ゴールした瞬間に「もう一周……」と思わせてくれる、タイムアタックゲーム独特の魅力。一人称パルクールをひたすらこなす作品『VHOLUME』の体験版では、この感触をあらゆる場所で体感することができます。
何より洗練されている部分は、移動の圧倒的な心地よさ。始めから凄まじい速度で地上を進み、壁を蹴ったり走ったり、ときにはスライディングを織り交ぜて、走る・飛ぶ・登る・滑るをつなげて廃墟の巨大都市を駆け抜けていく。本作は各マップのゴールまでのタイムを縮めていくゲームですが、隅から隅まで見て回りたくなる探索の舞台としての魅力も兼ね備えている、素晴らしいマップ造形もあわせ持ちます。
現在はSteamで体験版が配信中で、今回は収録された全4マップをプレイしました。結論を言うと、走っても寄り道しても、とにかく時間が溶けていく。ひたすら爽快感溢れるゲームプレイ体験となりました。
「この壁、ちょっと高くない?」──それが超えられた瞬間、街のすべてが道になる
まず繰り返し伝えたいのは、素の移動がとにかく気持ちいいこと。そしてその気持ちよさは、“操作を覚えるほど増していく”点が特徴です。落ち着いたアンビエントな音楽を背に、細い足場を連続で飛び移る。すると「タタタタン」とリズミカルな足音が鳴り、心地よく「走り抜けている」感覚を常に感じられます。巨大で、夢の中のようで、どこか見覚えがあるような……そんな無機質な空間を、疾走感溢れる音とともに駆け抜けるだけで、妙に心が落ち着いてきます。
最初のほうは、このスピードに振り回されました。細い足場に飛び降りるつもりが、勢い余って通り過ぎてしまうし、慌てて戻ろうとしたら、今度は戻りすぎて落ちる。気持ちよさより先に、着地の難しさを感じたのも事実です。
感覚の変化がおとずれたきっかけは「壁」でした。本作の壁は、一瞬だけ蹴って跳んでもいいし、少しのあいだ走り続けてもいい(数秒間滞空できます)。この使い分けができてくると、動きが途切れず、「グッと」スムーズに進めるようになります。
道中には「この壁、ちょっと高くない?」「この距離、ちょっと遠くない?」と思わずにはいられない場所が出てきます。ですが、何度も飛んで落ちてを繰り返すうちに、横の壁をうまく使って勢いと高さをつけてみると、越えることができました。
この技術は、正規ルート以外の道を切り開く方法としても使うことができます。それに気づいた瞬間、走りの選択肢が一気に広がって、走ることそのものがより楽しくなっていきました。
壁の使い方を覚えた瞬間から、この不可思議なスペースの全てが「走れる道」に様変わりするのです。
発見の1周目、上達の2周目。だから“もう一周”が止まらない
走っているあいだ、頭に浮かぶのは「ここ、もっとスムーズに行けそうだな……」という感触です。
1周目は手探りです。どこをどう進めばいいのか探しながら走るので、ゴールまでのタイムは基本的に遅いです。そのかわり、「こんなところに道があったのか」という発見を次々にしていきます。
そしてゴールした瞬間、頭に浮かぶのは、さっき引っかかったあの曲がり角(あるいは柱、あるいは坂、あるいは……)。1周目は手探りで時間をかけてしまったけれど、次は絶対に早く越えられるのを“手がわかっている”ので、ついリトライしたくなってしまいます。
2周目以降は、別種の快感が待っていました。ルートを知っているぶん動きが途切れず、さっきまでの自分より明らかにスムーズに走れる。その上達は、記録されるタイムという数字でもはっきり返ってきます。発見の1周目、上達の2周目。どちらにも違う気持ちよさがあり、「もう一周だけ」の感覚を何度も味わえます。
20分かけて登った先に、何もなかった。それでも探索がやめられない
本作の恐ろしいところは、マップの作り込みがもたらす誘惑によって、時間が溶けることです。何周も走り込むうちに、タイムには関係のない脇道や、妙に作り込まれた建物の奥が目に入ってきます。「なんか上に変なスキマがある」「頑張ったらあの位置に届きそう」など、速く走るために覚えたコースの外側が、今度は「探索したい場所」に変わるのです。
この発想のきっかけは、とあるSteamレビューでした。どうやら本作には“隠しステージがある”らしい。通常、ゴールすると次のステージに進むことが出来るのですが、もしかしたら、マップのどこかに“別のゴール”があるのかもしれない。そう思い、探し当てたい一心で、コースを外れてマップを探し回りました。
結果から言うと、隠しステージを見つけることはできませんでした。ですが、ルートから外れた場所に落ちている、コレクション要素らしきアイテムをいくつか発見しました。もしかすると、複数個集めることで何かが解禁されるのかもしれません。

いちばん時間を奪われたのは、このエリアです。通常であれば下を抜けて終わりの場所ですが、正面上に“いかにも”なスキマと光がある。しかも、細い鉄塔を使えばギリギリ届きそうです。「ここ絶対アイテムあるよな……」と思い、壁走りや壁キックを駆使して、なんとか登ってみたところ……
何もありませんでした。
同じ場所をただ登る、それだけのことに数十分を浪費し、何も得られなかった。虚しい気持ちです。
ですが、試行錯誤の過程で、細い足場の使い方や壁キックをうまく使うことで上方向に距離を稼ぐ操作感を見出したり、本作特有の挙動を駆使して、無我夢中にトライアンドエラーを繰り返す面白さがありました。
そして、探索中には、思わぬ出会いもありました。通常は絶対に通らない離れた構造物にある、小さなスキマをくぐった先に、変な住人が佇んでいたのです(なんでこんなところにいるんだ?)。話しかけると、挨拶を返してくれる。コースクリアや要素の解禁には関係なさそうですが、制作者が隅々まで探索するプレイヤーの努力を肯定してくれたみたいで、なんだか嬉しい。ただ、暗がりにいるのでビビります。
一人称パルクールをこなし続ける『VHOLUME』体験版で遊べるのは4マップ(あるいはそれ以上?)となりますが、走り込むもよし、寄り道するもよしで、遊びの密度は想像以上でした。Steamでも執筆時点で98%が好評の「圧倒的に好評」と高く評価されています。また、ほかのプレイヤーと同じコースを一緒に走れるマルチプレイヤーにも対応しています。DEMO版はSteamにて無料公開中で、製品版の発売日は未定です。
タイムを縮める快感と、脇道の先の発見。どちらの先にも「ここ、もっとスムーズに行けそうだな……」「次は行けそう!」という次の一手が待っていて、気づけば時間が溶けている。この快感が加速する操作感とマップ造形を、ぜひ体験してみてください。






