ルート毎に内容も大きく変わる『ハンドレッドライン』。なかでも“反戦”がテーマとなった「真相解明編」は今こそ遊んでほしい
──根本的な質問で恐縮ですが、おふたりは『ハンドレッドライン』をプレイした方にどんな感情になってほしいと思って制作されたのですか?
小高氏:
ルートによって全部違うので、いろんな感情になってほしいと思っています。真相解明編は狙ってそう書いたわけじゃないですが、結果的にテーマが「反戦」になったんですよね。こんなご時世だからこそ、『ハンドレッドライン』の真相解明編をやってほしいですね。
稲生氏:
何かの原体験になってくれたらいいのかなと。「あのときにやったあのゲーム」、「あのとき観たこの映画」と思い出すことって、皆さんありますよね。誰かにとってのそういう作品であってほしいというのは『ハンドレッドライン』に限らず、仕事をしていてつねに思うことではあります。そのなかでも『ハンドレッドライン』は、豊富な分岐があることから、そういった作品になりやすいと思うんですよね。
1周年記念イベントを開催するにあたって、真相解明編をプレイし直したのですが、めちゃくちゃ感動するし、「すごくよくできてるな〜」と改めて思いました。終盤の怒涛の展開は、何かをやるたびに思い出しています。
とくに創作をする人にとっては栄養価の高いタイトルだと思いますので、たまにふと思い出すものになってくれてたらうれしいです。また、本作では小高さんと打越さんがどうしても目立っちゃいますが、シナリオにはいろいろなライターさんが関わっています。「このルート、よかったな」と感じられるものが必ずあるタイトルですから、小高さん、打越さん以外のライターさんにも注目が集まるきっかけになってくれたらうれしいですね。
──ちなみに、DLCは予定されているのでしょうか。
小高氏:
やりたい気持ちはありますが、アニメ化のようなデカいメディアミックスのときにあてたいですね。ただのファンアイテムにはしたくないというか。「ハンドレッドライン3」と思えるくらいインパクトのあるもの、「えっ!?」って感じのものを出したいですね。
ファンアイテムっぽいDLCを出して小銭を稼ぐ、というビジネスもありますが、そこはほかのタイトルにお任せする感じで(笑)。いまのところやろうと思っているのは、魔法少女たちが出てきて裁判するっていうルートをやりたいですね。
──(笑)。いやー、やっぱり小高さんは突き抜けてますね(笑)。
小高氏:
僕は『エヴァンゲリオン』でいうと、貞本義行さんのマンガ版がいちばん好きなんですね。年をとってくるとテレビ版、劇場版、マンガ版などがごちゃごちゃになってしまって。
「碇があの行動をしてたのはどの媒体だっけ」とか、そういう感覚が『ハンドレッドライン』であってもいいと思っているんです。「蒼月がああいうふうになったのはマンガだっけ? アニメだっけ? 実写だっけ?」とか、そういう現象が起きたらおもしろいなと。
たとえば転校生がひとり増えただけでも、大きな新しいものができたりするので、既存のファンも喜びつつ新しいお客さんも迎えられるようなことを今後も続けていきたいとは思います。
稲生氏:
最初の100日間がコミカライズで描かれますので、人気が出たらいろいろなルート展開も考えていきたいですね。
アドベンチャーゲームが「東野圭吾に勝つ」ために必要なこと
──最後に、ちょっと真面目なことをうかがいますが、小高さんはいまのアドベンチャーゲームをどのように捉えていますか。
小高氏:
正直そこまでアドベンチャーゲームをいろいろプレイしてるわけではないんですよね。いろいろなジャンルのゲームをやったり、小説を読んだりしています。そんななかでも、優れたアドベンチャーゲームは、やはりゲームシステムを的確に使っていると思っています。
物語が主体のアドベンチャーゲームですと、正直なところ小説のほうが読み物としての質はいいと思うんですよね。やはり有名小説家が書いた作品のほうが読み物としてはおもしろいじゃんって。「本当におもしろい物語」と突き詰めたいんだったら、それは東野圭吾と勝負することになるわけで。
東野圭吾に勝つためには、ゲームならではのシステムや演出を使って、感動を物語から与えないといけない。たとえば、ページ送りすらゲーム性だと思うし、それをちゃんと考えてるものが優れたアドベンチャーゲームだと思っています。インディーゲームなどのおかげで、いまはアドベンチャーゲームが流行っていますし、新しい作品もどんどん出ています。
ただ、アドベンチャーゲームはシステム的には停滞してしまっている気がしていて、「こんな物語の見せかたがあるんだ」という画期的な作品が日本から出てほしいと切に願っています。好き嫌いはあると思いますが、『Return of the Obra Dinn』とか、『未解決事件は終わらせないといけないから』とか、ああいう作品が日本から出てほしいところですね。

──インディーの中には、「小高さんがこれまで手がけた作品から影響を受けたんだろうな」といったタイトルも見受けられますが、そういった若い世代からのリスペクトを感じるタイトルや、フォロワータイトルについてどう感じていらっしゃいますか?
小高氏:
正直、「いまか」という感じがあって。「15年遅いぞ」と。フォロワータイトルがヒットするということは、いまの時代でも『ダンガンロンパ』がまだ古びていないという証明でもあるわけです。それはいいことだとは思うのですが……。
遊んだら何かを言いたくなっちゃうので、余計なことを言う老害にならないようにプレイしないようにしていますね(笑)。うちのスタッフはプレイしているので、彼らから話を聞くだけにしておこうかなと。
インディータイトルや若い世代が作ったタイトルの中からヒットが生まれるというのはいいことですし、そこでヒットしたお金で、新しい挑戦をどんどんしてほしいと思っています。
──ちなみに、小高さんはアドベンチャーゲーム以外を作りたいという欲求はないのですか?
小高氏:
アドベンチャーゲームにこだわっているわけじゃないんですが、ストーリードリブンのゲームを作りたいんですよね。あとは「泣ける」ことを大事にしています。
──それは「泣かせる」ことが目的ではなくて、感情の揺さぶりとして結果的に「泣ける」ということですか。
小高氏:
そうですね。感情の揺さぶりで泣かせるというのは『ダンガンロンパ』のときから重視していることです。そうじゃない作品もありますが、基本的に「泣ける」ことには重きをおいています。ユーザーさんの中にはそこまで心を揺さぶられたくないという方もいるでしょうけども。
「泣ける」って言われると構えちゃって遠慮する人もいて、そういった人は疲れたくないからYouTubeとかにいくわけですよね。でも僕が作るものはそうじゃないので、『ハンドレッドライン』を作るときは「泣ける」ことを意識して作っていました。
──打越さんもそういうタイプなのでしょうか。
小高氏:
打越はそうじゃないですね。打越の作品は結果的に泣けるシーンはあったりしますが、泣かせようとは思っていないですね。彼の場合は「驚かせたい」という意識が強い。
彼と仕事をしたときに「打越はアドベンチャーゲームを作る人なんだな」と、僕とは違うタイプだと感じました。打越は「書きたいものがあったらすべてをそれにフォーカスする」タイプ。一方、僕は「ゲーム体験のうえでのストーリー展開を重視している」。
「『ダンガンロンパ』のミニゲームって必要?」ってず〜っと言ってくる人もいますし、「『ハンドレッドライン』のシミュレーションパートが難しい」という方もいらっしゃいます。ただ、ミニゲームがあったうえでの物語、シミュレーションパートがあったうえでの物語なんですよね。そこは自分の中でブレることはありません。
稲生氏:
小高さんは能動体験を意識しているのかな、という印象があります。
小高氏:
そうしないと先ほど言った通り、東野圭吾に勝てないですからね。勝つ必要はないかもしれませんが、作り手だったら「ほかの何にも負けないようにしたい」という気持ちは持ち続けたいです。
──小高さんにインタビューをするときは、のらりくらりといいますか、あえて本質を外した回答をされることが多い印象だったのですが、今回は真面目に話していただいてありがとうございます。
小高氏:
いつも真面目に答えてますよ(笑)。
──(笑)。では最後に、『ハンドレッドライン』を愛してやまないファンの方々に向けて、おふたりからメッセージをお願いします。
小高氏:
『ハンドレッドライン』はファンの方がすごく応援してくれるタイトルで、そのおかげもあっていろいろな賞も取れました。皆さん、もっともっと『ハンドレッドライン』を広めていただければと思います(笑)。『ハンドレッドライン』カルト集団として「ハンドレッドライン教」を……。
──(笑)。すでに購入している方が新たなユーザーをひとり連れてくれば、売上が倍になりますからね(笑)。
小高氏:
このあといろいろなタイミングでセールも実施しますので、そういうところでどんどん沼に引きずり込んでほしいと思います。舞台化、マンガ化を皮切りに、『ハンドレッドライン』はメディアミックス展開をどんどん広げていきたいと思いますので、古い作品にはならないというか、つねに走り続けてる作品にしていきます。安心してお友だちを引き込んでいただければと。
この記事を読んでいる電ファミニコゲーマーの読者は、もちろん『ハンドレッドライン』をプレイしていますよね? 電ファミを読んでいるくらいですから、皆さんゲーム好きですよね? プレイしてなかったら、ゲーマーは名乗れませんから(笑)。「アニメライク、マンガライクだからこれはゲームじゃないね」と言っている、海外の批評家たちと同じになっちゃいますよ?(笑)
『ハンドレッドライン』はプレイして評価しないといけない必修作品です。クリエイターとしてではなく、皆さんと同じ、いちゲームファンからの意見ですので、皆さんよろしくお願いします。
稲生氏:
このあとだとしゃべりにくいですね(笑)。えー、発売から1年が経過し、プレイしてくださった皆さんが『ハンドレッドライン』のことをたくさん話題にしてくれて、本当に感謝しています。皆さんがそうやっていろいろな発言をしてくれたからこそ、アワードで賞を受賞できたと思っています。皆さんのおかげで、『ハンドレッドライン』はさまざまなことに挑戦できる状況が続いています。
小高さんが手がけた『ダンガンロンパ』が15年間ずっと話題になっているように、『ハンドレッドライン』もそうならないといけないタイトルだと感じています。
一生懸命、できることを継続していくことが使命だと思っていますし、この先もイベントや物販、メディアミックス展開などにチャレンジしていきますので、引き続き『ハンドレッドライン』をご愛顧いただければうれしいですね。



