ドイツ・ケルンで開催中のゲームイベント「gamescom 2026」会場にて『Castlevania: Belmont’s Curse』の試遊が可能となっている。
本作は『Dead Cells』などで知られるEvil Empire、Motion Twinが手がける2Dアクションゲームで、『悪魔城ドラキュラ』シリーズの新作にあたる。
会場ではメディア向けに開発者インタビューが実施され、プロデューサーを務める谷口勲氏、リードゲームデザイナーのSandro Bordier氏(Evil Empire)、マーケティングディレクターのBérenger Dupré氏(Evil Empire)にお話をうかがう機会をいただいた。

取材時間は15分と短い時間ではあったが、本稿ではその様子をお伝えしていく。
DLCと新作、同時に動き出した『キャッスルバニア』プロジェクトの舞台裏
──本日は15分という限られたお時間ですので、谷口さんには「継承の線引き」、Sandroさんには「悪魔城の解釈」、Bérengerさんには「本作をどう世に送り出していくか」についてお聞かせください。
まず谷口さんにおうかがいします。今回の新作は自社開発ではなく、Evil Empire【※】社へ委ねる判断をされました。この決定にいたった経緯と、「この会社に託したい」と確信した具体的な瞬間を教えていただけますか。
※Evil Empire フランス・ボルドー拠点のインディーゲームスタジオ。母体は『Dead Cells』の生みの親であるMotion Twinで、そこから派生する形で設立された。DLC『Dead Cells: Return to Castlevania』(2023年)でコナミと初めて協業し、今回『Castlevania: Belmont’s Curse』の開発を任されるにいたる。
谷口勲氏(以下、谷口氏):
経緯からお話しします。私はコナミに入社して12年ほどになりますが、もともと本作の担当ではありませんでした。
ただ、個人的に『悪魔城ドラキュラ』シリーズが大好きで、日頃からSNSやコミュニティの反応をチェックしていたんです。その中で「アニメは観ているけれどゲームは未プレイ」「2D探索型アクションは好きだが『キャッスルバニア』は遊んだことがない」といった声をたびたび目にし、いちファンとして非常に惜しく感じていました。
そうした「作品を知ってはいるがプレイしたことはない」という層に届けるため、まずは既存作の移植から着手しました。さらに『Dead by Daylight』や『Vampire Survivors』など他社作品とのコラボを展開し、若い世代やライト層が普段遊んでいるタイトルを通じて『悪魔城ドラキュラ』に触れてもらう機会を増やしていったのがすべての始まりです。
そうして展開を広げる中で、ファンの方々から「新作は出ないのか」という強い要望を数多くいただきました。私自身もいちプレイヤーとして新作を遊んでみたいという思いがあり、新作開発に挑戦する決意を固めました。
開発にあたり、私がもっとも重視したのが「操作の快適さ」です。『キャッスルバニア』の本質は、2Dアクションとして「キャラクターを動かしているだけで楽しい」「思い通りに気持ちよく操作できる」というレスポンスの良さにあります。しかし、この打鍵感や手触りを理想的なクオリティで実現できる開発者やスタジオは、世界的に見ても決して多くありません。自社でゼロから構築すべきか、外部の優れたクリエイターと組むべきかを模索しました。
そこで、「この手触りを実現できるチーム」の候補リストを作成した際、最上位に挙がっていたのがEvil Empireでした。
「よし、アプローチしよう」と連絡先を調べていたまさにそのタイミングで、奇跡的にも彼ら側から「『Dead Cells』【※】で『悪魔城ドラキュラ』のコラボDLCを作らせてほしい」とオファーが届いたんです。私自身『Dead Cells』のファンでしたのでコラボ自体も快諾しましたが、それ以上に「君たちはこっちをやりたいかもしれないけど、新作ゲームの話もさせてほしい」と提案しました。
※『Dead Cells』 Evil Empire(前身Motion Twin)が手がけるインディーの人気アクションローグライクゲーム。
「プレッシャーは大きいですが、がんばります」と快諾していただき、結果としてコラボDLCと新作プロジェクトが同時に始動することとなりました。
壁を壊せるほど強かった鞭がどのようにして今の形に落ち着いたのか
──続いて、Sandroさんにおうかがいします。本作は戦闘と探索の両方を貫く核心的な要素として「鞭」が据えられている印象です。レベル設計は鞭のアクションから逆算して構築されたのでしょうか、それともレベル設計が先にあり、あとから鞭との整合性を調整されたのでしょうか。制作の順序とプロセスについてお聞かせください。
Sandro Bordier氏(以下、Sandro氏):
コナミさんから新作開発のご提案をいただいた際、「鞭を主軸に置きたい」という方針が決まりましたので、まずは「鞭のアクション」を定義することからスタートしました。
じつは、鞭のパーティクルサイズ【※】を検証していた初期の段階では今の鞭とは違う形態でした。今は移動手段としても使える仕様なんですけど、最初は壁を破壊できるようなすごく強い鞭だったんです。ただ、それだとゲームデザインとして違うものになってしまうとなって。そうして今のような、移動しつつ敵を倒しつつという、ちゃんとレベルデザインが設計されたものになっていきました。
※パーティクルサイズ
ゲームの視覚エフェクトにおける、粒子(パーティクル)ひとつひとつの大きさのこと。
谷口氏:
補足すると、現在の仕様になったことで、レベルデザイン側で難易度や導線をコントロールするのが開発上非常に難しくなったんですよね。
Sandro氏:
そうですね。ゲームプレイに適度な緊張感を持たせるため、プレイヤーがどこを狙い、どのタイミングでフックをかけるべきかといったアクションの精度や配置については、調整するよう求められました。
久しぶりの『キャッスルバニア』だからこそ、魂と愛情を込めたい
──続いて、Bérengerさんにおうかがいします。これは皆さまにも共通するテーマかと思いますが、本作では「生成AIを使用しない」という方針が明言されています。この宣言に込められた意図をお聞かせください。クリエイターの手作業やクラフトマンシップ、職人精神に強いこだわりや価値を見出されている結果なのでしょうか。
Bérenger Dupré氏:
理由は大きくふたつあります。ひとつ目は、クリエイターの意思と表現を尊重したかったからです。久しぶりの『キャッスルバニア』の新作だからこそ、AIに頼るのではなく、人間の手で魂と深い愛情を注ぎ込まなければならないと考えました。
ふたつ目は、チームの成長のためです。『Dead Cells』の開発がひと段落し、本作のために新たなチームを結成したばかりの段階でした。今提示すべき課題は「AIの効率的な活用方法を学ぶこと」ではなく、「自分たちの手を動かし、クリエイター同士で試行錯誤しながらゲーム制作の本質を共に学ぶこと」だと判断したのです。
「悪魔城らしさ」は毎回違う──継承と刷新の線引きに迫る
──それでは、再び谷口さんにお話を戻します。今回開発を共にするにあたり、「これだけは絶対に外せない」と定めたラインについてうかがいたいです。特に「悪魔城らしさ」の定義と「難易度調整」の2点についてお聞かせいただけますか。
谷口氏:
まず「悪魔城らしさ」についてですが、これは複数の要素が複雑に絡み合って形成されるものだと考えています。過去のシリーズ作品を振り返っても、コアとなる「らしさ」を脈々と継承しつつも、じつは作品ごとに毎回変化しているんですよね。そのため、何を継承してどう定義づけるかは大きな課題でしたし、ひと筋縄ではいかない難しさがありました。
そこで今回は、まず全体の大枠となる柱を提示することから始めました。「ジャンルは探索型アクションゲームにする」「タイムライン(作中の時系列)を整理する」「新しいベルモンドを主人公にする」というコアな軸を、Evil Empire社と共に策定しました。
大枠を固めた上で、「ではその主人公はどういう人物なのか」「どういう物語を紡ぐのか」「先ほどお話しした鞭を軸に据えるなら、どんなアクションになるのか」といった細部を徐々に深掘りしていきました。最初にコナミ側で全体の骨組みを定め、そこからは対話(打ち合い)をひたすら重ねていく手法をとっています。開発の自由度を尊重しつつも、上がってきた提案に対して「ここはこうしよう」と議論を深めながら、共に作り上げていきました。
もう1点の「難易度調整」についてですが、シリーズの新作が長年途絶えていたという背景が関わってきます。私自身もいちプレイヤーとして現代の2D探索型アクションを楽しんでいますが、今『キャッスルバニア』の新作を世に届けるにあたり、単に「最後に出た過去作に近いもの」を作れば正解なのかといえば、決してそうではないと考えました。
時代の変化とともにハードは進化し、ゲームシーンのトレンドやプレイヤーが求める「当たり前」の基準も変わっています。10年前の体験をそのまま提供しても、現代のプレイヤー、とりわけ新規の方々には受け入れてもらいづらいはずです。
未経験の方にも楽しんでいただきつつ、既存のファンの方々にも応える作品を目指すならば、プレイヤーの挙動やバトルの戦略性を現代に合わせてアップデートせざるを得ません。結果として、ある程度ハードなバトルシステムになったのですが、そのほうが楽しんでいただけると思い、そういう決断をいたしました。(了)





