ゲーム、アニメ、マンガなどのコンテンツにおいて「主人公が最初に登場するシーン」ってけっこう重要な役割を担っていませんか?
主人公がどのように登場するかによって作品全体のトーンや主人公のキャラクター性がわかる、と言っても過言ではないと思っています。たとえば遅刻ギリギリで登校したり、いきなり異世界に飛ばされたり、あるいは激しい戦闘の最中であったり。
さまざまな登場の仕方があるかと思いますが、小説『ムーミン谷の夏まつり』を原作としたポイント&クリックアドベンチャーゲーム『ムーミン:ムーミン谷の夏まつり』の主人公・ムーミントロールの登場シーンはこちらです。
激・虚無!
まるで日曜の夕方から深夜に訪れる「サザエさん症候群」に直面している人の顔つきです。さらに驚くべきことに、リトルミイが話しかけるとなにごともなかったかのように応答してくれました。
普通はあんな状態のときに話しかけられても、うわの空ですよ。

しかも、そのあとフローレンことスノークのおじょうさん(以下、おじょうさん)が現れると「尽くし系」に豹変。おつかいからメンタルケアまで溺愛彼氏のごとく甘やかします。なにを言っても全肯定する姿に器のデカさを感じました。
そこで本稿は『ムーミン:ムーミン谷の夏まつり』の世界最速試遊会で確認できた、ムーミントロールの狂愛っぷりをご紹介していきます。

文/柳本マリエ
100点満点の回答を連発するムーミントロール
インターネットではたびたび「美容院から帰ってきた妻の変化に対して夫がどう反応するのが正解か」みたいな議論がされているかと思います。変化をあえて指摘せず待つ派や「かわいいね」などと全肯定する派などさまざまな派閥があるかと思いますが、ムーミントロールは圧倒的に後者。
おじょうさんを全肯定する姿勢にとにかく感心してしまったので、いくつか紹介させてください。「そこはさすがにちょっと怒ってもいいのでは?」という場面でも、愛でカバー(?)しています。
まずはこちら。いきなりなんの脈絡もなく「あなたが海賊でわたしが絶世の美女なの」と言われたときのムーミントロール。
即座にこんな “仏のような表情” ができますか? さっきまであんな虚無顔をしていたのに?
筆者だったら困惑して思わず聞き返してしまいそう。やっぱり、こういうノリについていけるって「愛」だと思うんです。筆者もこうでありたい。
さらにおじょうさんは、「あざやかなドレス」を着て「めずらしいお花」を耳のうしろにつけたい。ついでになくしてしまった「足輪」も探してほしいと依頼をしてきます。いわゆる、おつかいクエストですね。
するとムーミントロールは快諾のうえ「きみを誰よりもきれいにしてあげる!」と満面の笑み。
すごい。愛情表現がめちゃくちゃストレートだ。
しかし、筆者が驚いたのはこの直後でした。というのも、おじょうさんが真顔でなんの反応もせず、その場を去ってしまったからです。
いや、ちょっとこういうことされると、おじょうさんのこと好きになっちゃうんですけど!
なんだろう。猫みたいだからでしょうか。予測できない言動をされると追いかけたい本能が刺激されるのかもしれません。だって「きみを誰よりもきれいにしてあげる!」なんてストレートに言われたら、たいていの人はなにかしらの反応をしてしまいませんか?
少なくとも筆者には「真顔で立ち去る」はできない。おじょうさんがムーミントロールを沼らせる理由がわかった気がしました。
その後もムーミントロールは、めずらしい花をおじょうさんのところに持って行っては「きみの目の色ともよく合うと思うよ!」と甘い言葉をささやき、おじょうさんが再び足輪をなくしてしまうのではないかと不安になっているときは「ぼくがいればぜったい、そんなことにならないよ!」と励まします。
極めつけは、おじょうさんがドレスアップしたときでした。ムーミントロールに「似合う?」と尋ねます。
ちょっとこれは難度の高い質問ですよ。いままでの言動を見ていると、筆者にはもうなんと答えるのが正解なのかわからなくなりました。なぜなら「ストレートに伝えてもノーリアクションで立ち去る」という前例があるからです。
ムーミントロールの答えは以下でした。
「とってもきれいだよ!」
「今すぐにきみをさらって海賊船にのせていってしまいたい!」
そうです、冒頭でいきなりなんの脈絡もなく「あなたが海賊でわたしが絶世の美女なの」と言われたあの設定をここでしっかり回収。時差で仕掛けてくるのやばい。
膝から崩れ落ちました。ムーミントロール、あんたの愛は本物だよ。
たぶんですが、「模範」ともいえるこれらの回答はおじょうさんを喜ばせるためではなく、ムーミントロールが心の底から思ってることをただ言っただけなのではないかと思います。要は「正解探し」の回答ではなく、本心。
だからきっと、人間関係というのは “本心で語り合うのがいちばん” なんだと思います。私はいったいなんの話をしているのでしょうか。
「ヒントシステム」で視覚的に導いてくれる
さて、ムーミントロールの愛が本物だということはじゅうぶん理解できたので、ここからは操作面についても紹介させてください。
本作はポイント&クリックアドベンチャーゲームです。カーソルを合わせて気になるところをクリックしていくだけでだいたいOK。

筆者がとくによかったと感じた点は、「ヒントシステム」があること。右上の虫眼鏡マークを使うと、調べるべきところや行くべきところを視覚的に導いてくれます。
自分では調べ尽くしたと思っていても見落としていることってけっこう多いですからね(筆者談)。そういう “ちょっとしたこと” をすぐに教えてもらえる便利なシステムです。
もちろんいまの時代、詰まっても検索すればだいたいの答えはすぐに見つかりますが、それを続けていると「だんだんと作業感が強くなり冷めてしまう」みたいな経験ってありませんか?
だけどこのヒントシステムはあくまで “導いてくれるだけ” なので「手柄は自分」としてカウントできました。すべてのゲームにこの機能が搭載されていたらいいのに。
また、今回の体験会では「船を直すパズル」に挑戦することができました。

最初はなにをどうすればいいのかわからなかったのですが、触りながら考えているうちにピンとくる難度になっていて、いい気持ちになれました。
筆者はけっこう察しが悪いほうなので、それでも大きく詰まらずに進行できたということは本作がやさしさでできているからだと思います。全体をとおして “自分で解いた感” を実感できる設計になっている印象でした。
『ムーミン谷の夏まつり』を原作として物語が展開
ムーミントロールが出てくるゲームといえば、2024年発売の『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』や2026年発売の『ムーミントロール:冬のぬくもり』が記憶に新しいと思います。
本作『ムーミン:ムーミン谷の夏まつり』は上記2作品と開発元が異なるため、全体的な雰囲気や絵柄の変化に気づいた方もいるのではないでしょうか。
どちらの開発元もそれぞれのよさがあると思いますが、絵本調のビジュアルだった過去2作と比べて本作はくっきりした線で細部まで描き込まれているため、違った味わいがあります。

また本作は『ムーミン:ムーミン谷の夏まつり』というタイトルのとおり、トーベ・ヤンソンによる小説『ムーミン谷の夏まつり』を原作として物語が展開していきます。
今回の体験会の範囲は最序盤だったのですが、「スナフキンが帰ってこない」という不穏な雰囲気で幕を閉じました。このあとムーミン谷は大洪水に見舞われてしまいます。

筆者が原作を読んだのはもう30年以上も前のため忘れていることも多く、この先の展開もフレッシュな気持ちで楽しめそうです。改めて物語を体験できる機会があるのはうれしいですね。
『ムーミン:ムーミン谷の夏まつり』は11月12日に発売予定。Nintendo Switch、Switch 2、PC(Steam)向けに展開予定となっています。









