あの『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』開発チームの新作『Moomintroll: Winter’s Warmth』が東京ゲームショウ2025にプレイアブル出展していたので、さっそく遊んできました。

結論を先に書いておくと、歩き回っているだけでつっこみどころが絶えない “愛おしくて笑ってしまう” 癒しゲーでした。絵本調で描かれたちょっと不気味で美しい世界なのに、笑ってしまうんです。
グラフィックの向上や背景の作り込みによって「歩き回っているだけで楽しい」と感じられるゲームが増えている近年ですが、本作におけるそれは、なんというか「楽しい」に加えて「愛おしい」が強い感覚。試遊中に思わず声をあげて笑うという危険人物になってしまうほどのおもしろさでした。
本稿では、実際に試遊して感じた本作の魅力についてお届けしたいと思います。
真冬に “夏を取り戻そうと奮闘するムーミントロール” が愛おしくておもしろい
主人公は、冬眠の最中にうっかり目覚めてしまったムーミントロール(以下、ムーミン)。春もまだだいぶ先というタイミングなので、ムーミン谷もあたり一面が銀世界。
ムーミンは夏を取り戻すべく(夏を取り戻すべく!?)、雪に覆われた谷へと足を踏み出していくところからゲームが始まります。

というか、夏って “取り戻せる” ものですかね?
まずもうこの時点でおもしろい。この「冬眠から目覚めちゃったけど外に出かけてみる」といった状況に関してはトーベ・ヤンソン氏の小説『ムーミン谷の冬』から着想を得ているとのことなので、要するに原作準拠の設定ではあるのだけれども。
そして、マイペースなムーミンもさることながらゲーム全体のビジュアルもとてもいい。絵本調のアートスタイルで描かれた世界が魅力的すぎて、見た瞬間に心を奪われました。

まるで絵本の中のムーミンを動かしているような気分。つい無意味にウロウロと歩き回りたくなります。
深く積もった雪の中を歩くことになるため、体でかき分けた跡がうしろに残っていくのがなんとも愛らしい。ムーミンの体型だと足跡ではなく1本の溝になるんですね。

雪に埋もれたムーミン谷、赤いマフラーを巻いた困り顔のムーミン、もはや水路のような足跡、そして「変なタイミングで冬眠から目覚めてしまったけど夏を取り戻すために雪山へ出発」という状況、すべてひっくるめて愛おしい。

ゲーム開始直後は「おお! 絵本みたいでかわいいな~!」といった調子でプレイしていたのですが、時間が経つにつれてじわじわとおもしろくなってきて、最終的に「ムーミンを動かすだけで声をあげて笑ってしまう」という深刻な状態に陥りました。
このゲーム、見た目の美しさでパッと見はシリアスな印象を受けるのですが、ムーミンの言動を見れば見るほどつっこまずにいられないんです。
強風に吹っ飛ばされるムーミントロールの大回転っぷりが愛おしくておもしろい
特筆すべきは、冷たい強風に吹かれたときのムーミン。
雪玉の如くものすごい勢いでゴロンゴロンと転がってしまいます。

かわいそうすぎてかわいい。
風に当たる位置が悪いと、現実だったら大事故になるような長距離を大回転して吹っ飛ばされるので、それがまた大変シュール。
「強風に当たらないよう避けながら進む」というパートでのその事態は、言ってしまえばただの失敗なのですが、あまりにおもしろい画なので失敗するたびに爆笑してしまいました。なんなら転がるムーミン見たさに自ら強風に飛び込んだり。ごめんねムーミン。

仲間たちとの “独特なテンポの会話” が愛おしくておもしろい
また、道中に出会えるキャラクターたちとの交流もユルさが満点で癒されました。


相手の話を聞いているのか聞いていないのか時折わからなくなるような、独特なテンポの会話がクセになる。
吹雪のような強風が吹き荒れる雪山という過酷な状況なのに常にゲーム全体から温もりのようなものを感じられるのは、こののんびりとしたユルい会話によるものですね。

ちなみに本作は『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』と同じく架け橋ゲームズさんが日本語翻訳を手がけているとのこと。TGS2025のブースに翻訳を担当されている桑原頼子さんがいらっしゃったので、ローカライズについて少しお話をうかがいました。
まず『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』のときの素晴らしい翻訳も見てください。
スナフキン:
公園番…ムーミントロールに髪の毛1本でもふれてみろ…
リトルミイ:
これをぜんぶあたしひとりにやらせるってんなら気が狂ってるわ
どうやらこういったセリフはCEROにも関係するようで、ギリギリを攻めつつ「スナフキンなら、リトルミイなら、こういうことを言うだろう」と自分の中にあるキャラクター像を信じて考えた和訳とのこと。
原作はもちろん、1990年に放送を開始したアニメ『楽しいムーミン一家』でのイメージも大事にしているそうです(このアニメは原作者であるトーベ・ヤンソン氏が制作段階から深く携わっていたらしい)。
実際にプレイすると会話の節々から溢れ出る “温もり” が印象的でした。
美しくも物憂げでどこか切ない雰囲気なのに、歩き回るだけで笑ってしまうような妙なおもしろさもあるという、そんな不思議なバランスが同居した心地よいゲームでした。
プレイ中に謎のタイミングで笑い出した筆者はきっと周囲の人から不審な目で見られていたに違いないとは思うけど。
試遊は、めそめそを雪山から運び終えたところで終了となりましたが、そのほんのひとときですっかりムーミンの世界の虜になってしまいました。原作の『ムーミン谷の冬』が読みたくなるほどに。
ところで小説の方でもムーミンは強風に吹かれてゴロゴロ転がってくれるのでしょうか!?
2026年発売予定の本作、気になる方はぜひ続報をチェックしてみてください。