基本無料の戦車対戦オンラインゲーム『World of Tanks(ワールド オブ タンクス。以下、WoT)』。それは、今年で15周年目を迎えるご長寿タイトルだ。
プレイヤーが第二次世界大戦前から冷戦時代までの戦車(または装甲車両)を操作して、現実世界をモデルにしたフィールドで争い合うというもの。
そんな『WoT』だが、15周年を期に大型アップデート「2.0」が発表。それと同時に、なんと最新作『World of Tanks: HEAT』もサプライズ的に発表された。
これにはもう、ファンはお祭り状態間違いなし。ということで筆者は、実際にドイツで開催されているゲーム祭典「gamescom2025」で開かれた開発元のWargamingのイベントに参加し、ファンの熱量をゼロ距離で観測することにした。
そこでは、日本の餅撒き(※)のようなノリで箱入りのグッズやシャツを観客にぶん投げるお祭りが開催されていた。
危なくねぇの!?
今回は、現地のイベントの熱気の凄さ。そして新作『World of Tanks: HEAT』の先行プレイ。開発者へのインタビューの三本立てを皆さんにお送りしたい。
※餅撒き
新築で家が建つ際に開催される行事。地域によってはお餅に小銭が同封されており、熾烈な奪い合いが発生する。
取材・文/TsushimaHiro
編集/うきゅう
物理的な配布イベントは熾烈なグッズの奪い合い……かと思いきや
それにしても、凄まじい熱気と人の量だ。「gamescom」のイベント会場となるケルンメッセは、幕張メッセの約5倍の広さを誇り、イベント開催時には約30万人以上の来場者が訪れることで知られているが……その一角であるイベントホールが埋め尽くされるほどの熱。熱。熱。
もう、グッズが配布される度に
「WarGaming!!!」「WarGaming!!!」「WarGaming!!!」
と、会場が振動するレベルで盛り上がっている。
そんなテンションマックスの客にグッズなんてぶん投げようものなら、ほぼ確実にけが人がでるんじゃねえか?
……なんとかなっちゃってるんだよなぁ。
WarGamingファンはこういった催しに慣れてしまっているのか、キャッチする能力が的確で、あたりに落とす、ということもほとんどない。
硬い箱入りのグッズの数々やカード、シャツなど、「それ投げたら普通に武器になるだろ」と言いたくなるようなものもあるため、日本ではなかなかお目にかかれない光景だと思われる。
間違いなくファンは盛り上がるだろうし、実際に盛り上がっているのだが……。
ここで筆者は、ひとつの疑問をいだく。
これ、手前の人しかグッズもらえなくね?……。
ところが……筆者は見た。
率先してキャッチしたグッズを、背の高さから獲得できなかった子どもたちや、後方の方々に配る大人の姿を。
……そういうことだったのだ。
これは単なる盛り上げイベントなどではなかった。
WarGamingが、WarGamingファンの民度の高さとキャッチ力の強さを信頼してはじめて成立する、人情溢れる一面を持つお祭りだったのだ。
その時、ちょうど筆者の目の前にカードパックが飛んできたのでキャッチした。なんと、グッズを獲得してしまったのだ。
イベントが開催されている最中、筆者は後方でずっとしかめっ面をしている車椅子のおばあちゃんが気になっていた。「足が悪いとキャッチイベントには参加できないの、つらいよな」とも思った。
Wargamingファンたちの人情溢れる慣習にのっとり、筆者はおばあちゃんにカードパックを渡した(使うかどうかは正直わからないが)。その時、おばあちゃんはにこりと穏やかな表情を見せて「ありがとう(センキュー)」と言ってくれた。
WarGamingファンは、この笑顔を見るためにグッズをキャッチし、周囲の人たちに配っていたのかもしれない。
イベントは大盛況のなか幕をおろした。
『World of Tanks: HEAT』開発元にインタビュー
次は、Wargamingのブースに訪れた。新作『World of Tanks: HEAT』を先行プレイさせてもらえるとのこと。
ゲームの案内は、『World of Tanks』のプロダクトマーケティングマネージャーであるジョン・ペック氏が担当してくれる。
──まずは自己紹介と、新作について日本の皆様にご紹介をお願いします。
ジョン・ペック氏:
こんにちは、ジョン・ペックです。
『World of Tanks: HEAT』のプロダクトマーケティングマネージャーを務めています。
今年のGamescomで私たちの新しいゲームを紹介できることを、大変嬉しく思っています。
本作はPC(Steam)、Steam Deck、PS5、そしてXbox Series X|Sでプレイ可能になります。
全世界、そして日本の皆様にお届けできることを非常に楽しみにしています。
また、ローンチ時には日本語にも対応する予定です。
──15年の期間を運営し、更なるアップデートを重ねる『World of Tanks』の世界に新たな風を吹き込むであろう本作はどのようなゲームになるのでしょうか。改めてお聞かせください。
ジョン・ペック氏:
良い質問ですね。そして、とても重要な質問でもあります。
本作は『World of Tanks』のタイトルでありながら、同時に独立したスタンドアロンのゲームでもあります。
私たちは、長年にわたる戦車対戦ゲームの開発で培った経験や専門知識を活かして最高の体験ができる戦車ゲームを目指しています。
その上で、ヒーローシューターやペースの速いシューターのゲームプレイに基づいた、新しいタイプの戦闘を『World of Tanks』にもたらしました。
つまり、本作は戦車による戦闘と、よりスピーディーなシューターのゲームプレイを組み合わせたものなのです。
──前作の『World of Tanks』は15周年を記念した大型アップデートが先日発表されましたが、『World of Tanks: HEAT』がリリースされた後も、前作のアップデートは継続されるのでしょうか?
ジョン・ペック氏:
はい、アップデートは継続されます。
先日、私たちはゲーム史上最大となるアップデート『World of Tanks 2.0』を発表しました。前作も引き続き更新されていきますので、これまでプレイしてくださったユーザーの皆様にも喜んでいただけると思います。
──新作『World of Tanks: HEAT』は、既存のファンと新規のプレイヤー、どちらにとっても魅力的なものになりそうですね。
ジョン・ペック氏:
ええ。本作は私たちが独自に開発した新たなゲームエンジンを使用しています。
まだ名前はありませんが、最高のフィーリングを持つ戦車ゲームを作るため、私たちの長年の経験がすべて注ぎ込まれています。
その経験と、新たなゲームプレイ、そしてプレイスタイルの選択肢を組み合わせることで、『World of Tanks』の熟練プレイヤーにも新規プレイヤーにとっても非常にエキサイティングな体験を提供できると確信しています。
──『World of Tanks』には、戦争をテーマにした楽曲を多数手がけたメタルバンドのSabaton(サバトン)が関わっていますが、彼らが選ばれた理由をあらためて教えていただけますか?
ジョン・ペック氏:
サバトンは『World of Tanks』およびWargamingの素晴らしいパートナーです。彼らは『World of Tanks』およびWargamingフランチャイズ全体に関わっています。
私たちはgamescomのイベントでも彼らと提携しています。ファンの皆様のための大規模なコンサートとパーティーイベントが開催されます。
彼らの音楽は非常に刺激的でありながら、専門的で焦点の定まったサウンドを持っており、『World of Tanks』の世界観と完璧にマッチすると考えています。
──最後に、日本のファンの皆様へメッセージをお願いします。
ジョン・ペック氏:
『World of Tanks: HEAT』を全世界へ、そして特に日本の皆様へお届けできることを心から楽しみにしています。あらためて言いますが、ローンチ時から日本語サポートも提供します。
本作はPC、Xbox、PlayStationといったあらゆるプラットフォームで利用でき、世界中の友達と一緒にプレイすることが可能です。『World of Tanks』を日本の皆様にお届けできることを、本当に楽しみにしています。ありがとうございます。
──ありがとうございました。(了)
『World of Tanks: HEAT』先行プレイ。戦車をカスタマイズしまくれる
ジョン・ペック氏は『World of Tanks: HEAT』の先行プレイ時の案内もしてくれた。
ジョン・ペック氏:
今回のビルドでは、3人のエージェントから選択できます。
それぞれ、攻撃特化型、防御特化型、長距離狙撃特化と、特性があります。
それぞれのエージェントに専用のタンクが存在しており、使用できるスキルも異なります。
ここでは、攻撃力特化のエージェント「アサルト」のキャラクターを選択してみる。
ジョン・ペック氏:
戦車はモジュールとパーツをある程度は自由に付け替えることができます。ただし、戦車のカスタマイズには最大コストが設定されているので、高いコストのものだけをたくさん積む、ということはできません。また、パーツごとに強化される部分と、弱体化する部分もあります。
一例として、修理キットにもいくつか種類があります。
自動的に修復するもの、戦闘から離れている間にゆっくり回復するもの、高速で回復するもの。いずれもクールダウンが必要となりますね。
実際に戦車をカスタマイズしてみると、弾薬や装甲、その種類など非常に細かく設定が可能で、それぞれに攻撃力や防御力などがステータスとして表示された。もう、戦車版『アーマード・コア』と言ってもいいくらい細かい。戦車が好きであればあるほど、このカスタマイズには時間をかけたくなるところだろう。
また、カラーリングやチャームを設定してオシャレを楽しむこともできるようだ。先行プレイでは大きな変更はできなかったが、一部チャームを付け替えることができた。
今回、先行プレイで体験できたモードは「コンクエスト」
つまり、戦車で陣取り合戦をするというものだ。味方・敵はBotが操作している。
10VS10で戦うこととなり、フィールドに散りばめられている拠点を奪い合い、最大ポイントを達成したチームが勝者となる仕様だ。
やってみてわかったが、本作の戦車はめちゃくちゃ硬い。
攻撃力特化型のエージェントを選んだはずなのだが、こちらの大砲がほとんど敵に効かない。
今回、選択したアサルトのエージェントはマシンガンのように連続して大砲を放つ攻撃的なスキルを有しており、命中させれば敵に一気にダメージを与えることができるのだが……当たり所が悪いのだろうか?
──戦車には弱点はありますか?敵に攻撃が効きづらい時に狙うべき場所などはあるのでしょうか。
ジョン・ペック氏:
そうですね。戦車にはそれぞれ異なる弱点が存在します。車輪の可動部分、砲塔、弾薬、エンジンなど。命中させることでダメージを与えやすい部位がありますよ。
その後も、筆者は戦車を乗り回してドカンドカンと敵戦車を撃ち、陣取り合戦で戦い続けた。ジョン氏の言うとおり、狙う箇所が装甲部分であればダメージは控えめになるし、的確に弱点を撃ちぬくことでより大きなダメージを与えられるようだ。
本作は製品版も基本無料となる予定。今回のイベントではNPCと対戦することができたが、やはり対人戦が気になるところだ。世界中のプレイヤーと戦車でバトル出来る日が、今から楽しみだ。