海外で結成されたゲーミングおばあちゃん集団「Grand Dames」がひそかに注目を集めている。コロナ禍で2020年にオンライン開催となったゲームイベント「PAX Online」への参加をきっかけに誕生し、7月28日(水)にGame Informer誌のオンラインインタビューを受けたばかりのホットなグランマたちを紹介したい。
「Grand Dames」は、ゲーム好きな4名のおばあちゃんで構成されるユニット。弊誌でもたびたび取り上げてきた「スカイリムおばあちゃん」ことShirley Curry氏をはじめ、全員が各自のYouTubeチャンネルにコアなファンを抱えるレジェンドストリーマー集団だ。
ユニット名の「Grand Dames」は、祖父母を表す“Grand”と功績を称えられた女性に贈る敬称の“Dame”を融合した造語。Twitterでネーミングコンペを募り、“Game”とも韻を踏み語感のよい“Dame”が採用の決め手になったという。
それぞれに異なるゲームの趣味を持つ彼女たちは、何かのタイトルを一緒にプレイすることはない。では一体、“ゲーミングおばあちゃん集団”はどのような活動をしているのかと疑問に思われる方もいるだろう。
その答えは、定期的に催される「オンラインお茶会」だ。ハードなゲーミングトークに花を咲かせることもあれば、家族や健康、孤独との向き合い方といったトピックにも話題は及ぶ。毎回1時間から2時間近く続く、彼女たちのティータイムの模様は「Grand Dames」のYouTubeチャンネルから伺うことができる。
ここでGame Informer誌によるインタビューで披露されたエピソードにもいくつか触れたい。各メンバーが習慣とする実況配信について話す中で、ユニットのリーダーを務めるJessa氏は「グランマゲーミングには、世代を超えて心のつながりを築く力があるの。高齢者だからといって編み物や刺繍を趣味にする理由なんてないんだから。そんな物は投げ捨ててコントローラーを手にしましょう!」と語り、頻繁に行う体力がない分、一度の配信に入念な準備をして臨んでいる旨も明かした。
メンバーに加入して間もないHaughty氏は、若者たちの“居場所”となるような配信を目指していると話す。『Rust』や『マインクラフト』などのマルチプレイゲームを好んでプレイする彼女は、50歳を超えてから大学で社会福祉を学び、現在は博士課程で論文の執筆を手がけている一面も持つ。氏にとってストリーミングはソーシャルワークの実践の延長でもあり、本来の姿を無条件で迎え入れる“みんなのおばあちゃん”として悩める者の心の拠り所となっている。
編集者から「荒らし」との付き合い方を尋ねられたMerrie氏は、配信を始めた当初は年齢を揶揄されたりもしたと自身の過去を振り返り、「私たちのような高齢ゲーマーにはスポンサーも付きにくい」と主張。「でも覚えておいて。全てのゲーマーがいずれは私たちのように年を取るのよ」とウィットに飛んだ発言で一同の笑いを誘った。
最後に、各メンバーの今後の展望にも話は及んだ。Curry氏は『スカイリム』以外のタイトルをプレイしたいと新たな挑戦を示唆し、9月に発売予定のホラーゲーム『The Alien Cube』に注目していると明かした。
両親の介護やガンを患う妹を見舞うため長距離の移動が日課となっているMerrie氏は、「Steam Deck」の予約に成功したことを報告。忙しさゆえ疎遠となっていたゲームプレイをこれを機に再開したいと伝えた。
「高齢者によるゲーミングをさらに広めていきたい」と夢を語ったのはリーダーのJessa氏。上達のための攻略動画は山ほどあるが、ゲームに触れたことがない者に「プレイのしかた」を教える情報は全く見つからないという。コントローラーをどのように操作すればキャラクターを動かせるかといった基礎の解説を分かりやすいアニメーションの形で発信し、開発者と高齢ゲーマーをつなぐ架け橋になりたいと締めくくった。
コロナ禍で在宅時間が増え、ゲーミング文化が幅広い層に浸透しつつある昨今。2020年の海外の調査によると、米国における年代別ゲーマーの割合は50歳以上が15%を占めるという。高齢化の進む日本に暮らす私たちも“ゲーミングおばあちゃん”たちから多くの学びが得られそうだ。
ライター/dashimaru