公益財団法人襟川教育財団が、11月21日にヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテルで返済不要の給付型奨学金「えりかわ学資金」に関する記者発表会を開催。今回は、同財団の事業内容と来年3月より募集が開始される第1期育英生の募集要項についての説明が行われた。
襟川教育財団は、成績が優秀で勉強する意欲がありながらも、シングルマザー家庭にあって経済的な理由で高校や大学への進学を断念することがないように返済不要の学資金を給付し、将来社会に貢献するような人材を育成していくことを目指して設立されたものだ。
ちなみに、同財団の設立日自体は昨年の3月28日だが、今年の7月1日に公益財団法人に移行している。
シングルマザー家庭の年収は平均240万円程度で、同じ片親であるシングルファーザー家庭に比べて約半額以下となっている。今は大学に行くのには通塾が必要になることがほとんどであるが、その塾の費用をシングルマザー家庭で捻出するのは非常に難しいのが現状だ。
コーエーテクモホールディングスの代表取締役会長で同財団の代表理事を務める襟川恵子氏も、実はシングルマザー家庭として育ったという経緯を持っている。襟川氏の父は歯科医をしており、新たなビルを立てていざ入るというタイミングで過労により他界してしまったのだ。
そんな経験を持つ襟川氏だからこそ、すこしでも自身の資金提供が役に立てればということで今回の発表にいたっているとのことだ。
通塾率が高い地域は大学進学率が高いところに着目
光優ホールディングス 代表取締役副社長で、同財団の評議員を務める襟川芽依氏から、団体の概要についての説明が行われた。
先ほどの襟川恵子氏の話し中でも少し出てきたが、厚生労働省が発表した資料によると、2021年度のシングルマザー家庭は「約120万世帯で平均年収は236万円」である。また、都道府県別中学生の通塾率ランキングでは、神奈川県は74.3パーセントと全国トップとなっていることがわかった。
同じく大学進学率ランキングでも、神奈川県は61.3パーセントと全国3位になっている。つまり、通塾率が高い地域は大学進学率も高いケースが多い。
また、中学生・高校生の受験対策費用では、中学生と高校生のどちらも集団指導塾で40万円~70万円、個別指導塾で60万円~80万円以上が相場といわれている。これらは収入が少ないシングルマザー家庭では重たい負担となっているのも事実だ。
同財団ではこうした状況を踏まえて、経済的に恵まれない子どもが中学、高校、大学と安心して連学できる環境を整えることを目的に中学生、高校生、大学生それぞれに学資金制度を設計している。
募集人数は中学育英生、高校育英生、大学育英生から各5名
続いて同財団の事務局長である前田憲康氏から、第1期生である中学育英生、高校育英生、大学育英生に関する2025年度募集要項が発表された。
2025年度の募集人員は、中学育英生、高校育英生、大学育英生各5名ずつとなっている。人数が絞られているのは設立が間もないからだが、今後の応募状況等も踏まえて計画を行っていくという。対象者は中学2年生と3年生、高校は1年~3年、大学は1年生だ。成績も選考の基準となるため、中学1年生は対象外となっている。
給付額は中学生と高校生については月額5万円、大学生は月額6万円だ。こちらの金額は、1年間塾に通うことができるようなものとして設定されている。
ちなみに使用目的については、大学生については特に制限ははいものの、中学生と高校生は、学習塾や通信講座、家庭教師等の授業料、模擬試験の費用、参考書や問題集の購入費用に加えて、私立中学や私立高校在学の場合はその授業料も対象となる。
応募資格は「神奈川県内居住のシングルマザー家庭の子女で、日本国籍を有するもの」となっている。また、中学生と高校生については、前年度の通年成績が評定平均値3.8以上である必要がある。大学育英生は日本全国の大学に在籍する大学1年生が対象となるが、母親か神奈川県に居住している必要がある。それに加えて、学校長の推薦書が必要になることや世帯収入の制限なども設定されている。
選考スケジュールとしては、募集期間が2025年3月17日から5月15日までで、6月中旬に採用面接を実施。6月下旬に採用が決定した後で、7月上旬に採否が通知されるという流れになっている。募集開始がかなり先となっているのは、財団の存在を周知してもらうことも含めて決められたものだという。
採用された場合、翌年も継続する場合は条件が設定されている。中学育英生は、前年度の通年成績が評定平均値3.8以上、高校育英生は評定平均値3.2以上必要だ。
3月末に、翌年の更新申請をして承認されればもう1年延長となる。大学育英生は成績の条件はないが、成績を見て継続を了承するかの判定が行われる。
襟川氏の経験を踏まえ、「シングルマザー家庭」にフォーカスしたえりかわ学資金。身の回りに進学に困っている学生の方がいらっしゃれば、ぜひ本施策の存在を伝えてほしい。