東京・表参道で開催予定だった“幻のエキシビジョン”をゲームのなかで一足早く実現。いつか現実でも見られるかも?
Ryotaさん:
もうひとつ注目してほしいのが、コンテナが並ぶ、1対1の練習場です。
Ryotaさん:
じつは、2026年の1月にエミルのエキシビションを表参道でやる予定だったんです。1年前から決まっていて、それに向けて僕も彼も動いていました。そのエキシビション用に数十点のアートを作ったり、いろいろな準備をしていて。ただ、僕の中で違うアイデアが出てきてしまって、エキシビションはキャンセルしちゃったんです。
そのアイデアがこれなんです。エミルのエキシビションを将来的にこういう感じでやりたいと思っていて。カラフルなコンテナにエミルのデザインを書いて、ここにカフェとかも置いて、広い敷地を借りて、エミルのアートがぶわっと並んでる映像がパッと思い浮かんだんです。
それをエミルのエキシビションの1発目に絶対にしたかった。エミルにそれを言ったら「キャンセルしちゃっても大丈夫だよ」と言ってくれて。
ただ、僕のなかで少し心苦しかったので「じゃあ先にゲームでやればいいじゃん」と思ったわけです。ゲームでそういう場所を提供できないかとAlcheにお願いして、「エミルのエキシビションをまずゲーム内に作ってほしい」と伝えました。
ここは1対1の練習の場所なので、お客さんもめちゃくちゃ練習すると思うんですよ。将来的にリアルでゲームと同じ場所を見かけたら、お客さんも「あ! あのゲームの世界じゃん」と楽しんでもらえそうだなと。カフェのようなスペースも作って『フォートナイト』もプレイできる。現実世界でこれが表現できたらおもしろそうだなと思いました。
川氏:
こちらはまだ制作途中ですので、これからブラッシュアップしていくものになります。
──これは島の配信からちょっと遅れて出されるのですか?
川氏:
いえ、こちらもいっしょに出す予定です。現在改良しているところでして、ここは1対1、NPCと戦う場所となります。この外が実際の戦闘場所になるイメージです。
──ちょっと待ってください。UIもエミルさんのデザインになっているのですか?
川氏:
はい。エミルさんのデザイン仕様になっています。
──いや、お世辞ではなく、本当に作り込みがすごいですよね。
Ryotaさん:
仕上がりを見て僕も驚きました。「同じようなゲームを作りたい」という人が増えるんじゃないですかね。
頭の中ではイメージできていても「どうせこんなの作れないでしょ」と諦めてしまっている人は多いと思うんです。でも、『フォートナイト』のエンジンを使ったら「何でも作れる」ということが伝わるんじゃないかと。
「こういうのはさすがに作れないですよね?」と聞いたら、すぐに「作れますよ」と返事をもらう感じだったので、多分ほとんどのやりたいこと、作りたいゲームは制作できるんじゃないかな。
「ひとりの時間」を大切にしてきたRyotaさんがチームを作り始めたのは、バンドのボーカル・Takaさんのアドバイスがきっかけだった
──Ryotaさんの中では「あれもやりたい」、「これもやりたい」というのは、まだまだあるのでしょうか。
Ryotaさん:
いったんインプットの期間がほしいですね。僕はこのゲームを作る前、ひとりの時間がすごく長かったんです。コロナの時期もあり、仕事以外はずっと家の中にいたというか。ひとりの時間が増えたら、いろいろなものに出会ったんです。
──ひとりだからこそ、気付けたことがあったと。
Ryotaさん:
そうですね。「こういうことしたいな」と考えたり、写真家に出会えたり、秋葉のカルチャーでカードゲームをしたり。ひとりの時間を作ったことで、いままでにない知識が身について、見識が大きく広がりました。去年くらいからは人といる時間がめちゃくちゃ増えたので、逆にひとりの時間がなかったんですよ。アウトプットの時期だったこともあって、つぎはまたインプットのために1回引きこもりたいですね。引きこもってつぎの構想を練りたい。
──もともと、ひとりのほうが考えがまとまっていくタイプだったのですか?
Ryotaさん:
僕は完全にひとり型ですね。ひとりで何かしたり、考えごとをしたり、調べものをしたり……。ひとりで遊ぶことがめっちゃ得意だったんです。
5年前くらいに、バンドでアメリカやヨーロッパで海外ツアーをしていたときに、ツアーバスに乗って生活していたんです。1ヵ月半くらい、寝泊まりもバスの中という(笑)。
そのときにボーカルのTakaと深く話をする機会があって、Takaから「Ryota、つぎのステップは仲間集めだよ。ちゃんとチームを作ったほうがいい」と言われたんです。「え、どういうこと? 俺はひとりでも大丈夫だけど?」と答えたら、「いや、Ryotaがもっと自分のやりたいことを表現するんだったら、まずチームを作らないといけない」という話を真剣にしてくれて。そこで「じゃあ、ちょっと1回トライしてみる」と答えたんです。
Takaに言われることは毎回何かしら意味のあることで、20年間バンドをやってきた中で、僕を育ててくれたのは彼なんです。彼は的確なアドバイスを僕にくれるんですよ。昔からそうなんですけど、「Ryota、こういう動きをしてみて」とか、「衣装はこうで、じゃあ1回ステージで脱いでみて」とか、「こういうプレイをして」とか。そういったすべてのアドバイスをしてくれるのはTakaだったんです。本当にきびしく、でも本当に優しくて。
彼が「チームを作ったほうがいいよ」と言ってきたとき、頭の中ではハテナが浮かんだのですが、「そんな彼が言うからには何かしら意味があるんだろう。成長するにはチーム作りが必要なんだろうな」と思ったんです。
そう決意してすぐに、さっそくチーム作りに動き出しました。昔から仲がよかった子を誘ったり、誰がチームになるのがいいのかを自分の中で考えていたら、結果的にいまのチームができたんです。今日話した3人以外にも、僕の大事な仲間は10人くらいいるんです。そのみんなでいろいろなことを今後、表現できたらいいなと。
ただ、先ほど言ったとおり、最近はアウトプットが多かったので、どこかでもう1回、インプットの時期を入れないとつぎのステップに進めないと思っていて。だから、いまはとにかくみんなでやれるところまで、このゲームだったりバンドだったりで全部吐き出そうと。
──そういった意味でも、この島が配信されてからの反響が楽しみですね。世界中の方から反響がもらえると思いますから。
Ryotaさん:
皆さんに楽しんでもらいたい気持ちはありつつも、「イマイチ」と感じる人もいるとは思うんです。ただ、まずは「自分が本当に満足できるものを」と思って作ってきたので。それでも、楽しんでくれた人がこの島で練習を続けてくれたら、すごくうれしいですね。
──このクオリティで、しかも無料なわけですから。
Ryotaさん:
プレイしてもらえれば、この島のよさをわかってもらえるとは思っています。じつは、隠し要素も入っていて、やりこみ要素もちゃんとあるんです。ふつうに練習するだけのモードでも十分楽しいんですけど、そのほかの要素もすごくおもしろい仕掛けがあります。
あと、音楽はアップデートしていきたいと思っていて……。レコーディングしている時間が本当に楽しいんですよね(笑)。テストプレイしたときに「デザインやマップに関しては、Alcheが完璧にしてくれるので全部任せちゃって大丈夫」と途中くらいから本気で思っていて。
だから、「僕は音楽にフォーカスしてやるから」という話もしていたんです。それでレコーディングだったり、アーティスト探しだったりをしていたのですが、その時間がめちゃくちゃ楽しくて。「この曲にはこの人が合うな」とか、「つぎはラッパーを入れたいな」とか、音楽でどんどんやってほしい人が出てきちゃったので、音楽は絶対にアップデートしたいと思っています。
──そんなに「作ること」が楽しいと、完成させたくなくなっちゃいませんか? 「ずっと作り続けたい」というか(笑)。
Ryotaさん:
だから僕はずっと「未完成」って言い続けます(笑)。配信がスタートしたときも「まだ未完成です」と言っておけばいろいろとやれますよね。「100%です」と言っちゃうとアップデートしづらいなと。
──Steamでいうところのアーリーアクセスですね(笑)。
Ryotaさん:
あ、初めは「Steamはどうか」という話もあったんですが、Steamでゼロからゲームを出すのはちょっとレベルが高いなと思って。制作時間もいまは確保できないし……と悩んでいたときに『フォートナイト』に出会ったんです。『フォートナイト』は本当にとんでもないゲームですよ(笑)。
──ちなみに、Epic Games Japanさんも開発などに関わっているのですか?
Epic Games 河崎氏:
まったく関与していないです。
──差し支えなければの質問となるのですが、開発費はどうされたのですか?
Ryotaさん:
すべて僕が個人で出しています。
──え?
Ryotaさん:
それもあって資金回収とかはまったく求めていなくて。純粋に自分が好きなものを作ることができました。
──いや、それは本当にすごいです。失礼な言い方になるかもしれませんが、メディアとしてめちゃくちゃ応援したくなりました。
Ryotaさん:
「もう全部使っていいや」と思ったくらいで(笑)。先ほども言ったとおり、回収は1ミリも考えていないので……。何か収益があったとしても、それをまた僕が応援したいものだったり、支援だったりとか、そういうことに充てたいと考えています。
──繰り返しますが、無料で遊べるクオリティじゃないですよ(笑)。
Ryotaさん:
僕がこれを作ったことによって、行動したいけどできなくてモヤモヤしてる子たちが「俺も何かやろう」というところにつながってくれたらうれしいです。僕だってゲーム制作なんてまったく考えていなかったのに、結果的にゲームを作ることになったわけで。
人生には楽しいことがいっぱい散らばっていると思うんで、それをキャッチしてほしいです。たいへんなこともいっぱいあるだろうし、僕もこれまでに苦労したことがありましたけど、楽しいことはたまにバンッと出てくるんです。「人生には楽しいことがまだまだあるよ」というのも、わかってもらえたらうれしいです。僕も今回のゲーム制作で「人生って楽しい。こんなにおもしろいことがあるんだ」と感じることができましたから。
──ちなみに、こちらの作品はONE OK ROCKのメンバーにはお見せしたんですか。
Ryotaさん:
じつはまだメンバーも知らないんです(6月18日時点)。タイミングが合わなくて……。ギターのToruにはこのあいだ軽く話はしたんですけど、たぶんゲームというのがわかってなかったんじゃないかな(笑)。めちゃくちゃゲームをするのかと言ったら、僕も含めてそんなにゲームに触れてこなかったですから。
去年からスタートしたDETOX Asia Tour 2026の最終公演がジャカルタだったので、そのときにみんなに報告しようと思っていたんですけど、言うタイミングがなくて。いまは海外に行っていたり、ライブが終わってみんなバラバラの場所にいるので、「つぎに4人で集まるのはいつだったっけ? そのときにはローンチされているかも。でもやっぱり配信の前にみんなに言わないとな」と思ってグループLINEで伝えようかなと考えたんですけど、文字だけじゃわかるはずがないなと(笑)。だから「じゃあサプライズでいいか」と、いまは思ってます(笑)。
──配信が楽しみです。でも本当に素敵なチームですね。
Ryotaさん:
これまでの人生の中でいろんな人たちに会ってきて、「あ、この人は合わないな」と思った場合は勝手に反応するというか。だから、僕が集めたチームメンバーは全員いい奴なんです。どれだけスキルがあっても、とんでもない能力を持っていたとしても、「いいハートを持っているかどうか」を僕はいちばん大事にしています。そこが悪かったら、いっしょにクリエイティブなことはできないんです。
実際、チームメンバーの彼らはすごい能力も持ちながらも、本当にやさしいんですよ。だから自信を持って誰にでも会わせられるし、皆さん好きになってくれるんです。人生の中で、この仲間を作れたことは本当によかったことですね。
それはバンドも同じで、僕ら4人は本当に仲がよくて、「20年やっていてこの関係値でやれているバンド」って僕ら以外いないんじゃないかっていうぐらい。仲がよくないといいものは絶対に作れないし、それはバンドで教えてもらったことでもあります。
だから仲間を作るときも、心からリスペクトできて、でも言いたいことも言える仲じゃなきゃダメで。そういうチームを作らないといけないと思いました。技術レベルはおのずと上がっていくので、大事なのはハートなんです。
だから大揮くんと会ったときも「あ、めちゃくちゃいいハートを持ってる。最高すぎる」と思ったんです。Alcheのチームメンバー全員にも会わせてもらったんですが、みんなめちゃくちゃいい子たちで、このチームとゲームを作れたことはすごく幸運でした。
──Ryotaさんが「ものづくり」をするときに、クリエイティブの取捨選択をどのように判断されているのですか? ここまでのお話を聞いていると、Ryotaさんの中につねに答えがあるような気がしたので。
Ryotaさん:
さきほど話したように、僕の中でひとりの時間っていうのがめちゃくちゃ長かったので、「これが好き」というものが頭の中でできていて、体で全部感じているんですよ。なのでデザインを見ても「違う」場合は勝手に体が反応しますし、それを絶対に隠しません。
たとえば、修也くんが作った音楽に関しても、「違う」と感じたときは中途半端に「なんかいいじゃん」とは言いません。それは彼の成長を止めてしまうし、彼のためにもならない。
「ここを変えて」とか、「ここの部分は好きだから残しておこう」とか、僕が言ったことに対して「そのとおりだった」と納得はしてくれるように説明しています。
ただ単に「俺の好みじゃないからダメ」だと、さすがにわけがわからないですよね。エミルに関しても「このデザインが合わない理由」はもちろん、僕が好きかどうかも含めて説明しています。
頭の中で「かわいい」、「好き」といった言語化できないセンサーみたいなものがつねに動いていて、曲を聴いたときも「あ、これいい」とパッと反応するんです。みなさん、そういった感覚は人それぞれにあると思うのですが、僕は多分それがめちゃくちゃ強い。パッと見たときに「なんか違う」とか、「本当に好きすぎる」とか、強烈な衝動があるんです。
冒頭で話したとおり、エミルの絵に最初に出会ったときは本当に好きすぎて「スウェーデンに行かないと」とすぐに行動に移したわけで(笑)。
──それは才能だと思います(笑)。
Ryotaさん:
だからこそ、この部分は僕の中ですごく大事にしています。心が動く瞬間、そこがほかの人よりもしかしたらちょっと強すぎるのかもしれません。でも僕からしたら、みんなの中にも絶対にそれはあるんです。
自分がやりたいことだったりだとか、興味があるものに対して「なんかちょっと感情が動いてるな」っていうのは、ちゃんと反応して行動してみてほしいです。今回、僕も『フォートナイト』と出会ったときに感情が湧いて、「あ、やばい、これはどうにかしてでもゲームを作らないと」と瞬間的に心が動いたのを覚えています。
このゲームを通じてそういう感情を動かしてもらって、この記事を見ていま迷ってる子たちも「勇気を出して進もう」とか「やってみよう」とか、行動を起こしてくれたら、僕は今回の作品を作った甲斐があるなと思っています。






