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Switch 2版『FF7リメイク インターグレード』開発者インタビュー。携帯モードでも据え置き機と遜色のない体験を実現できた背景を訊いた

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任天堂のゲーム機でリメイク版『ファイナルファンタジーVII』が遊べてしまう。
その事実だけでも感慨深すぎる……!

それがスクウェア・エニックス社内でNintendo Switch 2版『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』(以下、FF7Rインターグレード)を先行体験した時、筆者が感じたことだった。

詳細は長くなるため割愛するが、1997年発売のオリジナル版『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)は、初めてプレイステーションに向けたナンバリングの新作として誕生。その新展開は大きな話題を呼び、『ファイナルファンタジー』シリーズのみならず、ゲームの歴史全体においても重要な転換期を打ち立てた作品としてその名を残した。

それから20年以上を経て2019年にはオリジナル版『FF7』のHDリマスター版がNintendo Switchにてリリース。そして今度は『FFVIIリメイクシリーズ』が新たな任天堂のゲーム機でリリースされるのだ。

さらに今回の『FF7Rインターグレード』はNintendo Switch 2版と同時にXbox Series X|S、Windows PC版も発売される。発売日は2026年1月22日。あわせて今後の『FFVIIリメイクシリーズ』は、3部作目での完結に向けてマルチプラットフォームへと展開を拡大することも発表されている。

この新たな転換期を迎えることに開発スタッフは今、どんな思いを抱き、今後の制作に臨もうとしているのか。今回、Nintendo Switch 2版を始めとするマルチプラットフォーム版『FF7R インターグレード』の先行体験と同時に『FFVIIリメイクシリーズ』のディレクターである浜口直樹氏にインタビューする機会を得られたので、その模様をお届けする。

Switch 2版『FF7リメイク インターグレード』浜口直樹氏インタビュー:携帯モードでも据え置き機と遜色のない体験を実現_001
浜口直樹氏

浜口氏も、今回のマルチプラットフォーム展開への拡大と、任天堂のゲーム機でシリーズを展開することには特別かつ、運命的な思いを抱いていることを語ってくれた。

「自分の作ったゲームがより多くのゲームファンの方々に届けられ、触っていただけることが1番嬉しいこと」という言葉も出るなど、浜口氏のゲームクリエイターとしての姿勢がうかがえるインタビューとなっている。

また、Nintendo Switch 2とXbox Series X|Sで『FF7Rインターグレード』が発売されることに対し、「2部作目の『ファイナルファンタジーVII リバース』も同じように出るのか……?」と気になったファンの方々も居るかと思われるが、なんと既に開発は始まっているとのこと。その辺りのことも伺ったので、興味のある方はぜひご一読いただきたい。

取材・文/シェル―プ
編集/海ソーマ


Nintendo Switch 2版『FF7リメイク インターグレード体験レポート

今回の先行体験では、Nintendo Switch 2版と10月16日の発売が予定されている携帯型ゲーミングPC「ROG Xbox Ally X」版を選択することができた。なお、Nintendo Switch 2版は携帯モードのみで、テレビモードでプレイすることはできなかった。

筆者は悩んだ末に、Nintendo Switch 2版を選択した。そのため、以降のレポートはNintendo Switch 2版の携帯モードが軸となることをあらかじめご容赦いただきたい。また、今回の試遊ではプレイ中の撮影は認められなかったため、記事中の画像はイメージとなる。

今回の試遊でとりわけ印象に残ったのは『FF7Rインターグレード』の売りのひとつでもある、美しい映像が忠実に描画されていたこと。フレームレートは30fpsに固定されていたが、グラフィック全般で見劣りするような部分はほとんどなく、Nintendo Switch 2の液晶で主人公クラウドのスタイリッシュな動作からミッドガルの夜景がしっかりと再現されていた。

Switch 2版『FF7リメイク インターグレード』浜口直樹氏インタビュー:携帯モードでも据え置き機と遜色のない体験を実現_002
画像は『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』マイニンテンドーストアページより

ゲームスタートから本編開始に至るまで、ロード時間がほとんど気にならなかったのも特筆に値する。PS4版やPS5版でもロード時間はそんなに長くない方だったが、それはNintendo Switch 2版でも変わらずで、進化を遂げたスペックが見事に活かされている印象だ。

携帯モードでプレイ時において気になりやすい、UIの文字サイズに代表される視認性についても良好だった。イベントデモのセリフ表示から、チュートリアル用テキストに至るまで適切なサイズで表示されるため、小さくて読みにくいというようなことはなかった。

そのほか、既にPS4、PS5版を体験済みのプレイヤーからすると、戦闘時の操作で困惑する部分もあった。というのも、Aボタンでコマンド、Bボタンで回避とPSハードとは逆のアサインになっているのだ。それもあって、プレイ中には回避するつもりがコマンドを開いてしまったり、逆にコマンドを開くつもりが回避してしまうといったミスを何度かしてしまった。そのためPS4、PS5版を経験済みでNintendo Switch 2版もプレイ予定の方は注意が必要かもしれない。

以上が筆者による『FF7Rインターグレード』Nintendo Switch 2版の試遊レポートとなる。オリジナルの『FF7』のみならず、最新の『FFVIIリメイクシリーズ』までもが任天堂のゲーム機で遊べるようになったことを思うと、本当に繰り返しになるがプレイ中は感慨深くなってしまった。

『FF7』を基点とする新たな転換期には運命的なものを感じている──ディレクター・浜口直樹氏へインタビュー

──前回、PC版『ファイナルファンタジーVII リバース』のインタビューで、今後の『FFVIIリメイクシリーズ』の展開に関して「来年以降も新しいファンベースに対して『FF7』を知ってもらうことを考えています。」とコメントされていました。それが今回のマルチプラットフォーム展開への拡大だったのですね。

浜口直樹氏(以下、浜口氏):
そうですね。『FFVIIリメイクシリーズ』をマルチプラットフォームで完結編の3部作目を含むすべてを展開し、話題性をどんどん作っていこうということで、今回の発表となりました。

──ちょうど今年の6月で、『FFVIIリメイクシリーズ』はプロジェクト発表から10年を迎えました。今回、新たにマルチプラットフォーム展開へと拡大することになったわけですが、このような転換期を迎えたことに対して今、浜口さんはどのような思いを抱かれているのでしょうか。

浜口氏:
いちゲームクリエイターとしては、自分の作ったゲームがより多くのゲームファンの方々に届けられ、触っていただけることが1番嬉しいことですので、私自身は非常にポジティブに受け取っています。

経営戦略の面でも今回、弊社社長が桐生【※】に変わり、我々スクウェア・エニックスが作るゲームコンテンツはマルチプラットフォームで届けていく、多くのゲームファンに届けられる場で戦っていくことになったのを嬉しく思っています。

今回の『FFVIIリメイクシリーズ』を任天堂のゲーム機やXboxプラットフォームに出すだけで終わり、というようなつもりもありませんので、今後がとても楽しみですね。

※桐生隆司氏:現スクウェア・エニックス代表取締役社長。2023年6月より現職。

──今回のマルチプラットフォーム展開の拡大で、特に象徴的なのは任天堂のゲーム機に現在進行形の『FF』の新作が出ることだと思っています。『FF7』がまた新たな転換期を作ろうとしていることに凄く運命的なものを感じているのですが、浜口さんも同様の思いを抱かれているのでしょうか。

浜口氏:
それは本当に感じましたね……。むしろ「私だからこそいいのかな?」と思いもしました。

元々『ファイナルファンタジー』は任天堂さんのゲーム機で生まれ育ってきたシリーズですが、『FF7』はプレイステーション向けに発売され、それからはソニーさん(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント、SIE)の環境にシフトしました。その意味でも『FF7』って、本当に『ファイナルファンタジー』にとっては基点となるナンバリングなんですね。

ただ、私はいちゲームファンとしてオリジナルの『FF7』を普通に遊んでいた世代ですので、あの当時の開発現場などとは関係性を全く持っていない人間です。そんな自分が今の時代にクリエイターとして、このタイミングで『FFVIIリメイクシリーズ』を届けることは非常に大きな意義があることだと思っていますし、だからこそ今回挑んでいるという部分があります。

スイッチ2に移植して動かすまでは比較的簡単……だったが?

──Nintendo Switch 2版を実際に試遊して、PS5版やPS4版と遜色ない仕上がりになっていて大変驚きました。ほぼそのまま移植されているような印象を抱いたのですが、実際に移植自体はスムーズに行えたのでしょうか。

浜口氏:
いや、結構大変でした。一応、Nintendo Switch 2自体にはメモリが非常に多く搭載されていまして、PS5で作ったゲームを移植して動かすまでに関しては、比較的簡単ではあるんですよ。

──「動かすまでは」ですか?

浜口氏:
はい。Nintendo Switch 2は携帯機であると同時に据え置き機でもあるんですね。ほかのハンドヘルド機……今回の「ROG Xbox Ally X」を例に出しますと、基本的にハンドヘルドであってもフルスペックじゃないですか。

Nintendo Switch 2は携帯モードと据え置きモードで違う部分もありますから、消費電力の関係を考慮する部分がありまして、それを踏まえて多少下げたスペックで動作させることに注意を払うことが結構あったんです。

ですから、単純に移植をするだけだとフレームレートやグラフィックを安定させられず、ユーザーさんが満足のいくものにはなりにくいと感じました。そのため最適化に取り組んだんです。

特に今回は私のチームのグラフィックエンジニアが本当に、最後のギリギリまでチューニングをしてくれました。それによって今回の移植が実現できたのはとても大きなことだと思っていまして、非常に上手く頑張れたという手応えがありますね。

Switch 2版『FF7リメイク インターグレード』浜口直樹氏インタビュー:携帯モードでも据え置き機と遜色のない体験を実現_003
画像は『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』マイニンテンドーストアページより

──グラフィック周りもそうですが、ロード時間をほとんど感じなかったのも印象的でした。

浜口氏:
そこはNintendo Switch 2のスペックの恩恵が大きいです。既に発表されているように今回、パッケージ版はゲームカードではなくキーカードの方式を採用しているのですが、これは読み込みの速度が圧倒的に違うことが理由なんです。

特に我々のような最先端のコンシューマ機の環境上で作られたゲームを動かす場合、ゲームカードの環境でテストしてみると、読み込み速度で結構厳しい結果が出てしまうんです。

今回のNintendo Switch 2版を形にできたのは、任天堂さんが実現するための選択肢を設けてくれたことが大きいです。これによって我々の『FFVIIリメイクシリーズ』に限らず、他の最先端のコンシューマ機の環境上で作られたゲームもまた、Nintendo Switch 2で続々展開できるようになっていくことをひとりのゲームファンとして楽しみにしています。

──フレームレートについては『FF7Rインターグレード』のグラフィックモード設定時と同じく30fps動作となっていましたが、本編には凄くたくさんのフィーラー【※】が飛び交うイベントがありますよね。あのような場面でもフレームレートは安定して維持されるのでしょうか。

※フィーラー:『FF7』リメイクシリーズで初登場したキャラクター。黒いローブを着た幽霊のような姿をしており、人によって見えたり見えなかったりする謎の存在。オリジナル版の『FF7』には登場しない。

浜口氏:
はい、ちゃんと動いています。今まさにマスターアップに向けた作業をやっている最中でして、チーム内でも「ここはどうする?」とのやり取りが続いているんですが、全編を通して安定した状態でお客さんに届けること我々の目標として掲げていますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

──ちなみにROG Xbox Ally Xの場合は、ほとんどフルスペックで動く感じになるのでしょうか。

浜口氏:
はい、こちらはハイエンドのノートPCに近いスペックを持っていますので、フレームレートなどで違いは出ますね。Nintendo Switch 2はSteam Deckと近いスペックですので、最終的には同等のパフォーマンスになりそうだということが現時点でお伝えできることです。

──携帯機という話題が出ましたが、「ROG Xbox Ally」に限らず、近年は携帯型のゲーミングPCがどんどん増えてきています。浜口さんはこのようなハンドヘルド機の普及とそこにゲームを積極的に出して行くことに可能性を感じていらっしゃるのでしょうか。

浜口氏:
可能性は凄く感じています。ユーザーの皆さんが一般的に考える自宅でゲームを遊ぶ時のスタイルって多分、リビングにある大きなテレビの前に座って遊ぶというものだと思うんです。

ただ、今は世界的にPCの市場が拡大してきていて、リビングではなくて自分の部屋にPCと専用のモニターを置き、マウスとキーボードでゲームを遊ぶ文化も入ってきたりと、ゲームの楽しみ方が人それぞれで変わってきていると思います。

そのような変化の中で、「こういう環境でなければ楽しめません」と我々クリエイター側が決めて作ったコンテンツを届けたりすると分母が単純に減ってしまうだけですから、ユーザーさんのプレイスタイルに合わせてゲーム側が柔軟になっていく必要があると私は思っているんです。

ですから、『FF』だからといって据え置き機じゃないとダメという話ではなく、電車の中で携帯機で遊んでいただいてもいいと思っています。ゲーム本編にしても、今回追加される「ゲームブースト機能」を使っていただき、9999ダメージを常時敵に与えながらサクサク進める遊び方を許容するなど、ユーザーさんがどのように遊ぶかを選べるようにしておくことで、結果として多くの方々に触っていただけるだろうという思いが私の中にはありますね。

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画像は『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』マイニンテンドーストアページより

「ゲームブースト機能」はより多くのユーザーのために。どのプラットフォームでも同じサービスを提供を目指す

──今回の試遊では体験できませんでしたが、先ほどお話にあったように「ゲームブースト機能」というものが今回のNintendo Switch 2、Xbox Series X|S、Windows PC版には追加されると発表されています。既に「強くてニューゲーム」という機能が実装されているなかで、その1段上を行くような機能を追加したのは、多くのユーザーさんに触ってもらうこと以外にどんな狙いがあるのでしょうか。

浜口氏:
そもそも「強くてニューゲーム」って、単純にキャラクターが強すぎるだけで完結してしまっていて、遊びの幅が狭いんですね。

それだけじゃなく、例えば「戦闘は楽しみたいけどやられてしまうのは嫌だから無敵状態で遊びたい」みたいにユーザーさんが遊び方を決められるようにした方が幅が広がると同時に、それが今の時代なりの楽しみ方じゃないかなと思ったんです。それを踏まえてゲームブースト機能を追加して、細かくオプションで設定できるようにしました。

また、任天堂ゲーム機のユーザーさん、Xboxプラットフォームのユーザーさんに向けて『FFVIIリメイクシリーズ』を今後すべて展開していくとの発表を受けて、初めてプレイされる方々も多くいると思うんですね。

ただ、やりたいとは言っても「40~50時間かかるものを連続して遊んで3部作目を待つのはさすがに厳しい……」となるユーザーさんも中にはいるだろうなと思うんですよ。

──確かに『FF7Rインターグレード』単体でも30時間以上はかかりますし、『FF7リバース』に関しては「ワールドレポート」などの寄り道要素も全部やろうとなれば100時間を平気で超えてしまいますからね。

浜口氏:
その辺りのハードルを下げることで、より多くのユーザーさんに触ってもらえないだろうかとの思いから、ゲームブースト機能を追加したという経緯があります。

──ちなみにゲームブースト機能は今後、PS5とPCの『FF7Rインターグレード』にもアップデートで追加されるのでしょうか?

浜口氏:
いい質問をありがとうございます。今の時点では明言できないのですけれど、追加は検討しております。

私個人としましては、基本的にマルチプラットフォームで『FFVIIリメイクシリーズ』の3部作を届けるに辺り、どのプラットフォームでも同じサービスを提供したいと考えています。

前にPC版の『FF7リバース』を出した時にも、ライティングのクオリティ向上を図るアップデートを実施したのですが、「同じものをPS5版にも!」とファンの方々から要望がありました。今、そちらもようやく目途が見え始めてきましたので、どこかのタイミングで適用したいと思い、準備を進めています。

ただ、今のチームは現在、完結編となる3作目の制作に注力しているのと、開発リソースと作業優先度などの関係もあって、具体的な時期についてはお約束することができないんです……。どのプラットフォームでも同じ体験をしていただけるよう目指したいと思っていますので、いまは暖かく見守っていてほしいですね。

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画像は『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』マイニンテンドーストアページより

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ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop
編集・ライター
『The Elder Scrolls』や『Dragon Age』などの海外RPGをやり込むことで英語力を身に付ける。個人的ゲーム史上ナンバーワンヒロインは『Mass Effect』のタリゾラ。 面白そうなものには何でも興味を抱くやっかいな性分のため、日々重量を増す欲しいものリストの圧力に苦しんでいる。

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