ざっくりとスペックを調べてみた。Steamのゲームをとりあえず全部遊びたい人へ向けた、「Steam Machine」という現実解
さて、いよいよここからは、Steam Machineの性能について言及していこう。Steam Machineで気になるのは、やはりゲームにおける実際の使用感についてだろう。
ここに関してあらかじめ申し上げておくと、スケジュールの関係もあり、残念ながら徹底検証を含めた詳細なガジェットレビューのようにならないことだけは、何卒ご理解をいただきたい。
基本的にはSteam Machine本体設定を大きく変更することなく、幾つかのゲームをプレイした上での感想ベースだ。なお、筆者が使用しているモニターが60Hzまでという環境の制約もあって、今回遊んだゲームのフレームレートはすべて「60FPS」にて固定している。
最初に感想から述べると、Steam MachineはValve社が謳う“Steamライブラリの全ゲームをプレイするパワー”を備えつつも、「それを実現可能にするためのチューニングがデフォルトでおこなわれているのではないか」といった印象を受けた。
有り体に言えば、高負荷なタイトルも難なく遊べるよう、Steam Machine本体側で、ゲームの解像度を「1920×1080(フルHD)」にデフォルト設定している。
Steam Machineを起動してから、最初に遊んだゲームは『PRAGMATA』だ。
※以下のスクリーンショットはすべてSteam Machine実機からキャプチャーボード経由で取り込んだものです。
ゲーム側の設定画面によれば、今回借りたSteam Machineのグラフィックスメモリ(VRAM)は「8GB」となっていた。
最近のハイエンドなゲームをプレイする上では、ややカツカツな印象を受けるものの、AMD製GPUならではの「FSR」に代表されるアップスケーリング機能とゲーム側の各種設定と組み合わせることで、描画負荷を抑えながら見た目の満足度を保つことができる。
限られたグラフィックスメモリでも現実的なパフォーマンスを引き出しやすいというわけだ。
実際、『PRAGMATA』はデフォルトでも高めの画質設定にされていたが、ゲーム体験としてはなんら問題がなく実に快適なプレイをすることができた。冒頭部分だけではあるが、フレームレートの急激な低下も見られなかった。
この快適性は、Steam Machine側のデフォルト設定で、最大解像度がフルHDになっていたのも大きいと思われる。気になる人もいるだろうから補足すると、これに関しては、SteamOSのメニューからゲーム毎に「最大ゲーム解像度」を変更することが可能だ。
“最高画質”を求めるゲーマーなら、ゲーム側の負荷と相談しながら、好みに変えてみると良いだろう。『PRAGMATA』では、VRAMの制約がある中、2Kの画質を重視した環境設定でも、比較的リッチなグラフィックで遊べてしまった。
次に試したのが『Wild Assault』。本作は動物をモチーフとした亜人たちが戦う対戦型のサードパーソン・シューターだ。体毛がもふもふの動物たちが戦うタイトルであることと、多人数参加型のハイスピードなチームシューターであることを考慮すれば、それなりのスペックが要求されそうだ。
快適に遊べるデフォルトの推奨設定では、移動時に草むらや毛並み周りのジャギーがどうしても目立つものの、こちらもしっかり遊ぶことができた。ゲームがまだ早期アクセス段階という事情も絡みそうではある。
『Wild Assault』は一試合がおよそ20分間のゲームプレイで構成され、敵チームとの激しい銃撃戦が展開されるコアタイムにおいては、とりわけ多くのプレイヤーが画面内に表示される。当然本体への負荷も相応に大きく、フレームレートが瞬間的に低下する、いわゆる「引っかかり」は何度か発生した。
しかし、驚きなのは内蔵ファンの排気音が全く気にならないことだ。……ファン回っているよな?
不特定多数が一堂に会する多人数参加型のゲームである以上、ネットワーク環境に左右されて挙動に引っかかりを感じるというのも十分考えられる話だと思う。それでも、今回触った範囲では対戦ゲームを遊ぶ場合であっても、見栄えの品質を大きく損なうようなことにはならなった。
『モンスターハンターワイルズ』、『黒神話:悟空』もプレイしてみた。どちらも負荷の高いゲームとして知られている。『黒神話:悟空』の「推奨設定」では、画質レベル(グラフィック品質)「高」に設定されたが、このままではさすがにプレイが難しいと判断した。
推奨設定でベンチマークを回してみると、平均16FPSという結果だ。そこで「FSR3」のフレーム生成機能を有効にしてから再度ベンチマークを回す。すると、今度は平均26FPSを記録した。ゲーム側の設定を調整してパフォーマンスを優先すれば遊べなくはないだろう。画質レベル「中」に置き換えればなおのことだ。


『モンスターハンターワイルズ』のデフォルト設定も、グラフィックプリセット「高」となっている。こちらは『黒神話:悟空』と違い、約60FPSの快適なハンティングアクションを楽しむことができていた。無論フレーム生成機能は込みだが、これを切ったとしても許容できる範疇の滑らかさが確認できた。
『モンスターハンターワイルズ』は、ゲームの発売以降、最適化が行われ続けてきたこともあり、その恩恵もきっと大きいのではないかと思う。フレーム生成機能を使えば設定周りの余裕が出るため、もう少し贅沢できそうではある……。
一通り遊んでみたところ、ハイエンドなAAAタイトルもある程度の妥協を許容できれば、現実的なクオリティを保ったままでPCゲームを楽しめる。
「Steamに存在するすべてのゲームをプレイできる」というのもあながち誇張ではなく、ユーザー側の工夫次第で十分あり得る話だと感じた。
Steam側がデフォルト設定をフルHD解像度にしているのは、「どんなゲームも手軽に遊べる推奨の基準」といったニュアンスを含んでのことなのかもしれない。
また、SteamではAAAタイトルに限らず、インディーゲーム界隈が盛況ぶりを見せている。AAAが遊べるレベルのスペックであるのなら、そうしたインディーゲーム群が遊べないわけはない。。
家庭用ゲーム機は、いつ誰が購入して遊んでも、皆が同じ体験で楽しめるという遊びの価値を等しく受けられるものだ。一方でPCは、家庭用ゲーム機以上のことができる反面、性能やユーザーの求める環境がそれぞれで異なる上に、市場では常に新しい製品が登場してくる。
「⚪︎⚪︎を遊べる最適なスペックはなんだろう」
「ハイエンド過ぎるゲーミングPCを買うのもなぁ」
「少し待てば最新のグラボを積んだPCが……」
「一昔前のゲーミングPCでも良いのでは?」
こうしたゲーミングPCにまつわる悩みが悶々と続く気持ちを、筆者は痛いほど良く知っている。かつて価格ばかりを気にしてしまい、BTOパソコンの構成で中途半端に妥協したところから綻びが生じ始めて、結局無駄な出費を費やしたことがある。
恐らくSteam Machineは、こういったゲーミングPCごとの性能差で迷い続けるユーザーたちの最適解になるのではないだろうか。
“とりあえず購入しておけばSteamのゲームは全部遊べる”
ただゲームを遊びたいだけなのに、「どのPCを買えばいいのかわからない」と悩んでしまうユーザーに対する最強の売り文句だ。なぜもっと早く出してくれなかったのかと、Valve社に問い詰めたいほどだ。前述の悩みを抱え、ゲーミングPCの購入に踏み切れない人にとっての最良の選択肢であると思う。
「なんでSteam Machineは真四角なの?」など、気になる疑問を開発チームに聞いてみた
──なぜ、Steam Machineは真四角なんでしょうか?
Steam Machineチーム:
Steam Machineの筐体デザインは、この性能帯において可能な限りコンパクトで、熱効率に優れたデバイスを目指すという目標から自然に生まれました。
設計上、単一のファンと冷却モジュールを採用する必要があり、それらのコンポーネントを最も効率的に配置できる形状として、自然とキューブ型のフォームファクターにたどり着きました。
──Steam Machineを使用していて、ファンが非常に静かなことに驚きました。一体どのようにして、静音性と排熱能力のバランスを取っているのでしょうか?
Steam Machineチーム:
静音性を高めるうえで最も重要なのは、ファンの回転数をできるだけ抑えることです。しかし、十分な風量も確保する必要があるため、ファンと冷却モジュールは可能な限り大きく設計しました。
実際、Steam Machineの内部スペースの大部分はファンと冷却モジュールで占めています。その結果、コンパクトなサイズを維持しながら、非常に静かな動作を実現しています。
──フロントパネルや、OSをインストールして自由に使える機能など、ユーザーに対して、拡張性の自由度を残した理由はなんでしょうか?
Steam Machineチーム:
私たちは、Steam Machineを購入された後は、ユーザーの皆さんに自由に使っていただきたいと考えています。PCゲーマーの多くは、ソフトウェアやOS、周辺機器、さらにはケースデザインまで、自分好みにカスタマイズして楽しんでいます。
そうした考えから、ソフトウェア面では制限を設けておらず、独自のOSをインストールすることも可能です。また、ハードウェアについても、ユーザー自身によるカスタマイズや修理をできるだけ行いやすいよう目指し、設計しました。
一般的なMini-ITXケースほど簡単に拡張や改造ができるわけではありませんが、SSDの交換やコネクタの修理といった比較的よく行われる作業については、比較的容易に行えるよう配慮しています。
一方で、Steam Machineの修理やカスタマイズを行う際には、事前に適切な手順を確認し、十分注意して作業していただきたいと考えています。修理、カスタマイズ内容によっては、専門家に任せることをおすすめする場合もあります。
──ゲーミングPCはCPUやGPUなど、新製品の投入スパンが早く、移り変わりの激しいハードウェアです。そうした中で、Steam Machineのゲーミング性能を決める基準になったものはなんでしょうか?
Steam Machineチーム:
私たちは、Steam Machineを設計するうえで、できるだけ多くのSteamゲームを快適に楽しめる性能と、より多くの方に手に取っていただける価格帯との両立を重視しました。これらの目標とのバランスを考慮した結果、現在の仕様にたどり着きました。
当社のSteamハードウェア調査でも、Steam Machineの性能は、現在の多くのユーザーが使用している環境を十分に上回る水準にあることが分かっています。(了)
インテリアに馴染むデザイン性、そしてどんなゲームもそつなくこなすことができる十分なスペック。「PCゲームが遊べる家庭用ゲーム機があれば最強じゃね?」と、多くのゲーマーが感じていたプロダクトが、そのまま形になって顕現したかのようである。
もちろん、「Steam Machineが“万能過ぎる”」とまでは言えない。
たとえば、高速通信が可能なUSB4は今や多くのパソコン製品に採用されてきているが、Steam MachineにはUSB4規格のポートは存在しない。
Thunderbolt、Oculinkといった高速通信規格も搭載していないので、eGPUによるグラフィックス処理性能のグレードアップを図れないのだ。ハードウェアそのものに高いポテンシャルを感じるが、現状、拡張性は限定的だ。
とはいえ、流行のインディーゲームからSteamでも配信されている人気の運営型ゲーム、さらに負荷の重いAAAまで網羅的にこれ1台で遊べるのは素直に感動ポイント。その性能がこのコンパクトさ、小ささで実現されているというのは、ひと昔前では想像もできなかったことだ。
スペックは十分、となると製品の販売価格が気になるところだが、ひとまず記事執筆時点では未発表のため脇に置いておくと、デザイン性は申し分ないし、Valve公式としては、PCとしての拡張・運用もOKというスタンスなのがかなり面白い。
やはり、正式発売後はユーザーコミュニティを中心に、どれだけポテンシャルを引き出せるかの話題で盛り上がりそうな予感がする。魔改造するユーザーとかいるんだろうなぁ。
PCというスタンスであっても、その設計思想はどこか家庭用ゲーム機的だ。
異質なのは、Mod文化がほぼ当たり前になっているPCゲーマー界隈の潮流を、このSteam Machineがそのまま製品としての強みに押し出してきたところだろう。ユーザー側に拡張する方向性を委ねているValve社の余裕というか、製品の思想を如実に感じ取れる。
PCゲーム同様にただバニラ(素の状態)で遊ぶのではなく、Modを入れて(拡張して)遊んで欲しいといった、意思表示なのだろうか。筆者は本製品に触れば触るほど、「良いな〜欲しいな〜」と、物欲が刺激され続けている……。













