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ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG

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夢のような“本”があった。

それは、読者の選択によって物語の展開や結末が変わるように作られている“ゲームブック”と呼ばれる“遊べる本”。進む道は自分で選び、サイコロを振ってステータスを鉛筆で書き込む。そんな遊び方で自分が主人公になれる唯一無二の体験が楽しめるものだ。

そんなゲームブックを、現代のデジタルゲームとして見事に再構築した作品がある。
それが新作RPG『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』(以下、暗黒城の魔女)だ。

本作をプレイして感じた魅力を一言で表すなら、「老舗の味」である。

例えるなら、熟練の職人が手がける和菓子のようだった。派手さはないのに、ひと口食べると「ああ、これは長くやってきた人の仕事だな」とわかる、あの奥深い味わいだ。

ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_001
(画像はSteam:ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女より)

本作は、奈良県の山奥に位置する曽爾村(そにむら)で、ヴァニラウェアを卒業した生粋のゲーム職人である西村芳雄氏が、畑を耕しながら6年かけて作り上げたゲームブック風のデジタルRPGだ。

西村氏はカプコンで『モンスターハンター』を、ヴァニラウェアでは『オーディンスフィア』『ドラゴンズクラウン』『十三機兵防衛圏』などの背景チーフを手がけてきた人物だ。本作は、そんな彼が独立後に立ち上げた「ジギタリス出版」の第一作目として作られたタイトルである。

そんな本作は、2026年6月のSteam Nextフェスに出展。ゲーム本編の冒頭30分程度を遊べる、無料の体験版を配信中だ。

本稿では、そんな職人技による「老舗の味」を堪能できる体験版の内容を紹介させてほしい。

文/TsushimaHiro
編集/実存


どうみても“本”なのである

まず驚かされたのは、本作が古き良きゲームブックの手触りをそのままデジタルで再現していることだ。パッと見は、どこからどう見ても本なのである。

ゲームを開始すると、「暗黒城の魔女」と描かれた1冊の本が表示される。ページは黄ばんでおり、どことなく表紙にも使用感が漂っている。

ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_002

表紙には戦士と魔法使いが描かれており、「これから剣と魔法の世界のゲームブックを遊べますよ~」という強い意志を感じる。

本を開くと、机の上に広がるのは鉛筆、消しゴム、そしておじいちゃんの顔が描かれたコイン。さらにキャラクターシートには武器・防具・アイテムが回数つきで記載されている。

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このキャラクターシートが、また徹底している。
戦闘でダメージを受けるとステータスの数値が消しゴムで消され、鉛筆で書き換えられる。

この演出だけで、何度かにやけてしまった。紙のゲームブックやTRPGを遊んだことがある人なら、どこかで覚えがある感覚だ。

また、本作の戦闘はサイコロで判定が入る形式。サイコロの出た目の合計にレベルを足した数が行動値となり、値が大きかったほうの攻撃が命中する仕組みだ。

これもゲームブックやTRPGの作法をそのまま踏襲している。

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ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_005

本作に収録された手描きイラストは300枚以上にのぼり、これも西村氏がひとりで描いたものだという。ゲームを進めるたびに登場する緻密なイラストの数々が、まるで分厚い本の挿絵をめくりながら物語を読み進めているような感覚をもたらしてくれる。

やはり、どこからどう見ても本なのである。

唐突な死。古き良き理不尽さと、「ちょっと巻き戻す」やさしさが共存

ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_006

ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_007

さて、本作の主人公“7年間無敗の戦士”というゴリゴリのマッチョマンと、美しい魔女の2名から選択可能だ。

今回は戦士を選択、彼は自らの育ての親である魔女を探して都を目指す。

すると、冒険の途中で街にゾンビの大群が発生。そこらの家屋へと逃げ込むが、筆者がもたついていたせいで囲まれてしまう。

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死んだ

画面は無情にも「14ページ」へ送られ、唐突なゲームオーバーを迎えた。【※】
7年間無敗の剣闘士も、ゾンビの大群には敵わないらしい。

※「14へ行け」
J・H・ブレナン氏の著作『グレイルクエスト』において、「ゲームオーバー(死亡)」を意味する指示。プレイヤーが罠にかかったり敵に負けたりすると、必ず「14へ行け」という指示が出て死亡する仕組みになっている。ファンのあいだでは「14」が死亡やゲームオーバーの代名詞として定着した。

死ぬときは、本当にあっさりと死ぬ……。
1980年代のゲームブック黄金期の名作たちを強烈にリスペクトしている本作は、この「いつでも死ねる理不尽さ」を意識的に残しているのだろう。

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しかし、本作は“死の直前からやりなおせる機能”も備わっており、現代に沿った遊びやすい形式も残されているため安心だ。さっそく、私は直前からやり直した。

ただ、西村氏のコラムによると「ゲームブックで死を迎えたら必ず1ページ目からやりなおす鉄人のような人を尊敬している」とのこと。選択肢としては、はじめからやりなおすというストイックすぎる選択も配置されている。

救済措置を残しつつ、ゲームブック黄金期の理不尽さも忠実に再現する。このバランス感覚こそが、長年ゲームを作り続けてきた職人の手仕事ならではのものだろう。

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イラストが綺麗すぎる。「カプコンやヴァニラウェアで背景チーフを務めていた」という実績が裏付けられる

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ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_012

ある程度物語を進行させるとムービーシーンも挟まれるのだが、ここで圧巻の手描きイラストがこれでもかと登場する。一枚一枚の絵に重みがあり、ページをめくるたびに「これも手描きなのか」と唸らされる。

広大な大陸を見下ろす地図や、街並みから行き先を選ぶ画面などのイラストからも、これから壮大な冒険が幕を開ける雰囲気がビシビシと伝わってきて、ただ眺めているだけでもわくわくさせてくれる。

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いざ街に繰り出してみると、ゴロツキに襲われている一般人がいたので戦闘開始。戦闘が終わるとゴロツキは急に顔色を変えて、「あんた強いな〜!俺の負けだ!この本をやるよ」と”暗黒城の魔女”の冊子を差し出してきた。

なんとこの場面、体験版のプレイ終了を告げる専用のイラストまで用意されているのだ。それも手描きなのが凄すぎる。

ここまで約30分。ものすごい情報の密度だ。

ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_014
満面の笑みで冊子を差し出してくるゴロツキ。笑顔なのに奥のひとはまだ掴まれているのがシュール

ここまでの体験のほぼすべてがほとんどひとりの職人の手によるものだということに驚きを隠せない。

先述したように、手描きのイラストは300枚以上、テキストはなんと“30万字以上”にのぼる。しかも、音楽の担当は『FFタクティクス』『十三機兵防衛圏』などの楽曲も手がけた崎元仁氏だというのだから、あまりにも豪華すぎる。

筆者にとって、ゲームブックの「指定のページまでめくる作業」はいわばロード時間に等しいものだった。

本作はデジタルの強味を活かしてそこをワンクリックで解決しており、「ぶ厚い本のページをめくっている感覚」を味わえるよう再現されている。

もしこの作品が本当に実物の紙の本として出版されていたら、とんでもない分厚さの鈍器になっていたことだろう。

ヴァニラウェア出身の職人が畑を耕しつつ6年かけて作ったゲーム『暗黒城の魔女』は“老舗の味”がした。派手さはないが、一口食べればその奥深さが身にしみる──読み手の選択で結末が変わる、「遊べる本」のようなRPG_015

味わえば味わうほど手仕事の味がする本作は、2026年7月9日に発売予定だ。

記事執筆時点では、Steam Nextフェスにて体験版を配信中。無料でゲームの冒頭30分を遊べるので、本作が気になった方はぜひその手に取ってページをめくってみてほしい。

編集・ライター
『MOTHER2』でひらがなを覚え、ゲームと育った生粋のRPG好き。キャラメイクや物語が分岐するTRPG的な体験を好む生態。『Divinity: Original Sin 2』の有志翻訳を経て、『バルダーズ・ゲート3』を独力で全訳し完走。『ゴースト・オブ・ツシマ』の舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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