【空想科学ゲーム読本:けものフレンズ特別回】すごーい! サーバルちゃんのガチ跳躍は高度1km以上!? さばんなちほーが誇る脅威のジャンプ力を科学的に分析してみた

 相当な盛り上がりでしたなあ、『けものフレンズ』

 原作であるスマホゲームがサービスを終了したにもかかわらず、終了直後から放送されたユルいアニメがじわじわ浸透。「見るとIQが下がる」と脱力する人々が続出した一方で、「実は、人類が滅亡した後の世界なのでは!?」などの深読みもできて、自由に楽しめるコンテンツだったのだ(アニメは2017年3月28日に放送終了)。

 舞台は、超巨大総合動物園「ジャパリパーク」。火山が噴出する神秘の物質「サンドスター」の力で、動物たちがヒトの女の子に姿を変えている。

(画像はニコニコチャンネル「けものフレンズ」より)

 「わーっ! すっごーい! たーのしー!」

 確かに、フレンズ(作中に登場するキャラクターたち)の言葉を聞いていると、脳がトロケそうになるが、動物に関してはきちんと科学的である。
 たとえば、アニメの画面にサーバルちゃんが登場したときには、「ネコ目ネコ科ネコ属 サーバル Serval Cat」と表記され、カバちゃんが登場したシーンでは「偶蹄目カバ科カバ属 カバ Hippopotamus」。ネコ目や偶蹄目(ぐうていもく)の上を示せば、どちらも「動物界 脊椎動物門 哺乳網」なので、かなり詳しい分類だ。

 また劇中では、実在する各地の動物園(海外の場合も!)のスタッフが動物の生態を説明してくれるなど、実はこれ、IQが下がるどころか、相当勉強になるアニメじゃないの?

 そのうえ動物たちの特徴も見事にツボを押さえて描かれているようなので、ここで検証してみよう。
 劇中、サーバルちゃんは目の覚めるような跳躍を見せるけど、実際どれほどジャンプしているのか? アニメを題材に考えてみたい。

※本記事は若干のネタバレを含みます。


イラスト/近藤ゆたか

サーバルちゃんのジャンプ力

 自然界のサーバルは、体長67~100cm体重8.7~18kg。猫をスラリと大きくしたような姿で、他のネコ科の動物より、体に比べて足が長い。大きな耳がピンと立ち、全身にヒョウのような模様がある。

 そのジャンプ力について、都立動物園の公式サイト「東京ズーネット」にはこうある。

 足が速く、木登りもじょうずで、強力な瞬発力とジャンプ力をもち、空中に飛び上がって鳥を捕らえることもできます。

 鳥さえも捕まえるとはすごい! 実際、多摩動物公園では、地上3mほどに吊るされた馬肉に向かって、サーバルがジャンプする姿を見られるという。

エサをめがけて跳び上がるサーバル。
Image by jurvetson,
http://flickr.com/photos/44124348109@N01/471871562.
License at https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/

 一方、サーバルちゃんの跳躍力は、アニメ第1話の冒頭で、いきなり発揮された。ジャパリパークの木の枝で昼寝をしていたサーバルちゃんは、物音に気づいて目を覚まし、木からジャンプ!

 このときの滞空時間を測定すると4.26秒。この跳躍で発揮したジャンプ力は、跳び立った枝の高さにもよるが、枝の高さが5mだとしたら19.8m。4~5階建てのビル屋上に跳び乗れるジャンプ力だ。

 うーむ。これほどのジャンプ力となると、どうしても比較したくなる。超人的なジャンプで活躍した往年のヒーローと比較すると、どっちがスゴイのか?

 比べたいそのヒトの名は仮面ライダー!

 サーバルちゃんはネコ科動物のサーバルが女の子に姿を変えたキャラだけど、仮面ライダーは本郷猛【※】がバッタの改造人間にされた姿である。違うといえば違うけど、どちらもワケありといいますか、大きく分類すれば同じ箱に入るような気がしませんか、この2人。

※本郷 猛(ほんごう たけし)
特撮テレビドラマ「仮面ライダー」シリーズの主人公。知能指数600にしてスポーツ万能という類稀なる優秀な能力持っていたことから、悪の秘密結社・ショッカーに拉致され改造人間にされてしまう。人間でなくなったことに苦悩しながらも、人類を守るために仮面ライダーとなってショッカーと戦うことを誓う。

 それはともかく、仮面ライダーのジャンプ力を調べてみよう。

 『全仮面ライダー大百科』(ケイブンシャ)という本を開いてみると、「ジャンプ力/15m30cm」とある。おお、サーバルちゃんのジャンプ力が19.8mなので、仮面ライダーを上回りますぞ!

(画像はAmazonより)

 ……と喜んだのは一瞬だった。同書の記述はこう続いたのだ。

 「再改造後25m」

 あーっ、そうだった。あのヒトはもう一度ショッカーにつかまって再改造され、能力を向上させていた。うむむ、改造人間だからこそできるスペック変更。なんだかくやしいな。

仮面ライダーとどっちがすごい?

 そこで、もっとすごい跳躍を見せないかとアニメを見続けると、おお、出てきました。サーバルちゃんの驚異的なジャンプ!

 それはこんな状況で発揮された。
 じゃんぐるちほーで、移動に便利なバスがあることに気づいたサーバルちゃんたち。だが、発見したバスには運転席しかなかった乗客を乗せる部分とつなげたいけど、それは広い川の向こうにある。合体させてバスにしたいと思ったサーバルちゃん、かばん、コツメカワウソちゃん、ジャガーちゃんの4人は、運転席を川の向こうまで運ぼうとする。

(画像は『けものフレンズ』の公式サイトより)

 初めは全員で担いで、泳いで運ぼうとしたのだが、重くて無理。それはそうだろう。運転席の重量は、軽乗用車の半分の400kgはあると思われる。

 そこであたりを見渡すと、壊れた橋があった。ほとんど水没しているが、ところどころ橋げたが残っている。

 ここでサーバルちゃんはどうしたか? かばんを除く3人で持ち上げたバスを1人で抱えて、次々にジャンプ! 残った橋げたに着地して、それを足場に再びジャンプ! こうして4回のジャンプで、運転席を向こう岸まで運んだのだった。

 こ、これはいったい、何が起きたのか!? いや、いま書いたとおりなのだが、あまりのことに、筆者はしばしボーゼンとしてしまいました。

 これはすごいジャンプ力である。画面の描写を冷静に計測してみよう。4回のジャンプのうち、足場にした橋げた間の距離が測定できるのはただ1カ所で、その距離は推定19.8m。これをサーバルちゃんは、わずか0.44秒で跳んでいる。
 このことから彼女は、時速162kmで離陸したことがわかる。この猛スピードで真上に跳んだら、どうなるか? 到達高度を計算すると、なんと103m!

 すっごーい! 再改造後の仮面ライダーを4倍も上回り、サーバルちゃんの圧勝だ!

スカイツリーもひとっ跳び!

 いやいや、もはやバッタ人間なんぞ、相手にしている場合ではない。

 サーバルちゃんは400kgの運転席を抱えて、これほどのジャンプを見せたのだ。手ブラなら、もっと跳べるはず! その飛距離を具体的に求めてみよう。

 人間が自分の体重と同じ重さの荷物を持って跳んだ場合、力学的に単純計算すると、ジャンプの高度は半分になるはずだ。実際には荷物が動作の邪魔になって、そんなにも跳べないだろうが、話をシンプルにするために、この方法で単純計算してみよう。

 サーバルちゃんの体重を40kgとすると、自分と運転席を合わせた重さは440kg。体重の11倍だ。これで103m跳べるということは、運転席を持っていなければ、その11倍跳べる計算になる。――具体的には、ええっ、1133m!?

 東京スカイツリーの上に東京タワーを乗せても合計967mであり、サーバルちゃんはそれよりも高く跳べるってことだ! このヒト、ほんっっっとうに、すっごーーーーい!

 ユルいと思われた『けものフレンズ』の世界が、これほど驚異的だったとは。

 そういえば『仮面ライダー』には、サーバルの怪人は登場しなかったけど、仮面ライダーにとっては幸いだったということですな。うーむ、意外な発見。【了】

プロフィール
理系作家。空想科学研究所の主任研究員として、書籍の執筆を続ける一方で、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演など精力的に活動。2007年には『空想科学 図書館通信』の無料配信を始め、現在も継続中。代表作『空想科学読本』シリーズは、現在17巻まで刊行。明治大学理工学部の非常勤講師。
空想科学研究所公式サイト:www.kusokagaku.co.jp
Twitter:@KUSOLAB

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