発売から4周年を迎える『ストリートファイター6』。
2026年6月6日に配信された「Summer Game Fest Live Kickoff Show」にて、『ストリートファイター6』の「Year4」追加キャラクターが発表となった。
「ヤスミン」「アルジュン」という新キャラの参戦が明らかになったほか、「ボシュ」がプレイアブル化、さらに『ファイナルファンタジーVII リメイク』シリーズ(以下、『FF7R』)とのコラボキャラである「ティファ」の登場も大きな話題となった。
そこで電ファミでは、メディア向け試遊イベントであるSGF Play Daysの会場にて『スト6』プロデューサーの松本脩平氏、ディレクターの中山貴之氏にインタビューを実施。
「ティファ」登場の経緯はもちろん、新キャラ「ヤスミン」のフィリピン、「アルジュン」のインドなどキャラクターのルーツにまつわる背景、「ストリートファイター」らしさについてまで、さまざまなお話を聞くことができた。本稿では、そのインタビュー内容をお届けしていく。
「イングリッド」登場で、過去最高の同接数を記録。『FF7R』より「ティファ」コラボの経緯も
──5月末に「イングリッド」【※】が配信されましたが、反響はいかがでしょうか。ユーザーも盛り上がっており、開発陣にも届いているのではないかと思います。
松本脩平氏(以下、松本氏):
そうですね。そもそも「イングリッド」は久しぶりに出てきたキャラクターで、かわいいし、いいキャラです。
数字的な面でいうと、Steamの同接(同時接続者数)もリリース時を超えて過去最高になったり。いろんな人に話題にしていただいたり。チームでも認識していますし、ありがたいなと思っています。
中山貴之氏(以下、中山氏):
うれしいですね。
松本氏:
うれしいです。

※イングリッド…
2004年に稼働した格闘ゲーム『CAPCOM FIGHTING Jam(カプコン ファイティング ジャム)』にて初登場、のちにPSP版『ストリートファイターZERO3↑↑(ダブルアッパー)』などの作品にも登場した、謎多き美少女ファイター。「Year 3」追加キャラクターのトリを飾った。
──「Year 4」の追加キャラとして「ヤスミン」、「アルジュン」の新キャラのふたり、プレイアブル化した「ボシュ」、そして『FF7R』とのコラボキャラとして「ティファ」【※】が発表されました。「ティファ」の登場について、「ファイナルファンタジー」とのコラボレーションが実現に至った背景や経緯を聞かせていただけますか。
中山氏:
もともと、2年半〜3年ほど前から、お話をさせていただいていたんです。
スクウェア・エニックスさんに共通の知人がいたことから話が盛り上がり、その後、東京ゲームショウのSamsungさんのイベントで、私と『FF7R』ディレクターの浜口直樹さん【※】が共演したことで、一気に具体化していったというところが大きいですね。
松本氏:
東京ゲームショウは2023年9月でしたよね。リリースして3ヶ月後ぐらいのことでしょうか。
中山氏:
そうですね、そのときにはもうすでにお話をしていました。

※ティファ…
『ファイナルファンタジーVII』およびそのリメイク『FF7R』シリーズに登場するヒロイン。素手の格闘術(マーシャルアーツ)を駆使して戦う。
※浜口直樹氏…
スクウェア・エニックスのゲームディレクター。『ファイナルファンタジーVII』リメイク3部作において、第1作で共同ディレクターを務めたのち、第2作『リバース』および完結編『リベレーション』のディレクターとして開発を指揮する。
──浜口さんとやり取りをする中で、コラボキャラについて「ティファでいこう」と決まっていったのでしょうか。
中山氏:
あっ、それは浜口さんと共演するよりも前のことかもしれません。
松本氏:
「ティファを登場させよう」というアイディアは、それより前から話に上がっていました。
中山氏:
先方から、「たとえばティファはどうですか」というお話をいただいたんです。
もともとコラボはぜひやりたいと話していたので、当時から「もし実現するなら、やはり『ティファ』でしょう」という話になっていたと思います。
松本氏:
彼女はもともと、格闘キャラですしね。
「ティファ」を『スト6』に落とし込む。「ノムテツ先生」をふくむ『FF7R』チームとの調整の背景
──格闘ゲームのキャラクターとして「ティファ」を『ストリートファイター6』に落とし込むにあたり、設定やグラフィックデザインなどを調整する過程があったかと思います。その中でこだわった点や、意識されたことを教えていただけますか。
中山氏:
やはり、対戦格闘ゲームとしての視認性を考慮すると、手や足の動きが印象的に映るよう、パンチやキックがしっかりと当たっているように見えるデザインに調整しがちになります。
そこで、まずは我々の方で一度リファインしてデザインをさせていただきました。そしてそれをスクウェア・エニックスさんのチームにチェックしていただき、かなり細かなやり取りのリレーをしました。「もうちょっとだけ肩幅を……収まらないですかね?」とか。
──(笑)。
中山氏:
ノムテツ先生(野村哲也氏)【※】とも、こういった細かなやり取りをさせていただきました。
※野村哲也氏…
スクウェア・エニックスのクリエイター・デザイナー。原作『ファイナルファンタジーVII』のキャラクターデザインや『キングダム ハーツ』シリーズのディレクターとして著名であり、『FF7R』シリーズではクリエイティブ・ディレクターを務める。
──そうしたやり取りをされているのは、『FF7R』のチームなのでしょうか?
中山氏:
そうですね。野村さんをはじめ、チームのみなさんにお世話になっています。めちゃめちゃレスポンスがはやくて、助かっています(笑)。
そういったやりとりがありつつ、デザイン画や表情など、細かなところも協力いただき、すり合わせをしながら作らせていただきました。

──デザインに関してさまざまなこだわりがあるとのことですが、追加コスチュームの構想などもやはりあるのでしょうか。
中山氏:
あります。
……ですが、まだ詳しくはお話しできません。でも、きっとみなさんに喜んでいただける内容になっていると思います。
──発表では「マテリア」など『FF』のシステムを格闘ゲームへ落とし込むというお話もありましたが、開発現場での試行錯誤やこだわりについて教えてください。
中山氏:
「原作の魅力的な部分や印象的な要素はできる限り落とし込みたい」という思いのいっぽうで、そのままでは格闘ゲームのシステムとして噛み合わない部分も出てきます。そのため「こういうネタで考えてるんですが、いかがでしょうか」といったやり取りを丁寧に重ねてきました。
昨日「今は言えないんですけど」って言っちゃったから、まだ言えないのですが(笑)。いろいろなところにこだわって作っています。
松本氏:
ファンの方にとっては、うれしいポイントだと思います。
中山氏:
私自身も、もともとすごく遊んでいたタイトルなんです。「これは絶対にやりたいよね」というアイディアがありましたし、バトルや演出を担当している開発チームからも「こういうことをやりたいけれど、スクエニさん側でOKが出そうか」といった提案がたくさん上がってきました。
すごく建設的に、良い関係値を築かせていただいています。

──スクウェア・エニックスさんからは、すんなりOKが出たり、あるいはNGが出たりといったことはあったのでしょうか。
中山氏:
OK・NGのやり取りはありますが、基本的にはOKをいただいています。
──では、「ストリートファイター」サイドとしてやりたいことに対して、かなりスムーズに進んでいるのですね。
中山氏:
そうですね。アートの部分だけでなく、アーケードモードの演出やイラストなどもふくめて、本当にしっかりと細部まで見ていただいているという感じです。
──スクエニさんとのやり取りの中で、「ここはちょっとこだわらせていただいた」といったような部分はありますか?
中山氏:
遊びの部分ですかね。……すみません、まだあまり言えないですね(笑)。
松本氏:
だいぶこだわってますから。
──さきほど中山さんも「ファイナルファンタジー」をプレイされていたというお話がありましたが、中山さんから見たキャラクターとしての「ティファ」の魅力や、とくにここを見てほしいというポイントはありますか。
中山氏:
「ティファ」は原作でも格闘術をベースに戦う姿がすごくスタイリッシュで格好いいキャラですよね。その魅力が「ストリートファイター」の世界に落とし込まれるとこうなる、という部分をみなさんに見ていただけると思います。
具体的に言うと、技をこだわって作っています。
どの新キャラも「新しい主人公にするんだ」という想いで制作
──これまでは過去作のキャラクターが追加されることが多かったなかで、「ヤスミン」、「アルジュン」という、完全新規のオリジナルキャラクターをリリースする狙いを教えていただけますか?
中山氏:
作りたかった……(笑)。
──(笑)。
松本氏:
いつもお話ししていることではあるのですが、各方面から「この地域のキャラクターがほしい」といったご相談やリクエストをいただく機会があるんです。
中山氏:
そうそう。
松本氏:
それで、今回の「Year 4」に登場する新キャラクターたちについても、じつは2〜3年ほど前から話を進めていました。
非常に人口が多い地域であることもあって、新キャラクターの国籍としてまずインドを対象に入れたかったんです。
中山氏:
現地でのプレイヤー数も、少しずつ増えてきていますからね。

松本氏:
そしてもうひとつ、フィリピンのキャラクターをぜひ入れたいという思いがありました。
というのも、格闘ゲームコミュニティに携わっているメンバーや、実況でおなじみのヴィシャス(ジェレミー・ロペス氏)など、みなさんがよく知る主要なメンバーには、じつはフィリピンにルーツを持つ方が多いんです。
そういった背景もあり、コミュニティのみなさんにも「おっ!」と驚き、喜んでもらいたいという狙いがありました。そこで、新キャラクターの国籍にはインドやフィリピンを起用しようという話になり、「では、具体的にどんな格闘技を使い、どんなキャラクターに仕上げていくか」を深掘りして考えていった、という流れになります。
中山氏:
あとは、シリーズの歴史を振り返ったときに、まだ「ストリートファイター」に登場していない国を取り上げたかった、という思いもありました。
──フィリピンのキャラクターは、いままで登場していなかったのですね。
中山氏:
はい。今回がはじめてになります。
──ネット上でも、「ついにフィリピンのキャラクターが来たぞ!」と話題になっていましたね。
中山氏:
2027年で『ストリートファイター』は40周年を迎えることもあり、「国と格闘技の結びつき」という点でも、「もう新しいネタが出尽くしているのではないか」と思われるような状況だったんです。
そこで目を向けたのが、フィリピンの格闘技でした。これらは過去のシリーズでもまだ取り入れていませんでしたし、ゲームのバトルとしても映えるんです。

──「ヤスミン」と「アルジュン」はそれぞれ、戦い方のコンセプトやデザインなど、どのような狙いのもとに生まれたキャラクターなのでしょうか。
中山氏:
まず「ヤスミン」についてですが……私はどのキャラクターを制作するときも、毎回「新しい主人公にするんだ」という想いを込めて作っています。今作のパッケージこそ「ルーク」ですが、極端な話、誰がパッケージになってもおかしくない、どのキャラクターを使っても主役になれるように開発しているんです。
「Year 4」の主人公ポジションを担うとしたら「ヤスミン」だろう、という話もしています。非常に主人公気質なキャラクターに仕上がっています。
──「アルジュン」はいかがですか?
中山氏:
「アルジュン」は、大柄な体格をしていますが、腕が伸びたりするわけではありません。「インドのファイターを作りたい」という思いがありました。
さきほど松本が言ったように、インドは非常に人口が多く、実際に『ストリートファイター』をプレイしてくださる方も増えています。
しかし、これまでのシリーズではインド出身のキャラクターといえば「ダルシム」しかいませんでした。そこでもうひとり新しいキャラクターを投入したいと考え、制作に至ったという経緯があります。

松本氏:
現代のプレイヤーにも受け入れられやすい、今どきのテイストに仕上がっていますよね。
中山氏:
そうですね。今どきの要素がしっかりと入っていると思います。
──インドとフィリピンの格闘ゲームシーンはいかがでしょうか?
中山氏:
これからもっと盛り上がってほしい、という期待を込めています。
松本氏:
2年、3年後に大きな火がついてくれたらと思っています。どちらも人口が多い地域ですし、フィリピンを例に挙げると、周囲には多くの東南アジア諸国があります。
まずはフィリピンがブームの中心となって、そこから周辺国へと熱気が広がっていってくれたらうれしいですね。
インドも人口が非常に多いので、ゆくゆく成長していったときに、彼らの中にちゃんと『ストリートファイター』があると、ブランドとしてもいいなって思います。

トータルで2年半を注ぎ込んだ、「ヤスミン」デザインへのこだわり
──「ボシュ」のプレイアブルキャラクター化も話題になっていますが、開発チームとして「いずれ彼を使えるようにしたい」という思いは最初からあったのでしょうか。
中山氏:
じつは、いちばん最初からそれをやるつもりだったんです。前日譚のマンガをはじめ、いろいろなところに伏線がたくさん張ってありました。ですので、「いつか必ず実現したい」とずっと思っていました。


──「ヤスミン」と「アルジュン」は完全新規のキャラクターですが、これまでの展開の中で、彼らに関するヒントや伏線のようなものはあったのでしょうか。
中山氏:
これまでは、まったくなかったと思います。
とくにその2体に関しては、アーケードモードなどをプレイしていただければ、ほかのキャラクターとの関わりは当然描かれるのですが、過去のストーリーの中で「匂わせ」のようなことは、おそらく一切していません。
そのため、今回から新しくゲームを始める方であっても、事前の知識なしに「ヤスミン」と「アルジュン」の魅力をそのまま受け入れてもらえるのではないかと思っています。
──「ヤスミン」と「アルジュン」のデザイン面で、こだわった部分や「ここを見てほしい」というポイントはありますか。
中山氏:
具体的な戦い方についてはまだ明かせないのですが、「アルジュン」に関しては、ただゴリゴリに太いマッチョというわけではなく、しなやかさを持たせています。
それと、じつはすごくイケメンなんですよ。
先日、私がSNSにアップした、息を「フーッ」と吹きかけているシーンの画像は、頬が膨らんでいて顔立ちがよくわからなかったと思うのですが、公開されているPVを観ていただくと、シュッとした端正なイメージが伝わるかと思います。

──「ヤスミン」がナイフを使って戦うのは、フィリピンの文化的な背景からきているのでしょうか。
中山氏:
その通りです。フィリピンの伝統武術である「シラット」で使う、「カランビットナイフ」という種類のナイフを持って戦います。
松本氏:
しっかりとフィリピンの要素を入れ込んでいるので、ビジュアル面にもぜひ注目していただけますと。
中山氏:
「ヤスミン」は、デザインが決定するまでにすっごく時間がかかったキャラクターなんです。なかなかしっくりこなくて……。あと、ちょっと気を抜くとイロモノになりがちなので、うちのチームってデザインが。そうならないように試行錯誤しました。デザインは、「ヤスミン」がいちばん苦労したかもしれません。

──企画の立ち上げからデザインの最終決定まで、どれくらいの期間がかかったのでしょうか。
中山氏:
そうですね……1年半くらいはデザインを描き続けていたのではないかと思います。
松本氏:
ですので、企画発足からのトータルでいえば、本当に2年半ほどかかっているのではないでしょうか。
中山氏:
没デザインが、ビックリするぐらいあります(笑)。
──リサーチも、入念に行われたのではないでしょうか。
中山氏:
そうですね。リサーチはもちろん行いましたし、開発スタッフの中にフィリピンにルーツを持つメンバーがいたので、そのスタッフに直接ヒアリングをしたりもしました。「何を大事にしてるのか」といった部分を聞かせてもらったり。
それだけでなく、キャラクターの名前のアイディアや、技の名前など、いろいろなところで協力してもらいました。

