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スナフキンのゲームがとにかく心地いい!『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』は圧倒的なビジュアルのよさと美しいサウンドにより、原作ともアニメとも異なる “贅沢な体験” が味わえる

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『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』がとにかくよかった!

“よかった” と感じた部分は明確にいくつかあるのですが、なにより「ムーミン谷に対するイメージが変わらなかったこと」がよかったです。ゲームになったからといってド派手なバトルがあるわけでもなければ、全米を泣かせるようなスケールの大きい物語でもありません。

プレイヤーはスナフキンとなって絵本調のビジュアルで描かれたムーミン谷を自由に歩き回り、厳格な「公園番」が企てる計画を阻止するために力を尽くします。
その途中で、あるときはリトルミイと手を組んだり、スノークのおじょうさん【※】の探しものを見つけたり、ヘムレンさんのコレクションの手伝いをしたり、そこには思い描いていたムーミン谷の姿がありました。

※スノークのおじょうさん
平成版アニメ『楽しいムーミン一家』ではフローレンという名前だった。

クエストをこなしながらオープンワールドになったムーミン谷を探索することでゆっくりとした時間が流れていきます。これが本当に心地いい。

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おそらくこの心地よさの正体は、圧倒的なビジュアルのよさとシガー・ロス【※】のサウンドによるものだと思います。原作ともアニメとも異なる贅沢な体験は本作でしか味わえないでしょう。

※シガー・ロス
アイスランド出身のポスト・ロックバンド。荘厳で重厚ながらも大自然を連想させる音楽性が特徴。筆者としてはリードボーカルを務めるヨンシーのソロアルバム「Go」もおすすめ。

本稿では、『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』の心地よさについて紹介いたします。ネットでは「スナフキンの過激さ」も話題になっていますが、そこは否定いたしません。

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文/柳本マリエ

本稿は『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』の登場キャラクターやストーリーの一部について言及しています。少しのネタバレも避けたいという方はご注意ください。


絵本調のビジュアルがとにかく美しい

まず感動したのは、あのムーミン谷を自由に歩き回れること。“歩くだけで楽しい” という感覚は筆者にとっては『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』以来かもしれません。

ムーミンたちの青い家や水あび小屋、ニョロニョロの島など、原作やアニメに出てきた場所へ行けることに興奮しました。しかもそのビジュアルが絵本調でとにかく美しい。

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さらに驚いたのは寝転がって空を見上げられること。もちろん見上げたところでなにも起こりません。

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所定の場所ではスナフキンの視点となって “ただ空を見上げること” ができる

こ う い う と こ ろ ですよ!
やらなくてもいいことができるようになっているゲームは名作が多いのではないでしょうか。実際に寝転がって空を見上げられるこの仕様により「自分がムーミン谷にいる」という没入感が格段に上がりました。

ここにシガー・ロスの美しいサウンドが流れてくるわけですから。こんな贅沢なゲームがほかにあるでしょうか?

一方でムーミン谷が有する独特の「不気味さ」もしっかりと表現されています。ここからは、本作に登場する風変わりなキャラクターについて紹介させてください。

ちょっと不気味だけど愛らしいキャラクターたち

公式情報によると、本作にはムーミン谷に住む50以上のキャラクターといきものが登場するとのこと。ムーミンパパやムーミンママをはじめリトルミイやスニフといったお馴染みのキャラクターはもちろん、トゥーティッキやフィリフヨンカ、そしてモランも登場します。

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序盤では「モランから逃げる」という場面があり、普通に怖い

出会ったキャラクターに話しかけるとクエストが始まることが多く、服を奪われたニンニやアンクレットを探しているスノークのおじょうさんなど住人たちを助けていくことでコミュニケーションを取ることができます。

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赤がメインストーリー、黄色がサブクエスト

キャラクターについてはビジュアルのよさにくわえて、“和訳のよさ” も際立っていました。ボイスはないものの、言い回しがいちいち刺さる。思わずスクショを撮ってしまう場面が多々ありました。風変わりなキャラクターが魅力的に描かれている理由のひとつは和訳のよさだと思います。

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また、本作ではとくに描かれていない余談となりますが、リトルミイとスナフキンは異父きょうだいで、リトルミイのほうが先に生まれているとのこと。スナフキンの父親はヨクサルといってスナフキンと比にならないくらいの自由人のため、好きになったら苦労するのではないかと思います。

ヨクサルは禁止事項が書かれている立て札を嫌っていました。その性質は息子のスナフキンにも受け継がれているようで、『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』では「立て札」がひとつのキーポイントになっています。

ここからは本作の大まかなストーリーについて紹介させてください。

冬眠から目覚めたらムーミン谷に「公園」ができていた!

物語は、スナフキンが冬の旅からムーミン谷に帰ってきたところから始まります。ムーミンたちが冬眠をしているあいだにいくつもの「公園」が作られ、自然の風景との調和が乱されてしまいました。いたるところになにかを禁止する立て札があり、ムーミンの姿もありません。

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干上がった川

そこでスナフキンはムーミン谷の自然を守るため警察の気をそらしながら立て札を引っこ抜き、行方がわからなくなったムーミンを探す旅に出ます。果たして、“ムーミン谷のあるべき姿” を取り戻すことができるのか、というのが大まかなストーリー。

公園を見つけたら「警察の目を盗んで公園内の立て札をすべて引き抜くこと」で自然が戻り(公園を壊し)、ストーリーが進んでいきます。ステルス要素はそこまで難しくありません。

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公園内にあるすべての立て札を引き抜くと自然が戻る

スナフキンはハーモニカをはじめいくつかの楽器を携え、ときにはその音色を奏でることでパズルを解いていきます。たとえば、「太鼓を叩いて砂ぼこりを起こした隙に逃げる」といったように。

そういった謎解き要素はあるものの、そこで大きく詰まることはなく「はっは〜ん、さてはここでこれを使うな?」と比較的すぐにひらめくので気持ちいいです。

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なぜか「太鼓」だけ手で持ちながら移動するので少しシュール

なかでも筆者がグッときたのは、『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』というタイトルをきちんと回収するところ。さらにクライマックスではサウンドにボーカルが入ることで最高潮に盛り上がり、「このゲーム……やってよかった……」と心から思いました

「ムーミンとスナフキンの友情」「みんなで協力して役割を果たすこと」「ムーミン谷をよくしたいと思う気持ち」など、それぞれの想いが最後にギュッと詰まっています。

詳しい内容についてはプレイする楽しみを奪わないために割愛しますが、エンドロールをこんなにもほっこりした気持ちで見ることができたのは久しぶりな気がしました。いまも余韻に浸っています。


『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』は、原作ともアニメとも異なる贅沢な体験ができるゲームでした。シガー・ロスの曲がゲームで流れることに驚きましたが、大・大・大・大・大正解!

ムーミン谷の美しさとシガー・ロスのサウンドによって、どっぷりとその世界に入り込んでしまいました。プレイ時間は5時間ほど。ゆっくりとした時間が流れるムーミン谷で春を過ごしてみてはいかがでしょうか。

編集部
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちでレベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著「デブからの脱却」(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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