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「これまでの生き様や考え方、思考や哲学など、みなさんが見たことない真島を描いている」、「ジャンプを取り入れたバトルアクションが最大のチャレンジ」──『龍が如く8外伝』開発陣インタビュー【TGS2024】

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「東京ゲームショウ2024でもっとも目立っていたゲームは?」。

ゲームメディアに所属していると、業界内外からよく聞かれる質問だ。個人的な意見で回答するならば、試遊出展されていた『モンスターハンターワイルズ』『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』、そして『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(パイレーツ イン ハワイ。以下、『龍が如く8外伝』)と答える。

『龍が如く8外伝』開発陣インタビュー。開発陣インタビューで語られた「見たことのない真島」とは_001

原稿執筆時は9月27日のため、ビジネスデイでの肌感覚となるが、上記で述べたタイトルはいずれも来場者の熱量がすごかった。とくに『龍が如く8外伝』はタイトルが発表された「RGG SUMMIT 2024」時点から、驚くような反響の高さを感じている。

記事に合わせて弊誌X(旧Twitter)アカウントで投稿した上記ポストは、インプレッション数が862万、リポストが3万1000、いいねが7万4000と、最近のポストの中でも最上位の数値に。

この勢いは発表会後も持続しており、先述したようにTGS2024でも『龍が如く8外伝』は大きな注目を集めていた。RGG SUMMIT、東京ゲームショウでの反響、そして「真島吾朗還暦祈念作品」と称した『龍が如く8外伝』で目指すことなど、龍が如くスタジオ代表・制作総指揮の横山昌義氏、チーフプロデューサー阪本寛之氏、『龍が如く8外伝』にてプロデューサーを務める堀井亮佑氏に、TGS会場で話をうかがった。

なお、横山氏は日本ゲーム大賞2024”年間作品部門”優秀賞受賞式に出席されていたため、途中からの取材参加となっている。

『龍が如く8外伝』開発陣インタビュー。開発陣インタビューで語られた「見たことのない真島」とは_002
左から横山昌義氏、堀井亮佑氏、阪本寛之氏

聞き手/豊田恵吾


「ノア」を実績があるウイカさんに演じていただけたのは安心できる

──本日はよろしくお願いします。『龍が如く8外伝』では堀井さんがプロデューサーを務めているのですね。

阪本寛之氏(以下、阪本氏):
そうなんです。堀井の初プロデュース作品となります。

堀井亮佑氏(以下、堀井氏):
『龍が如く7 光と闇の行方』『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、『7外伝』)、 『龍が如く8』ではディレクターを担当していましたが、今作『龍が如く8外伝』ではプロデューサーを務めています。これまで『龍が如く』シリーズを生み出してきた諸先輩方の実績を引き継いでがんばりたいと思います。

阪本氏:
シリーズが約20年続いてますので、開発陣もみんな年をとりました(笑)。

──(笑)。今作のディレクターは堀井さんではなく、別の方が担当されるのですね。

阪本氏:
ディレクターは別に立てていますが、堀井にはプロデューサーとチーフディレクターを兼任してもらっています。

堀井氏:
チーム運営を任せつつ、仕様の最終決定などをやっている、という感じです。現場からは少し離れている感じではあるんですけど、内容自体はコントロールしていますので、変わらない部分も多いですね。

阪本氏:
龍が如くスタジオの中で世代交代はうまくいっているのですが、『外伝』がいちばん若いスタッフに経験をさせやすいんですよね。

──龍が如くスタジオは、「俺もTGSのステージで歌いたい!」、「歌も歌える開発者になりたい!」という人材が出てきてもおかしくないですからね(笑)。

※編集部注:TGS2024のセガブースでは、昨年の歌唱からよりパワーアップしてファーストサマーウイカさんがミュージカルSHOWに出演。また、真島役の宇垣秀成さん、そして堀井さんが「RYO」として、ともに出演している。

堀井氏:
それはまだいないですね(笑)。

阪本氏:
いや、いずれ出てくるかもしれない。ゲーム開発者の新しい枠、新しいポジションですからね(笑)。

──昨年に引き続きファーストサマーウイカさんがステージ出演者に名を連ねているのが最高におもしろいなと。そんな簡単にブッキングできる方じゃないはずなのに(笑)。

阪本氏:
おっしゃるとおり、簡単にお越しいただける方じゃないんですよね。このあたりは横山がきたときにまた話をさせてください。

──発表会(RGG SUMMIT 2024)でも話題にあがっていましたが、ウイカさんが演じる島の少年(ノア・リッチ)は、「え? この声はウイカさんなの?」と気づかないぐらい演技がうまいですし、演じ方を変えられていて驚きました。

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(画像は RGG SUMMIT 2024 – YouTubeより)

堀井氏:
よ〜く聞いてみたら、「ウイカさんだ」とわかるかもしれないですけど、初見だとほとんどの方が気づかないでしょうね。僕らとしてももともと「マッチする声質だな」と思ってはいたんですけど、あれほどとは予想していませんでした。

阪本氏:
ウイカさん自身、『龍が如く』シリーズの大ファンですし、『龍が如く』のことをすごくわかっていただいたうえでの立ち回り方をしてくださって……。芸能的にも天才的な方なので、我々もかなり助けられていますね。

──ウイカさんは『7外伝』に引き続きの起用となりますが、「『外伝』シリーズではウイカさんを使う」というわけではないのですか?

阪本氏:
そういうわけではないですね。ただ、『7外伝』の赤目というキャラクターはウイカさんにやってもらったおかげでうまくいったところが多分にあります。

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(画像はキャラクター|『龍が如く7外伝 名を消した男』 公式サイト|SEGAより)

堀井氏:
じつは、このノアというキャラクターは超重要な役柄でして……。そういった意味でも、実績があるウイカさんに演じていただけたのは安心できると言いますか。

阪本氏:
任せられる、という感じでした。

セガ広報さん:
横山の参加はまだ時間がかかりそうと連絡がありましたので、このままインタビューを続けていただければ……。

──わかりました。インタビュー前に阪本さんと立ち話をさせていただき、その際にもお伝えしたのですが、『龍が如く8外伝』発表時の電ファミニコゲーマーのX(旧Twitter)での投稿、インプレッション数が約900万あるんですね。

堀井氏:
そんなに伸びたんですか?

──そうなんです。リポストは3万、いいねは7万を超えていて。

堀井氏:
すごいじゃないですか。

──この数値が表すように、『龍が如く』というブランド力が毎年上がり続けている感覚がありまして。ゲームメディアという立場からの見え方としてもそうですし、1作目から『龍が如く』シリーズを見てきたイチ編集者としてもそう感じていて。毎回聞いていますが、この手応えを開発陣はどう分析しているのですか?

阪本氏:
手応えでいうと、僕らが把握している数字にも如実に現れています。国内はもちろん、海外の反響も年々高まっている手応えがありますね。海外のファンやメディアは、日本の記事や反響をチェックしたり、追いかけているんです。そういった影響もインプレッションを押し上げているひとつの要因だと思います。

あとはゲームの外側の展開。10月25日から配信されるAmazon Originalドラマ『龍が如く ~Beyond the Game~』の前評判もすこぶるいいんですね。『龍が如く』はこれまでも実写ドラマ化や映画展開をしていますが、さきほどのウイカさんの話もそうなんですけども、『龍が如く』をちゃんと知っていて、愛情ある方にコンテンツを作っていただくということがとても大事でして。そうすることでより深く、広く響くものになるんですよ。

これはプロモーションにも言えることで、たとえば新しい発表を動画で行った際、それを海外にどう伝えるか。「日本で作った動画に字幕をつければ仕事が終わり」と短絡的にやるのではなく、「現地の方により理解してもらうにはどうすればいいのか」としっかりと考えて対応する。地域ごとの対応はやればやっただけ伝わる手応えがありますし、まだまだ活路というか伸び代があると感じています。

そういった意味ではいまは「盛り上がっていく過程」の段階だと思いますし、我々も現状で満足はしていません。もっともっと広めていこう、というのがチーム全体の意識としてあります。

──『8外伝』の盛り上がりを見るに、シリーズの8作目、しかも「外伝」と付いたタイトルなのにこれほどの反響があるというのは、ほかのゲームと比べると稀有だと感じていて。

阪本氏:
とはいえ、シリーズが続いていることによる参入障壁は高いと思っています。「これまでの話がわからない。登場キャラクターを知らない」という部分が引っかかる方はどうしてもいらっしゃるわけで。

その壁をどう乗り越えてもらうか、何をきっかけに『龍が如く』の物語に触れるきっかけを作れるか。そのひとつの答えがAmazon Originalドラマだったりするわけです。

堀井氏:
「ドラマがおもしろそう」、「実際に観たらおもしろかった」といった切り口で『龍が如く』に興味を持っていただいたり、10月25日に発売となるNintendo Switch版『龍が如く 極』をきっかけにしていただいたり、『龍が如く』を知っていただいた方が踏み込みやすくなる環境作りをしっかりとやることが大事なんだと感じています。

──『龍が如く』を1作目から追いかけてる立場としては、「本当に広まったなぁ」という実感があるんですよね。

阪本氏:
最初はニッチな領域に向けたタイトルでしたからね。扱っているテーマもそうでしたし……。

堀井氏:
シリーズからちょっと離れていた方たちが「え? 真島、いま海賊やってるの⁉︎」とリアクションしていたのがおもしろかったです(笑)。

──(笑)。

堀井氏:
「なにがいったいどうなってるの?」という反応で(笑)。 真島吾朗というキャラクターは知っているけれどゲームをよく知らない方とか、『龍が如く』から少し離れていた方からも反応をいただけたので、そういった意味ではフックがあるものというか、取っかかりのいいものができたと思っています。

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真島のこれまでの生き様や考え方、思考や哲学など、「見たことない真島」が描けている

──『龍が如く8外伝』制作のきっかけとなった、いちばんの要因を教えていただけますか?

堀井氏:
シンプルに『7外伝』の評価が高かったというのがありますね。

阪本氏:
じつは『7外伝』は……チャレンジだったんですね。「このサイズ感、ボリュームで受け入れられるのだろうか」という不安は、制作中ずっとありました。

堀井氏:
「外伝って何?」、「ボリュームが足らない」と言われるかもしれないという不安ですね。

阪本氏:
でも、『7外伝』はおかげさまですごくいい評価をいただきました。しかも不安要素だったサイズ感も「ちょうどいい」という声が多くて……。ナンバリングの大がかりなパッケージのあいだに、このサイズ感のタイトルを楽しんでもらう。「そういう波を作ったほうが、ずっと『龍が如く』を楽しんでもらえるんじゃないか」という考えになっていったんです。

──『龍が如く8』開発中から外伝の発想があったのですか?

阪本氏:
『7外伝』の結果を受けて、その裏で『龍が如く8』をフィニッシュに向けて作っていたんですけど、開発終了間際に『龍が如く8』のその後の物語、かつ真島を主軸にしたそのつぎの展開がアイデアとして生まれてきました。

──なるほど。『龍が如く8』の外伝をやるのであれば真島で行こうと。

阪本氏:
『龍が如く8』では真島たちのその後の顛末は語っていなかったので……。レジェンドと言われているような彼らがあのあとにどういう生き様を見せていたのかという、巨大なサイドストーリー的なものをパッケージングしようという考えがもとになっています。

──真島が記憶喪失というのもおもしろいなと思いました。『7外伝』のサブタイトルが“名を消した男”で、『龍が如く8外伝』にそういった副題はついていませんけど、“名を忘れた男”だなと。

堀井氏:
ファンの方からもそういう指摘がありますね(笑)。でも、それは本当にたまたまで、とくに意識はしていなくて。

阪本氏:
真島を主人公にした場合に、要はかなりこう……彼は突き抜けたキャラじゃないですか。 「みんなが予想してないことをやる」というキャラクターですので、自分が操作するときにクセが強すぎたり、プレイヤーが思ってないことをやってしまう可能性があるんですよね。

でも、記憶喪失にすることでプレイヤーに寄った形でスタートできる。特殊なキャラをゲームの主人公として扱うには、そういった対応や工夫が必要だと考えたわけです。

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──たしかに、真島のことを何も知らずに『龍が如く8外伝』をプレイしたら情報量が多すぎるでしょうね。関西弁で、頭のネジが飛んでいて、元極道で、舞台はハワイで、海賊で……(笑)。

堀井氏:
プレイヤーが「意図しないことを強いられる」のはゲームとしてはきびしいと判断し、記憶喪失で個性がリセットされた状態から真島というキャラをもう一度楽しんでもらえるようにしています。

──真島とウイカさんが演じる少年ノアの対比は、桐生と遥のセルフオマージュ的なものなのでしょうか?

堀井氏:
それはおもしろい見方ですね。でも、意図的に「桐生と遥」に合わせたわけではありません。 『龍が如く8』のあとの世界でいろいろなドラマがあるんですけど、その中で「主体的にじゃあ何かをしよう」っていう大きなモチベーションを真島にどう持たせるかっていうところがあって。

そのモチベーションのひとつがノアというキャラクターなんです。「これまで島から出たことのない少年にデカい世界を見せてやる」というのが真島のモチベーションになっています。

副次的に、ノアとのドラマの中で真島のある意味でまともな部分だったりとか、人間らしい部分を見ていただければと思います。

阪本氏:
「素の真島がわかる」と我々はイメージしています。「少年の夢を叶える、還暦を迎えたおっさん」ですけども。

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──“真島吾朗還暦記念作品”ですからね(笑)。

阪本氏:
その結果、海賊だったりとか、そういったシチュエーションに巻き込まれて、いままでになかった展開がありつつ、「こんな真島の側面があるんだ」と真島を2倍楽しんでいただけると思います。

──真島のそういった一面は、開発陣としても描きたかったところなのでしょうか?

堀井氏:
そうですね。ふつうに真島を扱ったり、ただのファンディスクみたいになってもしょうがないわけで。みなさんが知っている真島を描くだけではつまらないですよね。

60歳で悪さもいっぱいしてきた男が、外の世界を見たことがないという少年に対して夢だったり世界の広さだったり、自分の経験を持ったうえでどう教訓を与えるのか。外伝という位置付けの作品ですが、真島のこれまでの生き様や考え方、思考や哲学など、みなさんが見たことない真島が描けていると思います。

阪本氏:
『龍が如く8外伝』をプレイしていただくと、真島のことが好きになると思います。いままでの真島ファンの人も、さらに好きになっていただける物語になっています。

──発表時のPVは、椅子に座って独白する真島のシーンから描かれました。あれは発表会のための映像ではなく、ゲーム中でも描かれるものなのでしょうか?

阪本氏:
ゲーム中でも描かれるシーンとなります。ただ、発表会ではちょっとアレンジをしています。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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