いま読まれている記事

『夜廻』スタッフが贈る新作ゲーム『ほの暮しの庭』は、ホラーが苦手でも遊べた! ジャンプスケアなしの “少し不穏なスローライフ” だから大丈夫。ホラーが苦手で『夜廻』を諦めた人に大朗報

article-thumbnail-260615a

1

2

「ホラーが苦手な人にこそ遊んでほしい」──『夜廻』スタッフが挑む、少し不穏なスローライフ

──『夜廻』シリーズは “怖い夜” を描く作品でした。本作は逆に明るい絵づくりの作風だと感じています。これまでと真逆の方向性に挑戦した意図を教えてください。

溝上侑氏(以下、溝上氏)
我々はこれまで『夜廻』シリーズを作り続けてきましたが、私自身、以前から「明るいゲームを作りたい」と話していました(笑)。そこから、少し風変わりなゲームを作ろうと思ったのがきっかけです。

ただ、『夜廻』とまったく別のものを作るというよりは、『夜廻』で培ってきたノウハウを使って、新しいゲームを作れないかと考えました。その中で選んだのが、生活シミュレーションというジャンルでした。

『ほの暮しの庭』レビュー・感想・評価:ホラーが苦手で『夜廻』を諦めた人に大朗報_020
『夜廻』(画像はSteam:夜廻より)

──本作を作るにあたって、最初から「これは必ず入れる」と決めていた要素はあったのでしょうか。

溝上氏:
要素というより「農場」など、ほかの生活シミュレーションにあるものは絶対に入れようと決めていました。生活シミュレーションゲームを遊ばれる方が期待するものは必ず入れていますので、その点についてはご安心していただければと思います。

──これまでの作風と真逆の作風ということで、企画を社内で通す際に苦労した部分はありましたか。

溝上氏:
難しくなかったよね?(笑)。

勝又美桜氏(以下、勝又氏)
はい(笑)。

溝上氏:
というのも、『夜廻』のノウハウを使った新しいゲームとして、生活シミュレーションを組み合わせるという根底がありました。

この組み合わせ(「ホラー」×「生活シミュレーション」)のめずらしさや、ミスマッチ感のおもしろさもありましたし、設計段階から道筋がかなり明確に見えていたので、企画を通すのには困らなかったですね。

勝又氏:
いろいろと理由を並べた記憶はあるんですけども……(笑)。

そもそも『夜廻』は、グラフィックに惹かれて手に取ってくださっていた方も多かったと分析しています。だけど一方で、「ホラーが苦手で遊べない」という方がいらっしゃることも認知していました。

だったら「このグラフィックで生活シミュレーションを作ってみたらそうした方にも届くのではないか?」ということを社内で提案したときに「いいじゃん!」と前向きに共感してもらえたんです。

……たぶん、みんな思っていることは同じだったのかもしれません(笑)。

一同:
(笑)。

勝又氏:
本作にもホラー要素自体はあるのですが、あくまで「生活シミュレーション」が中心のゲームであれば、手に取りづらいと感じていた方でも、比較的遊びやすいのではないかということで、プロジェクトは無事に進みました。

──『夜廻』では溝上さんが「子どものころの怖い体験」をもとにした表現が盛り込まれていたとお聞きしています。その点で、本作における “ホラー” はどのようなテーマを散りばめたのでしょうか。

溝上氏:
じつはあまり明確なテーマを考えすぎないようにしていました。

ただ本作はゲームの性質上、登場人物がかなり多い作品です。そのため、『夜廻』とはシナリオの性質もまったく違うものを書かなければいけませんでした。そのため、仕上がりとしては「群像劇」に近いものになったと思います。

『夜廻』はプレイヤー主観の話が多かったと思いますが、本作では住人たちの様子から見えてくる “不穏さ” が物語の表現として使われています。どちらかと言えば、お化けが急に出てくるような怖さではなくて、「不安になるような怖さ」を軸とするシナリオが描けたのではないかなと思います。

──試遊させていただきましたが、確かに住人たちだけが知っている「何か」に関する会話がとにかく不穏でした。

溝上氏:
そうですね。本作はその不穏さを楽しむというか、「何これっ!?」みたいな感情を楽しむゲームかなと思います(笑)。

『夜廻』や、たとえば『バイオハザード』のように、何かが突然出てくるホラーとは切り口が違います。暮らしの中にある小さな違和感や住民たちの少し変な会話を見て、その空気感が楽しめるホラー作品になっていると思いますね。

『ほの暮しの庭』レビュー・感想・評価:ホラーが苦手で『夜廻』を諦めた人に大朗報_021

──ホラー要素を抑えた「あんしん暮しモード」がありますが、そのモードでもその不穏さは残っているのでしょうか。

勝又氏:
多少は残っています。

といっても直接的に怖い演出は「あんしん暮しモード」では省いているのでご安心ください。一方で、村人が “掟” について話したり、その村にとって当たり前のことを普通に話したりする部分は残っていますね。

──勝又さんは、今回は開発責任者という立場で関わられていると思います。溝上さんが作りたいものを、勝又さんが実現させていくような役割分担だったのでしょうか。

勝又氏:
役割分担はすごく明確でした。溝上はシナリオや雰囲気作りのノウハウを持っているのでそちらを担当しています。今回、私はどちらかというと農場シミュレーション班の側にいました。ですので、「農場シミュレーションでそれをやってしまうと反感を買ってしまうよ」というライン引きの見極めです。

たとえば、「ユーザーが積み上げてきたものをホラー側の都合で奪うのはやめましょう」など。「育ててきた家畜をある日突然殺す」「野菜を奪う」「仲良くなった住人を突然いなくする」そういったことはやめようと話していました。

というのも、開発中に溝上が突然来るんですよ。「○○、殺していい?」って

一同:
(笑)。

溝上氏:
私は「大切にされてきたものほど奪いたい」ので……(笑)。

勝又氏:
ホラーとしては、プレイヤーが大切にしているものを奪うほうが強く響く場合もあります。

しかしながら、それをファームゲームでやってしまうと反感を買ってしまうので、ジャンルとしてよくないんです。そこは私のほうで線引きしながら、具体的なアイデアは溝上から出してもらうかたちで作っていきました。

──すると、アイデアがぶつかる場面もありましたか。

勝又氏:
ぜんぜんありましたね(笑)。

溝上氏:
私としては「ここで○○を殺しておかないと物語を先に進められない!」みたいな(笑)。

勝又氏:
演出的に「ここでは何かを奪わないと先に進めない」という場面があった場合は、いったん演出としては奪うけれどシステム的にあとで補填する、という折衷案を出すことがありました。

私としても、『夜廻』的な演出のよさをなくしたいわけではありません。そこは保持しながら、生活シミュレーションとして奪ってはいけない部分は、きちんと補填する。そのバランスをよく話し合っていました。

──ホラーと生活シミュレーションという、かなり異なるジャンルを組み合わせるうえで、難しさはありましたか。

溝上氏:
うまく収められたと思います。農作業で気が緩んだところに、ふっと冷たいものをかけられるようなホラー感があります。そこはこのゲーム特有の配分だと思いますし、本作ならではの演出も盛り込めたのではないかと思います。

──最後に、本作をどのような人に遊んでほしいとお考えでしょうか。また、遊び終わったあとにどのような感情を持ってほしいですか。

勝又氏:
意外かもしれませんが、ホラーが苦手な人にこそ遊んでみてほしいです。「意外と遊べた!」「めっちゃよかった!」ってなると思うんです。

私自身もホラーはあまり得意ではありません。本作はシナリオを進めるうえで、強い恐怖というより、不気味さや違和感、先が気になる展開を重視しています。なので、ホラーが苦手な方でも遊べると思います。

生活シミュレーションを目当てに入った方が、「シナリオもすごくよかった」と感じてくれたら、とてもうれしいです。

溝上氏:
やっぱり最終的には、彼ヶ津村のことを好きになってもらえたらうれしいですね。「『ほの暮しの庭』最高!」ってなっていただけると(笑)。

そのために必要なことは、しっかりやってきたつもりです。かなり絶妙なバランスで成り立っているゲームだと思いますので、ぜひ手に取っていただけたら幸いです。

ホラーゲームで遊ぶ人はストーリーを追うことに慣れていると思いますが、生活シミュレーションはどうしてもストーリーパートが少なくなりがちです。今作はむしろ物語で牽引していく部分が強いので、そこは “新しい体験” として楽しんでいただけるはずです!(了)

『ほの暮しの庭』レビュー・感想・評価:ホラーが苦手で『夜廻』を諦めた人に大朗報_022

1

2

ライター
塵と埃と霞を食べて生きています。座右の銘は「寝なければ時間は無限」。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ