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講談社とグッドスマイルカンパニーが明かす海外戦略──「まだまだ届いていない」マンガIP市場の可能性

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マンガ・アニメを題材にしたボーダーレス・カンファレンス「IMART」が、2025年11月12日に東京・池袋にあるアニメイトシアターで開催された。あわせて、本カンファレンスの次なる展開として、2026年3月24日から27日にかけて「IMART2026春 Global Business Matching」の開催も予定されている。

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本稿では、前回のIMARTにおける基調講演「マンガIPのこれまでとこれから」の内容をレポートする。
モデレーターにニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏が登壇。冒頭、本イベントを主催する一般社団法人MANGA総合研究所の所長(代表理事)である菊池 健氏から、今回のIMARTに関する紹介が行われたほか、エンタメ社会学者 / MANGA総研-研究員の中山淳雄氏からは、マンガ・アニメのIP市場調査についての情報が発表された。

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一般社団法人MANGA総合研究所の代表理事の菊池 健氏

また、基調講演として講談社 ライツ担当取締役の角田真敏氏とグッドスマイルカンパニー 代表取締役社長の岩佐厳太郎氏が登壇。最後はそこに講談社 ライツ・メディアビジネス本部/ ライツMD部 兼 IPビジネス部 兼 グローバル統括室の伊藤洋平氏も加わり、ディスカッションセッションが行われている。

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取材・文/高島おしゃむ
編集/kawasaki

国内コンテンツ市場のうち2兆円がマンガ由来のもの

角田真敏氏と岩佐厳太郎氏の基調講演に先駆けて、中山淳雄氏から現在準備中の第2回マンガ・アニメIP市場調査について紹介が行われた。

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エンタメ社会学者 / MANGA総研-研究員の中山淳雄氏

この分析では、マンガ・アニメIPのグローバル市場規模とIPパワーランキング、個別IPについて調査が行われている。ちなみにこれらの調査は、だいたい2年ほど前に行われているものだ。そのため、個別IPで選ばれているタイトルも、『鬼滅の刃』『推しの子』『文豪ストレイドックス』『Bleach』『薬屋のひとりごと』といったラインナップになっている。

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2022年にマンガから映像化されたのは約4000億円で、海外は約4500億円。マンガからゲーム化されたのは、国内が約4000億で、海外が約1000億円。中でも面白かったのがグッズだと中山氏はいう。こちらは、国内が約7000億円で海外が約5000億円だが、ここに中国を入れるともっと大きな数字になるのではないかと思われるからだ。

国内のコンテンツ市場は134兆円と言われているが、そのうち2兆円がマンガ由来のものである。また、現在の海外輸出の1/3ぐらいになっている根幹産業へと成長してきているのだ。

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こうした調査結果は、認知度、ファン数、SNS人気、原作人気、収益力の5つの軸でスコア化されている。最も合計数が高かった作品は『ONE PIECE』であった。この『ONE PIECE』については、国内外でどれぐらい売れたのか、配信ではどれぐらいの数字になっているのかといった調査も行われている。

ちなみに、現在作成中の最新版では、マンガが昨年から2パーセント増加。映像が20パーセント増加しているものの、ゲームに関しては少し落ちているという結果が出ている。一方、グッズに関しては順調に伸びているという傾向にあることがわかった。こうした調査レポートを70~80ページにまとめて出していく予定である。

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海外展開は好調だがまだまだ届いていないところもある──講談社 ライツ担当取締役の角田真敏氏による基調講演

ここからメインの基調講演がスタート。最初に登壇したのが、講談社の営業部門でライツやメディアビジネスを担当している角田真敏氏だ。同社では、70年代以降にいろいろな作品をライツ展開してきた。それらはマンガ原作を軸にして映像化や商品化するというものであったが、原作を軸にするとどうしても作品の完結まで形にできるということは少なかった。

だが、少年マガジンで連載されていた『FAIRY TAIL』は10年以上連載が続き、アニメとしても初めて最後まで映像化することができたエポック的な作品になっているという。

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講談社 ライツ担当取締役の角田真敏氏

同社では、2025年10月2日から19日まで、ニューヨークのソーホーでイベントを開催した。こちらは「KODANSHA HOUSE」と銘打ち講談社のマンガ作品の認知をはかるイベントであった。2024年もソーホーで同様のイベントを行っていたが、2025年はその3倍のスペースのところに場所を移して行われた。

ちなみに、このイベント自体は講談社が単独で開催したものだ。同社では現在ブランディングプロジェクトと呼ばれるものを5年ほど前から実施しており、講談社がどんな活動をしているのかの認知拡大に取り組んでいる。国内でも実施しているが、国外では主にマンガを軸に展開されている。ちなみにイベント自体は無料と言うこともあり、3週間で2万人以上が来場している。

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海外でのライセンスは、講談社がライセンサーとして行っているが、実際に現地で行われているイベントなどはライセンスを受けたライセンシーの名前だけが出ており、講談社という名前はどこにも出てこない。そのため、講談社という名前がなかなか認知されないという問題があった。

そうしたこともあり、今回のイベントを実施した後でSNSや前後の消費者生活の変容もリサーチした結果、講談社という名前のインパクトや認識がどんどん変わってきた手応えを感じているという。

このイベントはPRという意味も含まれているが、実はそれだけではなく現地で漫画家を目指している人の持ち込みも受け付けていた。日本のものを海外へというだけではなく、海外の中の日本という認識を同社では持ち始めている。

元々マンガの編集部で海外作家の起用はやってきたが、出張編集部という形でいくつかの編集部がこの会場に足を運び、持ち込まれたマンガに対して編集者がその場でアドバイスを行うという試みが行われていたのだ。

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角田氏自身は2000年初め頃から海外展開に携わってきているが、講談社の海外進出の歴史としてはフランクフルトのブックフェアに出展するなど、1960年代ぐらいから続いている。当然のことながら、その頃はマンガというよりもまだ活字が主体であった。また北米進出も、9年前に50周年を迎えているなど、長い歴史の中で海外との接点を持ってきた。

当時はビジネス的なボリュームはさほど大きくはなく、90年代前半は文化的な意味合いの活動が強かった。ライセンス業務は行っていたものの、まだパッケージ商品が全盛の時代である。そのため、それらによって出版物が多くの人の手に取られることが大きなビジネスチャンスだと考えていたのだ。

1995年に公開された押井 守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が、アメリカのブロックバスターで1位を獲得する。パッケージとしてビジネスになるということで、マーケット需要がある海外からの引き合いがあり値段が付き、こんなアニメを作ろうといったやり方でアニメのビジネスを広げてきた時代でもあった。

ちなみに、その頃はまだ講談社の社内事情で編集部がライセンシーや取引先とやりとりを行うような作品があった。そこから徐々にライツに集約していくことになったのだが、いろいろな苦労があったと角田氏は当時を振り返っていた。

そうした中で、2000年代に入り積極的に原作のために映像化をしていくということから、自ら委員会の中に入って出資していくという取り組みが始まる。その代表的な作品のひとつが、先ほども話題に出てきた『FAIRY TAIL』である。

また、IPの世界観をさらに活用したグッズなどの展開も広まっていった。たとえば、海外では真島ヒロ氏が描く強い女性キャラの人気が高いということから、エルザのスタチューが発売されている。また、『七つの大罪』の中で1話しか登場しないキャラクターのエスカノールがなぜか海外人気となり、こちらもフィギュアが作られている。 

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海外では強い女性キャラの人気が高いということから商品化された作品

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作品の受け取られ方や支持のされ方も多様化してきているが、最近は事前にリサーチすることもできるようになってきた。そこでライセンシーと一緒になり、商品化に結びつける動きも始まってきている。そこで生まれたのが、台湾で行われた『進撃の巨人』とピザハットとのタイアップだ。

なんとピザの形に巨人を模った具材が並べられているのだが、原作者自身がこうした取り組みに寛容なところもあり実現したものである。

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また、北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)と『ブルーロック』のコラボレーションも実施された。こちらは、同じサッカーであるということに加えて、プレイすることに対して一生懸命な人たちに、もっと作品世界を知ってもらいたいということから実現したものだ。角田氏によると、こうしたマンガIPを使ったコラボレーションはすごく増えてきているという。

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社長の野間省伸氏が2011年に就任したときに、従来の事業にかえデジタルとグローバル展開に注力する方針を掲げた。その方針のもとさまざまな取り組みが始まっている。マンガの編集部では先ほどの出張編集部のようなものを行っているほか、海外のライセンシーに世界で受けるマンガはどんなものなのか聞くなどしてきた中で、ヤングマガジン編集部がアメリカで編集部を作るという構想なども出てきた。

そこで手始めとして、まずはヤンマガブランドの作品を北米で出していくことになったのだ。そこで、2025年の10月にニューヨーク・コミコンの新作約20本と旧作を合わせたマンガ雑誌スタイルの本を無料配布した。

3万冊ほど配布したのだが、ニューヨーク・コミコンではあっという間になくなり、北米の紀伊國屋書店の複数店舗でも無料配布が行われていた。

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裏表紙は望月峯太郎氏のマンガ『ドラゴンヘッド』だった

現在はアニメやマンガが世界に出ていき、それが受け入れられている。その状況は右肩上がりや天井なのではないかという話もあるが、角田氏はまだまだ可能性や届いていない余地があると考えているという。たとえば、北米だけをとってもニューヨークやカリフォルニアはそれなりの需要はあるものの、まだまだニッチだ。

さらに、アメリカのど真ん中にある中西部ではマンガは読まれておらず、アニメも見られていない。アメリカだけを取っても、このような状況にある。そのため、単純にライセンスするだけではなく、一緒にプロモーションを行ったりする必要もあると考えているそうだ。

アメリカでは日本のコンテンツを楽しそうに持ってきてくれる人たちと思われている──グッドスマイルカンパニー 代表取締役社長の岩佐厳太郎氏による基調講演

2人目の基調講演として、グッドスマイルカンパニー 代表取締役社長の岩佐厳太郎氏が登壇した。岩佐氏が同社の取締役社長に就任したのは、昨年の1月1日からだ。社長が安藝貴範氏から変わったのは、ひとりの人間がずっと同じ調子で会社を経営していくことによる弊害があるということから、岩佐氏が就任することになったのだという。

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グッドスマイルカンパニー 代表取締役社長の岩佐厳太郎氏

岩佐氏が社長になり、2025年から言い始めているのが、「アライアンスをちゃんとする」、「ライセンサーのベストバートナーでなければいけない」、「クリエイティブを研ぎ澄ます」という3つのことを大事にすることであった。

世界中で今日本のコンテンツが人気になってきているが、並行して中国や韓国のコンテンツも人気だ。そうした中で、同社はすべての日本の会社と一緒に世界に出ていくことをしたいと考えている。そのため、「言葉を選ばずにいうとどことでも組む」と岩佐氏は語る。

今はどこの国に行っても、グッドスマイルカンパニーの『ねんどろいど』を見かけるようになってきた。これは、同社では昔からイベントに出展して、ある程度露出することを社是にしてきていることも影響している。ちなみに、こうした取り組みは岩佐氏が入社する20年以上前からやり続けてきていることだという。

そうしたこともあり、日本ではグッドスマイルカンパニーといえばホビーやフィギュアのメーカーと思われているが、アメリカ市場では「日本のコンテンツを楽しそうに持ってきてくれる人たち」といった捉え方をされていると岩佐氏はいう。

こうした状況は狙っていたわけではないが、商品化を通じて届けられていることに加えて、ものを見ると楽しくなる。岩佐氏は、そうした空間が届けられるといいと思っているそうだ。

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たとえば、グッドスマイルカンパニーでは、声優の野沢雅子さんの『ねんどろいど』も出しているが、こうした商品は日本国内だけではなくオンラインを通して世界中で購入することが可能だ。取り扱っているフォーマットに対して、キャラクターとして取り扱われた場合、元がアニメでもマンガでも実写であってもねんどろいど化して、ひとつのコレクタブルなアイテムとして収集してもらうことはいいことだと考えている。

この『ねんどろいど』というフォーマットが優秀ということもあり、フォロワー的なアイテムもちらほら出始めてきた。少し毛色は異なるものの、中でも有名なのがPOP MARTだ。実は、グッドスマイルカンパニーとこのPOP MARTは古い付き合いの仲である。

同社の子会社であるマイルストンが、元々POP MARTの日本総代理店であった。POP MARTが日本に進出してくるときに、POP MART JAPANという会社をこのマイルストンと一緒にジョイントベンチャーで作っている。原宿の店舗の装飾をどうするかといったことや、不動産をどこにするのかといったことを決めるなど、日本での最初の足掛かりになる部分を一緒にやってきたのだ。

POP MARTといえば、2025年最大のヒットアイテムの『ラブブ』があるが、それが盛り上がる前にジョイントベンチャーを解消している。これはケンカ別れとかではなく、結果的にそうなっただけだ。

POP MARTは、海外で市場を広げていくときに各国のパートナーと組んでいた。それでスピードアップして広げていったのだが、あるときにここから先は自分たちだけでやっていくという話になった。とはいえ付き合い自体は続くため、友好的にジョイントベンチャーの解消が行われている。それがちょうど、『ラブブ』が大ヒットする直前の出来事だったのだ。

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岩佐氏がPOP MARTのやり方を見ていてすごいと思ったところは、サンリオのように売れるかどうかということよりも先に店舗をショーケースのように作っていったところだという。グッドスマイルカンパニーのような企業は自社で販売していることもあり、あまりリスクは取らないことが多い。そうした視点から見ると、まさに真逆の戦略を取っていたのである。

ただ、現在は海外で市場拡大を狙っていくためには、リアルな店舗を持たないとまずいのではないかという話を社内でしている。現在は現地の問屋と組んで、グッドスマイルショップという形で出そうとしているところはある。また、台湾や中国、ヨーロッパにはすでに専門店ができている。

こうしたリアル店舗の需要は、コロナ禍で爆発的に日本のコンテンツが海外で盛り上がり、コアなファンが好きなだけ買うというものから、徐々に一般層にまで裾野が広がってきたためだ。ものを買うという行為も、POP MARTがすでに市場を耕してくれている。そのため軽くアニメを見た人が、こんなものがあるんだと知ってもらうには、ちょうどいいタイミングになってきたのだ。

岩佐氏が、今海外展開でアツい国は韓国だという。政治の影響を受けやすい国ではあるものの、ここ数年は最も親日で日本のコンテンツに対してもポジティブだ。また、ヨーロッパはこれからよくなるという雰囲気がある。こちらも裾野が広がってきていることも証拠で、作品を見る人が増えてきていることが影響しているのだ。

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講談社×グッドスマイルカンパニーによるディスカッション

この基調講演の最後に行われたのが、ディスカッションパートだ。こちらには、講談社 ライツ担当取締役の角田真敏氏と ライツ・メディアビジネス本部/ ライツMD部 兼 IPビジネス部 兼 グローバル統括室の伊藤洋平氏、グッドスマイルカンパニー 代表取締役社長の岩佐厳太郎氏が登壇した。

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角田氏の基調講演にも出てきた、北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)と『ブルーロック』のコラボにガッツリ関わっていたのが、伊藤氏だ。今回の施策が影響しているかはわからないものの、通常マンガの新刊が出るタイミングで売上が上がり徐々に下がっていく傾向にあり、巻を重ねていくごとに下がる傾向にある。しかし、この『ブルーロック』は北米ではずっと上がり続けており、認知も拡大し続けている。そうしたことも含めて、伊藤氏はうまくいっていると感じたそうだ。

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講談社 ライツ・メディアビジネス本部/ ライツMD部 兼 IPビジネス部 兼 グローバル統括室の伊藤洋平氏

今回のディスカッションパートでは、講談社とグッドスマイルカンパニーの2社が登壇しているが、グッドスマイルカンパニーでは講談社のIPを使った商品化のほか、アドベンチャーゲームの『東京リベンジャーズUNLIMITED』も作っている。そのため、親密な関係だと岩佐氏はアピール。

一方、講談社のパートナー選びでは、基本は会社対会社ではあるものの、やはり人対人が大事だと考えている。それぞれのIPに対して理解があり、どういうことができて、どういうことができないのか経験が蓄積されているところも重要だ。また、ビジネス的には、クリエイティブな面と同時に展開力や拡張性、成長性ということに関しても会話の中で感じ取れるところと組んでいきたいため、グッドスマイルカンパニーをパートナーに選んでいる。

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両社ともこのタイミングで海外に打って出なくてどうするという点では共通しているが、出方は異なると岩佐氏はいう。講談社のようにIPの知名度を上げることと、グッドスマイルカンパニーのようにものを実際に届けるという両方の側面があり、それぞれが反応し合うことで爆発的に広がっていくことを目指したいと考えているそうだ。

だが、少々難しいのは10年ほど前とは異なり、現在は初めて作品を観るタイミングが必ずしも全員同時ではない場合があるということである。たとえば、Netflixのおすすめで今日『ブルーロック』を初めて見る人もいれば、1年後に見る人も存在する。そして、そこがものを売るのが難しいところなのだ。

好きになったタイミングは異なっていても、そのときにアイテムは欲しくなる。そうしたときに、やはり現地で売られているのがベストだ。岩佐氏は、そうした状況を作ることができるか重要視しているという。

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講談社側では、たとえば映像化もワンクールで終わりではなく、シーズン2や3と長く続けていきながら、ラインの関係もあり簡単ではないものの、合間に何を入れていくか考えている。そこで実写が入ってきたり、あるいはイベントを開催したりというように、シーズンの間を埋めていきながら作品のファンのテンションが下がらないように後押ししているのだ。

講談社の作品のアニメでは、1期目よりも2期、3期と徐々に力が入っていくような作品がある。明らかに他社と異なる戦略を取っているようにも見えるが、これに対して伊藤氏はやはり『FAIRY TAIL』が成功体験であると語る。最後まで作りきることから生まれるIPの価値。そして、日本だけではなく海外でも長期間IPを出し続けることから生まれるファンのボリュームを、体験として持っているからだ。

伊藤氏が関わった『進撃の巨人』のアニメも、製作会社が途中で変更されている。そのときは、プロデューサーとして最後まで作りきることが、一番やらなければいけないことだと思っていたそうだ。

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長い鑑賞に耐えうる作品は、それを選ぶ眼力も重要だ。たとえば『進撃の巨人』の場合は事業としても出資を行っている。しかし、社内の会議には赤字見込みで出していたのだという。2013年にシーズン1が出たときは、萌え系の作品のほうがグッズも売れておりハードな内容では商品化もダメだと思われていたからだ。また、今ほど配信もなかったことに加えて、海外もまだまだという状況であった。

これは角田氏の後押しもあり実現したアニメだが、角田氏自身は講談社として出資するということは、その作品を支え続けることであり、著者から作品を預かっている以上はしっかりやり遂げなければいけないという思いがある。たとえ数字的には厳しくても、それを盛り返す材料があるのではないかと信じながら営業をしていくこともあるのだ。

たとえば、過去作でいえば『AKIRA』も最初は大赤字だった。こちらも、長い時間をかけて採算が取れていったという経験がある。そして、講談社にはそうした作品が少なからず存在しているのだ。逆に、圧倒的な人気を博しており、最初から勝ちが確定している作品は意外と少ないのである。

それを繰り返してきている企業でもあるため、目先の数字のマイナスは作品性や作家がどれぐらい意欲を持って書き続けようとしているのか、その先にどんなストーリーが待っているのかといったことを聞きながら判断をしているという。

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こうした体質は、出版社であることも影響していると角田氏はいう。マンガに限らず雑誌を出すことは、すごくお金がかかっている。たとえば、創刊誌のプランを出すときは、最初から赤字といった感じだ。その後部数が増えて広告が入っていき、マンガ雑誌ならコミックスになる。このぐらいの年月が経つと黒字になるといった絵を描きながら、雑誌を創刊しているのだ。

また、マンガの源になっているのも赤字から始まっているところがあるので、どのように黒字化して発展させていくかということが、経験として備わっているのかもしれないと角田氏は考えていると述べ、基調講演を締めくくった。

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こうしたマンガIPのグローバルな可能性を、具体的なビジネスへと繋げる「IMART2026春 Global Business Matching」が、2026年3月24日から27日に開催される。

本イベントは、国内外のコンテンツ事業者やライセンシー、投資家が一堂に会する国内有数のビジネスマッチングの場となっている。マンガ・アニメ・ゲーム業界の垣根を越え、次なるヒットや海外展開を狙う事業者やクリエイターにとって、見逃せないイベントになりそうだ。

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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