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『レインボーシックス シージ』にも劣らない戦略性。『エクストラクション』の最新イベント「Nightmare Fog」は、負けるたびに新しいアプローチを考えたくなる魔性のコンテンツだった

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 『レインボーシックス シージ』(以下、シージ)は難しかった。

 チームとチームのぶつかり合いの中で生まれるドラマや駆け引き、その戦略性の高さが非常に魅力的な『シージ』。しかし筆者にとっては「エイム」「リコイルコントロール」などといった指先の技術がネックであった。人気作品なだけあってプレイヤーのレベルも高く、オンラインマッチでは歴然とした力量差を見せつけられることも少なくなかった。

 もちろん対人戦(PvP)がメインコンテンツである以上、努力を続けなければ勝てないことは分かりきっている。だが、誰しもが日々エイムトレーニングに励み、変わりゆくマップを把握し続けることができるわけではない。タスクに追われていたり、ほかの魅力的なコンテンツに目を引かれてしまう日もあるものだ。

 1月20日(木)に発売された『レインボーシックス エクストラクション』(以下、エクストラクション)は、『シージ』からキャラクターなどを共有するタイトルである。CPU制御の敵と戦う「PvE」形式の作品であり、「特殊部隊」というクールなモチーフと個性豊かなオペレーターたちによる戦略性豊かなゲームプレイを『シージ』よりもカジュアルに楽しめる。筆者のようなプレイヤーにはありがたい作品と言えるだろう。

 そして今回、5月13日(金)より開始となる期間限定イベント「Nightmare Fog」を先行プレイさせていただける機会を得た。オペレーターたちを蝕む毒の霧の中での戦いは非常に厳しいものであったが、同時にPvP作品にも負けないほど本気で楽しめる、熱くなれるコンテンツだった。

 本稿では『エクストラクション』の戦略的なゲームプレイの概要に触れつつ、「Nightmare Fog」における“悪夢”のような体験を紹介していきたい。

文/久田晴


『シージ』の面白さを受け継ぎ、カジュアルに楽しみやすい『エクストラクション』

 『エクストラクション』は、『レインボーシックス シージ』(以下、シージ)からキャラクターなどを受け継いでいる。『シージ』のオペレーターが名前や姿はもちろん、同作でも使用している固有ガジェッを持ち寄って登場。多少ゲーム性にあわせて効果が変更されている場合もあるが、おおよその特徴は『シージ』に準じており、同作の経験があればより親しみやすい。

 操作面でもしゃがみやダッシュ、リーンなどといった基礎動作は共通のもの。また強度の低い壁を破壊して射線や通り道を作ったりバリケードで通路をふさいだりと『シージ』でおなじみのアクションもそのまま採用されている。

『レインボーシックス エクストラクション』新イベント「Nightmare Fog」:先行プレイレビュー1
左奥で「スレッジ」が壁を破壊中

 最大の違いはやはり、『シージ』がeスポーツとして大いに盛り上がったようにPvPを主軸としたものであるのに対して、『エクストラクション』はPvEの作品である点だろう。プレイヤーは最大3人のチームを組んで謎の危険生物「アーキエン」らと戦い、ステージごとに定められた目標の達成を目指す。

 1対1ならばまず負けることのないアーキエンでも、前後を挟まれたり、逃げ場を失えばたちどころに窮地に陥ってしまう。そのため、攻略ルートやスピード感を共有し、互いをカバーできる位置取りを行うなど、プレイヤー同士の連携や戦術が重要あるという点では『シージ』にも大いに結びつくものがある。

後方から味方を支援
フレンドリーファイアは発生しない

 一方でヘッドショット1発が死に直結し、ミニマップで敵の位置を把握することもできない『シージ』ならではのシビアさの一面は影をひそめており、PvE作品らしく必ず「勝つ」方法があるゲームバランスに仕上げられている。

 ただし決して易しいゲームではなく、大きく負傷したり「MIA」(行方不明)となってしまったオペレーターは使用不可になるなど持続的なペナルティが用意されており、ミッションに挑む際にはある程度の覚悟が求められる。もちろん「詰む」ことはないようにバランスはとられているが、試合が終わればすべてリセットされる『シージ』とは異なる、PvE作品ならではの緊張感も持ち味だ。

オペレーターの半数近くが運用不可に
使用可能なオペレーターのうち半分近くが行方不明に

 『エクストラクション』は対人戦のひりつくスリルこそ薄れているものの、心地よい程度の緊張感と遊びやすさを備えたFPSとして完成されている。筆者自身も『シージ』から離れて久しいFPSプレイヤーだが、懐かしのオペレーターとの同窓会のような雰囲気を味わいながら新たな戦場を堪能できた。

 オペレーターによっては『シージ』では持てなかった銃が持てるようになっていたり、固有ガジェットがより強力になっていたりと、PvEならではのバランス調整が行われているのもどこか感慨深い。ストーリーに密接な関わりは無いため本作から始めてももちろん楽しめる作品ではあるが、やはり『シージ』プレイヤーにこそ味わってほしい趣も感じられるタイトルだ。

歩いているだけで不利に陥っていく、まさに「悪夢」のような霧

 今回先行プレイの機会をいただけたのは、クライシスイベント「Nightmare Fog」。2月から開催されていた「Spillover」に続く、本作では2度目の大型期間限定イベントである。

 「Nightmare Fog」の最大の特徴は、戦闘エリアに有害な「霧」が立ち込めていること。一部のセーフルームなどを除いて常に「神経毒レベル」が上昇していき、段階ごとにさまざまなデメリットを背負うことになる。なるべく短時間の内にミッションを攻略することが求められるため、通常時よりもさらにプレイヤー同士の連携、意思疎通が重要となる

 神経毒レベルはパーセンテージで表示され、一定値に達すると症状が現れる。各プレイヤーで独立しているため、それほど毒に冒されていない者が率先して索敵に出るなど、互いの状態を顧みながら戦略を組み立てていく要素が生まれていた。

オペレーター「ヴィジル」が索敵を担当
足の速い「ヴィジル」に偵察をお任せ

 症状としては、まず30%を超えた時点で敵の「幻覚」が見えてしまうようになる。これらは自分にだけ見え、種類にもよるが簡単に消すことができる。しかし、緊張状態では咄嗟に射撃してしまうケースも少なくなく、弾薬にも限りがある本作では、じりじりと精神とリソースを削られていく厄介な症状だ。

 また、交戦中にも継続して幻覚が現れるため、撃つ必要のないものにマガジン内の弾数を浪費してしまいリロードの隙が生まれるなど、直接的ではないがしっかりとデバフとして機能する。そんな状況の中プレイを続けていると、幻覚だと思い込んでいたら本物だった、という場面も訪れ、視覚情報を信頼できないことの恐怖を思い知らされる。

アーキエンの幻影に惑わされる
幻影は一瞬で霧散するが、混乱を招く

 次に神経毒レベル65%を超えると、視界が狭まる、ブレる、歪むといった、より直接的な影響が顕現してくる。そして100%に達すると、さらなる視界不良にくわえて持続的にHPが減少する効果も発動。体力を回復する手段が限られた本作では、HP減少効果は恐ろしいまでの重みをもってプレイヤーにのしかかり、そのプレッシャーはプレイングを焦らせ、ミスや不注意に繋がってしまう。

 神経毒レベルを下げる方法は、各所に配置された「ニューロスティム」を使用するのみ。ひとつを使用するごとに35%分を回復できるが、上述の通りプレイヤーごとに独立しているため、各フェーズの間に用意された休憩所「エアロック」に用意されたものだけでは全員の健康状態を維持することは難しい。

 そこで活用したいのが、マップごとに用意された「セーフルーム」だ。セーフルーム内は霧が立ち込めないため神経毒レベルを上昇させることなく次のプランを考えることができ、同時にニューロスティムを回収して部隊の態勢を整えることもできる。

ニューロスティム取得
セーフルームのニューロスティムは攻略の必需品だ

 また、本イベントにて追加される新たな「REACTテック」の「ラッシュピストル」は非常に強力なものだった。偵察用ドローンなどと同じカテゴリにふくまれるガジェットだが、15秒間ダメージを受けなくなり、移動速度にも大きくブーストがかかる

 効果中はまさに怖いもの知らずで、通常ならば絶望的な状況からでも一時をしのぎ、逃げのびられるほど。今回の先行プレイでは装備品に制限がかかっていたこともあり、なおのこと「ラッシュピストル」の価値を感じさせられた。

ラッシュピストルの紹介画面

 「Nightmare Fog」は、じわじわとプレイヤーを蝕んでいく神経毒を肌に感じるほどの重圧を与えるイベントだ。もともと既プレイヤー向けのコンテンツということもあってか、その難易度はそれなり以上に高いと思われる。

 というのも、今回の先行プレイにおける筆者のスクワッドは全員がFPSプレイヤーのゲームライターであったにも関わらず、1度のクリアを達成するまでに3時間ほどを費やしたからだ。その内容とプレイフィールを次項では紹介していきたい。

PvPにも負けないほどに熱くなれるハードなミッション

 上で書いた通り、筆者の所属したスクワッドは幸運にもFPS経験者の集まりであった。『エクストラクション』のプレイ経験もあるという話だったので、開始当初は「足を引っ張らないよう頑張ればクリアは簡単そうだな」と高をくくっていた。

 まず我々が取り組んだのは、新ガジェット「ラッシュピストル」の入手である。こちらの入手にはチャレンジを達成する必要があり、記事に起こす以上は新要素は回収しておきたい、というチームの総意でチャレンジに向き合った。もともと『シージ』も家庭用ゲーム機で遊んでいた筆者にとっては、PC版の操作に慣れるという意味でもありがたい話であった。

 結果として、各プレイヤーが数人の行方不明者を出したものの無事にラッシュピストルを獲得。新しいおもちゃをもらった子どものように全員で持ち寄り、その性能に感嘆しつつ記事用の写真撮影会を行っていた。

ラッシュピストルを持つプレイヤー
ラッシュピストル撮影会場

 それ以後は本格的に1ミッションの攻略に取りかかっていく。ミッションは大きく3フェーズに分かれており、第1フェーズにはランダムな目標が用意される。第2フェーズでは「変異ネスト」を排除、第3フェーズにて最終目標となる「トキシックツリー」の破壊に挑む、といった流れだ。

 第1、第2フェーズの目標は無視してもクリアは可能。ただし、第2フェーズの「変異ネスト」はすべて破壊することで「トキシックツリー」を弱体化させることができるため、こちらは達成する価値が大いにあると言える。

トキシックツリーとの攻防
周囲から送られてくる紫色の球を破壊し回復を止める

 スクワッドで何度かの挑戦を経るうちに「神経毒のデバフが思った以上に辛い」「第2フェーズの目標は達成すべき」「第1フェーズはランスルーで良い」などといった意見交換が活発化。すでにこのミッションは一筋縄ではクリアできないと察していたためか、筆者自身も対人FPSをやっている時のように熱心に攻略法を考えるようになっていた。
 
 はじめこそ目の前のアーキエンを撃つことで精一杯であったが、徐々に固有ガジェットやグレネード類を活用できるようになり、体と思考が『エクストラクション』の世界で「勝つ」ために順応していく。脳の活性化と自分の成長を肌で感じられるその体験は、まさに宝物のような時間だった。

 このような魅惑的な体験を味わえた背景には『エクストラクション』の優れたゲームバランスがあるだろう。手慣れたFPSプレイヤーが集まってなお「ヤバい」と感じさせられるほどに難しいが、挑むたびに新たな攻略法の光が見える感触。そして、挑戦に失敗するごとに運用できるオペレーターが減っていく緊張感。これらがあわさり、「何としても勝ちたい」という強いモチベーションを引き出してくれた。

ダウン中
何度もダウンに追い込まれた

 終盤では「『ヴィジル』で敵から逃げつつ目標を探そう」「『グリッドロック』でツリーの部屋の守りを固めてみるのはどうだろう」など、オペレーターを軸にした戦略も語り合うように。互いの生き残ったオペレーターから何とか有効そうな組みあわせを考え、それぞれの役割や探索ルートまでをも話しあい、共有するようになっていた。

 そんな本気の取り組みの甲斐あってか、プレイ開始から3時間ほどが経過したころ、ついに「トキシックツリー」の完全破壊を成し遂げたのだ。

トキシックツリー破壊の瞬間
トキシックツリーにトドメを刺す瞬間

 終えたときの満足感、チームへの感謝はとても言葉では語りつくせない。コミュニケーションを取り、互いの役目を果たし、ようやく目標を達成したときの喜びは並々ならぬものである。正直なところ、PvEという形式でこれほど熱くなれ、チームの一体感を感じられるとは思っていなかった

アプローチを考え挑むタクティカルな楽しみと、PvEの遊びやすさが融合した作品

 5月13日(金)より開始となる『エクストラクション』の新期間限定イベント「Nightmare Fog」は、「Nightmare」(悪夢)の名にふさわしい凶悪なコンテンツだった。しかしそのゲームバランスはただ難しいだけではなく、遊ぶたびに霧の中に新たな光が差し込み、リトライしたくなるような度合いに調整されている。

 今回の先行プレイはガジェット、オペレーターともにある程度の制限が課されたうえでのものであったため、正式に配信されたバージョンではさらに戦術の幅も広がることだろう。もちろん、新実装された「ラッシュピストル」の大活躍にも期待できる。

壁を破り現れる敵群

 本作は特殊部隊らしさやプレイヤー同士の連携、チームの一体感といった『シージ』のタクティカルな面白味をPvE作品ながら見事に引き出している

 同時に、エイムやリコイルコントロールなどといった指先の技術は『シージ』ほどには要求されないため、比較的カジュアルに楽しむことができるはずだ。スクワッドの人数も『シージ』の5人から3人に減少しているため互いの位置を把握しやすく、ミニマップで周囲の構造を確認できるため、とっさの連携の難易度も下がっているように感じられた。

 PvPならではのひりついた雰囲気とは一線を画すが、世界の危機にプロフェッショナルのチームで挑む、というシチュエーションにはやはり胸が熱くなるものがある。対人戦とはまた異なる刺激を求める方、歯ごたえのある協力プレイを楽しみたいという方は、この機会に本作を手に取ってみてはいかがだろうか。

「Nightmare Fog」公式アート

 最後になりますが、本記事の作成にあたっては先行プレイ会にて同スクワッドでプレイしていただいた2名の方に多大なご協力をいただきました。岡野/Okanoさん、夏上シキさんにはこの場をお借りして、深くお礼を申し上げます。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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