一度のプレイですべての要素を味わい尽くせない。しかも誘惑だらけ━━それが“無限に味がする”体験を生み出す
なぜ、『スターフォックス64』は傑作なのか?
原作や3DS版を経験した人であれば、様々な意見があがるだろう。
やさしすぎず難しすぎない絶妙な難易度、変化に富んだ16のステージ、事前知識不要で分かりやすいストーリー、時代劇のような野暮ったさが印象に残るセリフと、それらを放つ個性的なキャラクターたちなどなど。
……え? 「振動パック」でシビれちゃう? た、たしかにそのパイオニアでもある……。

だが筆者が最大の魅力にして醍醐味だと主張したいのは、序盤でも言及した「無限に味がするつくり」だ。

本作は最終ステージ「ベノム」を目指し、複数のステージを順番に攻略していく。ステージの総数は最初の「コーネリア」と最後の「ベノム」も含めて全16ステージ。しかし1周で挑めるのはそのうち7ステージのみで、残る9ステージは通過できないステージとして取りこぼされる。
これを引き起こすのが、ルート分岐のシステムだ。
本作の全16ステージのうち、1プレイで遊べるのは7ステージだけだ。プレイヤーの行動や決断に応じて進むルートが枝分かれしていき、進めないステージが必ず生まれる。1つ手前のステージであればやり直す選択も取れるが、2つ以上前のステージは不可能。やり直したければ本編を最初から始めるしかない。

まさに“一期一会”の仕組みである。1回のプレイではすべての要素を体験しきれないから、7ステージを通り終えるたびに「あのステージにはどうすれば行けたんだ?」「あそこに行ってみたい!」という興味とやる気が湧きやすい。
ルート選択で取り逃がしたものが気になるあまり、気づけばまた最初からスタート。しかし、その旅路もまた「一期一会」。すべてを回収することは叶わない。そうしてまた、誘惑に抗えないまま再び最初から出直してしまう……という無限ループ。
そんな沼る仕組みが強烈ゆえに、このゲームは「無限に味がする」のだ。
しかも、分岐はステージ内部にも存在する。
行動次第で対決するボスが変わったり、右か左かの選択で出現する敵や展開が変わったりもするのだ。なかには普通に進めれば戦闘になるボスを直前に一撃で倒してしまうこともできるような分岐もある。「逆に行ったら何がある?」、「一撃で倒すにはどうすれば?……あれか!」という関心がとめどなく広がっていくのだ。

こういった再プレイ意欲を強烈に刺激する仕掛けがてんこ盛りで、プレイヤーに「もっと挑んでみない?」と誘惑してくるのである。しかも慣れれば1周30〜40分ほどでクリア可能と、再プレイの負担も重くない。ステージクリアごとのオートセーブにも対応(※原作のNINTENDO 64版はセーブ不可だった)していて、スキマ時間にちょっとだけ遊ぶ……みたいなスタイルでも楽しめる。
しかし、全16ステージを訪問しきれたとしても、それで完全に終わりにはならない。
今度は、「勲章」集めなる挑戦が始まるのだ。
勲章というのはステージごとの目標を達成すると授与される「証」。これを全ステージで達成すると、いろんな“いいこと”があるのである。
勲章を得たステージは「すべてをやり尽くした!」という達成感を感じさせる雰囲気を出すようになるので、自然にプレイヤーのコンプリート意欲を刺激する。同時に、勲章獲得に大きく絡む撃墜数の限界に挑むスコアアタックの楽しさにも気づかされて、虜になっていく。
ハイスコアのカギとなるのは「誘爆」だ。アーウィンの通常攻撃たるレーザーは、対応するボタンを長押しするとエネルギーがチャージされ、もう1回ボタンを押すと命中時に小さな爆発を引き起こす「チャージショット」が放たれる。この爆発にターゲットである敵の周辺にいる別の敵も巻き込まれると「誘爆」の判定となり、追加ヒットボーナスが発生するのだ。
これを決めれば決めるほど、大きなヒット数を叩き出せるようになるのだ。この仕組みに気づくと、敵が重なる瞬間を狙ってチャージショットを放つのが常になっていく。そこまで来るともう、勲章そっちのけでスコアへの挑戦に没頭するようになって、「止められない止められない」に陥ってしまうのだ。

再プレイへの誘惑はこの限りではない。なんとストーリーにも、特定の行動を取らなければ聞けないセリフ、見られないキャラクター同士のやり取り、果ては特殊なイベントまである。その差分を確かめたいとなった時もまた……「沼へいらっしゃい」である。
冒頭で言及したように、本作にはローグライトのようなランダム要素はない。だが、ルート選択による一期一会、そしてルートごとの変化の豊かさによって、何度遊んでも絶妙に違う味がする。
これが、本作を「無限に味がするゲーム」たらしめる理由だ。最低でも全ステージを見届けようと動き出してしまったら最後。その底知れぬ魅力を、十二分に思い知らされることとなるのだ。
傑作のリメイクはやはり傑作
総じて、本作はリメイクに限らず、ひとつのシューティングゲームとしても、キャラクターコンテンツとしても申し分のない仕上がりだ。
難易度も操作に慣れていない初見時は少し大変だが、慣れた後は遊ぶたびに上達していく自分自身に快感すら覚えるという、原作由来の絶妙なバランスが見事に再現されている。
初見プレイヤーへの配慮から、今回は必ず基本操作を学ぶトレーニングモードから始まる作りになっているのも見逃せない。原作と3DS版では任意でいきなり本番開始も可能だったが、初見には不親切な面もあったため撤廃されたかたちだ。難易度「イージーモード」も用意されているので、ゲーム全体の間口は過去のリメイク作たる3DS版以上に広がっている。
なお、本作には本編「ストーリーモード」のほかに、オンライン対応の「バトルモード」も用意されている。ただし今回の先行プレイでは当該モードにロックがかかっており、遊べなかったことから本稿では言及を割愛する。
いずれにしても、ゲーム自体の完成度はベースとなる原作自体が傑作ゆえに盤石。グラフィック全般の刷新、ストーリーの強化、常時60fpsによる操作感の向上も相まって、決定版とも呼べる仕上がりになっている。
繰り返しになるが、『Star Fox』を名前しか知らないかたや、『ザ・スーパーマリオギャラクシー ムービー』でのフォックスの活躍に惹かれたかたにも強くオススメできる。原作・3DS版をプレイ済みの人も、文字通り解像度が上がったストーリーは一見の価値がある。
シリーズ全体では実に10年ぶりの作品となるこの『Star Fox』。任天堂の著名タイトルの中でも、とりわけ複雑な軌跡を描いてきたシリーズだが、願わくば本作を機に、フォックスたち「スターフォックス」の新しい活躍と歴史が紡がれていくことを祈りたい。

『Star Fox』は……いいぞ。






