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「バズると加点されるが、やりすぎると炎上」するカードゲームなど、面白そうなゲームがめちゃくちゃあった学生制作ゲームのプレイテストを取材してみた。セガ エックスディーとZEN大学の「ゲーミフィケーション」に関する新たな取り組み

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ZEN大学は、12月15日に東京・初台にあるN中等部新宿キャンパスで学生たちがゲーミフィケーションのノウハウを活かして作りあげたオリジナル知育カードゲームの最終実証実験(プレイテスト)を実施した。

ゲーミフィケーションとは、「ゲームのメカニズムやデザイン要素を非ゲーム分野に応用し、ユーザーのモチベーションを高め、行動へ与える影響を促進する」取り組みのことで、ZEN大学では、様々な企業や地方自治体と協力して、楽しく学びになるプログラムを作っている。

今回実証実験が行われたカードゲームでは、セガの子会社である「セガ エックスディー」の協力のもと、ZEN大学の学生たちがそれぞれオリジナルのゲームを制作した。

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カードゲームの制作自体は、今年の9月頃から開始されている。そもそもゲーム自体作ったことのない学生ばかりであったため、授業では「ゲームの作り方」や「ゲームはどうやって作るのか?」といった基本的な所から伝え、数回の授業を経て、それぞれの学生たちのゲームが完成した。

その最終テストとして、ZEN大学の関連学校でもあるN中等部の生徒約40名が参加し、それぞれの作品をプレイしてもらったというのが今回の取り組みだ。

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ちなみに、今回の実証実験は当初全9作品で行われる予定だったが、ひとり学生が欠席となり8作品でおこなわれている。

実験としては、N中等部の生徒たちがそれぞれ8つのグループに分けて参加し、ゲームをプレイ。途中で休憩を挟んだ後、グループの参加者を入れ替えてふたたびゲームをプレイしてもらうという方法で実施された。

こちらの記事では、今回のゲーム制作者でもある学生たちの話しを中心に、当日行われたイベントの模様をレポートしていく。

取材・文/高島おしゃむ
編集/うきゅう


SNSでバズを狙いながらリスクが学べる

ZEN大学の今江暁さんが作ったカードゲームが、『BUZZ or BURST 21 ~選べ。バズるか、燃えるか。~』だ。こちらは、SNSを利用しているときに起きるバズや炎上をカードゲーム上で疑似体験することで、そのメリットとリスクについて考えさせるために作られた作品である。

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今江さんの作ったカードゲーム『BUZZ or BURST 21 ~選べ。バズるか、燃えるか。~』は、SNSのリスクをテーマにした作品だ。

今江さんは、このゲームを作るにあたって「SNSのリスク」をテーマにするということはすぐに決めることはできたものの、実際にゲームをプレイするユーザーである中学生たちにそれがささるのか悩んだという。

そこで、講師として参加していたセガ エックスディー 取締役 執行役員COOの伊藤真人氏にアドバイスをもらいながら、バズを狙いながらそのなかにリスクが含まれているようにしたという。そこで、リスクとリターンの感覚を掴むというところもテーマに添えたのが大きなポイントとなった。

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また、真っ正面からリスクを学べるようにしてもゲームとしては面白くならない。そこで、表向きはバズを狙うようにして、その内部に教育的な要素を含ませることに苦心したとのこと。

また、既存のカードゲームである『ブラックジャック』『ポーカー』などのエッセンスも盛り込むことで、ゲームを遊んでいるうちに自然と「特定のヤクが揃うとダメだ」ということがわかるようにしたそうだ。

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今回学生たちに自分の作ったゲームを遊んでもらった感想として今江さんは、「すぐにルールを理解してもらえた」ことにくわえて、「こういう投稿はしてはいけないんだということを、自然に口に出しながらリアクションしてくれたためうまく浸透出来た」と感じたという。

今回の実証実験を実施してみて、今江さんの自己採点としては100点中90点を付けていた。

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なかにはプレイ中、頭をかきながら悩む生徒の姿も見られた。

リアルな養蜂家の活動をカードゲームで体験

高橋智子さんが作ったカードゲームの『Bee Keeper 養蜂ゲーム』は、タイトル通り養蜂の仕組みを身に付けることを目的とした作品だ。なんと高橋さん自身が養蜂家でもあることから、養蜂をテーマとしたゲームを作ることにしたという。

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自身も養蜂家だという高橋さんが作ったのは、『Bee Keeper 養蜂ゲーム』という作品だ。

世の中にある養蜂に関するゲームの多くは、ミツバチが花から集めてくるといったものがほとんどだ。しかし、高橋さんが作りたかったのは、あくまでも「養蜂家としての活動をゲームを通じて体験してもらう作品」であった。また、養蜂自体が、高橋さんにとっては哲学そのものでもあるとのこと。

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養蜂を通じて、どのようなものと向き合うのか、自分の弱さとどう向き合っていくのか、それを戦略にしながら1年を通じて自分の活動を組み立てていく。そのなかには人間としての活動もあれば、ミツバチやほかの動物との活動もある。

また、自然環境なども関わってくる。こうした様々な要素を、ゲームを通じて哲学的に伝えることができればと思いながら、高橋さんはゲームを作っていったそうだ。

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1年間とはいえ、養蜂には様々な要素があり、ゲームにすべてを落とし込むのは難しい。たとえば養蜂家の仕事はミツバチの世話をするだけではなく「季節ごとに味が異なる蜂蜜を混ざらないようその都度集めて販売する」など、複雑な作業がおこなわれている。

また、養蜂に使われるのは西洋蜜蜂であるため自然には越冬できず、次の春を迎えさせるために人の手でサポートする必要もある。高橋さんは「こうした様々な要素のすべてをゲームに盛り込みたくなった」と語りつつも最終的にはそのなかから厳選した要素をエッセンスとしてゲーム化したそうだ。

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実際に自分の作ったゲームを学生たちに遊んでもらった感想として高橋さんは、子どもたちが悩んでいる様子を見たときに、「自分と同じ場面で同じ感覚で悩んでくれている」と感じ、ゲームとしてはほぼ狙い通りに、子どもたちの思考のようなものを引き出せたと語っていた。

高橋さんは、今回の実証実験の自己採点としては100点中満点の100点を付けていた。

話題にしにくいニュースもゲームの中なら話せる?

今回の実証実験の中で、もっとも参加人数が多かったのが瀬谷拓夢さんの作ったゲームだった。というのも、先ほども少し触れたように大学生側の参加者が急遽ひとり休みになってしまったことで、こちらのチームに混ぜておこなわれたためである。

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瀬谷拓夢さんが作ったゲームはディスカッションをメインにした作品だ。

瀬谷さんのゲームは、正式なタイトルはないものの、地域の課題についてそれぞれのチームで話し合い、コミュニケーション能力やディスカッション能力を鍛える」というもの。

そのため、カードは一部使用するものの、本作のプレイ感は「特定のテーマに沿ってソフトウェアやサービスを開発するプログラマーイベント“ハッカソン”」などのノリに近い印象で、各チームが考えた答えを発表するような時間があったり、どのチームの意見が良かったのか、匿名で投票をおこなうといった場面も見られたりした。

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瀬谷さんは、ディスカッションをゲームのメインとするにあたって、地域の課題にどのようなものがあるのか調査をおこなったほか、ゲームをプレイする中学生でもわかるような内容にするにはどうすればいいのか悩んだという。

だが、実際に今回プレイしてもらったところ、瀬谷さんも予測できなかった斬新なアイデアが飛び出し、驚いたそうだ。一方で、もう少しゲームに捻りが欲しかったという意見もあり、そこが次の課題にもなった。

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ゲームのテーマにディスカッションを選んだ理由として瀬谷さんは、ここ最近のニュースで流れてくる少子高齢化や税金の話題、その問題に対して実際に政府関係者がどのように動いているのか、といった内容に興味があったと語っている。

そうした政治的な話題は普段の会話ではなかなか出てこないため、ゲームにすることでこうした話題を話しやすくしたいと考えたそうだ。

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実際に学生たちに遊んでもらったところ、瀬谷さんは「参加者がめちゃくちゃ話してくれて、衝撃だった」そうだ。「中学生は思春期真っ盛りの頃で、男女間での会話はできないだろう」と思っていた瀬谷さんだったが、実際はそんなことはまったくなく、面白い人もいればありのまま人前で自分の意見を公表してくれる子もいたとのこと。

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実は瀬谷さん自身が中学や高校生のころ人見知りが激しく、また、いじめなども経験したため、自分に自信がなかったという。しかし、今回ゲームに参加したN中等部の生徒達を見て「誰かが前で発表していてもふざけるなどの否定はせず、みんなが面白がっている姿に感動した」と語っていた。

こうしたこともあり、今回の実証実験を通して瀬谷さんの自己採点は100点中満点の100点を付けていた。

七並べをベースにした時間の使い方を管理するゲーム

黒田和宗さんが作ったゲームは、正式名称は付けられていないものの、集中力を中断させるものと、その対処方法をもとに、「時間の使い方を上手に管理する手法を知ること」をテーマにした作品だ。

ゲームを作るにあたり、黒田さんはまず「どのような条件でゲームを進めていくのか」を考えた。また、あまり時間がないということも想定して、ルールを複雑にするのではなく、既存のゲームにプラスするという方向性を選択。

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黒田さんが作ったのは七並べをベースにした時間を管理するゲームだ。

今回黒田さんの作ったゲームは『七並べ』がベースになっているのだが、そこに妨害という要素と、カードに特殊効果を付与することで、元のゲームからの距離を少し離しているのだという。

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このゲームを作るにあたって、「元になったゲームとどれぐらい離すか」のバランスに苦慮したと黒田さんは語っていた。また、ルールを追加することで、どれぐらいゲームデザインを変形させるのか、そのバランスにも気を配ったという。

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今回の実証実験では、入れ替わりでふた組のチームがゲームに挑戦したのだが、2組目の学生たちは七並べのルールを理解していたため、その地域ルールとしてゲームを楽しんでもらうことができた。

しかし、1組目はそもそも七並べをしらなかったり、J、Q、Kなどの意味がわからなかったりしたため、黒田さんはジェネレーションギャップを感じたそうだ。

こうした結果を踏まえ、黒田さん自身の自己採点は100点中85点だったという。

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ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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