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海外売上20兆円を目指すための支援策から、Steam新作の約3割が活用する生成AIの最前線、グローバル展開に伴う法務リスクまで。「CESAゲーム産業レポート2025発刊記念セミナー」が実施

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2026年2月20日、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)による「『CESAゲーム産業レポート2025』発刊記念セミナー」が開催された。

本セミナーは、毎年発行されている同レポートの発刊に伴い、「事業運営に役立つ情報を得られる機会がほしい」というニーズに応える形で企画されたものだ。

本稿では、各講演において共有されたデータや制度の詳細、指摘された課題について紹介する。

執筆/世界のザキヤマ
編集/恵那

過去最大の売上目標と予算投下。挑戦者を後押しする経済産業省の「IP360」戦略

経済産業省の梶直弘文化創造産業課長は、政府が掲げる「コンテンツ海外売上高を2033年までに20兆円にする」という成果目標について、その重要性を説明した。

「『CESAゲーム産業レポート2025』発刊記念セミナー」まとめ|生成AIの最前線_001

2023年の国内コンテンツ産業の海外売上高は約6兆円であり、そのうちの約6割をゲーム産業が占めている。この20兆円という数値は、2024年に当時の担当大臣が掲げ、2025年には閣議決定へと格上げされた国家的な目標だ。

この達成に向け、令和7年度補正予算では、経産省単独で従来比約3.5倍となる350.2億円が確保された。これらの支援策は「IP360」という名でリブランドされ、IPの多角的な展開を全面的にバックアップする体制が整えられている。

支援にあたっては、産業界との議論を経て策定された「エンタメ政策5原則」が適用される。

・大規模・長期・戦略的に支援する
・日本で作り、世界に届ける取組を支援する
・作品の中身には口を出さない
・真っすぐ届ける
・挑戦者を優先する

梶課長は「行政官が、何がヒットするかを判断するべきではない」として、作品の内容には干渉しない姿勢を強調。日本を拠点に世界市場を目指す挑戦者に、優先的に投資をすると述べた。

具体的な支援メニューのうち、中核となるのが「大規模作品製作支援」だ。これは2カ年の事業を対象に、1社あたり最大15億円までを半額補助する制度となる。

なお対象はすでに十分に売れているIPではなく、社内ベンチャー等による新規性の高い挑戦的なプロジェクトに限定される。一方で大ヒットを記録した際には、補助金を返還する収益納付が条件として設定されている。

インディー開発者等を想定した「IP新規創出支援(スタートアップ支援)」も拡充。支援上限額を1000万円へ倍増させるとともに、新たにマーケティング費用も補助対象に含まれた。

予算措置と並んで強力なのが、「大胆な投資促進税制」の創設である。35億円以上(中小企業者等は5億円以上)の設備投資を対象に、「即時償却」または「税額控除7%等」の適用を選択できる。建屋なども対象に含まれており、3年の間に投資計画の確認を受ければ、そこから5年を経過する日までの間に事業の用に供されれば税制措置を受けられるため、より長期に亘る設備投資も対象となる設計となっている。

「『CESAゲーム産業レポート2025』発刊記念セミナー」まとめ|生成AIの最前線_002

梶課長は「政府の支援をうまく使い、世界中で稼いでほしい。その結果を見て、我々もさらに資金調達に努める好循環を作りたい」と述べ、積極財政を通じた市場拡大への強い意志を示した。

文化庁は長期視野でサポート。小・中学校向け学習の場も提供

文化庁の小野賢志参事官(芸術文化担当)は、ゲームを能や歌舞伎と並ぶ「日本の重要な文化」と捉え、その土壌を育む施策について語った。

同庁のコンテンツ政策は、「育てる」「つくる」「届ける」「残す・活かす」というエコサイクルを基本としている。とくに「残す・活かす」という観点では、過去のゲーム関連資料を文化財としてアーカイブし、次世代が学べる機会を作ることを重視している。

「『CESAゲーム産業レポート2025』発刊記念セミナー」まとめ|生成AIの最前線_003

こうした長期的な視座に基づく政策を実現するため、独立行政法人日本芸術文化振興会に「クリエイター支援基金」を設立。国の予算の単年度主義という制約を越え、複数年度にわたるプロジェクトへの安定した支援が可能となり、令和7年度補正予算では175億円が措置されている。

基金を通じた支援対象は段階的に進化しており、令和5年度には若手クリエイターの海外派遣や、トップクリエイターがメンターとなる「TGCA(Top Game Creators Academy)」が始動。これは選抜された若手クリエイターが、東京ゲームショウ等での発表や、業界関係者とのネットワークを築き、ステップアップすることを促すものだ。

また、令和6年度には、教育機関において産業界のニーズを踏まえたカリキュラム開発を行う「スキル実証プロジェクト」も実施されている。

「『CESAゲーム産業レポート2025』発刊記念セミナー」まとめ|生成AIの最前線_004

令和7年度からは、制作現場を支える中核的な専門人材の育成に注力。優れたアイディアを持つディレクター層だけでなく、アニメーター、プログラマー、3DCGクリエイターなど、コンテンツ制作を支える人材を確保することを喫緊の課題としている。

また、企業や業界統括団体などが連携し、中小の開発会社やフリーランスも参加できるような合同研修や、教員のスキルアップデートなどの実践的な取り組みに対し、1件あたり最大2億円規模の支援をする予定だという。

「『CESAゲーム産業レポート2025』発刊記念セミナー」まとめ|生成AIの最前線_005

CESAと共同で展開している、小・中学校へのクリエイター派遣事業についても紹介された。授業を通し、プロと共に作品を創り上げる体験を通じて、創造性の育成に寄与することを目指している。

小野参事官は「新しいクリエイターが生まれる循環を、皆さまといっしょに作っていきたい」と締めくくった。

生成AIはすでにキャラクターの「一貫性」問題を解決。利用はSteam新作の3割に

続けて、株式会社AI Frog Interactiveの新清士氏が、開発現場における生成AI活用の実情を報告した。同社はわずか4名の少人数チームで、2026年3月5日にリリース予定のクラフト系サバイバルゲーム『Exelio -エグゼリオ-』を開発している。

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新氏は、コスト削減と効率や品質向上のため、開発初期段階から生成AIをワークフローに導入してきた。プログラミングにおいてはツール性能が向上しており、リファクタリングも含め劇的な恩恵を受けているという。

続けて紹介されたのは、画像生成AIにおける「キャラクターの一貫性維持」だ。かつては背面が描けない、デザインが安定しないといった致命的な課題があったが、2025年末に登場したGoogleの「Nano Banana Pro」などの最新ツールにより、1枚の画像から正確な三面図や表情差分をすぐに生成することが可能となった。

デモでは、新氏自身のチームでの実例を紹介。ディレクターからの「可愛いカエルでSFっぽい要素」という曖昧な要望に対し、AIを壁打ち相手としてコンセプトアートを生成し、イメージを具現化していくプロセスは、初期工程を大幅に圧縮した。

合わせて、2D画像を3Dモデルに変換し、VRMフォーマット等を通じて実装するパイプラインも紹介された。顔の破綻など課題はあるものの、年内には解決されると見込んでいるという。実際のゲームにはこのやり方では使用していないというが、使い物になる段階に入り始めているという。

世界のトレンドを示すデータも提示された。2026年1月時点では、Steamの新作タイトル1038本のうち、約30.8%が生成AIの使用を申告している。

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プラットフォーマー側の対応も変化しており、Steamも「プレイヤーが消費するコンテンツ」に焦点を当てた開示ルールを整備。ユーザーの目に見えるグラフィックなどを除く、裏方ツールであれば申告不要とするなど、AI利用を理由に配信を制限する動きは見せていない。

なお、Nintendo eShopにおいても多数の生成AI利用のゲームが販売されている。おおむね低品質なパズルゲームに散見され、品質を下げているという批判こそあるものの、任天堂はこれを理由に配信を禁止していない。他のコンシューマも含め、ゲームプラットフォームで、生成AIの利用を理由に配信を認めない動きは起きていない。

一方で、社会による受け取られかたは障壁として立ちはだかっている。とくに欧米圏では、「AIが職を奪う」という労働問題としての側面もあり、反発は根強い。ただし、60%のユーザーが、ゲームの質が良ければ生成AIを気にしないという調査もあるという。

対照的に中国では、トップ50企業の60%超が生成AIを導入しており(2024年12月時点)、全プロセスへの統合が加速している。ユーザーからの反発も限定的という。

日本はその中間に位置し、ユーザーは面白ければAI使用を気にしない層が多いものの、アートワークへの使用には依然として慎重な反応も出やすい。

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しかしながら新氏は、「とくに予算が限られるインディーゲーム開発者にとって、AI利用を避ける選択肢はない」と力説し、導入は各企業の戦略と覚悟の問題であると述べた。

グローバル展開にこそ法的視野を。国内では規制無視の海外事業者が問題に

最後のセッションでは、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の松本祐輝弁護士が、グローバル展開に伴う法的リスクを解説した。

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ゲームはデジタルコンテンツであるため海外進出は容易ながら、進出先の複雑な規制を意図せず踏み抜く危険性がつねにつきまとう。

例として韓国の2025年改正ゲーム産業法では、海外事業者に対する現地代理人の設置やルートボックス(ガチャ)の確率表示が義務化されている。ブラジルでも2024年に電子ゲーム法が成立し、未成年者保護の観点から厳しいルールが敷かれた。

欧州の一部(ベルギー、オランダ等)では、特定のガチャが禁止される事例もある。また、中東諸国などでのマーケティングにおいて、宗教的背景から特定の表現がリスクに直結する事例も紹介された。

国内の法規制における不公平感も課題だ。日本の事業者が法令を遵守するため多大なコストを負担する一方で、日本に拠点を持たない海外事業者が、規制を無視して利益を上げるケースが散見する。

松本氏は、違法な事業者に対する公表措置やアクセス遮断といった制裁の必要性を訴えるとともに、国内事業者向けには規模に応じた適用除外など、規制の柔軟な運用の検討を促した。

生成AIの法的論点については、日本の著作権法第30条の4が学習段階での利用を広く認めている点が強みだが、但し書きにある「著作権者の利益を不当に害する場合」の判例は依然として少ない。

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そのため意図しない著作権侵害を防ぐため、経産省のガイドブックを参考に、既存著作物に類似・依拠していないかを検証するチェック体制の構築が重要となる。

また、海外のAIサービスを利用する際の利用規約の精査についても注意喚起がなされた。規約によっては、著作権侵害があった際の補償額が100ドル以内に限定されていることがあるため、開発者にとって規約の確認は不可欠だ。

松本氏は最後に、国内外で大きくスタンスが異なる個人情報保護規制について警鐘を鳴らした。日本の個人情報保護法は、情報漏洩が発生した際に、規模を問わず「対象者全員への通知」を原則義務付けており、事業者負担が極めて重い。

しかし、アメリカやEUでは高額な課徴金リスクも存在し、とくに若年層も触れるゲームには厳しい目が向けられている。中小のインディー開発者であっても、グローバル市場を目指す以上、各国の法制度への対応は避けて通れない課題と言えるだろう。

ライター
ロボット物とゲームBGMとラーメンの食べ歩きが好き。ソシャゲ記事の執筆が多めです。(株)F5代表。
編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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