としてそうなっているところはあるとは思います。

おそらくピュアなアクションゲームっていうのは、限りなく短距離走に近いゲームなのかもしれません。私はよく「インテンシティ」(「強烈」「強さ」「集中力」など)って言うんですけど、Team NINJAのタイトルはそういった密度の濃さみたいなものを絶対持っているべきだと思っているんです。

ただ、同時に「それだけでは足りない」とも感じています。『仁王3』はシリーズの正統進化になっているとは思っていますが、前作『仁王2』発売から約6年が経過しているあいだに、世の中にはすばらしいゲームがたくさん出てきているわけです。ですので、同じベクトルで進化しただけでは世の中の変化についていけていないと考えています。

私自身が前作に関わっていたころからすでに、「『仁王3』では大きなチャレンジをしなきゃいけないな」と考えていたんですね。

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──過去作では、「ミッション制のハクスラ」という両者の相性の良さが、とてもいいゲームのテンポを作っていたと感じています。今作はオープンフィールドになったことで、ゲームのテンポをどのように考えられたのでしょうか?

柴田氏:
まず、メリハリを大事にしています。難度が高い場所で敵を倒して、ハクスラ的に装備を強くしていくという要素がある一方で、探索によって強くなっていくというのも『仁王3』の重要なポイントです。

たとえば、今作の探索では装備品だけではなく、新しいスキル、新しい武技が手に入ることがあります。つまり、入手したスキルによって戦い方であったり、相性の有利不利が大きく変わったりすることもあるわけです。

クリアできない場所にぶつかったときの対応として、レベルを上げたり、いいドロップを狙ったりすることに加えて、ほかの場所に寄り道することも選択肢になる。キャラクターの強さや装備品の強さではなく、新しい戦い方を見つけることでも、プレイヤーの進む道が切り開かれるゲームデザインになっているんですね。

もちろん、前作と同じようにハクスラ的な楽しみ方もできますし、新たな揃え効果もいろいろと用意しています。アクションと探索、どちらも楽しめるようなバランスに気を付けました。

──今作はオープンフィールドですが、立体的なマップを作るうえでのレベルデザインとして、意識されたことなどはありますか? オープンワールド作品でしばしば陥りがちな「目的や収集物の配置が単調になる」という現象をどう回避されているのかが気になりました。

安田氏:
どこまで親切にするか、どこまでプレイヤー自身の探索に任せるか、みたいなところはオープンフィールドの肝要な部分ですよね。単調さは忌むべきものですが、立体的な奥行きを持つオープンフィールドになったとはいえ、それだけで回避できるわけでもないので、注意する必要があります。

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(画像はSteam:仁王3より)

我々としては『Rise of the Ronin』のときに、「少し親切にしすぎたな」という反省があって。今作のディレクターは『Rise of the Ronin』のレベルデザインも担当していたので、まさにそういった部分については、より探索や発見を意識した塩梅になっています。

ゲーム中、いくつかの時代を行き来するデザインにしているのは、まさにそうした単調さを避けることが目的のひとつとしてありました。フィールド内ではシームレスに遊べるようになっていながらも、別の時代とは切り離されていますし、「地獄」というエリアを入れ込むことでもアクセントをつけています。

先ほどの言葉を借りれば「超短距離走」みたいなもので、つぎからつぎへと敵も現れます。その分、突破したときは報酬も大きいですし、体験としても大きな変化があるものになっているんですね。『仁王』らしさという意味でも、密度の高さは必須なところでもあります。

──その密度について、詳しくお聞かせください。

安田氏:
開発中はけっこうな紆余曲折がありまして、じつは当初は従来の『仁王』そのままのレベルデザインでゲームのペーシングを設定していったんです。すると、ゲーム体験として本当に苦しいものになってしまって(笑)。100メートル走のスピードでフルマラソンするようなゲームになっちゃったんですね(笑)。

逆にオープンワールド的な設定にしてみると、今度は密度が薄くなってしまい、つぎの敵にエンカウントするまでに数分空いてしまったんです。「このゲーム体験は『仁王』じゃないよね」となり、いろいろな方向性を模索しながら現在のオープンフィールドに辿り着きました。

柴田氏:
単調さを防ぐという面では、アート面や見た目的なところでも工夫しています。『仁王』は和風ファンタジーですので、歴史的な建造物が多数登場するのですが、地獄や妖怪といったものに浸食されて禍々しい姿になっていたり、地形も大きく変わっていたり。

要するに見たことがあるものと、見たことがないものを織り交ぜて、自然物の中に突然異様な物が現れるようにしてみたり、「視覚的に飽きさせない」こともいろいろと考えました

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安田氏:
敵配置も大きく変わったポイントですね。これまでは、人型よりも大きな敵をフィールドに置くことはあまりやっていませんでした。

物理的な問題やカメラの問題があったのですが、今作はそれを覆し、フィールドを探索してるときに、「あ、やばそうなやつがいるな」と視覚的にわかるようにデザインしています。デカい敵って、だいたいの場合は強いですからね(笑)。密度を感じさせるにあたり、オープンフィールドになったことで取れる手段も増えたと感じています。

無茶なアクションでも許容してくれる懐の深さが『仁王』らしさ

──ここ数年のTeam NINJAタイトルでいうと、『Wo Long: Fallen Dynasty』、『Rise of the Ronin』の発売があり、そして『NINJA GAIDEN 4』も控えています。これらのタイトル開発を経験したうえで、『仁王』というIPのコンセプトや骨子がどう定められ、『仁王』らしさがどう定義されたのでしょうか?

安田氏:
『仁王』シリーズはアクションの自由度が高いゲームである、という点は、とくに強く意識しました。『Wo Long』の化勁であったり、『Rise of the Ronin』の石火であったり、パリィに集約されたアクションがありましたが、『仁王3』はより多様で自由なアクションができることを重視しています。

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この自由なアクションというものが、新たな軸として取り入れたオープンフィールドに加わり、これまでであれば高いところからの落下攻撃であったり、背面を取ったりという、特定のシチュエーションでしか行動の選択肢がなかったところに、より立体的なアクションや、辿るルートの自由度など、プレイヤー自身に委ねられることが多くなっているんですね。

オープンフィールドに関しては、『Rise of the Ronin』を手がけたことの影響が大きくあると思っています。『仁王3』の開発と並行しながら『Rise of the Ronin』を進めていたこともあって、広大なフィールドの見せ方や技術的なノウハウの面など、さまざまなところで役立っています。

──『仁王2』や『Rise of the Ronin』のアクションって、ピーキーな戦い方を許容してくれる懐の広さがありますよね。ビルドによっては「やられる前にやる」が通用する。こちらの強さを許してくれるゲームデザインがプレイヤーに心地よさを与えていると思っていて。

安田氏:
パリィとか、攻撃に転じるきっかけがあるから、という部分も含めてですよね。

──『仁王2』のときは、超短期決戦のビルドにしていて、相手の攻撃をすべてかわすのは難しいから、超密着で超火力の攻撃をぶつけて倒す、というプレイスタイルだったんですね。大太刀を担いで30秒で倒しきるという戦い方をしていて……。

安田氏:
30秒で倒しきるか、もしくは20秒で死ぬかという感じですよね(笑)。

たしかに、Team NINJAのゲームにはそういうところがあると思います。これは誉め言葉じゃないんでしょうけども、「理不尽に理不尽をぶつけるゲーム」とプレイヤーさんからよく言われていて(笑)。

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──その懐の広さって、なかなかほかのアクションゲームではないんですよね。まさにそこがTeam NINJAのアクションの際立ったおもしろさのひとつだと思います。そういった戦い方をしなくてもいい、というところも含めた懐の広さ。

安田氏:
近接アクションに間違いなく比重を置いているとは言え、ある程度の距離からでも対応できるようになっていますからね。

でも、おっしゃったように「攻める人が損をしないように」というのは、Team NINJAの考え方にあるかもしれないです。アクションゲームや格闘ゲーム的な思考かもしれませんが、リスクを取るのであれば、当然リターンもあるべきです。攻める人が損をするというのは間違っているといいますか。

──今作の柱として、オープンフィールドのほか、戦闘時のスタイルの切り替えがあります。それぞれのスタイルのおもしろさをどのように考えて設計されたのでしょうか?

柴田氏:
まず手触りやプレイ感覚がそれぞれのスタイルで大きく違うものにしようと決めていました。そのうえで、サムライが持つイメージ、ニンジャの持つイメージもしっかり反映させる。

正面から敵の攻撃を受け、弾きながら強力な一撃を放つサムライ。そして、ヒットアンドウェイや忍術で攻撃するなど、敵を翻弄するような機動力のある戦い方ができるニンジャ。それぞれのスタイルの個性を考えながら、戦い方を突き詰めていきました。

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(画像はSteam:仁王3より)

一方で、どちらかが明確に強い・弱いとはしたくなかったので、それぞれの特徴をどう磨いていくかという点はかなり苦労しました。体験版を配信する直前くらいに着地点が見えて、結果としてプレイした方からのアンケートでも同じくらいの割合の人がそれぞれのスタイルを評価してくださったので、ほっとしました。

ゲームとして「両方のスタイルを交互に使わないとダメ」というデザインにならないよう、気を配りました。もちろん、プレイヤーはそういう戦い方をしてもいいのですが、プレイヤーが好きなスタイルだけでもクリアできるものにしたかったんです

──その自由度がプレイヤーに委ねられているのが、プレイの気持ちよさにつながっていると感じました。

安田氏:
『仁王』のときも「構え」について同じような話があったんですね。「この構えはこの敵と相性がいいよね」はOKですが、「この構えじゃないと勝てない」はダメだよね、という設計思想がありました。

ですので、今作も「このスタイルじゃないとダメ」とならないように万全の注意を払っています。

『仁王2』TGS試遊のクリア率は約3%。今回は5%を予想?

──TGSの試遊では、強力なボスである武田信玄に挑むものと、オープンフィールドでの探索を楽しめるもののふたつのシチュエーションが用意されています。それぞれの見どころをお聞かせください。

安田氏:
ほんとはひとつのほうがいいのかもしれませんが、シリーズが3作目にもなると、いわゆる訓練された『仁王』プレイヤーといいますか、強火の『仁王』ファンといいますか(笑)。

ご来場いただく方の中には、相当ゲームに習熟した方もいらっしゃるんですよね。ですので、そういった方には信玄と戦って満足していただき、初めて『仁王』に触れる方にはオープンフィールドを触ってみてほしいと思っています。

Team NINJAタイトルって悪名高いじゃないですか。「あそこのゲーム、絶対難しいよね」って(笑)。

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──難しいとは思われてますよね(笑)。

安田氏:
でもぜんぜんそんなことはないよ、っていう……。

柴田氏:
ぜんぜん……!?(笑)

安田氏:
「難しく」なくはないけど、今作はそこまででもないんですよ(笑)。

──(笑)。プレイしていて「このアクションを覚えたら勝てるんじゃないか?」と感じさせるところが、またタチが悪いですよね(笑)。

安田氏:
(笑)。でも、過去のシリーズに比べると初心者の方にも優しくなってはいます

いまだに覚えているんですけど、2019年のTGSに出展した『仁王2』の試遊では、プレイをスタートしたあとに、操作方法の紙を見るなどして画面から目を離すと、敵にやられてゲームオーバーなってしまっていたんですね。

一同:
(笑)。

安田氏:
何もしていなくても敵がウロウロやってきて、ボコボコにしてくるという(笑)。

ただ今回はそういう風にはなっていません!

オープンフィールドのタイトルはシリーズにとっては新たなチャレンジですが、同時に新規の方に触っていただきやすくするための変化でもあります。オープンフィールドのアクションRPGとして、探索などを中心に触っていただければと思います。

──探索でも強くなるゲームデザインですから、RPG好きな方だったら問題なくプレイできますよね。

安田氏:
まさに、アクションが苦手な方でも楽しんでいただけるように、探索中心のシチュエーションを用意しています。もうひとつの強敵・武田信玄と戦うシチュエーションは、「絶対に勝つ」と目が血走っている方におすすめです(笑)

『仁王2』をTGSに出展した際、試遊の強敵に負けた方に「ありがとうございました」と声をおかけしたときに完全に無視されたことがありまして……。たぶん、負けた怒りで聞こえていなかったんでしょうね。その方はそのまま新たに試遊の列に並んでいましたので……。

一同:
(笑)。

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──『仁王』プレイヤーらしさがあふれてますね(笑)。

安田氏:
そういった本気で挑戦したい方には、「クリアしたよ」という証として先着でTシャツをご用意しています。なかなか手に入らない品ですので、ぜひトライしてみてください。

──2019年に『仁王2』を出展されたときには、クリア率が3%だったと発表されていましたが、今回は何%になると予想していますか?

安田氏:
『仁王2』は3%だったんですよね……あ、思い出した!TGS2022で『Wo Long』の試遊を簡単にしすぎたのはその反動ですよ。

柴田氏:
もしかしたら、今回は逆になるかもしれません。『Wo Long』TGS試遊のエピソードを参考にして「歯応えのある試遊にしないとね」と調整したので、クリア率は5%ぐらいになるかもしれない。

試遊版がある程度できたタイミングで、一度ディレクターがプレイしてみたんですけど、たまたまうまくハマってすんなり勝てちゃったんですね。それを見ていたアクションチームが「ムムッ!?」となって、より難しく調整しているんです……。ですので、今回はかなり歯応えがあるかもしれないです。

──そう聞くと逆に楽しみです(笑)。

安田氏:
まあでも『仁王』シリーズは、生放送などで意図せずゲームオーバーになってしまっても、みんな笑顔で受け入れてくれるゲームですから……。

──せっかくですので、アルファ体験版をプレイしていて気になったポイントについてもお聞かせください。空中の敵が倒しにくいことが気になりました。このあたりは製品版までに修正されるのでしょうか?

柴田氏:
空中の敵が倒しにくいというご意見はかなりいただいておりまして、結論からいうと修正します。厄介な敵というのは必要ですが、攻撃が届かない状況があるのは理不尽なラインだと思っています。

ある程度は厄介な存在ではありながらも、サムライだったら上段で斬りつけたり、ニンジャだったら空中攻撃や忍術で撃ち落とせるなど、攻略がはまれば気持ちよく倒せる形に調整しています。

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──なるほど。ちなみに、今回のTGS試遊バージョンは、アルファ体験版のフィードバックを踏まえて改善された内容になっているのでしょうか?

柴田氏:
そうですね。フィードバックいただいたご意見を参考に、さまざまな部分を改善しています。操作系のオプションも変更できるようになっているなど、現時点で入れ込めるものは含んでいます。

──もうひとつうかがいたかったのが、ドロップ品についてです。ドロップアイテムの量が多く、そのため持ち物がすぐにいっぱいになってしまう状況が気になっていたのですが、『Rise of the Ronin』では自動分解・売却設定ができて非常に便利でした。『仁王3』にもこのような機能は追加されないのでしょうか?

柴田氏:
いいご質問です(笑)。

こちらも対応しています。例に出していただいた『Rise of the Ronin』のアイテムの自動分解・売却機能は好評でしたので、『仁王3』でも取り入れることにしたんですね。

オプション設定後に社に入ったら、一定のレアリティでの分解・売却を自動でやってくれるものになっています。

安田氏:
『Rise of the Ronin』開発時、元SIEの吉田修平さんに「今後のTeam NINJAタイトルには絶対この機能を入れてください」と言われていましたので(笑)。

一同:
(笑)。

──『仁王』でハクスラ厳選をはじめると、すぐに所持アイテム数が100個を超えますからね。

安田氏:
厳選でガチャガチャやるのも楽しいところではありますが、オプションにしておけばプレイする方の好みに応じて変更が可能ですからね。

個々のキャラクターがそれぞれの想いを抱えて生きていることを忘れずに、歴史のロマンを描く

──今作はふたつの時代を行き来するというのが、物語にも大きく絡んできますよね。史実と怪異が融合したストーリーも3作目になるわけですが、物語で意識されたところをお聞かせください。

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(画像はSteam:仁王3より)

安田氏:
「時代を超える」という要素によって、これまでのシリーズとは少し毛色が違うと感じられる部分があるかもしれません。ただ史実と怪異を含めた和風ダークファンタジーという点は、変わらない基盤です

史実に登場する戦国武将たちとの協力や対立を通して、彼らの生き様を学んでいくというところは、今作でもしっかり踏襲しています。そこがフックになっている方は『仁王3』も問題なく楽しんでいただけると思います。

柴田氏:
安田が言ったように、『仁王3』の物語は「時を超える」というアイデアが最初にありました。そういった意味では、少しファンタジー色が強くなってはいるのですが、これまで『仁王』が描いてきた史実の部分も大事にしています

たとえば、戦国時代であれば武田信玄の三方ヶ原の戦いであったり、平安時代であれば源頼朝と義経の確執の話が描かれたりと、歴史ファンの方も十分楽しんでいただける内容になっています。

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安田氏:
『仁王』ではウィリアム・アダムス、『仁王2』では豊臣秀吉にスポットを当てていましたが、歴史上で謎めいた部分が多い人物は、やはりロマンがあるんですよね。

ヨーロッパの人がなぜ侍になったんだろうとか、秀吉はどうやって何もなかったところから成り上がったんだろうとか。そうした歴史のロマンは、ひとつ大事なテーマだと考えています。

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──コーエーテクモゲームスさんだからさらっとやってらっしゃると思うんですけど、時代考証・歴史考証がかなりたいへんそうですよね。

安田氏:
当然、気は使います。『仁王』1作目から強く意識はしていましたが、個々のキャラクターそれぞれに想いや意志があって動いている、という点はつねに考えるようにしています

コーエーテクモではほかのタイトルでもそうですが、「歴史上の人物たちの想いや意志」は単純なものにしないように注意を払っています。じつは『仁王』の開発当初、「織田信長を安直にボスにするのはダメ」と社内でストップがかかったんですね。

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──えっ、そうなんですか!?

安田氏:
「織田信長は敵じゃないから」と説明され、設定や描き方を見直したことがありましたが、たしかに、その通りなんですよね。戦国時代や歴史をテーマにゲームをずっと作ってきた会社だからこその意識の仕方だと思います。

──なるほど。では最後に『仁王3』の発売を楽しみにされてる方に向けて、おふたりからひと言ずつメッセージをお願いします。

柴田氏:
TGSの試遊版では、アルファ体験版で皆さんからいただいたご意見を反映させていただいています。ご要望の多かった「転心」のボタンを大技返しだけにしたり、武技の出し方を変えたりなど、いろいろとオプションで設定できるように改善していますので、ぜひ触り心地を試していただければと思います。

オープンフィールドで探索と戦闘を楽しめるシチュエーションを用意していますので、シリーズ作をプレイされたことがない方も、ぜひ遊んでいただければと思います。

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安田氏:
前作からちょっと時間が空いたということもあり、『仁王3』では他タイトルでの経験も含めて、いろいろなチャレンジを行っています。しっかりと進化したシリーズ最新作になっていますので、ぜひ手に取っていただければと思います

アルファ体験版の配信を行いましたが、開発陣が皆さんのプレイしてる姿を直接見る機会はなかなかありませんから、TGSで試遊出展ができる事はそれだけでもうれしいです。強敵にムキになっていても私を無視しないで、構っていただけるといいなと(笑)。

もしTGS会場でお会いできたら、意見をおうかがいしたり、お話ができればといいなと思っています。ぜひ幕張に来ていただいて、できればクリアしてTシャツをもらっていってください。

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約6年ぶりの最新となる『仁王3』は、シリーズの核である高密度なアクションを継承しつつ、初のオープンフィールドと「忍者スタイル」という新たなアクションの導入で、遊びの幅を大きく広げている。

体験版からのフィードバックを活かしてゲームを改善・発展させていく従来の流れも健在で、プレイヤーの意図を汲みつつも、より優れた作品を目指して開発を続けるTeam NINJAの苦心と挑戦が垣間見える。プレイヤーの自由に多くを委ね、「攻める人間が損をしない」ような『仁王』シリーズらしい戦闘は、最新作でも健在だ。

なお、『仁王3』も出展される東京ゲームショウは9月27日-28日が一般公開日となっている。探索メインで新規のプレイヤーでも遊びやすいバージョンに加え、これまでシリーズを遊びつくしてきたファンでも歯ごたえを感じられるような強力なボス・武田信玄との戦いにフォーカスした2種類のバージョンがプレイする際に選択可能とのこと。

「死にゲー」として発展しつつ、より挑みやすいアクションという挑戦も続ける本作は2026年の発売予定だ。研ぎ澄まされてゆく本作の今後に期待したい。

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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