今回紹介する『ヨッシーとフカシギの図鑑』は、絵本風のビジュアルと「ヨッシー」というポップな主人公も相まって、子ども向けのタイトルに感じる人もいるかもしれない。
しかし本作、実はいまを生きる大人こそプレイしてほしい、観察と発見の喜びにあふれた「令和の動く絵本」なのだ。
本作の主人公は、体力ゲージが存在せず、秒で復活する超タフなヨッシー。ゲームオーバーが存在しないので、失敗に怯えることなく動き回って謎を探し、思いついた解法を次々試すことができる。
今回はそんな、観察と発見のサイクルが止まらない謎解きと、タフすぎるヨッシーがおもしろすぎる話をしていきたい。
ゲームオーバーがないなら楽勝……かと思いきや、謎解きは骨太
『ヨッシーとフカシギの図鑑』は、空から降ってきた図鑑「フカシギ」の中に生息する謎の生物の生態をヨッシーが探るアクションゲームだ。
舞台が図鑑の中ということもあって、インクや紙の質感を感じられる絵本のようなグラフィックがとにかくかわいい。森や海、大空などの個性的なステージが多数用意され、そこで発見したことを図鑑に記録する。
こうすることで星を獲得し、一定数貯めると別のページ(ステージ)に行けるようになるのだ。
早速ゲームを開始し、おっかなびっくりで操作確認をしていると、あることに気がついた。
あれ、これ、もしかして体力ゲージがない?
そう。本作では生き物に当たろうが、穴に落ちようがお構いなし。ヨッシーは痛そうな反応をするだけで秒で復活する。つまり「ゲームオーバーが存在しない」のだ!ちょっと、楽勝で攻略できちゃうんじゃないの、もしかして!
こうなるともう、水を得た魚……いや、無敵スターをとったマリオと言うべきか。無敵をいいことにステージを縦横無尽に動き回り、生き物たちの生態を次々と解き明かしていく。
うおおお、なにこれ面白い!
しかし、本作は子ども向けの簡単なゲームなのかというと……まったくそんなことはない。
本作は「気づいた謎を自分から試して解く」ゲームだ。
裏を返せば、気づかなければ解けない。だって、本作は「この謎を解け」なんて、謎の詳細を親切に提示してくれたりなんかしない。つまり「解くべき謎そのもの」をプレイヤーが能動的に探し回る必要があるのだ。
ゲームオーバーのあるアクションゲームなら、正解の動きだけを目指して何度もリトライすればいい。しかし本作では、まずは謎そのものを探して、そのうえで謎解きの正解に辿り着かなければならない。
じつは、ぜんぜんカンタンではないのだ。
この感覚を、どこかで味わったことがある。
……そうだ、『スーパーマリオ64』のスター集めだ!
ほんの少しのヒントを頼りにスターのありかを探る、あれだ!
何度も失敗を繰り返し、やっとスターをゲットした時の、あのハンパない達成感。
「じゃあ、結構ムズいのでは?」と思った方も、安心してほしい。本作にはちゃんと救済措置が用意されている。探索に行き詰まっても、ゲーム中に集めるコインを使えばフカシギからヒントを教えてもらえる。
しかし、教えてくれるのはあくまでヒントで、答えじゃないのがミソだ。最終的には自分の頭で捻りだすムズさが、達成感とやりがいを感じさせてくれる。
ストレスが「ない」から、トライ&エラーしまくれる
本作の謎解きは、たしかに歯ごたえがある。
しかし、本作のヨッシーは超タフだ。
先述のとおり、生き物に当たろうが、穴に落ちようがお構いなし。ゲームオーバー画面を挟むことなく、ひたすら謎解きの試行錯誤に集中することができる。
ステージでは「食べる」「タマゴを投げる」「おんぶする」など、お馴染みのヨッシーアクションを駆使して探索する。こうしたアクションと、生き物にこれらのアクションをぶつけたときの反応が発見のヒントになる。
たとえば、序盤に登場する「カエルのような生き物」は、終始口から泡を出している。この泡を「食べてみる」と、ヨッシーは苦いと反応する。次は試しに泡に「包まれてみる」と、空高くへと舞い上がっていく……。
プレイヤーはこうした、生き物とアクションのかけ合わせによる反応から、その生き物の特性を理解して「泡に乗って高所に行ってみよう」とか、「別の生き物を泡に包んでみよう」などの仮説を立てて、今度はその仮説を実験し始めることができるのだ。
このほかにも、踏んづけると音を出す鳥みたいなヤツや、ブドウのようにぶら下がっていてヨッシーが近づくと攻撃してくるハチみたいなヤツなど、図鑑には多彩で奇想天外な生物が無数に生息している。謎の生き物が、プレイ中どんどん出てくる。
つまり本作は、プレイヤーの「こうしたらどうなるだろう?」という純粋な好奇心のままに突き進んでいけるのだ。
気になるものを見て、触って、味わって、踏んづけて……。やりたい放題の実験をして回って、そこから返ってくるフィードバックが本作の「ヒント」であり、そのヒントをどう謎解きに繋げるのかを考えるのが最大の面白さだ。
何をやっても死なないからこそ、「この生き物にこれをしたらどうなるだろう?」という実験的な探求が次々と湧いてくる。
でも、せっかく試したいことがあっても、そこに辿り着くまでにいちいちゲームオーバーになっていたら面倒だ。
だったら、いっそのことヨッシーを無敵にして、トライ&エラーのハードルを下げたほうが楽しい!
主人公であるヨッシーがここまでタフなのは、難易度を下げるためだけのものではなく、気持ちよく「気づきと発見」のサイクルを回すためでもあるだろう。
こうして調査した生き物に名前を付けて、フカシギの図鑑にひとつずつスタンプのように記録する。攻略を進めるにつれてスタンプがコレクションされ、ページが埋まっていくと、ぽっかりと空いた空白のページを見つけるだろう。
こうして空いた穴を埋めていく楽しみは、まさに『マリオ64』のスター集めと同じ。ページが埋まれば埋まるほど難易度の高い謎が残されていく。
いきなり難易度の高い謎にプレイヤーを放り込むんじゃなくて、徐々に本作の骨太さが牙を剥いてくるのだ。この辺の調整も任天堂らしいなと個人的に感じた。
本作は、派手なバトルやゴージャスなムービーでプレイヤーを圧倒するタイプのゲームではないけれど、頭を使った観察や予測と、思いついたアイデアを実行する指先のテクニック(アクション)が丁度いい塩梅で噛み合っている。
大人が遊んでも断然面白い。むしろ、大人の硬くなった頭を解すのに最適だと思う。
テレビゲームの本質は突き詰めると、プレイヤーの入力に対する機械の反応を楽しむものだ。気になる箇所にアクションを起こして謎を解き明かす本作は、まさにテレビゲームそのものだ。
それって、紙の絵本にはなかなかできない、任天堂だからこそ作れた「令和の動く絵本」のようなものではないか、と感じた。









