さまざまな職業を体験できるビデオゲームは、本職の人がその内容をレビューするという企画も人気だ。『Microsoft Flight Simulator』をパイロットがレビューしたり、元強盗が『グランド・セフト・オート』をレビューしたりと、内容もさまざま。
3年間狙撃兵として活動し、アフガニスタンでも従軍経験があるという本物の狙撃兵だったキング・アレックス氏が、狙撃兵をテーマにしたFPS『SNIPER Ghost Warrior Contracts』がどれほどリアルなゲームかをレビューしている。題して「REAL SNIPER REVIEWS – How Realistic Is Sniper Ghost Warrior Contracts?」(本物の狙撃兵のレビュー:『SNIPER Ghost Warrior Contracts』はどれくらい現実的なのか)。
『SNIPER Ghost Warrior Contracts』は、ポーランドのCI Gamesが開発したFPSだ。2019年末にPlayStation 4とXbox One、PCでリリースされた。スナイパーと名前の通り、風向きや弾の落下などから弾道を計算するリアルな狙撃が楽しめるというのが売りだ。
レビューでは「武器」、「ミッション」、「雰囲気」、「サウンド」からなる4つの観点からゲームがどれほど現実的なのかを探っている。
それらに移る前にアレックス氏は「このゲームが誰のためにあるか分かりません。私が遊んだ中でも最低のゲームでした。ミリタリーゲームのようなリアルさはなく、かといって『CoD』シリーズのようなハイテンションな戦闘を楽しめるわけではありません」と酷評している。
このレビューではあくまで狙撃兵ゲームとしてみたレビューを行うが、それはそれとして氏は本作をまったく楽しめなかったようだ。
武器について、見た目はリアルだが、バイポッド(二脚)を使っても妙に照準がゆらゆらと動くのは現実的ではないとしている。
また、ゲームの狙撃距離は短すぎるという。ゲームでの狙撃距離はせいぜい100~300メートルだが、現実の狙撃銃では300メートル程度は簡単に狙撃できるという。また、氏が軍隊で狙撃訓練を行った際は、頭を狙うときは400メートル、体であれば900メートルでの命中が最低でも求められたそうだ。
加えて、弾丸の威力が低すぎるとも語っている。現実のライフルは頭以外に当たっても即死する威力があるが、本作は頭に当たらなければ敵は即死しない。「とんでもない駄作スナイパーライフルだ」と酷評だ。「狙撃銃に使われる.338マグナム弾で敵の胸を撃ったとき、敵が立っていた屋根でバックフリップした」と、氏はイラクに出兵した友人の体験談を披露している。
「地元の反抗勢力と協力して腐敗した政治家を排除する」というミッションは現実的だが、それをただひとりの狙撃兵が行うのは現実的ではないとしている。
雰囲気も「狙撃兵のものというより、一般的なビデオゲームに感じる」とやはり酷評。通常25kg以上ある狙撃キットを背負ったままパイプからパイプに飛び移るようなパルクールは、「8歳児を背負ったまま同じことをするのに等しい」と、やはりおかしな点として指摘している。
とはいえ、ゲームにおいて現実をあえて無視して面白さを追求することはよくあることだ。本作の狙撃は確かにほかのゲームに比べてもさまざまな要素が絡み「それっぽく」再現されている点は付け加えておかなければならないだろう。
CI Gamesは『Sniper Ghost Warrior Contracts 2』を2021年第1四半期にリリース予定だ。アレックス氏は「もしリアルな狙撃ゲームが作りたければ、是非連絡して欲しい」と語っている。