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「セーラーウラヌスが本人すぎる!」と話題だが、あれは「セラミュ」であって「セラミュ」でない? 妻に連れられて「セーラームーン」ライブを見続けるライターがその歴史と魅力を解説

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日頃からテレビ批評を行い、ギャラクシー賞の選考委員を務めるほか、『タモリ学』『星野源論』(新潮社から6月17日発売)などの著書で鋭い人物評論を執筆している、ライターのてれびのスキマ(戸部田誠)氏

 電ファミでも原稿を執筆していただこうと打ち合わせをして、雑談で近況を聞いていたところ、ふと「そういえば昨日、妻に連れられてセーラームーンの舞台を見てきました」というのだ。聞けば、かれこれ約10年にわたり、公演があるたびに一緒に見に行っているという。

 夫婦で仲むつまじい様子にほっこりしながら、セーラームーンのミュージカル、通称「セラミュ」は超人気なんですよね──と質問したところ、「いま『ウラヌスが本人すぎる』と話題になってるのは、『セラミュ』であって、単純に『セラミュ』とも言えないんですよ」とのこと。
 え、あれって「セラミュ」じゃないんですか…? と質問すると、妻に連れられて通っているだけとは思えないほど、その歴史と魅力を語ってくれたので、途中で「それ、原稿に書いてください!」と思わずお願いしてしまった。

 ということで、『セーラームーン』にまったく触れてこなかったライターが、「セラミュ」を見るようになったきっかけと、妻に連れられて10年以上見続けたという絶妙な距離感(本人いわく「前のめりではない」)から語られる、「セラミュ」の歴史と魅力をお読みいただきたい。

編集/森ユースケ(路地裏書店)
文/てれびのスキマ(戸部田誠)

セーラー戦士が眼の前に並ぶ姿はまさに壮観

 
 
 
 
 
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「セーラーウラヌスが本人すぎる!」

 品川プリンスホテル「クラブeX」での「美少女戦士セーラームーン -Shining Theater Shinagawa Tokyo-」でウラヌス/天王はるかに扮した梶川愛美の写真や動画がSNSに投稿されると、瞬く間に話題を席巻した。

 “本人すぎる”のは、彼女だけではない。Wキャストである田中志奈も引けを取らず、2018年には真逆ともいえるキャラのセーラームーン役を演じたにもかかわらず、ウラヌスそのものに“変身”しているし、他のキャラクターを演じるキャスト陣も驚くほど完成度が高い。

 
 
 
 
 
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 ウラヌスがいることでわかるように、今回は5戦士(セーラームーン、マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナス)+タキシード仮面だけではなく、ちびムーンや、いわゆる外部太陽系戦士(ウラヌス、ネプチューン、プルート、サターン)も登場する。最初は5人で始まり、期を重ねるうちに増えていくのが常のため、最初から10人が揃っているのは珍しくて貴重だ。
その10戦士たちが全員並ぶ場面は、壮観。あまりに美しく、カッコいい。背丈のバランスにこだわりを感じる。

この「Shining Theater Shinagawa Tokyo」のライブは、セリフを最小限に抑え(常時、外国語の字幕が出る)、音楽とダンスアクションで魅せるノンバーバルなショー。
長い歴史のある「セラミュ」のノウハウを活かしつつも、海外向けにつくられた「Super Live」を色濃く継承しているハイブリッドなショーといえるだろう。照明を巧みに使った演出や映像表現も洗練されている。
 僕は1階席最後列で観劇したが、それでも距離は驚くほど近く、表情までハッキリ見えるうえ、キャストが目の前を通ることもある。彼女たちの“必殺技”を間近で浴びるような、凄まじい臨場感だった。

 何よりもスゴいのは、「常設劇場」だということだ。そのため入った瞬間から至るところにセーラームーン・モチーフの装飾や展示があふれる空間。トイレのピクトグラムまでムーンとタキシード仮面! 写真撮りまくり。入場特典やキャストのお見送りなどホスピタリティも充実しており、幸せな気分にどっぷり浸かることができる。

 そして、週1日程度の休館日を除いて、ほとんど毎日2~3回の公演をおこなっており、その気になれば、いつでも観に行けるのだ!(当初は2期までとアナウンスされたが、3期=3月末まで継続することが発表された)
 と、興奮気味に振り返っている僕だが、恥ずかしながら『セーラームーン』の原作や90年代に放送されたアニメ版はまったく通ってこなかった。

『ベルバラ』『パタリロ』に命を救われたという妻

 アニメ自体は大好きなテレビっ子だったが、当時はまだ宮崎勤事件の影響が色濃く、世間の“おたく”への風当たりが強かった時代。思春期真っ只中だった中学生の僕は、ある種“潔癖”なところがあった。客観的事実がどうかは別にして、パンチラアクション(「あれはレオタード」だと後で知った)が目立っていたように感じた僕には抵抗感があり、自然と距離をとっていた。

『セーラームーン』のミュージカル「セラミュ」の魅力と歴史|妻に連れられて10年以上見続けたライターが解説_001
魔夜峰央によるギャグ漫画で、1978年から「花とゆめ」(白泉社)にて連載。現在はスマホアプリ「マンガPark」にて不定期連載中。2026年現在は104巻まで発刊され、累計発行部数は2500万部以上の超ロングセラー。2016年からは何度もミュージカルとして上演され、主演の個性派俳優・加藤諒をはじめ、キャストがキャラクターに似ていると話題に。

 そんな僕が『セーラームーン』を見るきっかけは間違いなく妻。彼女は、『セーラームーン』『ベルサイユのばら』『パタリロ』に命を救われたと言って憚らない人。彼女の強い勧めで、半ば強制的に鑑賞したのがバンダイ版の「セーラームーンミュージカル」(通称:「セラミュ」あるいは「セラミュー」)のVHSビデオだった。『セーラームーン』の入口が「セラミュ」というのは、おそらく希少だろう。

 以降、北川景子がセーラーマーズを演じたことでも有名な小林靖子脚本の実写ドラマ版(2003~04年、CBC/TBS)、「20周年プロジェクト」の一環でリブートされたアニメ『セーラームーンCrystal』も自然と一緒に見ることとなった。

 そして、同プロジェクトにより“復活”したネルケプランニング版のセラミュ(2013年~)には、乃木坂46版を含め、毎公演最低1回は連れられて観劇した。「Super Live」版も東京プレビュー公演に行ったし、聖地・麻布十番の専用シアターでの「SHINING MOON TOKYO」のショーも体験することになった。

 そうして実感するのは、長い歴史で紡がれてきた進化と変化。そして、決して「前のめりなファン」ではない僕の目にさえ、それが日本のエンタメ界においていかに重要かを、見るたびに思い知らされた。

 精緻な検証は、専門的に観続けてきた識者に譲るとして、一定の距離がある僕の視点から、「セラミュ」から「Shining Theater Shinagawa Tokyo」に至るセーラームーン・ライブ・ショーの実感を、ここに書き記してみたい。

SMAPから始まったともいえる“2.5次元”の歴史

「おお、多部未華子(2代目セーラースターヒーラー)も出てる!」「城田優(7代目タキシード仮面)は、浦井健治(同6代目)のすぐ後を引き継いでタキシード仮面をやったんだ。すごいリレー!」「なんで木村多江(初代フィッシュ・アイ)が玉乗りをしてるんだ!」

 若手俳優の育成の場としても機能していた「セラミュ」は、いまやトップ俳優となった彼らの初々しい姿を観ることができて、あまりにも貴重だ。
 そんな「セラミュ」が、いわゆる「2.5次元ミュージカル」の先駆けであることに異論は少ないだろう。

 まず、1991年、「バンダイスーパーミュージカル」として『聖闘士星矢』がSMAPをメインキャストに据えてミュージカル化された。その流れで、同じくアイドルグループの桜っ子クラブさくら組のメンバーを5戦士に起用し1993年からスタートしたのが、バンダイ版「セラミュ」だ。初代セーラームーン/月野うさぎ役の大山アンザ(現・ANZA)は、その象徴として現在もファンから愛されている。

 この頃の衣装はお世辞にもクオリティが高いとはいえず、ウィッグも含め“コスプレ”感が否めない。また、ヒーローショー的な演出も相まって、“子供向け”の色合いが濃かったため、正直、観ていて気恥ずかしい場面もあった。
 だが、『聖闘士星矢』が単発に終わったのに対し、「セラミュ」は、2005年まで13年もの長きにわたって継続。演技・衣装・演出のすべてがブラッシュアップされ、着実にファン層を拡大していった。

「La Soldier」のイントロで血が騒ぐ体になってしまった

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画像はあなた/青春の愛 | 小坂明子公式サイトMUCALより。1973年に発売したデビューシングル「あなた」が200万枚を超える大ヒットを記録したシンガーソングライター・小坂明子。「美少女戦士セーラームーンS」のエンディングテーマ「タキシード・ミラージュ」の作曲をはじめ、「セラミュ」関連の楽曲製作と音楽監督などを務めてきた。

 特筆すべきは、音楽を担当した小坂明子の存在だ。
小坂明子といえば一般的には「あなた」をヒットさせた歌手というイメージかもしれないが、“セラミュの母”ともいえるカリスマ。キャスト陣への歌唱指導も担っていたようで、城田優が「恩人」と公言するなど、今でも慕われ、彼女のイベントには、現在は引退したキャストまで集まったりもしている(チケットは即完!)。
 小坂は、バンダイ版「セラミュ」の音楽の作曲をほぼ一手に引き受け、全456曲もの楽曲を制作した。中でも象徴的な曲が公演を通したテーマソング「La Soldier(ラ・ソウルジャー)」だ。

 セーラームーンの主題を見事に歌ったこの名曲は、アニメ『美少女戦士セーラームーンR』にも“逆輸入”。ネルケ版のセラミュでも乃木坂版以降は、本編のあとに設けられたライブショーのときに、ほとんど毎回のようにアンセム的に歌われ、最高潮に盛り上がる。現在の「Shining Theater Shinagawa Tokyo」(第1期)でもライブショーパートで歌われている。もうこのイントロが流れるだけで、血が騒ぐ体になってしまった。

『セーラームーン』のミュージカル「セラミュ」の魅力と歴史|妻に連れられて10年以上見続けたライターが解説_003
画像は「美少女戦士セーラームーン Prism On Ice」:美少女戦士セーラームーン 30周年プロジェクト公式サイトより。ロシア出身のアイススケート選手・エフゲニア・メドベージェワは、2018年の平壌五輪で銀メダル、2017、2018年の世界選手権で2連覇を果たしたレジェンド。ジブリ作品など日本のアニメ、特に「セーラームーン」が好きだという。「Prism On Ice」は2023年にも振替公演が開催予定であったが、世界情勢やコロナ禍の影響により結果的に中止となっている。

 ところで、いまだにとても残念なのは、2020年に「Prism On Ice」と題したアイスショーが計画されるもコロナ禍で延期になった末、世界情勢の変動で幻になってしまったこと。
何しろセーラームーン役には、ロシアのエフゲニア・メドベージェワが決まっていたのだ。彼女は、エキシビションでセーラームーンに扮した演目を披露するなど、ファンを公言していただけに、彼女にとっても無念だったに違いない。

 しかも、演出の平光琢也と音楽の小坂明子という、セラミュの基礎を築いた黄金コンビが“復活”するはずだったのだ。さらに、初代ムーンのANZAが、クイーン・セレニティ役で登場することも発表されていた。

女性がタキシード仮面を演じることで“シスターフッド”性が鮮明に

 話を「セラミュ」に戻すと、2013年、『ミュージカル テニスの王子様』(テニミュ)などを手がけ「2.5次元ミュージカル」という言葉を生んだネルケプランニングが、「セラミュ」を復活させることを発表した。
 脚本・演出に平光琢也を起用したこともあってか、バンダイ版でのノウハウが引き継がれたのだろう、ムーン役の大久保聡美をはじめとする5戦士は最初から驚くほどハマっていた。特にジュピター役の高橋ユウはまさに「本人すぎる!」クオリティ。衣装や小道具の完成度も格段に上がっていた。

 また、バンダイ版と大きく変わったのが、タキシード仮面を始めとする男性キャラクターも、すべて女性が演じたことだ。この変更は物議も醸したが、個人的には大正解だったと思う。自立した女性たちが共闘する“究極のシフターフッド”である本作の主題がより鮮明になった。

 タキシード仮面/地場衛役には元・宝塚歌劇団の男役トップスターの大和悠河がキャスティングされたため、見た目もまったく違和感がない。
 ちなみに新作アニメの主題歌を歌った縁もあり、ネルケ版第1作の主題歌をももいろクローバーZが担当し、劇中でもメンバーが日替わりで映像出演。本編終了後、サプライズで登場する回もあった(ちょうど、僕が行った回に登場して、初めて好きになったアイドルだったから興奮した)。

 そうした座組だったため客層は、バンダイ版「セラミュ」好きのコア層を含む『セーラームーン』ファンとアイドルファン、そして宝塚ファンの三者にわかれていた。それぞれの観劇の流儀に違いがあり(たとえば宝塚ファンは、タキシード仮面=大和悠河が舞台に登場すると拍手する)、それに戸惑いつつも次第に互いにすり合わせていく様が興味深かった。

 翌年の第2弾公演では、ちびうさ(久家心/神田愛莉のWキャスト)やセーラープルート(石井美絵子)らも物語に登場。ここで往年のファンを喜ばせたのは、「振付」に竹中夏海が加わったことだ。数多くの人気アイドルグループの振付を担当していることで知られる振付師だが、『セーラームーン』の大ファンとしても有名だ。そして何より、実は「セラミュ」出身者。子役時代にバンダイ版「セラミュ」にちびうさ(95年夏)として出演しているのだ。

 その後、振付師と転身した竹中。やがて復活した「セラミュ」に、それも、ちょうどちびうさが物語に参加し始める年に振付に起用されこの舞台に帰ってきた。“月の光に導かれ”たような時を越えた巡り合い。そこに“宿命”を感じずにはいられない。振付には当時のダンスのオマージュもさりげなく忍び込まされていた。

セーラームーンあるある「洗脳されがち」

「25周年プロジェクト」が始まると5戦士のキャストを乃木坂46のメンバーに一新した、いわゆる「乃木坂版」に。演出もウォーリー木下に変わり、プロジェクションマッピングをふんだんに使い、「おお、こういう演出もやってほしかった!」と思えるような、より現代的なアクション表現を生み出していた。

 脚本・演出に三浦香を迎えた新シリーズは、より音楽劇の要素が大きくなっていく。
それを可能にしたのが、わかりやすいストーリー展開だろう。長い歴史の中で“型”のようなものができあがっていた。

 まず、うさぎたちが何かに夢中になるが、それは敵側の“罠”。やがて誰か(大抵、タキシード仮面)が洗脳され、絶望的な状況になる。そこから彼女たちはいかに立ち上がるか──。『セーラームーン』あるあるをひとつだけ言うならば、「洗脳されがち」だ。
そのシンプルさゆえ、セリフが少なくても理解でき、彼女たちの一挙手一投足に没頭できるのだ。それでいて「愛」や「赦し」「宿命」といったテーマが重層的に絡んでくるので深みもある。

 それを極めたのが、2018年から上演された「Super Live」。象徴的なのは、最初に演出を担ったのが、ダンサー・振付師であるTAKAHIRO(上野隆博)であること。始めから海外ファンにも向けたセリフを最小限にしたノンバーバルに近い音楽とダンスアクション中心のパフォーマンスショーだ。音楽は、『セーラームーン』好きを公言していたヒャダインが務め、ファンのツボを心得た選曲&アレンジで魅了した。東京プレビュー公演の後は、フランスやアメリカ、台湾、イギリスなどを巡り、日本にも凱旋した。

 2019年には“聖地”麻布十番にショーレストラン「美少女戦士セーラームーン-SHINING MOON TOKYO-」が誕生。「Super Live」の系譜が色濃いノンバーバルなショーで、国内のみならず海外からの観客も集めたが、コロナ禍の影響で惜しまれつつ閉店。
そして、今年4月から、「SHINING MOON TOKYO-」を引き継ぐシアターとして、「Shining Theater Shinagawa Tokyo」がオープンしたのだ。冒頭で触れた、「セーラーウラヌスが本人すぎる!」と話題になったのは、このショーのことだ。これまでのノウハウを凝縮し最適化したものとなっている。

「転生」を繰り返し、また「出会う」ことができる。
 それを描き続けてきた『セーラームーン』。その物語を体現するかのように、セーラームーンのショーは生まれ変わりながら、進化を続けてきた。その歴史は、果てしなく麗しい。

ライター
毎日ウルトラ怪獣Tシャツを着ているフリー編集・ライター。インドネシアの新聞社、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。意外なテーマをかけ合わせた企画とインタビューが得意。守備範囲は政治・社会からアイドル、スポーツ、お笑いなどエンタメまで。30歳を超えてなお、相変わらず「マリオ」「ドラクエ」「パワプロ」「スパロボ」「ロックマン」の最新作をプレイしている現状に、20年前から精神年齢がまったく変わっていないことを痛感している。
Twitter:@mori_yusuke

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