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アトラス×ヴァニラウェアの新作『ユニコーンオーバーロード』はワールドマップが美しいだけじゃなく“想像の10倍”広かった。「SRPG=ステージ制」のイメージをぶっ壊す、新境地を切り拓く【TGS2023】

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キャラロストは“なし”。でも緊張感を保つためのルールあり。

──では次に“仲間”の要素について詳しくお聞きしていきたいのですが、そもそもステージに出撃できる仲間の数ってどのくらいになるのでしょうか?

中西氏:
 最終的には1部隊に5人編成でき、それを10部隊まで出撃できるようになるので、最大50人ですね。

──50人……!

野間氏:
 ただ、初期は1部隊に2人しか入れられません。どういった形で拡張できるのかはまた別の機会でご紹介できればと思います。

山本氏:
 これは空を飛ぶタイプの敵を倒す部隊、これは魔法に弱い敵を倒す部隊……のように色々なチームを用意しておき、他の部隊とのシナジーを考えたりするのも楽しめるのかなと。

野間氏:
 ひとつの部隊の中にもさまざまな兵種のキャラクターを配置できるので、前列に盾役を置いて、後列から弓兵に撃ってもらうというような戦い方ができるようになっています。

『ユニコーンオーバーロード』開発陣インタビュー【TGS2023】_002
(画像はニンテンドーeショップ『ユニコーンオーバーロード』より)

──ありがとうございます。仲間や編成もふくめ、だいぶシステム周りに関する解像度が上がりました。

 以前の映像でエルフ、獣人、天使などさまざまな種族の仲間が登場することが触れられていましたが、彼らとの交流みたいな要素も用意されているんでしょうか?

山本氏:
 はい、本当に魅力的なキャラクターをたくさん用意していますし、それぞれとコミュニケーションを取れるような作りになっています。彼らとの絆を深めていくことによって、ゲーム的なメリットも得られますよ。詳細は続報をお待ちください。

──シミュレーションRPGということで、これはすごく気になっているところなんですが、仲間キャラクターを永久にロストするようなことってあり得るんでしょうか……?

中西氏:
 これは明言できまして、本作にキャラロストはないです。

山本氏:
 過去のシミュレーションRPGでみんなの鮮明な記憶としてキャラロストの印象が残っていると思いますが、キャラロストして、「良かった!」という思い出ではないですよね……(笑)。

一同:
 (笑)。

中西氏:
 ロスト自体は緊張感があって面白いのですが、本作の方向性には合わないだろうとあえて導入しなかった形ですね。ただロストがないからといって難易度的に緩いわけではなく、部隊ごと撃破されるとその戦闘中は再出撃ができなくなるので、ペナルティはきちんとあります。

野間氏:
 プレイヤー視点だと、自分の指揮が悪くてキャラクターをロストしてしまうならまだ納得できるし、それによってドラマが生まれるという方向もありかとは思っていたのですが。

 本作では仲間に関してストーリー中でのイベント的な死も、ゲームプレイによって引き起こされるキャラクターロストもありません。

『ユニコーンオーバーロード』開発陣インタビュー【TGS2023】_003
(画像はニンテンドーeショップ『ユニコーンオーバーロード』より)

──総合的なストーリーとしては“王道”というワードを使われていますが、どのような筋書きになっているんでしょうか。仲間が死なない、と聞くとものすごくダークな展開というわけではなさそうですが。

野間氏:
 主人公・アレインは反乱によって祖国を失った王子という境遇なので、決して物語全体が明るいというわけではないですね。苦しい中で仲間を集め、絆を育てながら強大な悪に挑む……という流れになっています。ひと言でいうならば「貴種流離譚」なので、本当に王道の展開だと思います。

山本氏:
 つい先日発表された宿敵「ガレリウス」は、かつての栄光を取り戻そうとしているキャラクターなんですね。一方でアレインは力による現状変更に抗うために、多くの仲間とともに歩みを進めて圧政にあえぐ拠点を解放していきます。

野間氏:
 血なまぐささもありますが、少しファンタジー要素を入れているんです。僕自身、ガチガチのリアルよりもちょっとウソを混ぜた“良い塩梅”が好きなので。そのあたりも1990年代のさまざまな名作シミュレーションRPGから影響を受けていたりします。

すべてはヴァニラウェア初挑戦の「フィールド」から始まった

──さて、ヴァニラウェアさんと言えばビジュアルのお話をしないわけにはいきませんので、次はグラフィック面についてお聞きしていければと思います。ずばり、今作でもっとも力を入れた、あるいは新しい挑戦であった部分というのはどのあたりになるのでしょうか。

野間氏:
 ヴァニラウェア的な初の試みで言いますと、やはりこの見下ろし型のフィールドになりますね。これは左右をちょっと視覚的に曲げることで立体感を出しています。時間によって昼夜が切り替わっていき、昼夜それぞれにしか発生しない、ちょっとしたイベントのようなものも用意していますよ。

 全体で大きく5つの国に分かれていて、それぞれ人間がメインの土地、獣人が多く暮らす土地、エルフが集まる土地……といった具合になっています。

山本氏:
 この美しい、高精細なマップを探索する……というのが本作の醍醐味といっても良いかもしれません。これを見たら歩きたくなるというか。単純な広さで言っても、実は相当あるんですよ。

──(開発中の画面でフィールドを見回り)ひ、広い……! 想像の10倍くらい広かったです。

野間氏:
 世界全部がひとつのマップとしてつながっているので、端から端まで好きなように歩けます。その中に敵や拠点やNPCが配置されていて、先ほどもお話したように画面を切り替えることなく、そのまま戦闘イベントに突入します。

──先ほどは戦闘シーンでマップのごく一部だけを見ていたので実感が薄かったんですが、あらためて見るとすごい作り方をしていませんか……?

 この巨大マップ全部がつながっていて、かつ無数のイベントが用意されていて、しかもヴァニラウェアさんの精細なタッチですべてが描かれているわけですよね。戦闘もバトル演出を除けば全部この上で行われていくわけで……。

山本氏:
 きわめて合理的ではない作り方なんですけど……(笑)。僕たちが夢見たシミュレーションRPGの理想形です。

──遅ればせながら、このゲームのヤバさを理解しました(笑)。

野間氏:
 フィールドを用意してみて感じたのは、「ストーリーで嘘がつけなくなる」ということでした。例えばこれが地図を見せながら「○○方面には50万の大軍がいるから進めない!」というセリフを使うだけならば、実際に「50万の大軍」を用意する必要もないんです。

 でもフィールドが見えていると、本当に50万の大軍を用意しないといけないし、いないとプレイヤーさんにそれがバレちゃうんですね(笑)。「こっち通ればいいじゃん」と思われてしまうわけです。

 僕自身、「次に行く場所を決める」という行為は物語に没入するうえで、とても大事な部分だと考えているんです。なのでゲーム側に「次はこっちへ行け」と押し付けられるのではなく、自分で進む道を決められる。そういう体験を目指し、自由度の高いシミュレーションRPGの形として本作を作ってきました。

中西氏:
 逆にこの方式の良いところを話すと、ストーリー的に「なぜここへ来たのか」というのを説明しなくてよくなるんですよね。プレイヤーが自分で選んだ道なので、本人の中で理由付けは終わっているんです。

野間氏:
 「北から行った方がいい」と言われてなお「いや、俺は南から行く」と進んだとしたら、その先で何か困難に突きあたっても“自分の選択が招いた結果”なので自分で解決しようというモチベーションが生まれますよね。「自分の意思で来た」ということが大切なんです。

──なるほど、プレイヤー自身が行き先を選択することで自然にストーリーが生まれ、ゲーム側で状況説明をする必要がなくなるわけですね……。

野間氏:
 なので、行く先々で発生しているトラブルやイベントもそれに対処するか、しないか、後回しにするかも全てプレイヤーさん次第になります。

山本氏:
 先日の「ATLUS TGS2023 MEDIA BRIEFING」で、シミュレーションRPGは「シミュレーションゲームにRPGの育成要素を足したもの」がベースになっているとしたうえで、本作ではさらにRPGの「広大なマップを自由に探索する要素」を足した、とご紹介しました。

 したんですが、そのひと言のために多大な……それは多大な時間を要したんですよ(笑)。

一同:
 (笑)。

『ユニコーンオーバーロード』開発陣インタビュー【TGS2023】_004
(画像はニンテンドーeショップ『ユニコーンオーバーロード』より)

山本氏:
 コスト面を考慮すると、これが正解なのか、は、僕たちもまだわかりません。ただ、こんな作りをしたシミュレーションRPGなんて他にないでしょ?これは僕たちが遊びたいと思うシミュレーションRPGなんです!とは胸を張って言えます(笑)。

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ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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