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「バズると加点されるが、やりすぎると炎上」するカードゲームなど、面白そうなゲームがめちゃくちゃあった学生制作ゲームのプレイテストを取材してみた。セガ エックスディーとZEN大学の「ゲーミフィケーション」に関する新たな取り組み

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「自分の得意分野は人に教えることができる」という気づきが、ゲームを作るきっかけに

加藤道乃さんが作ったのは、『創作発信カードゲーム(仮)』だ。ゲーム内容としては、SNSの使い方やリテラシーについて体験的に取得するというものとなっていた。加藤さん自身は、ゲームの知識はあるものの、カードゲームについての知識がなく、ノウハウが分からないなかでゲームを作ることとなった。

また、教育的に学べる内容へ焦点をあてたときに、加藤さん自身が教育者としての専門性を持ち合わせていないという不安もあったという。

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加藤さんのカードゲーム『創作発信カードゲーム(仮)』は、自分の得意分野に着目したところから生まれた作品だ。

加藤さんがそうした課題を乗り越えるきっかけとなったのは、「自分の得意分野や好きなことは人に教えることができる」と気が付いたことであった。

たとえば歴史や社会問題ではなくても、イラストを投稿したり創作したり、自分の好きなところに着目することで、その内容を他人へ伝えるだけでも教育的になるかもしれないという発見があったのだ。

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ZEN大学では、pixivと提携した科目があり、プロのイラストレーターなどから授業が受けられるようになっている。また、ZEN大学にはコンテンツ産業に関する一次資料をアーカイブしている研究所がある。そうしたところも本ゲームのデザインを考えるうえで役立ったという。

歌舞伎や浮世絵などが歴史の資料として残っているように、今ある萌え絵やイケメンが美麗化されたような絵も資料になる時代がくるのではないか。そう考えた加藤さんは、「絵が描ける人がたくさんいた方がいい」と考え、そうした思いを込めて、今回のゲームが制作された。

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実際に学生たちに遊んでもらった結果、加藤さんはその場でたくさんフィードバックをもらうことができ、多くの改善点を見つけることができた。しかし、それ以上に、学生からのフィードバックには人を傷付けるような言葉が一切使われず、しっかりと批評してくれたことに加藤さんは驚いたそうだ。

しかしながら、加藤さん自身の自己採点は100点中50点もいかないぐらいと、少々低めに付けていた。

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カードゲームでITリテラシーを向上!

塩見秀樹さんが作ったカードゲームの『ITファイターズ』は、サイバー攻撃や防御の駆け引きを通じてITセキュリティの重要性を学ぶといった内容の作品だ。IT社会が進んでいくなかで、パソコンやタブレット、スマホなどに触れあう機会が多くなってきたことが、塩見さんが本ゲームを制作するきっかけとなった。

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塩見さんが作ったのは、ITに関する基礎知識が学べるカードゲームだ。

中学校などでもこうしたデバイスのセキュリティやプログラミング言語を学んでいる人はいるが、塩見さんが見た限り、そういった教育現場では一足飛びに応用知識が扱われているケースが多く、基礎知識への言及が足りていないように感じていたという。

そこで、ITに関する基礎知識や専門用語を覚えてもらうために今回のカードゲームを制作したそうだ。

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カードゲームを作る上で塩見さんが苦労した点は、やはりゲームバランスだ。本ゲームは1対1の対戦型カードゲームであり、プレイするにあたって数多くのパターンや可能性が存在する。

ゲーム制作者が想定していなかった内容で事故が生じてしまう可能性を考慮し、そうしたことを防ぐのがかなり難しいという。そのため、塩見さん自身が何度も繰り返しプレイしながら、極力事故が発生しないようにバランスを取っていったそうだ。

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また、カードで使用したイラストはすべて生成AIで制作することにしたものの、どうしても生成AIならではの「イラストガチャ」が発生してしまうため、カード1枚作るのに30分から1時間ほど掛かってしまったという。

本ゲームではカードを96枚にわたって作る必要があったため、Gemini AI Proの使用上限が来てしまい、とんでもない時間が掛かったとのこと。

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実際に学生たちにゲームをプレイしてもらった感想としては、思っていた以上にしっかりとゲームが出来て嬉しかったことにくわえて、学生たちも楽しく遊んでいた様子が見れて、面白かったそうだ。

しかし、塩見さんが想定しきれなかった事故が発生してしまい、「その点に関しては申し訳ない」と語っていた。

こうしたことを踏まえて、塩見さんの自己採点は100点中60点を付けていた。これはゲームバランスについてもっと触れる部分があっただけでなく、カードの効果やイラスト、カードのそのものの形なども工夫できると感じたのが理由だ。

表現力やコミュニケーション能力の向上をテーマにしたカードゲームの『Self Word!』

今井明さんが作ったカードゲームの『Self word!』は、手札を言葉だけで説明する体験を通じて、表現力やコミュニケーション能力の向上を図ることを目的とした作品だ。

今井さんがこだわったのは、カードのルールや仕組みだという。アイデア自体は思いつくものの、「実際にやってみるとちょっと違う」ということは、ゲーム開発ではよくあることだ。そういった試行錯誤を繰り返し、「ここはもっとこうしたら面白いのに」と感じた部分を改善していったそうだ。

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今井さんが作ったカードゲームの『Self word!』だ。

今回は今井さんがひとりでカードゲームを作ることになったため、アイデアだけではなくカードのデザインまですべて自分ひとりで作る必要があった。

ゲーム制作を進めるなかで、制作をサポートする授業も数回おこなわれていたのだが、今井さんにとっては驚くほどの速さで時間が過ぎていき「あれ? もう締め切りがきたの?」と呆然としたこともあったという。

そのため、もらいたかった講師からフィードバックをもらうための時間的な余裕もなく、自分自身の負担も結構大きかったと今井さんは振り返っていた。

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そうした苦労を経て作られたカードゲームをプレイしてもらった際にうまくいくのかどうか、今井さんは不安を抱えていたそうだが実際に学生たちに遊んでもらったところ、思っていたよりも楽しんでもらうことができた。

そうしたことも踏まえて、今回の自己採点としては、実施前は70点や60点ぐらいだったが、最終的には80点だったという。

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環境問題に対する課題意識を高めるために作られたカードゲーム

花田陽羽さんが作ったゲームは、世界で起きている様々な環境問題とひとりひとりができる活動について知り、課題意識を高めるために作られた作品だ。

花田さんは、たんに環境問題に関心を持ってもらうことだけをゲーム制作の目的にするのではなく、堅苦しい内容にならないように「投資」という要素を盛り込み、「一番お金を持っている人が勝つルール」を用意するなど、プレイヤーが楽しく遊べるように苦心した。

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環境問題をテーマにした花田さんのカードゲーム

カードゲームを作る上で花田さんがもっとも苦労した点は、カードの種類と内容だったという。最終的にカード自体は全部で70枚用意されそのうち30枚には別々の内容が書かれているほか、5枚×4種類のセットを用意するなど、40種類近いカードを使用する遊びとなった。

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実際に今回作ったゲームを学生たちに遊んでもらった感想としては、最初のグループはかなり楽しんでもらえたほか、環境問題についても考えて、さらに投資の話題で盛り上がるなど、花田さんにとってかなり理想的だったという。

しかし、2番目に参加したグループは、カードの引きがあまり良くなかったことも影響してあまり弾まなかったそうだ。

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一方で「環境問題のこのワードはどういう意味ですか?」と興味を示してくれたプレイヤーもおり、環境に対する課題の共有という意味では良かったと花田さんは語り、そうしたことも踏まえて、今回の自己採点は100点中80点を付けていた。

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「社会課題×ゲームで授業ができないか」と声をかけられたのが、セガ エックスディー参加のきっかけだった

今回の実証実験が行われている合間に、専門的な指導者としてZEN大学の学生たちをサポートしてきたセガ エックスディー 取締役 執行役員COO 伊藤真人氏にお話を聞くことができた。

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セガ エックスディー 取締役 執行役員COO 伊藤真人氏。

セガ エックスディーは元々ZEN大学との付き合いがあり、「社会課題×ゲームで授業ができないか」と声をかけられたことがきっかけで、同社が参加することになったという。

セガ エックスディーはセガの子会社で、娯楽としてのエンタメだけではなく課題解決のためのゲームを作っている会社でもある。

今回の取り組みも、「大学生がただのエンタメではなく、世の中の役に立つ、学びになるようなゲームを自分で作ってみる」ことで、より効率的にさまざまな内容を学習することを目的としてスタートしている。

実際に授業がスタートしたのは今年の9月頃で、これまで数回の授業を経て今回の実証実験がおこなわれた。最初はゲームとは何かというところから始まり、ゲームには勝利条件が必要であることなど、ルールをブラッシュアップしながら完成させていったそうだ。

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遊びと学びを同時におこなうのは簡単なことではない。だが、学びだけだと退屈になり、遊びだけだと面白くても学びがない。そのバランスをどのように作っていくのかというのは、実際にプレイしてもらい、プレイヤーの生の声を聞くのが一番わかりやすい。

今回の実証実験も、実際にゲームの説明をしてみせることで、制作者が思っていたよりもプレイするのが難しかったり、プレイが想像よりも盛り上がらなかったり、といったことを体験できる最初の学びの場になっていると伊藤氏はいう。

また、楽しそうにゲームを作ってきたなかで、真面目な問題であっても遊びを入れることができると学んでもらいたいということも今回の取り組みの趣旨であったと語った。

職員も学生たちも初めての取り組みで不安も大きかったが、「このまま商品化できるのでは?」と感じるほどの作品も

イベントの終わりにお話を聞いたZEN大学職員の西村友希氏は、今回の取り組みについて「オリジナルのカードゲームを遊んでもらってそれが学びになるのか。学びだけではなく、そもそも面白いのか」という要素を実証実験するのが今回のイベントの趣旨だと説明していた。

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ZEN大学職員の西村友希氏。

とはいえ、職員にとっても学生たちにとっても、こうした取り組みは初めてであったため、不安も大きかった。もちろんそこには「大学生側がちゃんと面白いゲームを作れているのか?」といったことも含まれていたのだが、いざ実践してみると、あちらこちらで笑顔の絶えない様子が見られ、手応えとしてはかなりいい方向だったという。

学生が作ったゲームのなかには、「このまま商品化できるのでは?」と感じるクオリティのものも存在したが、カードゲームの権利自体は学校側ではなく学生側に存在するので、各々が自由にしてほしいという方針を取っていることを明かした。

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ZEN大学は今年の4月に開学したばかりで、今回の実証実験も大学として初の取り組みだ。セガ エックスディーとの取り組みも今回のイベントでひと区切りとなる。来年度の実施予定についてはまだなにも決まっていないものの、同様のプログラムを企業などと一緒にやっていく可能性はあるという。

もしかすると、来年もまた学生達によって新たな作品が生まれてくるかもしれない。そちらも今から楽しみにしたいところだ。

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ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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