「俺もラシードって名前なんだ!」 ──馴染みある名前のファイターだからこそ、愛着がうまれる
──「ヤスミン」という響きには、どことなく異国情緒というか、独特の雰囲気がありますよね。
中山氏:
そうですね。
松本氏:
アジア圏ならではの雰囲気がありますよね。
──日本人からすると、決して耳馴染みがないわけではないけれど、なんとなく「自分たちとは少し違う文化のバックボーンがあるな」と感じさせる響きがあります。
中山氏:
フィリピンは非常にいろんな宗教観や、人種のひとびとが集まる国で、それらが混ざり合うことで、すごく面白い独自のミックスカルチャーが生まれているんですよね。キャラクターを通じて、そうした独特の空気感を少しでも表現できたらいいなと思っています。
名前に関しても、たくさんの候補を挙げて考えていたのですが、結果としては結構すんなりと決まった方かもしれません。
松本氏:
「ヤスミン」という名前に決定するまで、早かったですよね。

──「ヤスミン」という名前の意味や、この名前に決まった決め手などはありますか?
中山氏:
言葉としての響きが非常に良かったというのもありますし、やはり実際にフィリピンに「ヤスミン」というお名前の方が多くいらっしゃるというのが大きな理由ですね。現地でしっかりと馴染みのある名前にしたかったんです。
それこそ『ストリートファイターV』で登場した「ラシード」も、じつは中東地域で非常にポピュラーなお名前なのですが、それと同じように、現地の方々にとって親しみやすく、わかりやすい名前にしたいという狙いがありました。
──たとえば、地元の球団を応援するような感じなのでしょうか。自分と同じ国籍のファイターが出ることによる反響は、どのようなものなのでしょうか。
中山氏:
前作『ストリートファイターV』での話になるのですが、中東で開催されたイベントで「ラシード」を発表したんです。新キャラクターとして公開した瞬間、会場に「俺もラシードっていう名前なんだ!」という方が何人もいらっしゃったんです。この名前にしてよかったな、と思いました。

松本氏:
自分が使う使わないを別としても、自分のルーツがある国のキャラクターがゲーム内に存在しているだけで、やはり感情移入や愛着がうまれるものだと思うんです。現地の方々に「自分の国を代表するキャラクターが、『ストリートファイター』にいるんだ」と感じてもらえるのは、非常に喜ばしいことですし、そうした声も聞くことがあります。
中山氏:
うちの会社の会長も、ずっと「世界中すべての国の格闘家をゲームに出すんだ!」とおっしゃっています。
松本氏:
おっしゃってましたね(笑)。
中山氏:
「何年かかると思います……?」って……。
一同:
(笑)。
松本氏:
でも、トップがそれほどの熱量を持つくらい、会社としても「自分の国のキャラクターを出してほしい」という世界中からの期待を強く感じているのだと思います。
──やはり、自分の生まれ育った国のキャラクターが、あの『スト6』、あの『ストリートファイター』に登場するというのは、プレイヤーにとって憧れですし、誇らしい気持ちになるのだと思います。
中山氏:
そういっていただけるとね。
松本氏:
うれしいですよね。
新キャラを追加することは、そのまま「ストリートファイター」の世界観や可能性を広げることにつながる
──「Year 4」がいよいよ始まるということで、今後のゲーム環境や運営の方針について、どのような展望をお持ちでしょうか。
松本氏:
新キャラクターの「ヤスミン」が8月3日にリリースされることを発表していますので、まずはそこが大きな起点になります。基本的な運営方針としては、コラボレーションなども実施しつつ、これまで通りしっかりと続けていきます。
2027年には、『ストリートファイター』シリーズが40周年を迎えます。かなり盛りだくさんで熱い展開になっていくのではないか、と感じています。
──「EVO Japan 2026」でもギネス世界記録を達成されるなど大きな盛り上がりを見せましたが、開発陣としても「『スト6』はまだまだこれからいくぞ!」という強い思いがあるのでしょうか。
中山氏:
まだまだ行くつもりです。
松本氏:
その思いの表れとして、完全新規のキャラクターを多く追加しています。『ストリートファイター6』は、これまでのシリーズと比較しても本当に新キャラクターの割合が多いんですよね。
中山氏:
ゲームのリリース(発売)当初から、新キャラクターの数がちょっと多かったですよね。
松本氏:
これだけ新規のキャラクターたちがプレイヤーのみなさんに愛され、人気が出るというのはあまりないことでもあると思います。
新しいキャラクターをどんどん増やしていくことは、今後の『ストリートファイター』というブランドの未来を考えても一番良い形だと思っています。

──たしかに、『スト6』は新キャラが多いですね。ただ、完全新規のキャラクターを投入するというのは、開発側にとっても大きな挑戦ですよね。みなさんはどのような想いで新キャラクターを生み出されているのでしょうか。
中山氏:
プレイヤーのみなさんにとっては「はじめまして」の状態ですからね。
でも、チャンスがあるならば新しいキャラクターを投入していきたいんです。
新キャラクターを追加することは、そのまま『ストリートファイター』の世界観や可能性を広げることにつながるからです。さきほどお話ししたように、まだシリーズで描かれていない国、地域のキャラクターを出すことで、それをきっかけに新しく『ストリートファイター』に興味を持ってもらえる大きなチャンスにもなります。
だからこそ、新キャラクターという挑戦はこれからも続けていきたいですね。
松本氏:
おなじみのキャラクターたちも、登場したその瞬間はみんな「新キャラクター」だったわけです。
そう考えると、多ければ多いほど良いと私は思っています。もちろん、既存のキャラクターたちを大切にすることも、同じくらい重要なことではあるのですが。
中山氏:
作るのは、新キャラのほうが大変なんですけどね(笑)。
松本氏:
やはり『ストリートファイター』というシリーズ全体、『スト6』だけでなく、今後やブランドのことを考えると、新キャラクターが絶対にいたほうがいいと思います。
中山氏:
そうですね、いたほうが絶対にいいですね。そう思って制作しています。
「ストリートファイターなのに武器」を叶える線引きと、“スーパー頭突き”から見える「ストリートファイター」らしさの正体
──新キャラを出すにあたって、今までやってなかったことをやったり、他キャラクターとの差別化を図りたいという狙いがあると思います。いろんな表現を試していくなかで、表現の広がりはどれくらい残されていると感じていますか。
中山氏:
そうですね、時代の流行りやトレンドも常に変わっていきますからね。
それこそ、今回発表した「ヤスミン」は武器を使用しますが、これまでの『ストリートファイター』シリーズを振り返っても、武器を持って戦うキャラクターはそれほど多くありませんでした。「バルログ」の爪くらいですよね。
そういった意味では、「どこまでが『ストリートファイター』として許容されるのか」という境界線、線引きがあると思います。ナイフを使ったとしても、プレイヤーのみなさんに「『ストリートファイター』っぽい」と言っていただけることこそが、正解だと思っています。その境界線の中で試行錯誤を重ねながら、表現の幅をさらに広げていこうと考えています。
──ネットの反応を見ても、「ナイフで勝負していいの?」「いや、『バルログ』も爪じゃん」といったような声がありましたよね。
中山氏:
過去には手榴弾を投げてるキャラもいましたからね。
松本氏:
棒術とかね。
──(笑)。
──武器を使っても「ストリートファイターらしさ」が損なわれないというお話でしたが、みなさんはその「ストリートファイターっぽさ」を、どのように捉えられているのでしょうか。
中山氏:
なんでしょうね……。
でも、突拍子もないことはあんまりさせたくないんです。「このキャラクターなら、こういう技を使いそう」という、説得力というか。
松本氏:
キャラクターの見た目で、大体の戦い方が想像できるということですね。
中山氏:
自分が大好きなエピソードがあるんです。『ストリートファイターⅡ』に「エドモンド本田」が登場したとき、企画書に「『スーパー頭突き』という技があります」とだけ書かれていたそうなんです。
──(笑)。
中山氏:
それを見た当時のデザイナーが「スーパーな頭突きって、なんなんだろう」と考えて、あの空中を飛んでいく頭突きになった。
そういったアイディアから着想を得つつ、納得がいく落としどころを見つける。これが面白くもありつつ、難しいところでもあるのですが、そこがカチッとハマったときに、「ストリートファイターっぽさ」があるのかもしれません。

──独特のケレン味というか、「エドモンド本田」のあのデザインだからこそ、あのスーパー頭突きを繰り出してもおかしくないというか、納得してしまいますよね。
中山氏:
そう、おかしくない……おかしくはあるのですが(笑)。
松本氏:
エドモンド本田なら、なんとかしそうみたいな感じですよね。
中山氏:
そうですね、まさに説得力ですよね。
昔、『ファイナルファイト』の企画書に「マイク・ハガー」のダブルラリアットについて、「腕1本でも危険な技なのに、それが腕2本に!さらに危険!」といったニュアンスのことが書いてあって、「そのロジックだよな!」と感じますし、そういうのがやっぱり好きですね。

──『スト6』は、キャラのデザインを見ただけで「あ、こういうファイトをするキャラなんだな」っていうのが、すごくよくわかりますよね。キャラを選択しているだけでもわかるというか。
松本氏:
わかりやすいですよね。雰囲気からなんとなく、想像がつく。
中山氏:
まだビジュアルデザインしか発表していないキャラクターであっても、みなさんが「きっとこんな風に戦うんだろうな」と想像されたものが、そうだと思います。
──今回の新キャラクターたちも、ユーザーのみなさんに色々と戦い方を想像してもらいたいという思いがあるのでしょうか。
中山氏:
そうですね。でも、「アルジュン」は予想が当たらない気がします。まだ全貌が明かされていませんしね。

──なおさら、続報が期待できますね。
中山氏:
みなさんがいろいろと想像を膨らませてくれて、まだ一枚絵しか公開していない段階なのに、もうファンアートを描いてくださる方がたくさんいらっしゃったりするんです。「昨日の今日」というスピード感で描いていただいているので、ありがたいです。
松本氏:
そうそう、本当にそうですよね。
中山氏:
特に、「ヤスミン」なんかファンアートの数がめちゃくちゃ多かったんです。
ギネスも、大会の盛り上がりも、プレイヤーのみなさんのおかげ──開発陣が噛み締める手応え
──最後に、これからもますます盛り上がりを見せるであろう『スト6』の今後について、開発陣としての抱負をお聞かせください。
中山氏:
がんばります!
松本氏:
がんばります!
──(笑)。
松本氏:
これはカプコンでもなかなか前例がないことだと聞いているのですが、いまでもユーザー数が増え続けていたり、同接(同時接続者数)が伸びていたりするんです。
発売から3年が経ち、4年目を迎えるタイトルでこういった現象が起きるというのは、本当にうれしいです。このまま右肩上がりの勢いを維持できるようにしたいです。
中山氏:
この熱気の中で、今まさに遊んでくださっているプレイヤーのみなさんがいるからこそですね。
松本氏:
そう、本当にその通りです。
中山氏:
あとは、私たち自身はあくまで開発チームなので直接的に運営しているわけではないのですが、eスポーツのシーンや公式大会などの盛り上がりも本当に大きいです。
先日の「EVO Japan 2026」でのギネス世界記録達成をはじめ、こうした記録を残せているのも、プレイヤーやファンのみなさんのおかげでここまでやれているというのが、すごく大きいです。遊んでもらえなければ、やっぱり意味がありませんから。
ありがたみをしっかりと噛み締めながら、40周年に向けてさらに頑張っていきたいです。
松本氏:
もっともっと、いろんな方面から、本作を遊んでみたくなる内容にしていきます。
中山氏:
はい、まさにそんな意気込みで取り組んでいます。
(了)
