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『近畿地方のある場所について』背筋氏 ×『零 ~紅い蝶~ REMAKE』柴田 誠氏対談──ホラークリエイターが語る恐怖の本質。「消臭スプレーで除霊」の生みの親、柴田氏に聞く「視えること」による創作への影響

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20年以上の歳月を経てブラッシュアップした『紅い蝶』

──シリーズの中で『紅い蝶』はとくに人気が高い印象がありますが、反響などを柴田さんはどう受け止めていらっしゃいますか?

柴田氏:
そうですね。難易度を抑えてストーリーを最後まで見ることができたことが、人気につながっていると思います。1作目を作っているときは「難易度が高いほうが怖く感じるだろう」という考えで作ったので、エンディングまで行くのがけっこう難しいんです。1作目の作り方だとエンディングまで見てもらえないと思って、『紅い蝶』は難易度を易しく遊びやすくしました。今作では、いろんな難易度を用意し、さらに遊びやすく改良しているので、その点は注意して作っています。

また、怖すぎて途中でやめてしまう人もいたので、怖いけど先が見たくなるように、ストーリーで引っ張るようにしたことも大きいです。最後にあのエンディングを見たことで、印象が強くなっているのかと思います。プレイヤーの感想をうかがうと、プレイの幅を広げつつエンディングまで誘導した3作目の『零 ~刺青の聲~』がいちばん好きだという人も多いですね。

──ストーリーは『刺青の聲』が好きだという方は多いですね。『紅い蝶』は幻想的というか、双子の姉妹というところもそうですし、心に残る演出が印象に残っているのだと思います。

柴田氏:
そうですね、『紅い蝶』と『零 ~月蝕の仮面~』は少しファンタジックに寄せていて、舞台の気温も高め。『零 zero』、『刺青の聲』、『濡鴉ノ巫女』はダークなホラーで、舞台の気温も低めになっています。

──今回のリメイクでは双子の見た目もだいぶ現代風になっていますよね。

柴田氏:
顔や体型のバランスとしては少しリアルにしました。オリジナルはプレイステーション2の時代ですし、制限された表現力の中でキャラクター性を出すために少しデフォルメされた体型だったのですが、いまは表現力も格段に上がっていますからね。

『近畿地方のある場所について』背筋氏 ×『零 ~紅い蝶~ REMAKE』柴田 誠氏対談──ホラークリエイターが語る恐怖の本質_020
(画像は『零 ~紅い蝶~ REMAKE』公式サイトより)

──『紅い蝶』は2012年に『零 ~眞紅の蝶~』として一度リメイクされており、改めてのリメイクとなりますが、今作を作るにあたって制作時に柴田さんがいちばん意識されたところはどういった点なのですか?

柴田氏:
いま、優れたホラーゲームが多く出ていますが、そのようなゲームをプレイしている初めての人にも楽しんでもらえるゲームを意識してフルリメイクしました。評価されたストーリーや世界観、キャラクターは基本的に踏襲しつつ、『紅い蝶』の世界にアクセスする方法をイチから考えようというアプローチです。オリジナルをどうわかりやすくするか、ゲームとしてどう遊びやすくするかというところに特化しました。

操作感についても、昔はゆっくりなほうが怖いと思っていたのですが、今回はかなり手触りをよくしています。こちらは触ってもらえればわかると思います。オリジナル版の発売から約23年が経過しているので、ゲームとしてわかりやすく、入りやすくしたのです。

背筋氏:
『零』シリーズは、発売後にさまざまな作品に影響を与えていると思うんですよね。プレイステーション2の時代にエポックメイキングなホラーゲームがいろいろと発売されて、この段階である程度完成された気がします。

──当時は評価の高いホラーゲームでも売上が伴わなかったということがあったと思うのですが、現在はインディーからも良質なホラーゲームが出てきたり、実況文化の広がりにともなって「ホラーゲームを見て楽しむ」という方も増えています。ホラーおよびホラーゲームの受け取られ方が変わっていることに対して、どう思っていらっしゃいますか。

柴田氏:
遊ぶことに加えての「見る文化」によって、裾野はすごく広がりましたよね。インディーでもいろいろな怖さ、怖いかどうか微妙なところも含めた表現の幅もすごく広がっていて、一大ジャンルになったと感じています。

もともとホラーファンはホラーゲームが出たらとりあえず買ってしまうところがありましたが、ホラーファンじゃなくてもホラーゲームに触れる機会が増えてきたと思います。『零』は和風ホラーに特化していてほかのホラーゲームとは怖さが少し異なるので、実際にプレイして「体験」してほしいです。

背筋氏:
素朴な疑問ですが、和風ホラーゲームってなかなか出てこないですよね。最近では『サイレントヒルf』の発売がありましたが、日本家屋的なジャパニーズホラーとは少し違いますよね。

柴田氏:
『サイレントヒルf』は日本の女性の精神世界が描かれているというところを捉えると、和風ホラーだと思います。ただ、おっしゃるように和風ホラーはそこまで多くはないかもしれません。小説では和風ホラーは多いと思うのですが。

──背筋さんはゲームを作ってみたいというお気持ちはあるのでしょうか? 『まだ猫は逃げますか?』ではシナリオを手がけていらっしゃいましたが……。

『近畿地方のある場所について』背筋氏 ×『零 ~紅い蝶~ REMAKE』柴田 誠氏対談──ホラークリエイターが語る恐怖の本質_021
『まだ猫は逃げますか?』。画像はSteamストアページより

背筋氏:
小説という形に限定せず、いろいろとチャレンジできたら、と思っています。

柴田氏:
背筋さんは主観的な感情を書ける方なので、和風ホラーゲームは合うと思います。モキュメンタリーは状況を書ける人はいると思うんですけど、感情が書ける人はあまりいないと思います。

状況を見せる物理的なホラーは、電源を切ったらスッキリ消えるのですが、感情を描くホラーは、電源を切ったあとのほうが考えてしまうというか、余韻が残る。できれば、その夜に見た夢のほうが怖いのが望ましい(笑)。

──背筋さんもご自身の著書が映画化した『近畿地方のある場所について』のBlu-ray/DVDが発売となりますが、期待している方々へひと言いただけますか?

背筋氏:
小説版とは違ったキャラクターの活躍がご覧いただけると思います。映像でもぜひ楽しんでいただきたいです。

柴田氏:
映画はけっこう小説と違いますよね。

背筋氏:
それがすごくいいなと思っていて。媒体それぞれの善し悪しがあって、映像でしか出せない魅力を白石監督が追求されたのだと思っています。

──柴田さんからも『零 ~紅い蝶~ REMAKE』を楽しみにしている方々にコメントをお願いします。

柴田氏:
タイトルはリメイクですが、遊んだことのない方々が「新作」として楽しめるクオリティーとなっています。『零』シリーズはどのタイトルも単品で楽しめるストーリーですので、『零』シリーズが初めての方には良い入り口になると思います。

かつてオリジナルをプレイされた方には懐かしいところはクオリティアップしつつ、新しい要素もいろいろと入っていますので、ぜひ手に取ってみてください。

自分の中の和風ホラーのエッセンスを凝縮させたものとしては、2作目がいちばん強く出ていると思っています。自分でもわからないもの、計算しきれていないものが『紅い蝶』にはたくさんあるので、和風ホラーならではの奥深い闇、凝縮されたものを、ぜひお楽しみください。

──そろそろ締めさせていただければと思うのですが、この機会にそれぞれ聞いてみたいことはありますか?

柴田氏:
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』【※】は想像に訴えかけるホラー映画でとても良かったのですが、背筋さんはどこまで関わっていたんですか?

※『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
第2回日本ホラー映画大賞(KADOKAWA主催)大賞受賞作を近藤亮太監督が長編化した、「正統派Jホラー」映画。入場者特典として、背筋氏が書き下ろしたスピンオフ短編小説「未必の故意」が数量限定で配布された。

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(画像は映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』公式サイトより)

背筋氏:
近藤監督から映画を作っているというお話をうかがって、完成したときに「短編小説を書いてください」とオファーをいただきました。内容が解釈の余地があるものだったので、設定などには頭を悩ませましたが、あくまで私が考えた「あったかもしれない物語」という形で書かせていただきました。

柴田氏:
映画も短編小説も見終わったあとのほうが残る、最近では印象深い作品だと思いました。

背筋氏:
近藤監督がこだわりのある方で、ジャンプスケアだけで怖がらせない、奥行きのある怖さを追求されていたんですね。

柴田氏:
私も和風ホラーを作るとき、ジャンプスケアは極力抑え、考える、感じさせる怖さというのをつねに考えていたので、共感します。

背筋氏:
私からもよろしいですか? 柴田さんにうかがいたいことは2点あって、ひとつ目は最近のゲームのリメイクはなぜ2作目を作るのが多いのでしょうか? 『バイオハザード』、『サイレントヒル』、『零』にしても2作目のリメイクが多いですよね。

柴田氏:
そうですね……想像ですが、1作目で革新的なシステムだったりフォーマットを作って、2作目はそれを受けてパワーアップさせると、多くの場合2作目は完成度が高くなるので評価が高くなる。それを受けて売り上げも上がると、リメイクする際の判断として「評価も高く、数も出ている2作目をリメイクしよう」となるのではないかと思います。

背筋氏:
なるほど。もうひとつの質問は、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』はトロフィーの取得は難しいですか? ナイトメアモードをクリアしないといけないとか、1枚も撮影せずにクリアとかそういう要素は……。

『近畿地方のある場所について』背筋氏 ×『零 ~紅い蝶~ REMAKE』柴田 誠氏対談──ホラークリエイターが語る恐怖の本質_023

柴田氏:
もうトロコンを考えてるのですね(笑)。
あんまり詳しくは言えないのですが、無茶なものはないので背筋さんならトロコンできるのではないでしょうか。難易度の高いナイトメアモードもありますが、今回は一撃死を防ぐお守りといった救済措置やパワーアップ要素も多く、苦手な方でも時間をかければ行けると思います。

──ミッションはあるのですか?

柴田氏:
戦闘だけを楽しむミッションモードは、今作ではありません。

背筋氏:
サブクエストはあります?

柴田氏:
はい、あります! ミッションモードがサブクエストに拡大した感じとなります。

背筋氏:
それはけっこう大きい追加要素ですよね。

柴田氏:
おもな登場人物にはサブクエストが用意してありますので、ぜひ楽しんでください。

背筋氏:
ありがとうございます。『零 ~紅い蝶~ REMAKE』の発売、楽しみにさせていただきます。今日は柴田さんとお話しできて光栄でした。ありがとうございました。

柴田氏:
こちらこそありがとうございました!(了)


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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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