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「いちばん脂が乗っていた初期『カルドセプト』のバランスや規模感、ゲームフィール」を取り戻したい」──約10年ぶりの完全新作『カルドセプト ビギンズ』は「『カルドセプト』を新しく変えたい」という熱意から生まれた【開発者インタビュー】

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ボードゲームとカードゲームを組み合わせ、運と戦略が絡み合う無二のプレイ感と中毒性で多くのプレイヤーたちを虜にしてきたデジタルカードゲーム『カルドセプト』

そのシリーズ最新作『カルドセプト ビギンズ』が、長い眠りを経て先日発表された。

『カルドセプト ビギンズ』開発者インタビュー|10年ぶりの新作は「初代」のプレイフィールを目指す_001

歴代『カルドセプト』の開発を手がけた大宮ソフト、そしてジャムズワークスが開発協力・監修として参加しており、『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』『クレヨンしんちゃん「炭の町のシロ」』等のタイトルで知られるネオスから発売となる。

熱狂的なファンを抱える『カルドセプト』シリーズだが、ニンテンドー3DS用ソフトとして発売された『カルドセプト リボルト』から今回の新作まで、10年もの年月が経っている。

ついに発表となった『カルドセプト ビギンズ』はキャラクター・モンスターのビジュアルがポップなものとなり、アートワークを含めて雰囲気が大きく変貌。開発陣が望んでいた変化を取り入れつつ、ゲームのプレイフィールは初期の『カルドセプト』を目指したという。

電ファミでは、大宮ソフトの鈴木英夫氏、そして発売元であり、プロデューサー兼クリエイティブディレクターを務めるネオスの長嶋朗氏にインタビューする機会を得た。また、取材にはジャムズワークスの武重康平氏にも同席いただいており、合わせて話をうかがっている。

約10年ぶりとなる『カルドセプト ビギンズ』の開発経緯を中心に、本作の魅力、目指したものについてうかがった。

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左:鈴木英夫氏、右:長嶋朗氏

聞き手/TAITAI
執筆/恵那
撮影/永山亘

新作の企画は10年間行ったり来たり。スマホゲーム化の案も

──本日はよろしくお願いします。本作はネオスさんからパブリッシングのお話があって実現したということですが、前作の発売から約10年、「『カルドセプト』の新作を作ろう」という動きはなかったんでしょうか?

鈴木英夫氏(以下、鈴木氏)氏:
ありがたいことに、これまで多くのお声がけをいただいてきました。お話いただいた会社さんの要望に合わせて調整したり、こちらから企画書を提案したりして、かなり良いところまで話が進むこともありました。

ゲームメーカーさんやゲームメディアさんには「じつは『カルドセプト』の大ファンです」という方が、いわば“潜伏”するようにたくさんいらっしゃいまして(笑)。「昔遊んでいて、本当に好きなので、上層部に掛け合ってみます」と熱心に言ってくださったりするんです。

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──水面下ではいろいろな動きがあったんですね。

鈴木氏:
ただ、最終的に形とならなかった。これは『カルドセプト』という作品自体の問題というより、ゲーム市場全体の変化が大きかったと感じています。大手メーカーでも開発中のタイトルが中止になったり、業界全体で新規プロジェクトがなかなか立ち上がらなかったりと、厳しい市況の影響がありました。

「会社の方針で全プロジェクトの始動が中止になったので、この話もなかったことに……」といったこともありました。そういった「あと少しのところで頓挫する」という経験を繰り返しているうちに、気がつけば10年近い歳月が流れてしまった、というのが正直なところですね。

──ちなみに、スマートフォン版の開発という話はなかったのでしょうか? カードゲームとスマホの相性は非常に良いと思いますが……。

鈴木氏:
もちろんありました。スマホ版の話が出たときは、我々も「いよいよか」とノリノリで取り組んでいたんです。具体的に「ガチャの仕組みをどう組み込むか」といった踏み込んだ議論もしていました。

ただ、いくつかの理由からこのお話も頓挫することになりました。

──具体的にはどのような理由で?

武重康平氏(以下、武重氏):
ひとつには、シリーズに対する保守的な愛着です。最初は「『カルドセプト』が好きだからこそ、いまの時代に合わせてガチャを取り入れよう」、「プレイ時間を短くしよう」、「ルールをもっとシンプルにしよう」といった、トレンドを意識したアイデアが出るんですね。

ところが、具体的に話を進めていくうちに、先方からも「やっぱりもとの『カルドセプト』のままがいちばんおもしろいよね」と戻ってしまう。新しい形に挑戦したいという気持ちと、これまでのシリーズの良さを守りたいという気持ちのあいだで、考えが揺れ動いてしまうんです。

鈴木氏:
市場全体の空気が少し特殊だったというのもあります。当時は、ヒット作を出して勢いのあるメーカーさんが、潤沢な資金を背景に「つぎのヒットの種」をあちこちに蒔いていた時期でした。

ですが、新作を出しても各社の看板タイトルを超えるようなヒットがなかなか生まれず、新規タイトルを手広く試すことについて懐疑的なムードが漂い始めたんです。

──攻めの姿勢から、一転して慎重な空気に変わっていったのですね。

鈴木氏:
こちらとしてはかなりの工数をかけて準備を進めていても、土壇場になって「たいへん申しわけないのですが、経営方針の転換がありまして……」とお蔵入りになってしまう、ということの繰り返しでした。

とくにスマホの運営タイトルとなると、開発だけではなくサービスの維持にも莫大なお金がかかりますから、我々としても、「まったく新しいチャレンジ」に対して二の足を踏んでしまう気持ちもよくわかるんです。

「変化」を求めた熱意にうたれて開発が決定

──停滞した10年間に終止符を打ってくれたのが、ネオスさんだったわけですね。

武重氏:
月並みかもしれませんが、熱意をもって真剣にアプローチしてくださったことに、すごく魅力を感じましたね。

『カルドセプト』はテキスト量も膨大ですし、必要となるビジュアルなど素材の数も想像以上に多いんです。詳しい話を聞いて「新しくカードを400枚も作るんですか!?」と、そのハードルの高さに驚かれるようなこともありました。

その結果「過去作をそのまま移植したい」、「できるだけ安く作りたい」といった提案ばかりが続く時期があり、我々としては正直、あまり魅力を感じられずにいました。

そんな中で、最初から「ビジュアルはすべて新しく作り変えたいです!」とアプローチしてくださったネオスの長嶋さんには、ものすごく熱意を感じたんですね。

長嶋朗氏(以下、長嶋氏):
いまのお話を聞いて、合点がいきました。じつはアプローチをかけた当初、なかなか鈴木さんに会わせてもらえない時期があったんです。その間、武重さんからは「本当に最後までやりきれますか?」と何度も覚悟を問われていたんですけど、そういうことだったのかと(笑)。

当時は「なぜ何度も同じことを聞かれるんだろう?」と不思議に思っていたんですけど、いま思うと私も試されていたんですね(笑)。

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──ネオスさんとしては、スマホタイトルにするという選択肢はなかったのでしょうか?

長嶋氏:
じつは開発チームの中でも「今の『カルドセプト』ファンはスマホでのプレイを求めているのではないのか?」、「ソーシャルゲーム形式のほうがマッチするのではないのか?」という議論は常にありました。ただ僕自身はガチャのようなマネタイズに難しさを感じていたので、そこはブレずに自分の理想を貫き通しました。

おかげさまで、最初の企画書に書かせていただいた「やりたかったこと」は、ある程度そのまま形にすることができたと思っています。もちろんこれが正解かはまだわからないのですが、その方針を大宮ソフトさん、ジャムズワークスさんにご理解いただけたことは、本当に感謝しています。

──長嶋さんは、以前から『カルドセプト』に注目されていたのですか?

長嶋氏:
ネオスはガラケーの時代から、キャラクターなどのIPを活かしたコンテンツ化ビジネスを手がけてきた会社なんですね。ですから、つねに力のあるIPを探しているのですが、ずっと頭の片隅にあったのが『カルドセプト』だったんです。しばらく新作も出ていませんでしたし、非常に熱狂的なファンがいることもよく知っていました。

私がやりたかったのは、世界観や見た目、そして遊び心地を現代に合わせて刷新することです。この企画を思いつき、すぐに開発元の大宮ソフトさんに連絡しようとしたのですが……いろいろ調べても連絡先がわからなかったんです(笑)。

──そこから、どうやってコンタクトをとったのでしょう。

長嶋氏:
武重さんがメディアでインタビューに応じているのを見つけ、まずは武重さんにお会いしようと考えました。ただ、いきなりSNSでDMを送るのも失礼だと思い、ツテを探したところ、なんと僕の知人が武重さんの小学校時代の同級生だったんですね。その縁で紹介していただき、ようやくご連絡することができたんです。

時期で言うと、2024年に発売した『クレヨンしんちゃん「炭の町のシロ」』のプロモーションが落ちついたころだったと思います。その年の5月くらいに、初めてご連絡をさせていただきました。

──ネオスといっしょに取り組む決め手となったのは、大宮ソフトとしてはどういったところだったのでしょうか?

鈴木氏:
理由はいくつかありますが、いちばんは長嶋さんが「『カルドセプト』を新しく変えていきたい」という強い熱意を持っていたことです。じつは私たち大宮ソフトも、20年も前から「『カルドセプト』は時代に合わせて変わっていかなければならない」と考えていました。

ただ、どうしても「昔のままの『カルドセプト』が好きだから、あれを再現したい」という、いわば保守的な形に落ち着きがちだったんですね。

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──『カルドセプト』が好きだからこそ、保守的になってしまったわけですね。

鈴木氏:
制作者として、「あのころの『カルドセプト』が好き」と言っていただけるのは非常にうれしいのですが、一方で「いまのままではいけない」という危機感もずっと抱えていました。そのもどかしさが、ネオスさんの「変えたい」という猛烈なアピールと合致した感触がありました。

ですので、ネオスさんと最初に打ち合わせをしたときから「とにかく、できる限り変えてください」とお伝えしました。「大宮ソフトはずっと少数のメンバーでやってきたこだわりが強いチームだから、内容を変えてしまったら怒るんじゃないか?」という心配は無用ですよ、としつこいくらいに強調しましたね。

初期『カルドセプト』のプレイフィールを取り戻したい

──長嶋さんとしては、どのような方向性の変化を意図していたのでしょうか?

長嶋氏:
僕もたくさんのことを変えるつもりでしたし、いまお話のあったように鈴木さんからも「どんどん変えてください」と言っていただけたのですが、一方で「いちばん脂が乗っていた初期『カルドセプト』のバランスや規模感、ゲームフィール」を取り戻したいとも思っていたんです。

そこで、本作の開発にあたって最初に大宮ソフトさんと打ち合わせをした際に、4つの狙いを提案していました。

1.「往年のプレイヤーをがっかりさせないプレイフィール」
2.「新規プレイヤーに古さを感じさせないゲームデザイン」
3.「世界プレイヤーにも認められるジャパンクオリティ」
4.「最新のゲーム環境、プレイスタイルの最適化」

……この4つです。

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──「往年プレイヤーをがっかりさせないプレイフィール」というのが、まさに長嶋さんの「取り戻したい」ポイントだったんですね。

長嶋氏:
そうですね。シリーズがもっとも勢いのあった、ファーストやセカンドのころの絶妙なバランスを再現する、というのが最初に打ち立てた目標です。

ざっくりとまとめると、いまの時代に合わせた遊びやすさを整えつつ、世界的なヒット作となった『Slay the Spire』『Inscryption』のようなカードゲームに見劣りしない日本的なアートワークを用意し、いまや常識となったオンライン対戦の環境を整えること。

──シリーズ伝統のおもしろさを維持しつつ、いまの時代に欠かせない「手軽さ」や「テンポの良さ」といったモダンな要素を融合させていったわけですね。

長嶋氏:
テンポの改善については、開発当初から掲げていた優先課題のひとつでしたね。鈴木さんからも「とにかくテンポを良くしてほしい」と、何度も繰り返し念を押されていました。

前作の『リボルト』も、ゲームテンポの改善にはかなり力を入れていたタイトルだったと思っているのですが、『カルドセプト ビギンズ』ではまた違うアプローチを行っています。

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画像はカルドセプト リボルト(@3DS_Culdcept)公式Xより

武重氏:
『リボルト』でもテンポアップは大きなテーマだったのですが、そのときは細かな演出を短くしたほか、ゲーム上のルールや手順を簡略化して、プレイヤーの思考時間を節約する方向性で考えていました。『カルドセプト』をプレイしたときにかかる時間の大部分は、まさにその「考える」時間だったからです。

ただ、その辺りの変更点については、本作では『リボルト』より前の形に戻した部分が多いですね。

──システム的には『リボルト』の延長ではなく、初期『カルドセプト』に近づいているわけですね。具体的に、どのような手法でテンポを上げたのでしょうか?

長嶋氏:
まずは盤面を必要以上に大きくしないことや、余計なセリフを省くこと、スキップや倍速機能などを設けるといった単純なこと。加えて、バトル序盤の展開を早くすることを目指しました。

『カルドセプト』はたとえば将棋のようなアナログゲームと同じく、戦いが盛り上がってくるまでに時間が必要で、その立ち上がりの遅さがゲームテンポを悪く感じさせる一因になっていると考えました。そこについては歴代『カルドセプト』のデザイナーである神宮さん【※】が考えてくださって、計算式の一部に手を入れたんです。

※神宮孝行氏:歴代『カルドセプト』を手がけたゲームデザイナー。『カルドセプト ビギンズ』開発にも参加しており、レベル設計も手がけている。

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──計算式というと、バトルで使うステータスなどを変更したわけですか?

武重氏:
ではなくて、盤面でもらえる値やボーナスポイントの計算式に手を入れました。そのあたりのシステムはずっと安定していた部分だったので、これまであまり手をつけなかったのですが、ここを変更したことで序盤の展開がすごく早くなったという感覚があります。

結果として目標達成までのラウンド数も少なくなり、プレイ時間も短縮できるようになりました。

──大宮ソフトさんは今作に開発協力・監修として参加されていますが、神宮さんはどのような立場で本作に関わられているのでしょうか?

鈴木氏:
神宮さんは今回はフリーランスの形で、がっつりと開発サイドとして参加していただいています。大宮ソフトとしては、神宮さんが入っているので、品質については何も心配する必要がないと思っており、その点はとても気が楽ですね。

ロジックでは説明できないルールの揺らぎが「『カルドセプト』の味」

──先ほど長嶋さんは、変えたい部分がある一方で、戻したい・守りたい部分もあるとおっしゃっていました。この部分をもう少し具体的にお聞かせください。

長嶋氏:
変えたい部分というのは、『カルドセプト』の核ではない部分で、時代に取り残されてしまってたり、自分の中に「こうすればもっとおもしろくなる」というアイデアがくすぶっているような要素です。具体的には、ゲームのテンポやUI、アートワークなど。これらについては、現代的なゲームとして設計したつもりです。

一方で、初代『カルドセプト』が持っていた絶妙なゲームバランスのことを、僕は「『カルドセプト』の味」だと思っていて、そうしたポイントは残したいと思っています。必ずしも「ロジカルに作られていない部分」と言えばいいでしょうか。

──ロジカルに作られていない部分、というのは……?

長嶋氏:
人の意志が入っている場所と言えばいいでしょうか。たとえば、ゲーム上のさまざまなパラメーターについては、一定の規則を持ったグラフなどで管理するのが、より正当なやり方ではあります。ですが昔のゲームはデザイナーの感覚で「こんな感じの数値で」と説明のつかない設定にしていることもありました。

そうしたロジカルな理由付けのないルールは、新作のタイミングで新たなルールに組み込んで設定し直したほうがいいのですが、そうするともとのゲームが持っていた「味」が飛んでしまうんです。

鈴木氏:
そうしたロジカルでない要素をこれからも残していくかどうかは、悩ましいところです。歴史あるタイトルですと「30年前の味を残したほうがいいのか」、「新しい考えでスッキリとしたおもしろさにしたほうがいいのか」という悩みがあると思うのですが、『カルドセプト』もずっとその悩みがありました。

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──ただ、そうしたゲーム開発の“ゆらぎ”のようなものを維持しながら開発を続けるのは、それはそれで難しそうです。

鈴木氏:
今作の開発には『カルドセプト』のゲームルールを一手に管理する「ルールエンジン」を用いているので、そうした昔の自分たちの手垢がついたゲームシステムが、そのまま採用されているんです。

カードの細かい挙動などもすべて「従来のシリーズ通り」になっているわけで、言ってみれば、このルールエンジンのおかげで細かな調整のための議論などをしないで済んでいるんですね。開発効率としては、かなりよくなっていると思います。

──そのルールエンジンについて、もう少し詳しく教えてください。

鈴木氏:
『カルドセプト』内で、カードの挙動などを管理するためのエンジンなのですが、説明するのは難しいですね(笑)。要するにロジックのみを管理するエンジンで、ゲーム内のキャラの配置や盤面の状況といった情報を渡すことで、「何が起こるか」をUIに返してくれるものです。

武重氏:
レストランの「ホール」と「キッチン」の関係だと考えていただければわかりやすいかもしれません。お客さんから「こんなメニューを頼まれたよ」と渡すのが「UI」(ホール)で、そうすると「キッチン」(ルールエンジン)にオーダーが入り、料理を作って戻す、という役割分担をしているものです。

──『カルドセプト』の1作目からあったものなのですか?

鈴木氏:
プログラムができた当初は、「ロジック」と「画面への表示」が分離されておらず、中身が整理されていない状態でした。そこから30年間かけて秘伝のタレのように継ぎ足しながら、ようやく現在の形になった、というものです。

長年鍛え続けてきた結果、ようやく実用的な形まで整い、今回初めて社外に出すことになりました。

──「ロジック」と「画面への表示」を分けたのは、将来の展開を見据えてのことだったと。

鈴木氏:
はい。考え方としては最近よく聞くようになった「ゲームエンジン」に近いですね。たとえばニンテンドー3DSなら「立体視」という特徴がありましたが、そうしたハード固有の「見せ方」と「ルールの計算」が密着しすぎていると、新しいハードが出るたびに作り直しになってしまいたいへんなんです。

──カードの管理もそのエンジンで行っているのでしょうか?

鈴木氏:
そのとおりです。エンジンが「過去作とまったく同じ正しい挙動」を保証するので、安心して遊んでいただけます。開発側としても、戦闘の複雑な処理をイチから作る必要がなく、エンジンに状況を伝えればダメージや勝敗などの正確な結果が返ってくるので、ルールの解釈に矛盾が生じる心配もありません。

開発現場でも、いちばん最初の段階からすでにゲームが動く状態になっていたわけで、まさにロケットスタートを切ることができました。物語やグラフィックといった「外側の作り込み」に最初から集中していただけたと思います。

──今作の開発期間はどれくらいだったのでしょうか?

長嶋氏:
最初にご相談したのが2024年の5月ごろで、具体的に動き出したのが7月。本格的な開発は8月から始まりました。ですから、開発期間としては実質、約1年半といったところです。

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──現代のゲーム開発としては、驚異的なスピード感ですね。

鈴木氏:
そう思います。エンジン提供の効果が出ているとは思います。

ただ先ほども言った通り、これは古くからあるルールをそのまま引き継いでいるものなので、なかには合理的ではないものもあります。「合理的ではないけれど、ルール上はこう解決する」という、特定のカードにのみ例外的な処理を施すようなルールが、いくつも含まれているんです。

もし、まっさらな状態でエンジンを作り直せば、こうした例外はすべて論理的に統合されて消えてしまうでしょう。しかし、古いエンジンを使い続けることには、「昔ながらの挙動が保たれる」という大きな安心感があるんです。

──昔ながらのシステムがそのまま残されている、というのは確かに信頼もできますし、難しいですね。

鈴木氏:
もちろん、それが本当に正しいのかという自問自答はずっとあります。ルールを論理的に再構築すべきではないか、と。昔、なんとなく決めたルールがいまも生きていて、じつは理屈がとおらない矛盾を含んでいたりもしますから。それを解消すべきか、あえて残すべきか……この悩みは尽きませんね。

長嶋氏:
けれど、それが『カルドセプト』を『カルドセプト』たらしめているレシピのようなものでもあるのかな、とも感じます。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、「第四境界」プロデューサー。 ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長を経て、KADOKAWA&ドワンゴにて「電ファミニコゲーマー」を立ち上げ、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、サイトの設計など運営全般に携わる。2019年に株式会社マレを創業し独立。 独立以降は、編集業務のかたわら、ゲームの企画&プロデュースなどにも従事しており、SNSミステリー企画『Project;COLD』ではプロデューサーを務める。また近年では、ARG(代替現実ゲーム)専門の制作スタジオ「第四境界」を立ちあげ、「人の財布」「かがみの特殊少年更生施設」の企画/宣伝などにも関わっている。
Twitter:@TAITAI999
副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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