11月29日は『アサシン クリード』が日本で初めて発売された日だ。
『アサシン クリード』は2007年11月13日に、まず海外で登場。日本では約2週間後の11月29日に、ユービーアイソフトからXbox 360で発売された。PS3版は約2カ月後、翌2008年1月31日に日本で発売されている。世界史の裏側で暗躍するアサシン(暗殺者)の活躍を描いたオープンワールド・アクションアドベンチャーゲームであり、現在まで多数のタイトルがリリースされている人気シリーズが、ここから始まった。
『アサシン クリード』は西暦1191年、ヨーロッパからやってきた第三回十字軍と中東のイスラム勢力が、聖地エルサレムを巡る戦いを繰り広げていた時期が舞台となっている。秘密結社アサシン教団の有能なアサシンであるアルタイルは、教団の長であるアル・ムアリムの命を受けて、十字軍とイスラム双方の要人たちを暗殺していく。だがその裏では、アサシン教団とテンプル騎士団との間で長きに渡って続く、ある争いが進行していた……。
『アサシン クリード』では、アルタイルに与えられた暗殺の任務をどのように実行するのかは、プレイヤー自身の判断に委ねられている。聖地エルサレムをはじめとする中世の大都市で群衆にまぎれて身を隠す「ソーシャルステルス」と、建物の壁や屋根をよじ登って人知れず移動する「フリーラン」を駆使してターゲットの人物に接近し、一撃必殺の「アサシンブレード」で暗殺を成功させよう。
歴史上の大都市をリアルに再現したグラフィックと、パルクールの動きを駆使して大都市の中を立体的に駆け抜けるアクションによって、『アサシン クリード』はXbox 360/PS3世代ならではのゲームとして大きな話題となり、日本も含めた全世界で人気シリーズへと成長していった。
第1作の発売から2年後の2007年に、ルネッサンス期のイタリアを舞台にした『アサシン クリードII』が登場。新たなアサシン、エツィオ・アウディトーレの物語はその後にリリースされたタイトルを加えて、青年期から老年期まで続く三部作で描かれている。
『アサシン クリードIII』からの3作では北アメリカ大陸やカリブ海が舞台となり、帆船同士で大砲を撃ち合う海戦も導入された。フランス革命が舞台の『アサシン クリード ユニティ』、19世紀のロンドンが舞台の『アサシン クリード シンジケート』を経て、2017年発売の『アサシン クリード オリジンズ』からは、オープンワールドといったシリーズの基本コンセプトはそのままに、レベルシステムを導入したアクションRPGへと変化している。
2023年に発売された『アサシン クリード ミラージュ』では原点回帰を掲げ、シリーズ第1作を彷彿とさせるアクションアドベンチャーゲームに戻っている。またメインシリーズ以外にも、2.5Dグラフィックで3つの時代のアサシンを描いた『アサシン クリード クロニクル』が登場しているほか、携帯ゲーム機やモバイル、VRゲームなどでも独自のタイトルがリリースされている。
シリーズを通しての『アサシン クリード』の魅力は、アサシンたちの物語と現実の世界史とが絡み合う、歴史を題材にしたエンターテインメントとしての面白さだ。ルネッサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチやアメリカ合衆国初代大統領のジョージ・ワシントン、フランス皇帝を名乗るナポレオン・ボナパルトといった歴史上の人物たちが、ある時は味方、ある時は敵として、主人公とさまざまな関わりを持つことになる。
また、オープンワールドで表現された歴史上の大都市は、教育目的でも使用できるほど精巧なものとなっており、ゲーム内で世界の名所を観光する感覚が味わえる。TVのドキュメンタリーなどで現存する建物の映像が映し出されると、「ここから登れる」とつい考えてしまうファンも少なくない(笑)。なかでも『アサシン クリード ユニティ』では、パリのノートルダム大聖堂が圧倒的なクオリティで再現されており、2019年に発生した大規模な火災で損傷を受ける以前の様子をゲーム内で体験できる。
ちなみに『アサシン クリード』のシリーズでは、各タイトルのメインとなる過去の時代でのアサシンの活躍と並行して、通称「現代編」と呼ばれているストーリーが進行している。アサシンとテンプル騎士団は現代になっても存在しており、今もなお暗闘を続けている。じつは、各タイトルでアサシンたちが繰り広げている歴史上の物語は、テンプル騎士団が現代に設立した多国籍企業「アブスターゴ社」の開発した「アニムス」と呼ばれる装置によって、現代のアサシンたちの遺伝子に秘められた祖先の記憶を再現したもの、という設定になっている。
過去の時代の物語は基本的に各タイトルごとに完結しているが、現代編は第1作目からシリーズを通して物語が連続しており、2023年現在もなお進行中だ。
2017年には実写映画版『アサシン クリード』も公開されている。こちらは15世紀スペインのアサシン、アギラールが活躍する映画オリジナルのストーリーとなっているが、じつはこの映画では現代編も重要なパートとなっており、アブスターゴ社やアニムスといったゲームでおなじみの要素が深く掘り下げられている。
シリーズが15周年を迎えた2022年には、封建時代の日本が舞台となる『アサシン クリード コードネーム レッド』と、「魔女(HEXE)」という言葉を冠する『アサシン クリード コードネーム ヘキサ』の制作が発表された(2023年現在、どちらも発売時期は未定)。さらに、モバイル用のオープンワールドアクションアドベンチャーゲームで、古代中国が舞台となる『アサシン クリード ジェイド』も2023年現在開発中だ。今後、シリーズがどのように発展していくかにも注目したい。