ヴァニラウェア名物の美味しそうな食事は、当初「マズそうな兵糧」の予定だった
──そのほかビジュアル面について従来の作品から変化を付けた点などはありますでしょうか?
野間氏:
頭身を高く設定したのも本作ならではのポイントです。作業的には大変になってしまうんですが……。
──それでも頭身を高く設定したのって、どういう理由なんでしょうか……?
野間氏:
開発の本当に初期のころに制作したメインビジュアルがあり、その絵のイメージに合わせたんです。みんなで「これをこのまま動かしたいよね」、「このまま動かせた方がカッコいいよね」と意見が一致して。
野間氏:
これを描いたの、2015年くらいですよ……。新しいメインビジュアルはさらに頭身を上げているので、ちょっとタッチも変わっています。
山本氏:
企画のスタート時からこのメインビジュアルがあったので、これを動かさなくてははじまらないという想いがあったんですね。
──素人目線ですが、頭身が高くなればなるほど動かすための工数も増えそうですよね……。
野間氏:
増えますね。特に手間がかかったのは「グリフォンナイト」のような、空を飛ぶ騎乗ユニットです。単純に動かすのが大変なのはもちろん、会話シーンだと乗っている人間を降ろさなくてはいけなくて……結局、降りるシーンまで全部描いていただきました。申し訳ないことをしたと思っています……(笑)。
──(笑)。もうひとつ聞いておかなくてはいけないのが「食事」の要素ですね。初報映像の公開時にも食事シーンを見て「ヴァニラウェアだ!」と確信したユーザーさんがSNS上でたくさん観測できました。
野間氏:
はい。食事のグラフィックについては『朧村正』と同様に弊社のシガタケさん【※】に取り組んでいただいています。
実は最初、僕は「マズそうな飯」を考えていたんです。戦争の中で食べる兵糧っぽいものをイメージしていたんですけど、途中でここは美味しそうにした方が良いんじゃないかなと(笑)。
※ヴァニラウェア所属のイラストレーター。『朧村正』や『オーディンスフィア』、『ドラゴンズクラウン』、『くまたんち』など多数の作品にデザイン面で参加している。
野間氏:
当初はみんなであぐらをかいて「粥」をすする……みたいなイメージだったんです。でもやっぱりここはみんなの英気を養うため美味しそうなご飯にしていただきました(笑)。
中西氏:
これ、ちゃんと食べている間に減っていく部分もアニメーションになっているんです。すごく手が込んでいて本当に美味しそうなので、ぜひ各地の料理を食べてまわってほしいですね。
大好きなSRPGでまたワクワクしたいから、自分たちで作ることにした──。
──ちょっとおまけ的な部分になりますが、限定版「モナークエディション」のオリジナルカードゲームについても軽くお聞きしてみたいです。
中西氏:
あれはフィールドグラフィックを制作した弊社の前田さんがひとりで作り上げたものです。前田さん自身すごくボードゲームが好きで、社内でスタッフと遊ぶことも多かったのですが、今回豪華版を制作するにあたってデッキ構築型のボードゲームを作ろうということで始まりました。
山本氏:
1990年代にデッキをつくるカードゲームの遊びがすごく流行ったじゃないですか。ゲーム本編のバトルも例えるならカードゲームのデッキビルディングをシミュレーションRPGのバトルに盛り込んだ、と形容しています。ゲーム本編でもデッキビルドを、限定版のアナログゲームでもデッキビルドを楽しんでもらおうという狙い・意図によるものなので特典としてデッキ構築型カードゲームが付属しているというのも筋は通っているのかな、と。ちなみにカードゲームの方はゲーム中のネームドキャラクターではなく、汎用キャラを組み合わせて優劣を競い合うというような形になっています。
中西氏:
この汎用キャラはゲーム本編にもちゃんと登場して、ネームドキャラクターだけでは足りないとなったときに雇用できるようにしています。ネームドキャラクターだけでも60人以上いるので充分ではあるんですが、彼らは兵種が固定なので、あえて偏らせたいというときには汎用キャラを使っていただくのが良いのかなと。
山本氏:
やっぱり何かに特化させてみたくなるじゃないですか。あとは“天使だけ”など特定の種族のみの部隊をつくるなど、そういう遊び方もできますね。
──本日は開発中の映像も見せていただいて、「1990年代へのリスペクト」というテーマを画面全体から感じるような気がしました。
山本氏:
ここにいる我々はみんなシミュレーションRPGが大好きなんです。特に1990年代の半ば、スーパーファミコンで体験したあのワクワク感は何ものにも代え難いものでした。それでももう一度あの高揚感を体験したいとなったとき、2D描画に特化したヴァニラウェアさんとアトラスが自分たちでシミュレーションRPGに取り組めば叶うのではないか、という勝手な使命感を背負って生み出されたのが『ユニコーンオーバーロード』なんです。
──その狙いは当たっているような気がします。
山本氏:
とはいえ、本当は不安もあって……。自分たちにはブルーオーシャンだと言い聞かせていたんですが、すでにお客さんが誰もいない世界だったらどうしようかと(笑)。いざ発表したら古くからのシミュレーションRPGファンの方が集まってきてくださって、本当に良かったなと安心しました。
──私たちとしても、今日のお話を聞いていて一層発売が楽しみになりました。
野間氏:
本作は自分の好きなもの、自分が面白いと思うものをすべて盛り込んで作り上げました。
僕自身、プレイして楽しいと感じるものになったと思うので、ぜひとも発売を楽しみにお待ちいただければと思います。
──はい、発売を心待ちにしております。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
野間氏・中西氏・山本氏:
ありがとうございました。(了)
今回の取材を通して強く感じたのは、インタビューに応じていただいた3名の開発者の方が、いずれも“非常に嬉しそう”に本作を紹介してくださったことだ。
企画という意味では2014年からスタートした『ユニコーンオーバーロード』。インタビュー中でも「きわめて合理的ではない」と語られるようなとんでもない作り方をされている通り、開発に注がれているエネルギーは計り知れない。その原動力となっているのは恐らく、開発陣の本作と、シミュレーションRPGに対する強い愛情ではないだろうか。
シミュレーションRPGというジャンルに新たな一歩を刻む『ユニコーンオーバーロード』。本作が開発陣の“夢”を叶え、成功することを願ってやまない。