いま読まれている記事

真冬に目覚めてしまったムーミントロールが夏を取り戻そうと奮闘する姿が無謀すぎて愛おしい。『ムーミン』の新作ゲーム『Moomintroll: Winter’s Warmth』は雪山なのに “温もり” が溢れてる【TGS2025】

article-thumbnail-251001a

あの『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』開発チームの新作『Moomintroll: Winter’s Warmth』が東京ゲームショウ2025にプレイアブル出展していたので、さっそく遊んできました。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_001
どうやら『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』の続編ではないものの、世界観は共通しているよう

結論を先に書いておくと、歩き回っているだけでつっこみどころが絶えない “愛おしくて笑ってしまう” 癒しゲーでした。絵本調で描かれたちょっと不気味で美しい世界なのに、笑ってしまうんです。

グラフィックの向上や背景の作り込みによって「歩き回っているだけで楽しい」と感じられるゲームが増えている近年ですが、本作におけるそれは、なんというか「楽しい」に加えて「愛おしい」が強い感覚。試遊中に思わず声をあげて笑うという危険人物になってしまうほどのおもしろさでした。

本稿では、実際に試遊して感じた本作の魅力についてお届けしたいと思います。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_002

文/退屈健
編集/柳本マリエ


真冬に “夏を取り戻そうと奮闘するムーミントロール” が愛おしくておもしろい

主人公は、冬眠の最中にうっかり目覚めてしまったムーミントロール(以下、ムーミン)。春もまだだいぶ先というタイミングなので、ムーミン谷もあたり一面が銀世界。

ムーミンは夏を取り戻すべく(夏を取り戻すべく!?)、雪に覆われた谷へと足を踏み出していくところからゲームが始まります。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_003
もしこのタイミングで夏になったらムーミン谷の住人たちは困るだろうに

というか、夏って “取り戻せる” ものですかね?

まずもうこの時点でおもしろい。この「冬眠から目覚めちゃったけど外に出かけてみる」といった状況に関してはトーベ・ヤンソン氏の小説『ムーミン谷の冬』から着想を得ているとのことなので、要するに原作準拠の設定ではあるのだけれども。

そして、マイペースなムーミンもさることながらゲーム全体のビジュアルもとてもいい。絵本調のアートスタイルで描かれた世界が魅力的すぎて、見た瞬間に心を奪われました。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_004
切り絵や水彩画を思わせるような雪の世界が幻想的で美しい!

まるで絵本の中のムーミンを動かしているような気分。つい無意味にウロウロと歩き回りたくなります。

深く積もった雪の中を歩くことになるため、体でかき分けた跡がうしろに残っていくのがなんとも愛らしい。ムーミンの体型だと足跡ではなく1本の溝になるんですね。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_005
雪を踏んだときの音もまた心地よい

雪に埋もれたムーミン谷、赤いマフラーを巻いた困り顔のムーミン、もはや水路のような足跡、そして「変なタイミングで冬眠から目覚めてしまったけど夏を取り戻すために雪山へ出発」という状況、すべてひっくるめて愛おしい。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_006
意味もなくクルクル回って変な跡をつけてみたくなる

ゲーム開始直後は「おお! 絵本みたいでかわいいな~!」といった調子でプレイしていたのですが、時間が経つにつれてじわじわとおもしろくなってきて、最終的に「ムーミンを動かすだけで声をあげて笑ってしまう」という深刻な状態に陥りました。

このゲーム、見た目の美しさでパッと見はシリアスな印象を受けるのですが、ムーミンの言動を見れば見るほどつっこまずにいられないんです。

強風に吹っ飛ばされるムーミントロールの大回転っぷりが愛おしくておもしろい

特筆すべきは、冷たい強風に吹かれたときのムーミン。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_007

雪玉の如くものすごい勢いでゴロンゴロンと転がってしまいます。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_008
斧を片手に

かわいそうすぎてかわいい。

風に当たる位置が悪いと、現実だったら大事故になるような長距離を大回転して吹っ飛ばされるので、それがまた大変シュール。

「強風に当たらないよう避けながら進む」というパートでのその事態は、言ってしまえばただの失敗なのですが、あまりにおもしろい画なので失敗するたびに爆笑してしまいました。なんなら転がるムーミン見たさに自ら強風に飛び込んだり。ごめんねムーミン。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_009
一定間隔で穴から風が吹き出してくるゾーンも(成功したい気持ちと転がるムーミンが見たい気持ちが葛藤)

仲間たちとの “独特なテンポの会話” が愛おしくておもしろい

また、道中に出会えるキャラクターたちとの交流もユルさが満点で癒されました。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_010
雪山で迷子になってしまった自称オオカミの「めそめそ」
ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_011
「ぼくはオオカミです」というめそめその自己紹介をガン無視して犬だと譲らないムーミントロールさん

相手の話を聞いているのか聞いていないのか時折わからなくなるような、独特なテンポの会話がクセになる。

吹雪のような強風が吹き荒れる雪山という過酷な状況なのに常にゲーム全体から温もりのようなものを感じられるのは、こののんびりとしたユルい会話によるものですね。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_012
操作中にいきなり独り言をブツブツ言い出すのもかわいい

ちなみに本作は『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』と同じく架け橋ゲームズさんが日本語翻訳を手がけているとのこと。TGS2025のブースに翻訳を担当されている桑原頼子さんがいらっしゃったので、ローカライズについて少しお話をうかがいました。

まず『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』のときの素晴らしい翻訳も見てください。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_013

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_014

スナフキン:
公園番…ムーミントロールに髪の毛1本でもふれてみろ…

リトルミイ:
これをぜんぶあたしひとりにやらせるってんなら気が狂ってるわ

どうやらこういったセリフはCEROにも関係するようで、ギリギリを攻めつつ「スナフキンなら、リトルミイなら、こういうことを言うだろう」と自分の中にあるキャラクター像を信じて考えた和訳とのこと。

原作はもちろん、1990年に放送を開始したアニメ『楽しいムーミン一家』でのイメージも大事にしているそうです(このアニメは原作者であるトーベ・ヤンソン氏が制作段階から深く携わっていたらしい)。

実際にプレイすると会話の節々から溢れ出る “温もり” が印象的でした。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_015


美しくも物憂げでどこか切ない雰囲気なのに、歩き回るだけで笑ってしまうような妙なおもしろさもあるという、そんな不思議なバランスが同居した心地よいゲームでした。

プレイ中に謎のタイミングで笑い出した筆者はきっと周囲の人から不審な目で見られていたに違いないとは思うけど。

ムーミン新作ゲーム『Moomintroll: Winter's Warmth』レビュー・感想・評価:雪山なのに温もりが溢れてる_016

試遊は、めそめそを雪山から運び終えたところで終了となりましたが、そのほんのひとときですっかりムーミンの世界の虜になってしまいました。原作の『ムーミン谷の冬』が読みたくなるほどに。

ところで小説の方でもムーミンは強風に吹かれてゴロゴロ転がってくれるのでしょうか!?

2026年発売予定の本作、気になる方はぜひ続報をチェックしてみてください。

ライター
『どうぶつの森』シリーズや『Minecraft』など架空世界を創造できるゲームを好んでプレイして現実逃避しがちな年中金欠絵描き。 ライブドアブログ『底辺絵描き・退屈健の毎日カツカツ生活』で絵日記更新中。
Twitter:@sentakubasami1
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ