とんでもなく下品なアドベンチャーゲームをプレイした。
とにかく下品で下ネタのオンパレード。隙あらばお下劣なジョークを会話の中に澄まし顔でブチ込む始末だ。その下品ぶりは冒頭からアクセル全開で、ゲーム開始5分で「検閲」が追い付かないレベルのアレやコレが登場するのだから。
しかし遊び終わって振り返ってみると、汚いものを見せられた不快感以上に「くっだらねぇ(笑)」と、素直に笑い飛ばせていたことに驚く。これほどまでに読後感がスッキリとしたADVが、かつてあっただろうか。汚い。けれど、最高に愛おしい。そんな本作の魅力に迫りたい。

さて、昨年2025年10月22日にSteamで配信された『Dispatch(ディスパッチ)』は、そんな低俗な下ネタとブラックジョークを織り交ぜた異色のヒーローコメディADV。
間違いなく下品で人を選ぶ作品ではあるが、ストーリー自体は“スーパーヒーローたちとの絆”を描いた、正真正銘の傑作アドベンチャーゲームと言える。記事執筆時点で「圧倒的に好評 (152,615件)」という驚異的なスコアを叩き出しているのも、遊べば納得。単なる出オチのバカゲーではないのだ。
そんな同作は、2026年1月29日(木)に日本語対応のコンソール版が発売となった。Steam版からどこまで下ネタに規制がかけられているのか、あるいは「攻めている」のか。本稿では、そんなコンソール版の発売を記念して、『Dispatch』の魅力をネタバレなしでお届けしていく。
※この記事は『Dispatch』の魅力をもっと広めたいIOIGamerさんと電ファミのタイアップ企画です
ヒーロー職を休職せざるを得ないので“ヒーローの派遣会社”で管理職(ディスパッチャー)として働くことになりました
本作の主人公ロバート・ロバートソンは、特別な力を持たない“一般人”だ。だが、一族に代々伝わるメカマンスーツを着用することで、スーパーヒーロー「メカマン」として、あらゆる悪と戦い続けてきた。
プロローグでは、2代目メカマンことロバートの父を殺害した宿敵のヴィラン「シュラウド」の本拠地に襲撃を仕掛けるものの、敵の策略によってメカマンスーツを修復不能な状態にまで破壊されてしまう。
ヒーローとして戦う力を失ってしまったロバートは、記者会見を開き、スーパーヒーローとして一線を退くことを公に発表する。
しかしその後、ヒーロー派遣会社SDNに所属する「ブレイザー」から、新人ヒーローたちをオペレートするディスパッチャーの仕事を持ち掛けられる。その条件とは、ロバートが正体を隠してSDNで働く代わりに、“SDNがメカマンスーツの修復に協力する”という魅力的な提案であった。
こうしてディスパッチャーとしての仕事に就いたロバート。だが喜びも束の間。就業初日、彼に割り当てられた「Zチーム」とは、元ヴィランたちで結成された文字通りの“掃き溜め”でしかなかったのだ。
ここまで簡単なストーリー概要を紹介した通り、ロバートが担当するのは、元ヴィランの荒くれ者たちが集められたZチーム。
投資詐欺を画策した頭脳派コウモリ男のソナーから、火と炎を操れるはずなのに引火して眉毛を焼いてしまったフランベ、魔剣を持つも終始尊大な態度の悪魔マレヴォラ、粘土と石で構成されている人工物のゴーレムなどなど、どこからツッコめば良いのか分からない人選ラインナップがロバートとプレイヤーを待ち受ける。とにかくクセ強なヤツらしかいない。
物語上でZチームを指揮するのはロバートの役割だが、そんな彼の物語を追っているプレイヤーにまで、不安が伝染しそうなほど素行の悪い連中である。反抗的で命令は聞かないし、いつも下品な話ばかり。上司であるロバートへの嫌味もたっぷりだ。
仮に自分がZチームをオペレートする立場だったら、初日から退職代行サービスに電話して無断欠勤をキメる自信がある。
そんなこんなで出勤初日から問題児たちを押しつけられるロバート。心労の絶えない彼を見ていると、「どこの世界も管理職って大変だなぁ」と社会の世知辛さに涙を禁じ得ない。スーパーヒーローの派遣会社という現実ではあり得ない架空の企業の話なのに、オフィス組と現場組の微妙な温度差や軋轢の描写が嫌にリアルなのも、本作の隠れたスパイスだ。
幸いなことにロバートは元スーパーヒーローであり、嫌味程度でへこたれる器ではない。これまで散々ピンチを乗り越えてきた彼だからこそ、チンピラヒーローの寄せ集めにも動じないのだろうか。
選択肢ひとつに感情が揺れる。プレイヤーに委ねられた元ヒーローの矜持
『Dispatch』はアドベンチャーゲームの中でも、とりわけプレイアビリティが高い作品だと思う。
一部のゲームパートを除いて、ほぼ全編がCGアニメーションによって構成されているからだ。もちろんただアニメーションを見ているだけではロバートの運命は動かないのだが。
作中では制限時間付きで重要な選択に迫られる場面が度々訪れる。選択肢によって物語の行く末も変化するので、ロバートの命運を握っているのは紛れもなくプレイヤーというわけだ。
しかし、筆者はゲーム中、ついロバートに感情移入してしまい、あまり大胆な選択を選ぶことができなかった。自分としてはボケに対してマジレスするだけのつまらない男に成り下がった気がして、ちょっと悔しい。
「この選択肢を選んだら怒るかな」「相手はどんな反応をするだろう」と本能がブレーキをかけるのだ。結果的に善人ムーブが続いたが、それでも下ネタガッツリの笑いが絶えないストーリー展開には満足できた。
各チャプターのスタッフロールでは、他のプレイヤーがどのような行動を取ったかがデータで表示されるという、ちょっとしたオマケも楽しめる。
自分の選択肢が全体の何%に位置するかを知れるという簡単な統計データではあるが、自分が「少数派の変態」なのかを突きつけられるこの仕掛けは、周回プレイへの意欲を程よく刺激してくれる。

ヒーロー派遣は地獄のマネジメント……!?「Zチーム」を運用するロバートの過酷さを味わえる
ストーリー中に差し込まれるゲームパートでは、街中でリアルタイムに発生する事件に対して、適切に対応できるヒーローを派遣しなければならない。序盤は非常に成功率が低く、Zチームの采配にめちゃめちゃ苦労させられること請け合いだ。
しかも、自分が任務での成功を得ようと、一緒に派遣したヒーロー同士が物理的に妨害し合うという暴挙があちこちで多発。片方のヒーローが足止めされている間、妨害した方は嬉々として仕事に臨むのだが、なんと普通に失敗して帰還してくることがある。「失敗したならせめて反省の色を見せろ!」と画面に叫びたくなる瞬間だ。
仕事を終えたヒーローたちは任務の成功・失敗に関わらず、そのまま会社に帰投しては、のんびり休憩を始める始末。「失敗したならせめてフォローくらいしてこい……!」と思わずにはいられない。
当然休憩中のヒーローは派遣できないので、別のヒーローを任務に送り出すわけだが、リソース管理を誤ると、依頼者に対して既に任務を失敗したヒーローを再派遣することになる。結果、派遣したヒーローが更なる失敗を重ねて、依頼者からもマジギレされる。そりゃそうだ。
任務を成功させるためには、依頼内容から問題を解決できそうなヒーローを地道にアサインしていくほかない。まずは手頃な任務を成功させて経験を積ませる。その後、レベルアップしたヒーローを育成して任務の成功率を上げていくのだ。
特定のヒーロー同士を派遣することで得られるシナジー効果、条件を満たして発動するスキルなども、任務を成功に導くポイント。少しずつ、しかし着実に、元ヴィランたちが“ヒーローの顔”になっていく成長の過程は、単なる数値の変化ではなく、物語上の絆とリンクしている。
バラバラだった負け犬たちが、ひとつのチームとして機能し始める瞬間。それは、それまでの下品なやり取りをすべて帳消しにするほどのカタルシスをプレイヤーに与えてくれる。
ロバートの仕事はヒーローたちのディスパッチャーだけに留まらない。彼らが円滑に任務を進められるよう、ときにはデスクから施設へのハッキングを試みるケースも多々ある。
元スーパーヒーローでメカにも強くて、落ちこぼれ集団を徹底的にまとめあげるロバートの手腕が凄すぎる。これがスーパーヒーローたちに秘められたポテンシャルだと考えると、ヒーロー引退後のセカンドキャリアもそう困ることはないのだろう。
下品な皮を被った、珠玉の人間ドラマ
「ヒーロー」を題材にした作品のイメージは、何かと特撮やアメコミに引っ張られがちだ。かくいう筆者自身、本作がヒーローを題材としつつも、その裏方のオフィスコメディな作品という切り口には斬新な驚きを感じたものだった。しかも、ヒーローたちは大体元ヴィランである。
スーパーヒーローが世界を救うといったスタンダードなヒーロー作品ではないものの、あえて斜め上を行く題材をベースにしたことで、かなり新鮮なストーリーラインになっているのではないだろうか。どれほど下品なネタが飛び出そうとも、最後に残るのはロバートとZチームの間に結ばれた確かな「絆」の感触だ。
また、アドベンチャーゲームでありながらほぼアニメを見ているような体験も、読み進めやすくて楽しむハードルが低い。予想外の驚きとしょうもないオチから繰り出される、ヒーローたちとロバートの絆は、下ネタまみれでも満足できるだけの魅力を備えていると思えた。





















