ゲームパブリッシャーのPlayWay S.A.とGames Operatorsは、Hypnotic Antsが開発するゲーム『Medic: Pacific Corpsman』を発表した。プラットフォームはPC(Steam)で価格は未定。2021年の発売を予定している。
『Medic: Pacific Corpsman』は太平洋戦争がテーマになっているが、銃を撃ち敵を倒すゲームではない。本作は地獄のような戦場を舞台に、衛生兵としてほかの兵士を助けるゲームだ。持ち歩く道具は人を殺すための武器ではなく、人を救うための道具である。戦場で傷ついた兵士に応急処置を施し、安全な後方へ送り届けることが本作のおもな目的だ。
戦場に向かう前には、基地で持ち歩く装備を決定する。止血帯やバンドエイド、モルヒネなど、さまざまなアイテムを鞄に詰める。それでもひとりが救える人数は有限だ。ときには、助かる見込みのない兵士を見捨ててでも助けられる命を助ける「命の選択」をしなければならないだろう。
1929年のジュネーブ条約によって衛生兵は保護されることが定められていたが、混沌の極みにあった第二次世界大戦後期には守られなくなった。兵士を助ける衛生兵を殺せば戦いが有利に進むため、国際法を無視して意図的に殺害されることも少なくなかったという。
そのため、基本的に非武装だからこそ国際法で守られていた衛生兵も、自衛のために銃を携行することもあった。主人公はそのような状況のなかで、本部の要請に従い、傷ついた兵士を助けに向かうことになるのである。
トレイラーでは、主人公が弾丸の飛び交う前線を走って味方の元へ向かったり、敵の目を欺きながらひっそりとステルスで移動するシーンが確認できる。その一方で、主人公自身が銃を撃つシーンは皆無だ。
公には語られていないが、本作は2016年公開の映画『ハクソー・リッジ』によって伝えられている有名な衛生兵、デズモンド・T・ドス氏の活躍が本作におけるアイデアの基になっているようだ。また、ドス氏に焦点を当てた『ハクソー・リッジ』は2017年の「第89回 アカデミー賞」で録音賞と編集賞を受賞している。
ドス氏は信仰上の理由から武器の所持や敵兵の殺害を拒否した良心的兵役拒否者で、太平洋戦争に衛生兵として従軍。一切武器を持たず、何度も負傷しながら多くの兵士を救った。特に沖縄戦では75人の命を救い、終戦後は良心的兵役拒否者としてはじめて名誉勲章を受賞した。
第二次世界大戦を取り上げたアクションゲームとして太平洋戦争を舞台とするものは比較的まれで、戦争をテーマにしながらも銃を撃たない作品はさらに珍しい。本作に興味があれば、Steamのウィッシュリストに登録して続報を待ってみてほしい。
ライター/古嶋 誉幸